TOP  /  大学事例  /  低学年キャリアデザイン賞|学生主体の学びとキャリアを育む「STEP Project」|神戸常盤大学

低学年キャリアデザイン賞|学生主体の学びとキャリアを育む「STEP Project」|神戸常盤大学

学生の社会的・職業的自立に貢献したインターンシップやキャリア形成支援の取り組みを表彰する「第9回 学生が選ぶキャリアデザインプログラムアワード」で、「低学年キャリアデザイン賞」を受賞した神戸常盤大学の「STEP Project」。教員や保育者を目指す学生が、低学年から自己理解を深めながら主体的にキャリアを考え、仲間と学び合う力を育むこのプログラムは、教職支援センターを「教えてもらう場所」から「自ら学ぶ場所」へと転換した点が高く評価されました。今回は、どのような想いでプログラムを立ち上げ、どのような工夫を重ねてきたのか。また、学生たちにどのような変化が生まれているのか、本プログラムを推進する教育学部こども教育学科の山下氏、田中氏にお話を伺いました。

Profile

山下 敦子 氏
神戸常盤大学 教育学部こども教育学科 教授
大阪市立小学校教諭、教育委員会指導主事、小学校教頭等を経て現職。国語教育、特別支援教育、教師教育を専門とし、学生指導や教職支援センターの運営に携わる。STEP Projectでは、学生への個別相談や面接指導など、一人ひとりの成長を支える伴走役を担っている。

田中 達也 氏
神戸常盤大学 教育学部こども教育学科 講師
小学校教諭等を経て現職。理科教育・科学教育・防災教育を専門とし、教育現場での経験を生かした教員養成に取り組む。STEP Projectでは、低学年からのキャリア形成支援やプログラム設計・運営を担当。学生が主体的に学び続ける環境づくりを推進している。

「教えてもらう場所」から「自ら学ぶ場所」へ

「第9回 学生が選ぶキャリアデザインプログラムアワード」の「低学年キャリアデザイン賞」の受賞、おめでとうございます。まずは、受賞された「STEP Project」について教えてください。

山下:ありがとうございます。STEP Projectは、教員や保育者を目指す学生が、低学年のうちから主体的にキャリアを考え、自ら学び続ける力を育むことを目的としたキャリアデザインプログラムです。

教員採用試験の合格を目指すだけであれば、試験対策を中心に行う方法もあります。しかし、私たちが育てたいのは、単に試験に合格する学生ではありません。「どんな先生になりたいのか」「子どもたちとどのように関わっていきたいのか」。その問いに向き合い、自分自身の成長を楽しみながら学び続けられる人材を育てたいと考えています。

田中:そのため、STEP Projectでは、知識を身につけることだけではなく、自分自身を知ること、仲間と学び合うこと、そして自ら行動することを大切にしています。

具体的には、自己理解を深めるプログラムから始まり、チームでの協働学習、さらに一人ひとりが主体的に学びを深めていく個別活動へと、段階的に成長できる三層構造のプログラムを設計しています。学生が「教えてもらう存在」から、「自ら学び、仲間と成長する存在」へ変わっていくこと。それがSTEP Projectの大きな特徴です。

STEP Projectは、どのような背景から生まれたのでしょうか。

山下:プログラムを始めたきっかけは、3年前に教職支援センターの体制が新しくなったことです。それまでの教職支援センターは、教員採用試験に向けた指導を受ける場所という位置づけが強く、学生にとっては少し敷居の高い存在でした。

そこで、「もっと学生が気軽に集まり、自ら学び合える場にできないだろうか」と考えたことが、STEP Projectのスタートです。当時は教員採用選考の日程が前倒しになるなど、教員を目指す学生を取り巻く環境も変化していました。

そうしたなかで、単に試験対策の開始時期を前倒すのではなく、低学年のうちからキャリアについて考え、主体的に学び続ける姿勢を育むことが必要だと考えました。

成長に合わせて更新し続ける三層構造の学び

STEP Projectの三層構造とは、具体的にどのようなことを実施しているのでしょうか。

田中:STEP Projectでは、まず学生に「自分を知ること」から始めてもらいます。教員や保育者を目指す学生は、「先生になりたい」という思いを持って入学してきますが、自分の強みや学び方を客観的に理解できている学生は多くありません。そのため、大学1年生からマイナビの「適性診断MATCH plus」などを活用し、自分の特性や強みを客観的に把握する機会を設けています。

▼適性診断MATCH Plusはこちら
https://job.mynavi.jp/conts/2028/tab/v_shindan.html

まずは自己理解からスタートするのですね。

田中:はい、診断結果を見て終わりではなく、「自分にはこんな強みがあるんだ」「こんな傾向があるんだ」と等身大の自分を知ることが目的です。自己理解が深まることで、主体的に学ぼうという意識も育っていきます。

