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大学事例|データ活用で行動を生む新しいキャリア支援のかたち|大東文化大学

8学部20学科を擁する総合大学で、社会で活躍できる人材育成に注力してきた大東文化大学。コロナ禍を経て就職活動のスタイルが大きく変化するなか、大東文化大学キャリアセンターはマイナビとのデータ連携を活かし、学生の行動を生むキャリア支援に挑戦しています。学生の行動量やエントリー先の変化を可視化することで、どのような変容が起きているのか。今回は、この取り組みの背景やその成果についてキャリアセンター所長の細田氏と、キャリアセンターの栗林氏にお話を伺いました。

Profile

細田 咲江 氏
大東文化大学 キャリアセンター所長 / 国際関係学部教授
大学卒業後、キャリアコンサルタントとして実務経験を重ね、自ら会社も経営。2018年からは大東文化大学の国際関係学部で教授として教壇に立ち、キャリアデザインや問題解決学などのキャリア教育の授業を担当する。また、キャリアセンター所長も務め、大学全体のキャリア施策の構築やマネジメントも行っている。

栗林 凌平
大東文化大学 キャリアセンター
2019年に学校法人大東文化学園入社、キャリアセンターで一貫してキャリア支援に携わる。主に3年生向けガイダンス、合同企業説明会、4年生の進路調査を担当し、学生の状況に応じた支援を構築。

就職率だけではなく納得のファーストキャリアを目指す

まず、キャリア支援を行うにあたって、貴学のキャリアに対する考え方から教えてください。

細田:大東文化大学では、キャリア支援とキャリア教育を分けずに、学生一人ひとりに包括的に届けることを大切にしています。キャリア支援の施策は実施して終わりではなく、必ず振り返りを行い、根拠をもって改善することを心がけています。

栗林:特にコロナ以降は就活様式が大きく変化し、支援のあり方そのものを見直す必要がありました。そこで約3年前から、学生の行動をデータで可視化し、卒年ごとの特徴や行動量を比較したうえで、各種行事やガイダンスの内容、次年度の設計に反映する取り組みを実施しています。マイナビのデータや学内アンケートを活用し、学内外での学生の動きや状況を把握した上で、検証と改善を重ねながら、学生が主体的に将来を考えられる環境づくりを進めています

細田:こうした姿勢は、単に就職率を高めるためではありません。私たちは、学生自身が納得感を持って選択できるファーストキャリアを実現することが最も重要だと考えているのです。そのために、教育と支援を一体化し、学生の成長過程に寄り添いながら支える。この考え方こそが、大東文化大学キャリアセンターの根幹となっています。

エントリーワークで生まれたリアルタイムの行動変化

具体的な取り組みについて教えてください。

栗林:今年度からインターンシップガイダンス内で「エントリーワーク」という取り組みを始めました。これまでのガイダンスでは学生にエントリー方法の説明と企業紹介を行い、実際のエントリーはガイダンス後に学生自身で行うという内容でした。しかし、それだけではエントリーという具体的な行動を起こせていないことが、マイナビから提供されたデータなどから確認できたため、今年度からはガイダンス中にその場でエントリーやインターンシップの申し込みまで行うような仕掛けを考え実施しました。

具体的には、多数の本学卒業生が長く在籍し活躍している企業、給与・福利厚生が充実している企業の中から、ガイダンス中にその場でインターンシップの参加を確定することができる50社を厳選、プログラム内容を事前に把握したうえで、学生からの質問に即答できるように準備しました。

その上で、これまでは単純に企業紹介に留めていたのを、学生の希望や興味に応じて、それに合致する企業を具体的に紹介していく方式に変更しました。ガイダンス中に学生から希望業界などをヒアリングし、「金融業界を志望しています」や「営業の仕組みが知りたい」という要望に対し、「それなら、この企業にこのようなプログラムがあります」とその場で紹介していきました。

すると、質問者だけでなく周囲の学生にも情報が共有され、その場でエントリーやインターンシップへの申し込みという行動につながり、学生のニーズに合ったリアルタイムでの情報提供が行動を後押しする結果となりました。4月は全体の初動強化、6月は参加確定社数の増加、8月は未行動層のサポートなど、時期や学生の状況に合わせて目的を変えて実施しました。

細田:大東文化大学では素直で実直な人柄の学生が多い印象があり、自身に適切な企業を紹介されると自ら動く力を持っていると感じます。そのため、私たちが行うのはデータをもとに選択肢を示すことです。視野を広げるきっかけを与えられれば十分だと考えています。

