曹洞宗系の教育機関を起源として創立され、2026年に開学150周年を迎えた愛知学院大学。文・商・経営・経済・法・総合政策・心理・健康科・薬・歯の10学部16学科、短期大学部1学科、大学院9研究科を擁し、中部地区で最大規模の総合大学として発展を続けています。薬学部では、低学年からの学年横断型キャリアデザイン教育に2024年度から注力しており、2025年度に2年生を対象とした「未来を創造できる薬剤師養成プログラム」がスタート。その内容や特徴について、薬学部薬品分析学講座の教授であり、教務主任でもある古野氏にお話を伺いました。
Profile

古野 忠秀氏
愛知学院大学 薬学部 薬学部薬品分析学講座 教授(教務主任)
名古屋市立大学薬学部助手・講師を経て、2005年に愛知学院大学薬学部助教授に就任し、2015年より現職。薬品分析学に関する授業を担当しているほか、教務主任も務めている。また、卒業試験運営委員長や基礎薬学教育対策委員長などを歴任。2024年度に誕生したキャリアデザイン教育のアウトライン設計にも携わる。
「体験型の3つのコース教育」で現場のリアルを学ぶ

―まず、学年横断型のキャリアデザイン教育について教えてください。
愛知学院大学薬学部では、2024年度に教育カリキュラムの改訂を行いました。それに伴い、キャリアデザイン教育を授業の中に体系的に組み込み、低学年のうちから将来の進路や薬剤師としてのキャリア形成について考えられる環境を整えています。
具体的には、2年生から6年生にかけて「体験型の3つのコース教育」を中心に、段階的なキャリア教育を実施しています。
2年生の秋学期には、導入段階として「未来を創造できる薬剤師養成プログラムⅠ」を受講し、業界について学ぶとともに、社会人基礎力としてのマナーや対人スキルを身につけます。
講義は全10コマほどあり、継続的に学ぶことで学生たちは将来のキャリアを主体的に考えられるようになると感じています。
3年生の春学期からは、研究マインドを早い段階から養う「リサーチファーマシストコース」、海外や地域に根ざして活躍する薬剤師を目指す「グローカルファーマシストコース」、AIやデータサイエンスについて理解を深める「データファーマシストコース」に分かれ、企業などの協力のもとで実践的な学びを深めます。
4年生の終わりには臨床実務実習がスタートしますが、「体験型の3つのコース教育」で培った現場実践の経験が、実習において大きな力になると言えるでしょう。
そして、6年生の春学期には「未来を創造できる薬剤師養成プログラムⅡ」として、学生同士の情報共有や後輩への指導・アドバイスを行いながら、自身の実践を振り返る機会を設けています。
―低学年からのキャリアデザイン教育に力を入れることになった理由を教えていただけますか?
薬学部の6年間は長く、その過程で目的意識を失い、学習へのモチベーションが低下する学生が一定数見られました。
講義や実習に追われる中で将来について考える余裕が持てず、将来の見通しが曖昧になったり、場合によっては退学に至るケースもあります。こうした状況から、「学びの途中で方向性を見失ってしまう」という課題が明らかになりました。
そこで重視したのは、在学中の早い段階から自分の強みを見つけ、将来を主体的に切り拓く力を育むことです。単なる就職活動の支援にとどまらず、学生が広い視野で将来像を描き、自ら行動できるようにすることこそ、低学年からのキャリアデザイン教育の意義だと考えています。
キャリアデザイン教育を授業に組み込むことに苦心

―学年横断型のキャリアデザイン教育を実施するうえで、難しかった点は何でしょうか。
制度設計の面では、特に苦心しました。学年横断型のキャリアデザイン教育を授業のカリキュラムに組み込むにあたり、課題となったのは講義室などの場所の確保や教員数といったマンパワー面での制約です。カリキュラムへの反映に向けて調整を行い、試行錯誤を重ねました。
一方で、内容については教員たちの間で問題意識が共有されており、「こうしたい」「こうあるべきだ」といった方向性も一致していたため、比較的スムーズに決まっていきました。
―プログラムを構築する際に、工夫したことはありますか?
キャリアデザイン教育のプログラム構築にあたってはワーキンググループを立ち上げ、カリキュラムの設計や内容の検討を行いました。また、定期的に説明会を実施し、グループメンバー以外の教員にも進捗状況を共有しました。
あわせて意見を広く吸い上げ、プログラムにも反映させるようにしました。その結果、グループ以外の教員にも取り組みの狙いや内容が浸透し、組織全体の一体感につながったと感じています。
また、キャリアデザイン教育のノウハウを有する外部企業とも密に連携を図りました。例えば、マイナビとは産学連携でキャリア教育の在り方そのものを構築する協定を締結しました。
キャリア教育に関する情報提供から講義・演習・研修への協力まで幅広い連携を通じて、学内だけでは得られない知見を取り入れ、プログラムの質向上へとつなげました。
在学生はもちろん、受験生からも高評価を獲得

