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望ましい初期キャリアを獲得するためにキャリア・就職支援担当者ができることは?ポイントを解説

望ましい初期キャリアを獲得するためにキャリア・就職支援担当者ができることは?ポイントを解説

最初に就く仕事(ファーストキャリア)はその後のキャリアにも影響があるといわれています。一方で「3年3割」と言われるように、大学を卒業してから3年以内に3割が離職するというデータも出ています。

この記事では、学生が望ましい初期キャリアを獲得するためにキャリア・就職支援担当者ができることについて解説します。

「3年3割問題」の実状

厚生労働省では毎年、「新規学卒者の離職状況」として、学歴別に卒業後3年以内の学卒者離職率を公表しています。昭和62年から令和5年までの離職状況は以下のとおりです。

新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)

引用:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)」

景気の波や社会情勢の影響があったとしても、大卒者の離職率はこの25年ほど、おおむね3割程度で推移している状況です。

こうした若者の早期離職は「3年3割問題」と呼ばれています。

初期キャリアの醸成プロセスと支援で意識したいポイント

マイナビの「2025年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(11月)」で、「ファーストキャリアで人生の何割が決まると思うか」0~10割の10段階で聞いたところ、「7割(21.6%)」が最多で、5割以上の回答を合算すると78.5%になりました。

学生自身、「ファーストキャリアで人生の半分が決まる」と考える人が多く、入社後3年程度の初期キャリアの獲得を重要視していることがわかります。

参考:株式会社マイナビ「マイナビ 2025年卒大学生 インターンシップ・就職活動準備実態調査(11月)

では学生にとって望ましい初期キャリアとは、どのような状態を指すのでしょうか。

公益社団法人全国求人情報協会によると、「本人が納得のいくキャリアを作り上げていくために必要な考え方や姿勢が備わっている状態」としています。

具体的には、数ある選択肢の中から自分に合った道を見つけるだけでなく、その道を進むために自ら調べたり、周りに聞いたりするなど、主体的に行動していくことです。
社会に出てから自律的にキャリアを重ねていくための基盤にもなるだけでなく、納得感や活躍している実感を持って働く原動力にもなります。

また、同協会によると、望ましい初期キャリアは「学生生活」「就職活動」「入社後の配属や定着」の各プロセスで醸成されるとしています。

ここからは、そのなかでも大学がサポートできる「学生生活期間」と「就職活動期間」において、キャリア・就職支援担当者が意識したいポイントを見ていきます。

参考・引用:公益社団法人全国求人情報協会「若者の就職・転職の在り方に関する研究会」調査結果「若者にとって望ましい初期キャリアとは~調査結果からみる”3年3割”の実情~」(2018年10月リリース)

学生生活期間でのポイント

まずは、学生生活期間におけるポイントを見ていきましょう。

入学時のキャリア意識

最初に挙げられるのは、「大学入学時のキャリア意識」です。

大学や学部といった進路を選択する際、卒業後に就きたい仕事を考慮していれば、それだけ早い時期から自らのキャリアを意識することができます。

はじめに紹介した「若者にとって望ましい初期キャリアとは」調査によると、 大学進学時に卒業後の就業を「考慮した」人のほうが初期キャリアの満足度が高いという結果が得られています。もちろん、入学時にやりたいことや就きたい仕事が明確になっている必要はありません。ぼんやりとでも、大学や学部での学びがどのような仕事に活かせるかを考えておくだけで今後のキャリア形成によい効果をもたらしてくれるでしょう。

低学年でのキャリア教育経験の有無

低学年時にキャリア教育を受けていたかどうかも重要な要素です。就職活動が本格的にスタートする3年生より前に自らのキャリアを考える機会を持てるためです。

実際、「若者にとって望ましい初期キャリアとは」調査によると、初期キャリア満足度の高い人は、低学年のうちにキャリア教育を受けているということがわかりました。
具体的には、「必修のキャリア教育授業」・「選択制のキャリア教育授業」・「キャリアセンター主催の正課以外のキャリア講座」が挙げられています。

特にキャリアセンターが主催するガイダンスなど、正課外の講座を主体的に受講することは「自分のキャリアについて考える機会を自らの意思で得る」という観点から考えると、必修科目や選択科目の授業を受けること以上に効果的だと考えられます。

