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大学事例|継続的なキャリア教育で「生きる力」を育む|福山大学

1975年に開学した福山大学は、5学部14学科・4研究科を擁する総合大学です。広大で緑豊かなキャンパスには、充実した教育研究施設が整っています。教育理念は、豊かな人間性を基盤に、調和のとれた人格を育む「全人教育」。幅広い教養と専門知識を兼ね備えた、人間性豊かな人材の育成を目指しており、特に、1年次からの継続的なキャリア教育に注力しています。そこで、福山大学が取り組むキャリア教育の全貌とその背景にある想いについて、工学部長の香川氏と大学教育センター准教授の前田氏にお話を伺いました。

Profile

香川 直己 氏
福山大学 工学部長補佐 電子電気工学科長 教授
岡山大学工学部電子工学科、同大学院自然科学研究科博士課程システム科学専攻を修了。博士(工学)。1993年4月福山大学着任。専門分野は電子機器学。「人と調和する技術の開発」をポリシーとし、光応用技術、IoTシステム等の研究に取り組む。2015年度-2018年度 工学部長。また、キャリア形成支援委員長として、キャリア教育にも力を注いでいる。社会活動としてETロボコン中四国地区実行委員長、中四国学生剣道連盟理事。第一級陸上無線技術士、電気通信主任技術者、第三種電気主任技術者の国家資格を持つ。剣道 錬士六段。

前田 吉広
福山大学 大学教育センター 准教授
筑波大学芸術専門学群卒業後、豪州で修士号(Master of Entrepreneurship and Innovation)を取得。デザイナーやコンサルティング業務を経て、2014年度より福山大学にてキャリア教育を担当。キャリアコンサルタント、GCDF-Japanキャリアカウンセラー資格を有し、学生の価値観や強みの発見を支える学びの設計に取り組む。近年は、キャリア観の可視化手法の研究や教材開発にも注力している。

継続的なキャリア教育を通じて、「生きる力」を育む

―まず、福山大学が目指すキャリア教育の考え方から教えてください。

前田:福山大学では、「豊かな人間性を育む全人教育」を教育理念に掲げ、入学時から全学生を対象とした段階的なキャリア教育プログラムを設けています。1年次は「自立」、2年次は「対話」、3年次は「社会参加」、4年次は「自己実現」と、学年ごとに目標を設定しており、段階的に社会人基礎力を高めていきます。

香川:社会や働き方が大きく変化し、価値観も多様化している今、私たちはキャリア教育を単に「職業観の育成」とは捉えていません。自分にとって幸せな生き方とは何かを自ら考え、行動力を養うものと位置づけています。自分の軸を持ち、社会環境の変化にもしなやかに対応しながら、力強く前に進む。そんな「生きる力」を育むことを目指しています

キャリア教育の具体的なカリキュラムについても教えてください。

前田:「キャリアデザインⅠ」は1年次の必修科目で、自分自身を理解し、自らの人生をどのように設計していくかを考えるための基礎づくりをおこなう科目です。2年次の「キャリアデザインⅡ」は選択科目で、グループワークやアクティブリスニングを通じて、コミュニケーションスキルの向上を図ります。

香川:3年次に多くの学生が参加する「BINGO OPENインターンシップ」は、「地域で活躍する人を、地域とともに育てる」をスローガンに、大学主導で実施するプログラムです。

インターンシップを就職活動の手段ではなく、教育の一環として位置づけ、学生が自分の価値観や自分らしい働き方を考える機会を提供。地域企業での実体験を通じて、学生一人ひとりが自分自身と向き合えるインターンシップを目指しています。

前田:「自己実現」をテーマにした4年次のキャリア教育では、まだ就職先が決まっていない学生のフォローや、内定後の学生に対して自分らしいキャリアを実現するためのサポートをおこなっています。

点と点ではなく、線でつながるキャリア支援を目指す

1年次からキャリア教育をスタートさせる重要性について、どのようにお考えですか。

前田:「学び」と「仕事」は切り離されたものではなく、本来結びついています。そのつながりを、学生自身が段階を踏みながら主体的に深めていくことが大切です。だからこそ、キャリアの基盤づくりは1年次から始めるべきだと考えています。

