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大学事例|先輩から後輩へ 脈々と続くピアサポートを見守り支える|創価大学

創価大学は「人間教育の最高学府たれ」「新しき大文化建設の揺籃たれ」「人類の平和を守るフォートレス(要塞)たれ」を建学の精神として、1971年に開学。2014年には、文部科学省「スーパーグローバル大学創成支援(SGU)」の採択を受け、「人間教育の世界的拠点の構築」をテーマに創造的世界市民の育成に力を注いでいます。外国人留学生や派遣日本人留学生も年々増加。今回の取材では、「国際性においても、学生の気質においても多様性が加速する今だからこそ、個へ寄り添うサポートが必要」ということをキャリアセンター キャリア・就職支援課の賀佐見氏、馬渡氏にお話を伺いました。

Profile

賀佐見 達雄
創価大学 キャリアセンター キャリア・就職支援課 副課長
創価大学を卒業後、中途採用にて2008年に創価大学へ入職。国際部で学生の海外派遣業務を担った後、総合学習支援オフィスにてSGU事業を担当。外国人留学生の就職支援の強化のためキャリアセンターへ。国家資格キャリアコンサルタント。

馬渡 桂子
創価大学 キャリアセンター キャリア・就職支援課 主任
2012年に創価大学を卒業後、入職。学生時代の寮長経験において、後輩をサポートする仕事にやりがいを見出したのが進路選択のきっかけ。単位認定型インターンシップなどを担当。国家資格キャリアコンサルタント。

現役学生が、後輩に伴走しサポートする

―創価大学のキャリア支援の特徴として、「教職学一体」が挙げられると伺いました。「学」とは「学生」を指すのでしょうか。こちらの点を含めて、キャリア支援の考えをお聞かせください。

賀佐見 :「学生生活すべてがキャリアデザイン」というコンセプトのもとに支援しています。ここでいう「キャリア」は、進路だけを指すのではなく、卒業後も続く人生すべて。生涯にわたり、キャリアを自分らしく築いていけるように指導しています。その考えは「F3プログラム(自分の未来を、自分の力できり拓く力をつけ、自身の基盤を築くこと)」に落とし込んでおり、大学1年生から始動します。

運営は、先ほどご質問にもあった「教職学一体」で行っており、「学」とは、就職活動が終わった大学4年生のことを指します。ちなみに、この4年生による支援を「ピアサポート」と呼び、1・2年生のキャリアを支援するCSS(キャリアサポートスタッフ)と、3年生の就職活動を支援するRSS(リクルートサポートスタッフ)の2つの団体が活動しています。

―現役学生がサポートに加わるのは珍しいですね。どのような経緯で発足したのですか

馬渡:就職氷河期の2004年に学生の発案で始まりました。本学は、学生寮や大学での各種イベントの運営をおこなう学生組織は活発ですが、進路・就職に関して、当時はそこまで積極的な学生の関わりではありませんでした。しかし、当時の学生たち自身が就職活動で苦労した経験をもとに、「後輩をサポートしたい」と、当時のキャリアセンター職員に相談し、キャリアサポートの在り方について話し合ったと聞いています。そこから19年間、ありがたいことに、運営するに十分なメンバーが集まり続けています。先輩にしてもらったことを後輩にもしてあげたいと志願してくれていて、「恩送り」なんて言っていますね。

運営は、まず毎年、夏頃に学生たちの希望をもとにCSSとRSSの組織をつくることからスタートします。そして、教員や私たち職員から後輩支援にあたってのマインドセットや面談に必要なコーチングスキルを指導し、CSSについては授業も担当するため、その内容を一つ上の先輩から引き継ぎも行います。活動が始まってからも、CSS・RSSのそれぞれの担当職員とスタッフの学生たちは密に連携。後輩との関係を構築する上で、「主役は後輩。伴走していく役割」という点を共有するようにしています。

一番身近なロールモデルとなるCSS

―入学したばかりの1年生には心強いでしょうね。

馬渡 :いわば、一番身近なロールモデルですからね。CSSに出会って、大学生活が変わったという声もあります。

賀佐見 :本学は春と秋学期の2学期制なのですが、秋学期の「キャリアデザイン基礎」というキャリア教育科目からCSSが登場します。毎年400~500名が履修する授業(12クラス開講)にCSSが関わり、1人のCSSが10数名の後輩と2回の面談を実施。そこで、今後4年間のキャリアデザインを一緒に考えます。

また、課外イベントもあり、その企画運営もCSSが担当します。まずは、毎年12月に開催される1・2年生対象の「Design Your Dreams (DYD)」という、各業界で活躍する卒業生を招いての懇談会です。1月には、2年生対象の1Dayお仕事体験イベント「Bridge to the Future(BTF)」を開催。卒業生とともに、各業界の就業体験ゲームを実施するのですが、どちらも卒業生と膝を突き合わせて話ができるため、学生からは好評です。