ただ、そのきっかけ作りが後回しになってしまうと、一歩を踏み出すのが難しくなります。だからこそ、ガイダンスの場で即座に行動につながるような工夫をしています。ちなみに、学生の視野を広げるために、キャリアセンターの職員が数百社にもなる企業情報を学び、学生からの質問に的確に答えられる体制も整えています。

―なるほど。実際にどのような成果や効果を感じていますか。

栗林:4月のイダンス直後には、1日約1,300件のエントリーを促すことができました。さらに月次のエントリーランキングを見ると、昨年度までは大手企業が中心でしたが、今年度はエントリーワークで紹介した多数の本学卒業生が長く在籍し活躍している企業やBtoB企業が上位に並ぶようになりました。学生自身では見つけることが難しい企業へ4月、5月の早い段階から目を向けられるようになったのは大きな変化だと感じています。

細田:実は、この取り組みを行う前までは、大東文化大学の学生は他大学と比べて動きが2か月ほど遅れる傾向がありました。そう考えると、学生たちの行動の底上げにもつながっていると思います。また、学生の行動状況を数字で示せるようになったことで、教員や学内の理解を得やすくなることにもつながりました。職員にとっても、自分たちの努力が目に見える成果となって現れることで、モチベーションになっていると感じます。

社会に触れ自分を知る低学年は耕す時期

ちなみに、低学年に向けてのキャリア支援はどのようなことを行っていますか?

細田:低学年では、基盤づくりに力を入れることが重要だと考えています。1年次は大学生活に慣れ、自分の価値観や強みを整理する時期。2年次は視野を広げ、社会への関心を少しずつ育てていく段階だと捉えています。

そうした土台が整っていれば、3年次に自分は何をしたいのか、どのように社会と関わりたいのかという答えが見えやすくなります。実際に、授業ではPBLなども導入し、仲間と協力しながら課題に取り組む中で、自己理解と社会理解を深める機会を提供しています。

栗林:いきなり就職活動の知識やテクニックを詰め込むのではなく、学生生活や学びの基盤を築き、社会への関心を高めた上で行動に移すという自然なステップを踏むことを大切にしています。1、2年生で自分を知ることと社会に触れることをバランスよく経験しておくことで、3年生以降のキャリア形成へスムーズに移行できると考えています。

細田:だからこそ、低学年での基盤づくりが3年次の支援施策の成果につながります。事前に自己理解や関心の軸が育っていれば、ガイダンスやインターンシップも、ただの経験で終わらず、自分のキャリアにどう結びつくのかを考えながら行動できるようになります。この基盤から実践へという流れが、大東文化大学のキャリア教育の大きな特徴だと思います。

視野を広げその後の行動につながる仕組みづくり

今後の課題についても教えていただけますか?

栗林:学生自身が自律的にキャリアを形成していくことだと考えています。そのためにも、マイナビのデータを活用しながら学生の行動を把握し、データから読み取ることができる学生のニーズや状況に合った情報提供をすることで学生自身が進路を選択するためのきっかけを作る必要があると思います。

他大学や企業との連携を広げ、新しい知見や仕組みを取り入れることで、支援の質をさらに高めていければと思っています。

最後に、他大学の皆さまへメッセージをお願いします。

栗林:私たちは、社会の中核として活躍できる進路選択、特にファーストキャリアを大切にしています。学生が自分の選択に納得できるよう、大学・企業・マイナビの三者が連携して支援することが不可欠だと思います。今回のような取り組みの事例を共有することで、現場全体の支援の質向上につながれば嬉しいです。

細田:私たちも決して余裕があるわけではありませんが、マイナビのような外部の力を借りながら効率的に支援を続けています。人数や時間が限られていても、工夫次第で成果は出せるということをぜひお伝えしたいです。大学同士で知見を共有しながら、学生のキャリアを共に支えていければと思います。

Editor’s Comment

今回は大東文化大学のキャリアセンター所長の細田教授とキャリアセンターの栗林様に取材させていただきました。今、キャリア支援に携わっている多くの方々が「これからの時代のキャリア支援はどうするべきか?」と模索されているのではないかと思います。マスの支援から個の支援へ。キーとなるのは情報やデータの活用だと考えています。大東文化大学は、マイナビの各種データを目標設定などに活用いただいていました。さらに、学生の視野を広げ「納得」できるキャリア選択ができるよう、インターンシップガイダンスではその場でエントリーまで完了できる企業を50社用意したり、キャリアセンターの職員が数百社の企業情報を学んでいる点には驚きました。
(マイナビ編集長:高橋)

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