学生の悩みや課題に応じてイベントの案内や講座の紹介をしてみるとよいでしょう。

学生自身の活動の幅

学生自身が積極的に活動の幅を広げることも、望ましい初期キャリア獲得につながります。

「若者にとって望ましい初期キャリアとは」調査では「ボランティア活動」や「インターンシップ」、「海外留学」など正課外の活動を積極的におこなった人のほうが初期キャリアの満足度が高い傾向にある、という結果が出ています。

正課外の活動を通じて日常では味わえない体験をすることは、学生自身に自信をもたらし、成長につながるでしょう。また、さまざまな物事や価値観に触れることで、職業観の醸成にもつながると考えられます。

「自分にできるかわからない」「挑戦しても失敗しそう」となかなか行動に移せていない学生もいるかもしれません。その場合、前向きに取り組めるように「失敗しても自己成長につながる」と声をかけたり、学内の説明会やイベントを紹介したりして学生の背中を押してあげましょう。

就職活動期間でのポイント

次に、就職活動期間における3つのポイントを紹介します。

就職先を決めるうえで重視する項目

「就職先を決めるうえで重視する項目」も、望ましい初期キャリアの獲得に影響があります。

就職先を決めるにあたって、給与や休日、福利厚生などの条件面は大切です。
しかしそれだけで就職先を決めてしまうと、自分に合っていない仕事に就業する可能性もあり、ミスマッチになりかねません。
だからこそ自分とマッチした就職先なのかを吟味する必要があります。

具体的には、社会的意義や能力発揮、さらには働くうえでの評価制度や教育・研修制度、自分自身のやりがいにつながる項目など、いわゆる自分にとっての「就職活動の軸」を明確にすることが大切です。

そのためには、学生自身に自分の価値観を知ってもらい、3年後・5年後になりたい姿をイメージしてもらうよう働きかけることが求められます。

就職先の選択肢の広さ

選択肢を広く持って就職先を選ぶことも、望ましい初期キャリアの獲得につながります。最終的に就職先を決めるうえで、納得感が高まるためです。

「就職先を決めるうえで重視する項目」を複数持つことはもちろん、インターンシップへの参加や幅広い業界・企業の研究など、多角的な視点で就職先を検討していけるようサポートしていくことが大切です。

働くことへの意識

「働くことに対する意識の有無」も、望ましい初期キャリアを獲得するうえで必要な要素の一つです。
生きがいや社会貢献、自分の才能・能力を発揮するといった「働く目的」がある人のほうが、目的意識がない人よりも自律的なキャリア形成ができる可能性が高まります。

そのためにも、高い満足度で就職活動を終えられることも大切です。
「就職活動を通してなりたい自分が見つけられた」などの実感が、働く目的を持つことにつながります。

キャリア・就職支援担当者は面談などを通して学生が「働く目的」を見出せるように言語化をサポートするほか、就職活動を妥協して終わらないように定期的に対話をするなど、学生に寄り添った対応が必要になるでしょう。

理想的な初期キャリアを築くためには?

ここまで、学生が望ましい初期キャリアを獲得するために必要な醸成プロセスとプロセスごとのポイントを見てきました。

では学生が望ましい初期キャリアを築くにはどうすればよいのでしょうか。

公益社団法人全国求人情報協会によると、望ましい初期キャリアを築くためには、醸成プロセスを通して「自己理解」「仕事理解」「キャリア積極性」を身に付けていくことが重要であるとしています。

「自己理解」は自分の興味関心の方向性や能力、強み、適性、価値観、人生観など自分自身について理解することです。
「仕事理解」は仕事内容や社会との関わり方などを含め、仕事をするうえでの目的・目標などを理解しているかどうかを指しています。
「キャリア積極性」は自分が理想とする姿になるために、主体的に取り組む意識を持ち、行動できるかにあたります。

この3要素の獲得度合いを測る指標となるのが、以下の8つの変数です。

自己理解仕事理解キャリア積極性
  • 自分がどんな仕事に興味や関心があるのかを理解していた
  • 自分が希望する仕事に就ける可能性を理解していた
  • 自分がどんな仕事に適性があるか理解していた
  • やりたい仕事があった
  • 仕事をする上で目標となる人がいた
  • 自分の仕事と社会との関わりを理解していた
  • 自分のキャリアの責任は自分にあると思っていた
  • 自分が希望するキャリアを実現するために、自分なりに努力していた

