1928年に創立された神奈川大学は、「質実剛健」「積極進取」「中正堅実」の建学精神のもと、実践的な学びを重視してきた総合大学。横浜キャンパス、みなとみらいキャンパスなどを拠点に、多様な学部・学科を展開し、社会で主体的に活躍できる人材育成に取り組んでいます。近年は、低学年からの体系的なキャリア形成支援も強化。教務部門とも連携しながら、学生が早い段階から自らの将来を見つめ、納得感のある進路選択につなげられる環境づくりを進めています。今回は、神奈川大学が目指すキャリア支援のあり方について、就職支援部 事務部長の高橋氏にお話を伺いました。
Profile

高橋 厚氏
神奈川大学 就職支援部 事務部長
神奈川大学に入職後、学生課、人事室、経営企画室、広報課、入試センター、教育・学生支援部など、大学のあらゆる部署を経験したのち、就職支援部へ。現在は、低学年からのキャリア形成支援や教務部門との連携強化など、大学全体で学生を多角的に支えるキャリア教育体制の構築を推進している。
低学年から確かな土台をつくり、歩みだしのスタートラインを整える

―まず、低学年からのキャリア支援に力を入れている背景について教えてください。
近年は就職活動の多様化が進み、学生がキャリアや進路について考え始める時期も早まっています。夏季インターンシップなどの動向を見ても、大学3年生になってから就活準備を始めるのでは間に合わない場面も出てきました。
そのため、神奈川大学では大学1・2年生の段階からキャリア形成を支援していく必要性を強く感じています。
ただ、低学年の学生にとって「就職」や「キャリア」はまだ実感しづらいテーマでもあります。大学入学までは偏差値や大学名といった軸で進路を選んできた学生も多く、「その先の人生をどう生きたいのか」という視点を持てていないケースも少なくありません。
だからこそ、私たちはまず“マインドリセット”が必要だと考えています。偏差値や周囲からの評価を基準にするのではなく、自分自身がどのように働きたいのか、どんな人生を送りたいのかを考えてもらう。そのための確かな土台づくりを、低学年のうちから丁寧に仕掛けていきたいのです。
—低学年からその土台をつくる上で、難しさはありますか?
学生によって意識や理解度にも大きな差があり、早い段階から積極的に動いている学生もいれば、まだ将来のイメージを描けていない学生もいます。そうしたなかで、同じ情報を提供しても、学生の受け取り方が大きく異なる点に難しさがあります。
ただ、「早く動いた学生だけが有利になる支援」を目指しているわけではありません。まずは学生たちの気持ちをリセットし、できるだけスタートラインをそろえた上で、一人ひとりが納得感を持って進路を選択できる状態をつくっていくことが重要だと考えています。
情報発信と授業連携で進める、体系的なキャリア支援

―では、具体的にはどんな取り組みを行っているのですか。
学内では「KUキャリアナビ」というポータルサイトを活用し、学生向けの説明会やイベント、求人やキャリア支援情報を一元管理しています。また、年間200本以上の各種イベントを開催しており、個別面談も含めて学生一人ひとりを支援する体制を整えています。
ただ、従来のやり方では、就職課への関心が薄い低学年の学生との接点づくりにどうしても課題がありました。そこで現在は、LINEを活用した情報発信にも力を入れています。
大学1年生向けガイダンスの段階で全員にLINE登録を促し、学年や学部・学科のフェーズに合わせた最適な情報をタイムリーに届けています。キャリアセンターからの情報を「特別なもの」として構えさせるのではなく、学生が日常的に触れられる状態をつくりたいと考えています。
また、正課(授業)と連動したキャリア形成支援も重視しています。とくに現在力を入れているのが、大学1年生全員が受講する「ファーストイヤー・セミナー」にキャリアの要素を組み込む試みです。
低学年のうちから、自分の将来や社会との関わり方について考える機会を、カリキュラムの中で自然に提供したいと考えています。さらに、アセスメントテストの結果や自己理解支援ツール、日々の学修成果など、学内の多様なデータを統合し、学生自身が自らの成長を振り返られる仕組みづくりを進めていきたいと考えています。
情報過多の時代だからこそ、「自ら考え、選ぶ力」を育てる