香川:特にデジタルネイティブ世代の学生は、視聴や検索の履歴などから「好きそう」と判断されるレコメンド情報に囲まれています。そのため、知らず知らずのうちに触れる情報が偏り、視野も狭くなりがちです。こうした状態で3年次からキャリア支援を始めても、学生に十分な学びや気づきを与えることは難しいのです。

―なるほど。継続的なキャリア教育にあたり、ほかにどのような取り組みがありますか

前田:学生のキャリア観を育む支援を組織的におこなうために、「キャリア形成支援委員会」を設置しています。主な業務は、BINGO OPEN インターンシップの企画・運営です。学部横断の組織で、14学科すべてから委員が参加しており、大学全体で学生一人ひとりのキャリア形成を支える体制を整えています。

香川:この委員会の実務を担う組織として、「自分未来創造室」があります。インターンシップの受け入れ企業との交渉・調整をおこなっているほか、インターンシップに関する相談対応などを通じて学生を支援。いつでも気軽に立ち寄れる雰囲気を大切にしながら、点と点ではなく、線でつながるキャリア支援を実現するための重要な拠点となっています。

前田:また、マイナビが提供する「適性診断MATCH plus」を導入し、学生一人ひとりが、インターンシップの体験を通じて自身の変化や成長を把握するきっかけとして活用できるようにしています。

▼適性診断MATCH plusの詳細はこちら
https://job.mynavi.jp/conts/2027/tab/v_shindan.html

「学び」や「仕事」に対する固定観念を払拭したい

継続的なキャリア教育を実践していく中で、どのような成果を実感していますか?

前田:共通の指標やフレームを用いて意見交換することの効果を強く感じています。例えば、社会人基礎力などの枠組みを共有することで、学生は自分と他者の考え方や発想の違いを捉えやすくなり、言葉にしにくい意見も表現しやすくなります。そうした対話を通して、自分にはない視点に気づき、それが学びを深め、行動の原動力にもなっているようです。

さらに、自身の経験や成長を「可視化」し「物語化」することで自己肯定感が高まり、行動の質や量の向上にもつながります。こうした学びの効果をさらに高めるため、自分のキャリア観を「可視化」できるオリジナルのツールも開発しています。その一つが「Career Design Tree」という、木の成長になぞらえて、自分の経験や価値観、将来像を整理できるようにしたもので、自分の成長を一目で実感できる設計になっています。

香川:「BINGO OPENインターンシップ」では、原則として企業の受け入れ期間を5日間以上としています。そうすることで、単なる職場見学では得られない学びや気づきが生まれ、学生・企業・大学の三者間で良好な関係を構築できるのです。

印象的だったのは、給与や休日よりも職場の心理的安全性が、企業選択の決め手になることです。社風を体感することで、学生は自分に合うかどうかを判断でき、思いがけない職種や企業が志望先に加わることもあります。

「BINGO OPENインターンシップ」の事前・事後学習はどのようなことをおこなっていますか

前田:事前学習では、成長の目標を明確にすることを重視しています。不安を解消し、ビジネスマナーを押さえ、伸ばしたいスキルを言語化して臨みます。インターンシップ期間中は、1日ごとの目標達成度を数値化して記録する独自のワークシートを活用し、自分の変化や成長に気づきやすくなるよう工夫しています。

事後学習では、ワークシートを使った振り返りやグループでの共有を通じて、他者の視点や受け取り方の違いに触れ、多様な考え方を学ぶ機会としています。自分ではネガティブに捉えていた経験も、同年代の学生の視点を通して見直すことで、前向きな意味を見出したり、視野を広げたりすることにつながっています。

香川:インターンシップは、社会からの率直なフィードバックを受け、自分の強みや課題に気づく場で、学生にとっても学びを深める大切な機会です。事前・事後研修を丁寧におこなうことで、「学びが深まった」「振り返りが有意義だった」との声も多く聞かれます。

現在のキャリア教育について、どのような課題を抱えていますか?