学生の初期キャリア獲得のためにキャリア・就職支援担当者ができること

大学生活や就職活動を通して、学生が望ましい初期キャリアを獲得するためには「自己理解」「仕事理解」「キャリア積極性」の3要素が必要だと解説してきました。
キャリア・就職支援担当者は、学生がこの3要素を身に付けられるような関わりが求められます。

ここでは5つの取り組みをご紹介します。

早期からキャリア教育をおこなう

前述のように、望ましい初期キャリアの獲得には、低学年時のキャリア教育の経験が必要な要素とされています。
そのため、大学入学後の早い段階からキャリア教育に力を入れていくとよいでしょう。

2025年卒からインターンシップの定義が改正され、低学年からキャリア教育をおこなう必要性が強まりました。

また、「マイナビ大学生低学年のキャリア意識調査(26・27年卒対象)」によると、大学1、2年生に卒業後に自分が就きたい仕事・キャリアの方向性について聞いたところ、「決まっていない(全く+どちらかといえば)」と回答した学生は59.5%と半数以上の学生がキャリアの方向性を決められていない状況でした。

参考:マイナビキャリアリサーチLab「大学生低学年のキャリア意識調査(26・27年卒対象)

だからこそキャリア教育は、学生自身が自分と向き合い自己理解を深め、興味や関心を広げる機会として有効だと考えられます。
また、自分の将来を考えるきっかけとなり、学習意欲が高まる効果も期待できます。

例えば、関西学院大学では卒業生に協力してもらい、インタビュー形式でキャリアについて学ぶ授業を開催したり、企業と協定を締結してキャンパス内でキャンプを実施したりして、キャリアセンター主体でユニークな低学年向けのキャリア教育を展開しています。

低学年からキャリア教育に取り組む大学の事例やその重要性について、詳しくはこちらをご覧ください。
大学事例|枠にとらわれない支援が学生の心に届く|関西学院大学 」を読む
低学年からキャリア形成活動に取り組む意味|実践女子大学 初見准教授」を読む

社会人に求められるスキルを身につける場を提供する

社会人になると、同期や上司、先輩、さらには取引先など関わる人が増えます。そのため、コミュニケーションの取り方に悩んだり、予想していなかったストレスに悩まされたりすることもあります。

そこで学生時代のうちから、ビジネスマナーやコミュニケーション、ストレスコントロールなど社会人に求められるスキルに関するセミナーや講座を提供するのもよいでしょう。

さまざまな事例を通じて対応方法や乗り越え方を学んでおけば、学生も社会人として働くイメージを持ちやすくなります。また、社会に出て悩んだ際に自分自身で乗り切れる力を養うことにもなります。

マイナビが運営している「My CareerStudy」では、学生が身に付けておきたいスキルを実践的に学べる講座を提供しています。大学のセミナーや講座に参加できない学生に講座を紹介するといった活用も可能ですので、ぜひご活用ください。
詳しくはこちらをご覧ください。

インターンシップ&キャリアへの参加機会を提供する

前述したとおり、大学1、2年生の多くは、卒業後に自分が就きたい仕事・キャリアの方向性が「決まっていない」状況です。
実際、大学1、2年生の段階では、社会にはどのような仕事があり、自分にどのような適性があるのかを学生が理解していないケースも多く見られます。

自己理解や仕事理解を深める方法の一つに、「インターンシップ&キャリア(※)」が挙げられます。

インターンシップ&キャリアのプログラムは、現場での仕事体験やグループワークのほか、就業体験がともなわない研修・講座形式の教育プログラムなど企業によりさまざまです。
参加した学生からは、「働くイメージをつかむきっかけになった」「仕事内容の理解を深めることができた」という声もあり、入社後のミスマッチ防止に一役買っています。

キャリア・就職支援担当者はインターンシップ&キャリアの情報を、低学年のうちから提供できるような仕組みを整えておくとよいでしょう。

例えば、金沢工業大学では「自ら考え行動する技術者を育成する」という教育目標を掲げており、カリキュラムの一環としてビジネスで必要な顧客視点を企業で実際の業務に携わりながら学ぶことができる「コーオプ教育」を取り入れています。

詳しくはこちらをご覧ください。
大学事例|実際の業務を経験し学生たちが学び成長するコーオプ教育|金沢工業大学」を読む

2026年卒のインターンシップの特徴などは、以下の記事で紹介しています。併せてご覧ください。
今後のインターンシップ&キャリアの特徴は?実施状況や内容の変化、学生の動向についても解説 」を読む

