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大学事例|オンラインの特性を生かし、学生の主体的なキャリア形成を支援|ZEN大学

2025年に開学した、オンラインで学べるZEN大学。唯一の学部である知能情報社会学部では、特定の学問領域にとらわれない多様な学びを通じて、AI時代を生きるうえで必要となる知識やリテラシーを身につけることができます。キャリア支援では、大学1年生から専任のキャリア・アドバイザーが学生に伴走。動画やeポートフォリオなどのデジタルツールを活用しながら、学生が自ら将来を考え、経験を言葉にするための支援をしています。また、企業や地域との連携、低学年の学生も参加しやすいイベントを通じて、多様な仕事や社会に触れる機会を提供しています。今回は、オンラインの特性を生かした学生一人ひとりに寄り添うキャリア支援の取り組みについて、キャリアサポートセンターの矢﨑氏と宮内氏にお話を伺いました。

Profile

矢﨑 夏浩 氏
ZEN大学 キャリアサポートセンター センター長
人材・HR Tech業界で幅広い経験を積み、スタートアップなどを経て入職。「個人の『はたらく』をアップデートする」をテーマにHR領域に携わる。大学の立ち上げにあたっては、キャリアサポートセンターの組織づくりや個別支援制度などの設計を主導。低年次から学生に伴走するキャリア支援体制を構築した。

宮内 知治 氏
ZEN大学 キャリアサポートセンター キャリアフロンティア課 課長
新卒で私立大学に入職し、教務や就職支援を経験。2024年にZEN大学へ着任し、キャリアサポートセンターの立ち上げメンバーとして、支援体制の構築やイベントの企画、企業との連携などを担当。「ZEN大学キャリア万博」をはじめ、学生が多様な仕事や社会とつながる機会をつくり、学生と企業とのより良い出会いを生み出す環境づくりに取り組んでいる。

将来のキャリアを考える機会を、大学1年生から提供

―まず、注力されているキャリア支援の取り組みについて教えてください。

矢﨑:キャリア支援体制を構築するにあたっては、「内発的な動機に基づく進路選択」「自己効力感の醸成」「人とのつながり」の3つを軸にしました。その実現に向けて、大学1年生から大きく3つのキャリア支援の取り組みを進めています。

1つ目は、専任のキャリア・アドバイザーによる個別サポートです。学生一人ひとりに担当のキャリア・アドバイザーがつき、オンライン面談などを通じて、自身の将来について考える機会を提供しています。卒業後の進路に限らず、大学での学びや学生生活についても気軽に相談できる体制を整えています。

2つ目は、eポートフォリオ「マイステップ」を活用した、経験の言語化です。学業や課外活動、制作物などを記録するとともに、その経験を通じて何を感じ、何を学んだのかを振り返ってもらいます。経験を自分の言葉で整理することにより、自己理解を深め、将来について考えるきっかけにつなげています。

3つ目は、仕事や社会に触れる機会の提供です。オープン・カンパニーやインターンシップ、企業連携プログラムなど、年間100件以上の機会を用意しています。また、これまでに大学として900社を超える企業と接点を持ち、学生が幅広い仕事や働き方を知ることができる環境づくりを進めてきました。

宮内:こうした機会をつくるうえで、各種イベントの企画・運営を担当する私は、低学年の学生も参加しやすい場にすることを意識しています。

例えば、「ZEN大学キャリア万博」は就職活動だけを前面に出したイベントではありません。「就職」という言葉に対して、「自分にはまだ早い」「何か準備してからでなければ参加できない」と感じる学生もいるからです。

そこで、就職活動に限定せず、「キャリア」を大学での学びや課外活動、アルバイトなども含む幅広いものとして捉えています。企業や社会人との出会いを通じて、さまざまな仕事や働き方を知り、自分の将来について考えるきっかけにしてもらいたいと考えています。

「経験」と「言語化」を重ね、進路を考える土台をつくる

―大学1年生からキャリア支援をする理由や、その背景を教えてください。

矢﨑:オンラインを中心とする学修環境では、通学制の大学と比べて、キャンパス内で先輩や友人と偶然出会い、進路に関する情報や刺激を得る機会が生まれにくいです。

だからこそ、大学側が意識的に人や社会との接点をつくり、学生が自身のキャリアについて考えるきっかけを届ける必要があると考えています。

宮内:キャリアについて考えることは、就職活動の準備を始めることと同じではありません。自分が何に関心を持ち、何を得意とし、どのようなことを大切にしたいのかは、すぐに答えが出るものではないからです。

そのため、大学1・2年生からさまざまな仕事や生き方に触れ、自分の視野を広げてほしいと考えています。学生が自分の興味や得意なことに少しずつ目を向け、将来の進路を主体的に考えるための土台をつくることが、低学年から支援をする目的です。

―キャリア支援をするうえで、特に大切にされていることは何でしょうか?