山下:さらに、神戸常盤大学では大学1年生全員が「自分のトリセツ」を作成します。得意なことや苦手なこと、勉強方法、つまずいたときの乗り越え方などを整理し、一年間を通して何度も見直します。完成させることではなく、成長に合わせて更新し続けることを大切にしています。

自己理解の後は、どのような学びにつながっていくのでしょうか。

田中:次のステップでは、学生同士でチームを組み、協働で学びます。特徴的なのは、チーム編成も学生自身に任せていることです。「何を目的に活動するのか」「どんな仲間と学びたいのか」というところから学生自身が話し合い、一つのチームをつくっていきます。

私たちは答えを教えるのではなく、学生が自ら考え、仲間と学び合える環境を整える伴走者です。こうした積み重ねを通じて、自ら学び続ける力を育んでいきたいと考えています。

学びを積み重ね、自分の言葉で将来を語れるように

STEP Projectを通じて、学生にはどのような変化が見られましたか?

田中:大きく三つの変化を感じています。一つ目は、学生が自分の将来について、低学年のうちから具体的に考えられるようになったことです。入学当初は「先生になりたい」「子どもが好き」という思いを持っていても、その理由や、自分がどのような教員を目指したいのかまで言葉にできる学生は多くありません。

二つ目は、仲間と学ぶことで、不安を一人で抱え込まなくなったことです。キャリア形成は個人の課題と思われがちですが、実際には仲間と話すことで考えが整理されたり、「自分だけが悩んでいるわけではない」と気づいたりする場面がたくさんあります。

山下:採用試験が近づく頃には、それまで積み重ねてきた学習記録や、チーム内で交わしてきたメッセージを見返す学生もいますね。そこには、仲間と励まし合いながら学んできた軌跡が残っています。「ここまで積み重ねてきた」という実感が、本番に向かう自信につながっているのだと思います。

田中:そうですね。そして三つ目は、学びが「点」ではなく「線」になったことです。ポートフォリオなどを活用して、自分の成長や課題を継続的に記録し、振り返ることで、学生は一つひとつの経験を将来につながるプロセスとして捉えられるようになってきました。

教員採用試験や就職活動の直前になって慌てて自己PRを考えるのではなく、低学年から積み重ねてきた経験が、自分らしい言葉で将来を語る力につながっています。

山下:私たちが目指しているのは、採用試験の合格率だけを高めることではありません。学生一人ひとりが、自分の学ぶ意味や働く意味を見つけ、自分の言葉で将来を語れるようになること。それこそが、このプログラムの最も大きな成果だと考えています。

学生を真ん中に、一人ひとりのキャリアを支える

今後、STEP Projectをどのように発展させていきたいと考えていますか。

山下:教員や保育者を目指す学生にとって採用試験は大きな節目ですが、本当に大切なのは、その先にある「どんな教師になりたいのか」「子どもたちに何を届けたいのか」という意思を育てることです。

学生一人ひとりが自分なりの教育観を持ち、自ら学び続けられる人になってほしいと考えています。また、STEP Projectで得られる価値は、大学在学中だけのものではありません。ともに学んだ仲間や、困ったときに相談できる教員とのつながりは、卒業後も学生を支える大切な財産になります。

社会に出てから壁にぶつかったとき、「あの仲間に相談してみよう」「先生に話を聞いてもらおう」と思える存在がいることも、このプログラムが目指している価値の一つです。

田中:もちろん、学びを深めるなかで、教職以外の道を選ぶ学生もいます。その場合も、企業への就職を目指す学生のチームに加わり、それぞれの進路に応じた学びを続けられる仕組みを整えています。

教員になるかどうかではなく、一人ひとりが自分らしいキャリアを歩めるよう支えることが、私たちのキャリア支援です。これからも、教員養成という枠にとどまらず、「社会のなかで学び続け、自分らしく活躍できる人」を育てるプログラムとして、STEP Projectをさらに発展させていきたいと考えています。

最後に、他大学の皆さまへメッセージをお願いします。

田中:今回の取り組みを通して改めて感じたのは、キャリア支援は「出口支援」ではなく、学生の学びそのものを支える営みだということです。低学年では、早く進路を決めることよりも、自分を知り、社会を知り、仲間と関わりながら将来を考えていくことが大切だと思っています。

そのためには、大学がレールを敷くのではなく、学生が真ん中にいるプログラムをつくることが大切です。学生自身が考え、選び、成長できる環境をつくることが、これからのキャリア支援に求められているのではないでしょうか。

山下:キャリア支援は、一部の担当者だけで完結するものではありません。授業やゼミ、実習、学生支援、地域との連携など、大学全体で学生の学びを支えていくことが大切だと思っています。

また、教員として知識を伝えるだけではなく、ともに歩み、支え、そして自らも学び続ける存在でありたいと考えています。今回の受賞を一つの到達点ではなく、全国の皆さまとともに、低学年からのキャリア教育のあり方を考えるきっかけにできればうれしいです。