前田:最大の難しさは、学生が抱く「学び」や「仕事」に対する固定的な見方を広げることです。「学校はただ学ぶ場所」「大学を出ればいい会社に就職できる」「仕事はつらくて我慢するもの」といった考えは、これまでの教育環境や社会の仕組みの中で、知らず知らずのうちに身についてきた価値観だと言えるでしょう。

意識改革だけでそれを払拭するのは難しく、学生自身が成功体験や気づきを積み重ねながら、捉え方自体を段階的にアップデートしていかなければなりません。

香川:大きな課題は、学生の「インターンシップ=就職活動の手段」という意識をどう変えるかです。学生は企業の知名度や待遇、条件に注目しやすい傾向があります。だからこそ、一定期間じっくりと企業や仕事に向き合うプログラムの意義を、学生に丁寧に伝えていく必要があります。

働くことを前向きで楽しいものとして捉えてもらいたい

お二人が目指すキャリア教育のゴールを教えていただけますか

前田:学生には、仕事を「大変」「我慢するもの」とだけ捉える固定観念や先入観を払拭し、自分の関心や強みを活かせる場として再認識してほしいと考えています。

さらに、AIやデジタルサービスを「脅威」ではなく、自分らしさを広げる道具として使いこなせる力も身につけてもらいたいです。大人になることや社会に出ることに、少しでも夢や楽しさを感じながら、一歩を踏み出してほしいと思っています。

仕事は、単なる生計の手段ではなく、自己実現の舞台です。社会と関わりながら成長するプロセス自体に大きな価値があり、その過程を楽しみながら、自分にとっての幸せを見出していくことも大切だと考えています。

香川:少子高齢化が進む日本では、労働力人口の減少が深刻な課題となっています。その影響は、一人ひとりの負担や責任の重さとして、今後さらに増していくことが想定されます。だからこそ求められるのは、生きる力にあふれ、骨太で底力のある人材だと考えています。

私たちは、自ら考え、判断し、主体的に行動できる人材の育成に注力しています。そして、学生には働くことを前向きで楽しいものとして捉え、自分の人生や大切にしたい価値観を考えながら、AIやデジタルサービスを活用して自分らしいキャリアを描いてほしいと思っています。

また、地方には都市部とは異なる仕事のおもしろさや人との距離感、挑戦の機会があるので、その魅力にも目を向けてもらえるとうれしいです。

最後に、他大学の皆さまへメッセージをお願いします。

前田:社会の変化が激しい今、従来の価値観だけでは通用しない時代です。こうした状況では、大学教員も従来のやり方に固執していては対応できないと感じています。試行錯誤を重ねながら、教育内容や方法を見直すだけでなく、新たな実践を生み出していく必要があります。そのためにも、大学の枠を超えて連携し、情報共有しながら共に成長していけると幸いです。

香川:学生が一歩を踏み出し、社会と関わっていくためには、大学として支援できる環境を整えることが欠かせません。私たちは、学生が社会で自分らしく活躍できるように送り出す役割を担っています。挑戦の過程では、失敗したり、思い通りにいかなかったりすることもあるでしょう。

その際にはしっかりとフォローし、セーフティネットとして支えることが重要です。学生が安心して挑戦できる環境を整えることこそ、大学の果たすべき使命の一つではないかと考えています。

Editor’s Comment

今回は福山大学の香川先生、前田先生に取材しました。「インターンシップを就職活動の一環ではなく“教育”として位置づける」という理念のもと、SNSやAIの発達で受け身でも情報が得られる時代だからこそ、主体性を育てたいという強い思いが伝わってきました。多くの学生がインターンシップを通じて「思っていたことと違う」と気づきを得て、専門性の活かし方を再発見していく姿も印象的でした。自己肯定感の高くない学生もいる中、オリジナルのツールを使いながら、一歩を踏み出せる環境づくりを進める教職員と学生の一体感が印象的でした。
(マイナビ編集長:高橋)

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