―取り組みを進めるなかで、見えてきた課題はありますか。
今の学生たちは、本当に多くの情報に囲まれて生きています。SNSや就職情報サイトを通じて、就職活動に関するノウハウやトレンドは簡単に手に入ります。しかし、その情報量の多さによって、逆に自分で判断できなくなっている学生も少なくありません。
たとえば、「周囲がインターンシップに参加しているから自分も行かなければ」「大手・有名企業に就職することが正解だ」といった空気に流されてしまうケースもあります。だからこそ、“正解を教える支援”ではなく、“自ら考え、納得のいく選択を積み重ねる力を育む支援”が必要だと感じています。
—なるほど。まさに「教育」としてのキャリア支援ですね。
おっしゃるとおり、職員による支援だけでは完結できるものではありません。教員を含めた「大学全体」で取り組む必要があります。ただ、教員それぞれの専門分野や教育方針によって、キャリア支援に対する考え方や関わり方はさまざまなので、全学的な意識統一はまだ道半ばです。
そこで、就職課の取り組みとして学部や学科の担当制を導入し、職員が各学科の教員のもとへ直接足を運ぶなど丁寧なアプローチを重ねています。
最初は慎重だった教員に対しても、取り組みの成果や学生の変化を丁寧にフィードバックすることで、「キャリア教育が正課の学びにも良い相乗効果をもたらす」という実感を持ってもらえるようになり、少しずつ理解が広がっているのを感じています。
キャリア形成は、大学教育全体と関わるテーマです。就職活動だけを切り取るのではなく、4年間の大学生活を通じて自分の価値観を理解し、納得感のある選択を積み重ねていく。そのための支援をどう実現するかが、今後さらに重要になると思っています。
学生が日常生活の中で、社会や大人とつながる環境をつくりたい

―今後の展開についても教えてください。
今後はさらに、学生が社会や大人と接点を持てる機会を増やしていきたいと考えています。その一つとして現在力を入れはじめているのが、低学年を対象とした企業訪問や職場見学です。
近年の学生は、家族以外の大人と接する機会が以前より少なくなっているように感じます。だからこそ、実際に企業の現場へ足を運び、社会人がどのような意識や責任感を持って仕事に向き合っているのかを、五感で感じてもらうことが重要だと考えています。
見学には職員も帯同し、単なる見学で終わらせるのではなく、卒業生からのメッセージや現場での社員との対話を通じて、学生自身が刺激を受けられるよう工夫しています。
また、キャリア形成・就職支援を担う組織のあり方についても見直していきたいと思っています。学生が“相談しに行く場所”として構えるのではなく、もっと気軽に立ち寄れる場所にしたいです。
そのため、カフェスペースのような開放的な空間づくりも視野に入れています。LINE活用や立地改善なども含め、神奈川大学が目指しているのは、キャリア支援を特別なものにしないことです。日常生活の中で自然に将来を考え、社会との接点を持てる環境をつくっていきたいと考えています。
―最後に、他大学の皆さまへメッセージをお願いします。
採用・雇用環境や学生の価値観が大きく変化する中で、キャリア支援・就職支援のあり方も変わり続けています。
だからこそ、個別大学の取り組みだけではなく、大学全体で学生を支える学内体制をつくりつつ、全国の大学の皆さまとも好事例や課題感を共有し合い、これからの時代に求められるキャリア形成支援を一緒に考えていきたいと思っています。
Editor’s Comment

神奈川大学 就職支援部の高橋事務部長に取材させていただきました。入学した学生は「挑戦したいことがある」「成し遂げたいことがある」と自ら一歩を踏み出せる学生だけでなく、多様な不安や課題を抱えて入学してくる学生もいます。
どのような状況の学生でも前向きに学生生活やキャリア形成活動を送れるように、低学年次の早い時期でのマインドセットに力を入れている点、低学年向けプログラムのさらなる拡充や大学3年生への円滑な接続に取り組まれている点が印象に残りました。
大人との積極的な交流や多くの挑戦を促し、その経験をキャリア支援につなげるなど、温かみのある支援の取り組みは今後も注目していきたいです。
(マイナビ編集長:高橋)
「マイナビキャリアサポート」は
キャリア支援・就職支援に関する総合情報サイトです
長い学生生活の出口で、学生たちを社会へと送り出す。その大きな役割と責務を担っている皆さまに寄り添い、活用いただける情報をお届けするため、2022年にサイトをリニューアルいたしました。
より良いキャリア支援・就職支援とは何か。答えのないその問いに対して、皆さまの学生支援のヒントとなるような情報をお届けして参ります。