Editor’s Comment

神戸常盤大学教育学部こども教育学科の山下先生、田中先生にお話を伺いました。STEP Projectは、低学年の学生が抱える「将来像を具体的に描けない」「現場を知らないまま進路を決めることへの不安」といった課題に真正面から向き合い、初年次から段階的かつ継続的にキャリア形成を支援している点が印象的でした。
特に、授業と課外活動、大学と地域、個人とチームをつなぎながら、学生主体で学びを深める仕組みが丁寧に設計されており、「知らないことへの不安を、知ることの喜びへ変える」という理念がプログラム全体に貫かれています。
また、ポートフォリオや日常的な伴走支援を通じて、学生一人ひとりの成長を可視化しながら支えている点にも大きな意義を感じました。低学年支援においては、きっかけづくりだけでなく、学び続けられる環境づくりが重要です。
STEP Projectは、学生が仲間や地域との関わりの中で自らの進路に納得感を持ち、将来を主体的に選択する力を育む優れた実践であると感じました。
(キャリアデザインプログラムアワード 実行委員長:久保)

「マイナビキャリアサポート」は
キャリア支援・就職支援に関する総合情報サイトです

長い学生生活の出口で、学生たちを社会へと送り出す。その大きな役割と責務を担っている皆さまに寄り添い、活用いただける情報をお届けするため、2022年にサイトをリニューアルいたしました。
より良いキャリア支援・就職支援とは何か。答えのないその問いに対して、皆さまの学生支援のヒントとなるような情報をお届けして参ります。

大学事例 - ページ一覧

  1. 文部科学大臣賞|教員主導のインターンシップをゼロから構築|ノートルダム清心女子大学
  2. 大学事例|留学を未来につなぐ支援が、キャリアを描く力になる|名古屋外国語大学
  3. 大学事例|学生同士が学びをつなぐ“循環型のキャリア支援”|北海学園大学
  4. 低学年キャリアデザイン賞|学生主体の学びとキャリアを育む「STEP Project」|神戸常盤大学
  5. 大学事例|少人数制のキャリア教育で学生の可能性を広げる|大阪経済大学
  6. 大学事例|低学年からの体系的支援で、学生一人ひとりに納得感のある進路選択を|神奈川大学
  7. 大学事例|低学年次からの企業交流でキャリア形成の質を高める|岐阜協立大学
  8. 大学事例|学年横断型のキャリアデザイン教育で学生の意識変革を促進|愛知学院大学 薬学部
  9. 大学事例|前例のない学部が挑むのは学び続ける力の育成|滋賀大学
  10. 大学事例|教職員や学内外と連携するキャリア支援の形|松山大学
  11. 大学事例|継続的なキャリア教育で「生きる力」を育む|福山大学
  12. 大学事例|講義×キャリア教育で自ら考えて主体的に行動できる「人間をつくる」|明治大学文学部
  13. 大学事例|低学年から選択肢を広げ納得ゆく進路を選べるように|国際医療福祉大学 薬学部
  14. 大学事例|2週間の海外インターンシップの経験が学生を大きく成長させる|福井工業大学
  15. 大学事例|自ら学ぶキャリア学習で社会を読み解く力を育む|山口大学
  16. 文部科学大臣賞|地域の人たちとともに感覚と憧れも育てる実践的キャリアプログラム|三条市立大学
  17. 低学年キャリアデザイン賞|働く×暮らす 地域と学ぶ三大学連携の実習|駿河台大学・岩手大学・横浜国立大学
  18. 大学事例|データ活用で行動を生む新しいキャリア支援のかたち|大東文化大学
  19. 大学事例|学部から博士まで一貫した支援が育むのは未来を自分で選べる力|北海道大学
  20. 大学事例|自分で考える思考習慣の積み重ねが未来を描く鍵になる|琉球大学
  21. 大学事例|進路について考える力を一歩ずつ育てる綿密に設計された支援とは|秋田県立大学
  22. 大学事例|「ふくやくプロジェクト」が描く薬学部キャリア教育の新しい形|福岡大学 薬学部
  23. 大学事例|地域に根付いた大学だからこそ地域で活躍する人材を|愛知大学
  24. 大学事例|自律と五感を大切にする対面主体のサポートでニーズに応え続ける|獨協大学
  25. 大学事例|アントレプレナーシップ育成で自らキャリアを考えデザインできる力を養う|叡啓大学
  26. 大学事例|学生の主体性を磨く新たな秘策はキャリアの最初の一歩になる|麗澤大学
  27. 大学事例|強みを活かした多彩なイベントが学生に新たな選択肢を与える|東北医科薬科大学
  28. 大学事例|理論と実践を重ね自分の人生を自分で創造する力を養う|大阪大学
  29. 大学事例|低学年からの徹底したマインドセットが未来を大きく変える|龍谷大学
  30. 大学事例|薬学系の進路が増えるなか学生の視野と可能性を広げることが大切に|横浜薬科大学