話を聞いて体験した後は「実践」ということで、キャリアセンター主催のビジネスコンテスト「Shine」に参加する1・2年生も。学内限定のビジコンなので、気負わずに参加できるようです。これらは、CSSが集客も担っているので、部活やサークルでの告知はもちろん、担当している後輩に適したイベントを薦めるといった部分でも活躍してくれています。

また、CSSとは別ですが、1年生の春学期から「キャリア開発フォーラム」「ワールドビジネスフォーラム」というキャリア教育科目の専任教員が中心となって行う講義形式の授業もあります。「キャリア開発フォーラム」は、卒業生が具体的な仕事内容や学生時代の過ごし方を語る中で、進路の方向性のヒントを得られる科目です。「ワールドビジネスフォーラム」は、世界で働く卒業生からその魅力や醍醐味を聞き、グローバルな環境で働くことの意義を深める科目となっています。

励まし、メンタル面から支えるRSS

―低学年から充実したプログラムです。そこに、3年生からはRSSのサポートも加わるのですね。

馬渡:そうですね。毎年、60名前後のRSSが、1人あたり5~6人の後輩を担当します。就職を希望する学生の4割近くと接していることになります。RSSが最も大切にしているのは「励ます」こと。就職活動は、学生にとって精神的につらいこともあります。その中で、先輩が自身の経験や考えを押し付けるのではなく、後輩の話に耳を傾け、一緒に進路を模索し、最後は後輩が決めたことを励ますのです。

ちなみに、CSSはキャリア教育科目の授業での登壇機会がありますが、RSSはありません。シンプルに後輩のサポート役に徹します。就職活動の最前線を一番よく知る4年生たちが、どのように伴走し、励ましたらよいかを考えて活動しています。3年生以上対象の「キャリアビジョンⅠ」というキャリア教育科目を履修する学生との面談が、後輩との最初の顔合わせの機会です。今回は「コロナ禍ゆえに『ガクチカ』が見つからない」「自信が持てない」という話が多かったようです。それを受けて、RSS内で話し合ったり、後輩の志望業界の先輩につなげたりと模索しながら取り組んでいました。

キャリアセンターとは、週1回のミーティングで情報交換を行い、その際に、RSSだけでは受け止めきれないような後輩の情報は、職員がフォローします。また、RSSは「就活フェスタ」「就職決起大会」というイベントの企画運営も担当しています。

この時代だからこそさらに個へ寄り添う

―CSS・RSSの学生自身も成長できそうな活動ですね。最後に、さらに目指すところを教えてください。

馬渡:ピアサポートメンバーが、自分の卒業前の時間を削ってまで後輩に尽くしてくれるおかげで、私たちも学生一人ひとりの「個」を感じることができます。しかしながら、社会の状況も、就職活動の環境も常に変わり続けますし、本学は外国人留学生も多く、国際性の面でもキャリアの構築や就職活動も多様化しています。その中で、一人ひとりが求めるタイミングで、求めるものを提供できているのかと試行錯誤しています。今後も、学生たちと力を合わせ、活発に議論することに加え、他大学の皆さまとも情報交換しながら、さらにより良いサポートを考えていきたいですね。

賀佐見 :先日、CSS・RSSからの半年間の活動報告会があり、そこで「To All からTo Youへ」というキーワードが示されました。運営している学生も、まだまだ「個」に寄り添う必要があると感じているようです。一方で低学年の学生からは、本学のピアサポートに対して「親身になってくれている」という声もアンケートで数多くありました。これはひとえにCSS・RSSのおかげで、大いに感謝しています。キャリアセンターでも、今年から企業、学生双方からオファーできるマッチングサイト「キャリナビScout!」をリリース。このシステムの発想も「個」へのアプローチの強化にあります。学生の多様性が話題になる昨今、私たちも、学生それぞれの興味関心の対象の幅広さに驚いています。それを強みにしながら、さらに新たな価値観をプラスしたり、留学などを通して世界観を広げたりと、大学でできることはまだあるはず。そのような環境を、学生たちと力を合わせて作り上げていきたいですね。

Editor’s Comment

「教職学一体となったキャリア形成支援」、これに卒業生が加わった支援をしている創価大学さんを取材させていただきました。規模の大中小、正課、正課外を組み合わせた多彩な支援プログラムにも先輩学生や卒業生が関わっています。しかし、幾らプログラム(箱)が豊富でも、そこに気持ちや想いがなければ学生も集まらず、成長・成果も得られませんが、この点に関しても非常に熱い想いを持って取り組まれていると感じました。
(マイナビ編集長:高橋)

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