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大学事例|低学年からの徹底したマインドセットが未来を大きく変える|龍谷大学

1639年、西本願寺境内に設けられた教育機関である学寮を起源とする、歴史と伝統のある龍谷大学。380年にわたり、時代とともに変わる社会的課題の本質と向き合いながら、「真実を求め、真実に生き、真実を顕かにする」ことのできる人間の育成に取り組んできました。2022年度からは低学年に向けた新たなキャリア教育プログラムを全学的に導入し、学生の視野を広げる支援を実施。今回は、社会的かつ職業的⾃⽴に向けて支援を行うキャリアセンターのセンター長を務める瀧本氏に、⼀⼈ひとりに寄り添った独自のキャリア教育についてお話を伺いました。

Profile

瀧本 眞人 氏
龍谷大学 国際学部 グローバルスタディーズ学科 教授
キャリアセンター長
広島大学総合科学部を卒業後、筑波大学大学院、クイーンズランド大学大学院を経て、オーストラリアのモナシュ大学大学院人文社会科学研究科博士課程修了。専門分野は、通訳・翻訳研究、応用言語学。モナシュ大学人文社会科学部准教授を務める傍ら、会議通訳者・翻訳者としても活躍。アジア競技大会の公式通訳者として、当時、快進撃を続けていたなでしこジャパンの通訳なども担当した。2013年度から龍谷大学国際学部グローバルスタディーズ学科教授に就任し、2022年度にはキャリアセンター長としてキャリア支援に従事。

低学年からの支援によって自分の可能性を発見できる

低学年に向けたキャリア教育に力を入れているとのことですが、具体的にはどのようなことをされているのでしょうか。

2022年度から1年生や2年生の低学年を対象とした新たな取り組み「RYUKOKUキャリア・スタート・プログラム」を開始しました。これは、キャリアセンターが手がける正課プログラムで、「キャリア入門」と「キャリア実習・実習指導」の2科目から構成されています。

「キャリア入門」では、全15週にわたって文系理系に関係なく、様々な学部の先生が講義をしてくださいます。学問の専門分野が細分化されている現在、選択肢が狭くなりがちな学生の視野を広げることが狙いです。

学生たちがこれまで考えたこともないような視点で、自分のキャリアのチャンスや可能性に気づくということは、有意義な学生生活を送るためにも重要だと考えています。そして、「キャリア入門」を受講した学生は、「キャリア実習・実習指導」の科目を選択できるようになり、希望する企業や団体での実習を通じて実践的な学びを経験できます。

実習前にはインターンシップ&キャリアのマナーを学んだり、課題を考えたりする事前学修を行い、実習後も学生自身が掲げた目標に対してどの程度達成できたのか、担当教員とともに振り返り、実習先にも参加していただく報告会で発表する事後学修も行っています。

このようなプログラムを通して、目まぐるしく変化する世界に対して、常にチャレンジすることや行動を起こすことの大切さや、好奇心や柔軟性、冒険心の重要性を伝えていきたいと思っています。

やはり、低学年からキャリア教育を行うことが大切なのでしょうか。

昔はキャリア支援ではなく、就職支援が中心の時代でした。しかし、多くの人が一つの企業の中でも様々な職種を経験したり、転職をしたりと、就職がゴールではない時代になっています。
就職した後でも自分のキャリアについて考えなければいけません。常に自分自身をアップデートし、リスキリングを行い、ブラッシュアップしていく必要がありますよね。

そのためには、低学年のうちにキャリアは単なる就職活動ではなく、自分の将来設計であるというマインドセットをもつことが重要です。龍谷大学では学生一人ひとりが「マイキャリアノート」というオリジナル冊子を用いたキャリアプランニングに取り組み、1年生のうちからキャリアの本質に気づき、逆算して大学生活で自分が何をすべきかを考えるきっかけを提供しています。

築いてきた深い信頼関係が職員と教員の垣根をなくす

低学年から行うキャリア支援において見えてきた効果や学生、企業の反応はいかがですか。

学生の視野が広がり、学生のうちにどんな勉強に励むべきか、自分自身で考えて行動しているように感じています。また、「キャリア入門」は全学部を対象にオンラインで授業を行うのですが、他学部の学生と行うグループワークを多く取り入れており、普段は接点がない学生同士でディスカッションを行うことができます。

この授業で横のネットワークが構築され、さまざまな意見を聞くことができたり、グループの中で自分の役割が見えてきたりするというのは、学生にとって貴重な経験になっているのではないでしょうか。