矢﨑:「経験」と「言語化」を、キャリア支援における重要な要素と考えています。学生はさまざまな経験を通じて、自分の得意なことや苦手なこと、関心を持てることに気づいていきます。ただし、経験を重ねるだけでなく、そのときに何を感じ、何を学んだのかを自分なりに整理することも大切です。

例えば、大学1年生の夏休みに行ったことや、そこで感じたことも、時間がたてば忘れてしまうかもしれません。そこで、eポートフォリオ「マイステップ」に記録し、「あのときに何をして、どのように感じたのか」を振り返ります。

経験を言葉にすることで自己理解を深め、自分の内側から生まれる関心や価値観をもとに、進路を選ぶための軸をつくっていきます。

宮内:学生には、失敗を恐れず、さまざまなことに挑戦してほしいと思っています。インターンシップでも、地域での活動でも、アルバイトでも構いません。

期待していた結果にならなかった経験や、「思っていたことと違った」という気づきにも意味があります。実際にやってみたからこそ、自分に合うことや合わないことが見えてくるからです。

矢﨑:そうした経験を自分の言葉で振り返ることで、「自分にはこのようなことができる」「自分はこういうことに関心がある」と、少しずつ自信を持てるようになります。学生の自己効力感を育むことも、キャリア支援の大切な役割だと考えています。

動画・デジタルツール・AIを活用し、「参加したくなる」支援へ

―オンライン大学ならではの難しさや、それを補うための取り組みを教えていただけますか。

矢﨑:難しさは、学生が意識しなくても自然に情報を受け取れる場面が少ないことです。大学側が一方的に情報を届けるだけでは、学生の行動にはなかなかつながりません。そこで、まずは興味を持ってもらい、次の一歩を踏み出すきっかけをつくることを意識しています。

動画コンテンツも、その一つです。好きな時間に、好きな場所で学べるオンライン大学の特性を生かし、職員がコント形式でインターンシップを紹介するなど、学生が楽しみながら情報を得られる内容を制作しています。

単に制度や参加方法を説明するのではなく、「少し見てみたい」「参加してみたい」と思ってもらえる伝え方を工夫しています。

宮内:キャリアサポートセンター主催のイベント「ZENキャリ クエスト」も、低学年の学生が参加しやすい場をつくりたいという考えから生まれました。

学生にとって少し堅く感じられがちな自己分析を、ゲームのように楽しみながら進められるプログラムにしています。コミュニティーのなかで冒険し、段階的にレベルアップするような設計にすることで、自分について考えることへの心理的なハードルを下げています。

また、オンラインコミュニティーには現在、キャリアに関心を持つ600名以上の学生が参加しています。学生同士の交流については、今後さらに活性化していく余地がありますが、まずは共通の関心を持つ学生が集まれる場をつくれたことに意義を感じています。

矢﨑:職員側でも、オンライン環境を活かした仕組みづくりを進めています。キャリア・アドバイザーの好事例を個人の経験で終わらせず、共有・再現できるようにし、現在はボット化して他のアドバイザーも検索できる仕組みを構築しました。 

宮内:AIも日常的に活用し、イベントの企画やスライド作成などはもちろん、自己分析等に用いる学生向けのプロンプトの作成などに役立てています。一方、AIが示した内容をそのまま答えとするのではなく、「なぜそう思うのか」「背景にどのような経験があるのか」と、人との対話を通じて深掘りできるように設計しています。

テクノロジーを活用して効率化できる部分は効率化しながら、最後は人が学生に寄り添い、ともに考える。その組み合わせを大切にしています。

―大学1年生からのキャリア支援を通じて、どのような成果が生まれていますか?

矢﨑:初年度の任意面談の実施件数は1,826件となり、担当キャリア・アドバイザーが接点を持った学生は2,830名にのぼりました。

eポートフォリオ「マイステップ」には、社会人学生を除く学生の約8割にあたる2,733名が初年度時点で記入しています。こうした数字からも、大学1年生からキャリア支援の機会を活用し、自身の経験や将来について考えている学生が一定数存在することがわかります。

今後は利用件数だけでなく、面談や振り返りを通じて学生の意識や行動にどのような変化が生まれたのかも、丁寧に捉えていきたいと考えています。

宮内:開学2年目の今年6月に実施した「ZEN大学キャリア万博」には、延べ784名が参加しました。まだ大学3年生の学生が在籍していない段階で、多くの学生が企業や社会人との交流イベントに参加したことは、自身のキャリアについて考える関心の表れだと受け止めています。

参加後のアンケートでは、参加者の97%がインターンシップへの参加を検討したと回答しました。企業の担当者からも、「自ら発信する力がある」「アウトプットする力が高い」「IT領域への適応力がある」「オンラインでのコミュニケーションに慣れている」といった声をいただいています。

こうした声も今後の支援や教育へ還元し、学生が自身の強みや課題を考える材料として生かしていきたいと思います。

内定を得ることをゴールとせず、その先のキャリアを考える

―今後のキャリア支援について、どのような展望を描いていますか?