マイナビ2026のインターンシップ&キャリアの各プログラムについては、こちらの記事で紹介しています。併せてご覧ください。

※マイナビ2026ではインターンシップおよび仕事体験、オープン・カンパニー、キャリア教育などを「インターンシップ&キャリア」と総称しています。

自己実現への意欲を醸成する

望ましい初期キャリアを獲得するために必要な要素の一つに、「キャリア積極性」があります。

学生自身がキャリアについて積極的に考えていけるように、自己実現への意欲を醸成することも、キャリア・就職支援担当者に求められます。

学生の意欲を高めるには、キャリア・就職支援担当者による促しや働きかけが大切です。
具体的には、学生自身がやる気になった瞬間を見逃さないことはもちろんのこと、学生のフェーズに応じた適切な情報提供や頑張っていることへの承認・理解など、モチベーションを高められるようなサポートをしていきましょう。

例えば、熊本大学では、キャリア支援サイトのコンテンツの一つである「OBOGキャリアメッセージ」に力を入れております。OBOGキャリアメッセージとは、930名を超える熊本大学の卒業生から現役の学生に向けて、自身のキャリア経験や就職活動のアドバイスをまとめたものです。

同じ大学の先輩がどのような業種や職種で働いているのかを知ることで、学生の視野が大きく広がり、自分自身の将来像もイメージしやすくなります。
OBOGキャリアメッセージがきっかけとなり、学生たちは自己実現に向けて積極的に就職活動に取り組めているとのことです。

詳しくはこちらをご覧ください。
大学事例|卒業生からのキャリアメッセージをはじめ独自のキャリア支援が充実」を読む

卒業後のフォローアップ支援を充実させる

前述したとおり、望ましい初期キャリアの醸成プロセスには、大学生活期間や就職活動期間だけではなく、入社後や転職後の経験も含まれます。

納得いく転職先を見つけて活躍している実感があれば、早期離職したとしても望ましい初期キャリアを獲得できる可能性が高まります。しかし、なかには早期離職してしまったことで、自分自身のキャリアを見失っている人もいるでしょう。

そのような学生のために多くの大学のキャリアセンターでは、卒業生でも面談や求人閲覧などができるような体制を整えています。

しかし、卒業生の望ましい初期キャリアの獲得に寄与するならば、卒業後に早期離職した卒業生をフォローアップする体制を、さらに充実させる必要があるかもしれません。
卒業生の思いや悩みに寄り添うだけでなく、どのような仕事であれば納得感を高められるか、丁寧に話を聴いて言語化していきましょう。

また、大学に寄せられる求人のなかには、卒業後3年以内の既卒者が応募可能な求人もあります。大学によっては懇意にしている企業もあり、卒業生が応募を希望すれば、橋渡し役になることも期待できます。

例えば、国際教養大学や金沢美術工芸大学では、転職活動中の卒業生を、中途入社社員を探しているという企業につなぐなど大学卒業後の支援に力をいれようとしています。

詳しくはこちらをご覧ください。
大学事例|小規模大学だからこそ学生や他大学と支え合い高め合う|国際教養大学 」を読む
大学事例|学生と卒業生と企業をリアルにつなぐ美大のネットワーク|金沢美術工芸大学」を読む

まとめ

望ましい初期キャリアの状態とは、「本人が納得のいくキャリアを作り上げていくために必要な考え方や姿勢が備わっている状態」を指します。また、望ましい初期キャリアを獲得するためには、「大学生活期間」「就職活動期間」「入社後」の各プロセスを通じて、学生自身が「自己理解」「仕事理解」「キャリア積極性」を身に付けることが重要です。

キャリア・就職支援担当者は、学生が自分自身と向き合い自己理解を深められるように、低学年からキャリア教育を実施するだけでなく、インターンシップ&キャリアへの参加を促すなど、学生が自ら考え行動できるようにサポートしていくことが求められます。また、卒業後に早期離職した学生に対しては、次のキャリアを卒業生自身が自ら切り拓いていけるように丁寧なサポートが必要です。

マイナビキャリアサポートでは、キャリア・就職支援担当者に支援方法など有益な情報を発信しています。これからもご活用ください。

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