さらには、実習先である企業等からの評判もよく、現在実習を受け入れてくださる企業は100社を超えているため、今後はより実習に参加する学生を増やしていきたいと思います。

学生や企業の反応は良好なのですね。では、先生方はいかがですか。

前向きに協力してくださる先生方が大変多いです。先生側のメリットとして、キャリア教育に関わるなかで学生と直接触れ合うことができ、学生の成長を間近に感じられるということが挙げられます。そのため、私たちは質を一層高めた支援を提供することで、学生と教員の双方によりメリットの大きいキャリア教育ができたらと思っています。

さらに、この低学年に向けた新たなプログラムは、キャリア支援の枠組みだけでなく、教育の部分に切り込めたということが非常に大きな一歩だと私たちは認識しています。

その根底には、各学部執行部にキャリア主任というキャリア支援に関わる教員が配置されていることが大きいです。これは、龍谷大学の組織の特徴でもあるのですが、このキャリア主任は、学部執行部の一員としてキャリアセンターの会議に出席するため、情報交換を密に行えるようなシステムがしっかりとできているのです。

加えて、キャリア主任を配置していることで、キャリアセンターの職員との連携も取りやすくなり、職員と教員の間の信頼関係が深く築けていると感じています。将来的にはこの「キャリア入門」「キャリア実習・実習指導」に続くキャリアの科目を教養教育の中で提供できるようにしていきたいと考えています。

質の高い支援がキャリアセンターのファンを増やす

逆に、キャリア教育を行っていくうえで難しいと感じることについて教えてください。

低学年の学生への認知度向上が課題だと感じております。本プログラムへの参加によって得られる成果や成長について、学生に具体的に説明することでキャリア形成の重要性を低学年のうちに伝えたいです。

たとえば、実習先の企業や団体の特徴などを伝えることで学生の興味や関心を高め、視野を広げ、学生が希望する実習先の選択肢を増やしていくことも重要だと考えています。

そのためには、本プログラム受講後の学生がどのように成長したのかという確認や検証が必要です。受講後のアンケート結果では、9割以上の学生が到達目標を達成した、という実感を得ることができたと回答しています。

一方で、この結果を踏まえ、今後どのような学びや活動に結びついていくのかについては引き続き検証し、プログラムの改善につなげていきたいです。質の高い支援を提供し続けることで、学生にとってのキャリアセンターの敷居を低くし、キャリアセンターのファンを増やしていけたらと思っています。

なるほど。プログラムの質を高めつつ、今後新たに挑戦したいことはありますか。

近年の傾向として、学修成果の可視化というキーワードが挙げられますが、将来的にはキャリア教育についてもポートフォリオのような形を目指したいと考えています。

就職先を考え始める3年生や、就職先が決まった4年生のタイミングで、キャリアの振り返りがデジタルでできるようになることが理想ですね。現在でも各授業の課題や事前学修の内容はデータとしてしっかりと蓄積されているので、そこをうまく活用していける仕組みを構築していきたいと思います。

自分自身が歩んできたキャリアが学生のロールモデル

最後に、他大学の皆さまへメッセージをお願いします。

教員も職員も、自分のキャリアについて語っていただくことが学生にとってキャリアの勉強になるので、そういった機会を設けていただければと思っています。

やはり、ご自身がいろいろな経験を通してキャリアを歩んでこられたと思うので、学生のロールモデルとしてご自身の経験を伝えてほしいと考えています。

また、私たち自身も社会の変化を常に意識しながら、目の前の一人ひとりの学生に目を向け、キャリア教育や進路・就職支援を行っていくことが重要です。

多様な背景を持つ学生への支援を提供するためには、フレキシブルな取り組みを行うことができる組織であることが必要であるため、今後もキャリア支援を行う全国の皆さまと意見交換や協力等を行いながら、これらの困難を解決していきたいと考えています。

Editor’s Comment

私は日ごろ、学生の皆さまに「これからは就職活動という‘点’ではなく、キャリア形成という‘線’で捉えて活動しましょう」と伝えています。そのため、今回の瀧本キャリアセンター長への取材には多くの共感を覚えました。
教職一体となって取り組み、低学年から履修できる正課科目「RYUKOKUキャリア・スタート・プログラム」が非常に人気があるのも納得です。
「キャリアセンターのファンを増やし、気軽に立ち寄れる組織にしたい」とおっしゃっていましたが、実現する日はそう遠い将来ではないと思いました。
(マイナビ編集長:高橋)

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