矢﨑:来年には一期生が大学3年生を迎え、卒業後を本格的に考え始める時期となります。一人ひとりの進路希望や現在の状況を個別に確認していきたいと考えています。就職だけでなく、進学や起業など、多様な進路に対応できるコンテンツも用意する予定です。

また大学2年生が大学1年生へ、大学3年生が大学2年生へ、自分が何に悩みどのように乗り越えたのかを伝えるなど、学年を超えた情報共有も進めていきたいと思っています。

オンライン中心の環境だからこそ、学生同士のつながりが自然に生まれるのを待つだけではなく、先輩の経験を後輩へつなぐ機会を意識的につくることが重要だと考えています。

宮内:私たちが目指しているのは、内定を得ることだけをゴールにしないキャリア支援です。学生が自分自身の経験や自己理解をもとに、「なぜこの仕事を選ぶのか」「なぜこの企業に関心を持ったのか」を考え、納得感を持って進路を選べるようにしたいと思っています。

そのためには、企業との接点を増やすだけでなく、学生がこれまで知らなかった企業や業界と出会える仕組みも必要です。「ZEN大学キャリア万博」では、学生による自己理解の内容と企業情報を組み合わせ、AIが「このような企業にも目を向けてみてはどうか」と提案する取り組みも行いました。

AIが進路を決めるのではなく、自分の興味や経験を起点として、これまで知らなかった選択肢に気づくために活用しています。学生が大学生活のなかで多様な企業や働き方を知り、将来の可能性を広げていけるようにしたいと考えています。

―最後に、他大学の皆さまへメッセージをお願いします。

矢﨑:オンラインで学生の行動を促していくためには、イベントや動画など、多くの学生へ一斉に届ける支援だけでなく、一人ひとりへの個別の働きかけも欠かせません。そのため、個別支援をどのように仕組み化するかが重要です。

一方で、すべてを人の力だけで行うには限界があります。動画やeポートフォリオ、AIなどを活用できる部分ではテクノロジーを採り入れ、その分、人にしかできない対話や伴走に力を注ぐことが大切だと考えています。また、職員が自由にアイデアを出せるよう、キャリアサポートセンターではブレインストーミングの機会も多く設けています。

役職や立場にかかわらず意見を出し合い、新しい取り組みにつなげていく。職員自身が自由に発想し、挑戦できる環境をつくることも、キャリア支援を充実させるうえで不可欠だと感じています。

宮内:私は以前、通学制の大学でキャリア支援に携わっていました。対面には対面ならではの良さがありますが、対面で行っていたことを、そのままオンラインへ置き換えればよいわけではありません。大切なのは、「オンラインで同じことをする」のではなく、「オンラインだからこそ何ができるのか」を考えることです。

好きな時間に見られる動画、場所を問わず参加できるイベント、AIを活用した自己理解の支援、全国の企業や社会人との接点など、オンラインにはさまざまな可能性があります。

その特性を生かす一方で、学生一人ひとりに寄り添う姿勢を忘れないことも重要です。テクノロジーと人、それぞれの強みを組み合わせることが、これからのキャリア支援には欠かせないと考えています。

Editor’s Comment

今回の取材では、すべての質問に明快かつ熱意を持ってお答えいただき、部署としてのミッションやKGI・KPI、学年ごとの施策方針までが体系的に設計されていることが印象的でした。
オンライン大学でありながら、学生を孤立させず成長を支える仕組みづくりに注力されており、全国の自治体・企業と連携した多様な体験機会に加え、キャリア万博やゲームの世界観を採り入れたコンテンツも充実しています。
一方で、年間1,800件を超える面談や専任のキャリア・アドバイザーによるサポートなど、人による丁寧な伴走支援も徹底されています。テクノロジーと伴走支援を両立しながら学生の自走力を育む取り組みは、これからのキャリア支援の新たなスタンダードを示しているように感じました。
(マイナビ副編集長:谷口)

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大学事例 - ページ一覧

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  2. 文部科学大臣賞|教員主導のインターンシップをゼロから構築|ノートルダム清心女子大学
  3. 大学事例|留学を未来につなぐ支援が、キャリアを描く力になる|名古屋外国語大学
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  5. 低学年キャリアデザイン賞|学生主体の学びとキャリアを育む「STEP Project」|神戸常盤大学
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