―学年横断型のキャリアデザイン教育プログラムの現状を教えてください。
2025年度に、2年生を対象とした「未来を創造できる薬剤師養成プログラムⅠ」が初めて実施されました。
第1回の講義では、ワーキンググループの中心メンバーである山本教授からプログラムの目的や意義、目指す方向性についてレクチャーを実施しました。また、外部講師によるマナー・コミュニケーション講座も開かれました。
第2回の講義では、マイナビの方を講師としてお招きし、「薬学業界研究講座」を開催しました。学生たちは薬学部出身者が活躍できる多様なフィールドに触れ、視野を広げました。
2026年度を迎え、現在は3年生に向けて「体験型の3つのコース教育」がスタートしたところです。卒業生の協力も得ながら、講義と演習を実施している段階です。
―参加した学生たちからは、どのような反応がありましたか?
学生へのアンケート調査では、「人との関わり方が医療現場で大きな意味を持つことに改めて気づきました」「あと数年後には社会人として働いていることを実感しました」「視野を広げることで、後悔のない進路選択につながると思いました」などといった前向きな意見が寄せられました。
この結果から、学年横断型のキャリアデザイン教育に対する学生の関心や評価の高さがうかがえます。
また、入学試験の面接においても、愛知学院大学薬学部のキャリアデザイン教育に魅力を感じたと話す受験生が見られました。
少子化が進む中において、学年横断型のキャリアデザイン教育は、“選ばれる薬学部”としての価値向上にもつながっていると考えています。
自分らしさを活かせるキャリア形成の土台に

―低学年からキャリアデザイン教育を受けることは、学生にとってどのようなメリットがありますか?
将来のキャリアに対する意識を、段階的に高められる点にあります。単発の学びでは時間の経過とともに意識が薄れがちですが、継続的にキャリアデザインについて学ぶことで理解が深まり、卒業後に求められる力について、早い段階から自分ごととして捉えられるようになるでしょう。
また、実際の学びや経験を通じて気づきを蓄積していくことで、知識が単なる理解にとどまらず、実感をともなうものとして身に付いていきます。就職のためだけの取り組みではなく、在学中から将来に必要な力を育むことにつながるはずです。
さらに、早い段階からキャリアを意識することで、就職活動の段階で初めて進路を考える学生とは大きな差が生まれます。
その結果、卒業後の進路選択のミスマッチの防止と納得感の高まりが期待されるだけでなく、目指す薬剤師像を具体的に描くことにもつながり、自分らしさを活かせるキャリア形成の土台となるでしょう。
―今後、学生にどのようなことを伝えていきたいですか?
まず、リアルな情報に直接肌で触れ、実際に体験することの大切さを伝えていきたいと考えています。そのうえで、在学中から広い視野で物事を捉え、自分に合った進路を主体的に選択してもらいたいです。
卒業後は、自分らしさを活かしながら将来を切り拓き、充実した人生を歩んでほしいと強く願っています。
そうした姿勢を育むためにも、インターネットを通じた情報だけにとどまらず、学生のうちから実社会に触れる経験が重要だと考えています。現場の空気を感じることで多くの気づきが生まれ、それが成長にもつながっていくでしょう。
ぜひキャリアデザイン教育を、気づきや変化が生まれるきっかけづくりとして活用してもらいたいです。
―最後に、他大学の皆さまへメッセージをお願いします。
本学の取り組みはまだ始まったばかりで、現時点では成果が見えている段階ではありません。現在も、学生からのフィードバックをもとに、内容のブラッシュアップを継続しているところです。
そのため、皆さまに何かお伝えできる立場にはないのですが、キャリアデザイン教育を授業のカリキュラムに組み込む意義は大きいと感じています。
単位や評価の対象とすることで、学生がより真剣に向き合うようになり、日々の講義とキャリア教育が一体としてつながっていることを実感しやすくなるでしょう。
一方で、キャリアデザイン教育のプログラムを構築し、運用するにあたっては、相応のエネルギーが必要になります。そのため、まずは学部の教員間で問題意識を共有し、方向性を揃えることが重要です。
こうした体制づくりの積み重ねが、学生の成長だけでなく、将来の進路選択や理想のキャリア形成にもつながっていくと考えています。
Editor’s Comment

愛知学院大学が構築された「低学年からのキャリア教育プログラム」は、学生側の「学びたい」という視点、大学側の尽きることのない教育への想い、そして時代が求める変革、そのいずれか一方ではなくすべてを融合させている点にこそ、魅力の根幹と先進性があると感じています。
また、これらの取り組みを未来へとつなげていくうえで、「情報の手触り」にこだわられている点も、大学ならではの価値だと捉えています。学生の皆さんにとって実感を伴う良い体験となるよう、マイナビとしても伴走しながら支援していきたいと考えています。
(メディカルキャリア事業部 キャリアサポート統括本部:丸田)
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