学生の価値観の多様化が進み、キャリア形成支援でも従来のマスの支援から一人ひとりに合わせた個別支援が求められるようになりました。
その個別支援をおこなううえでの一つの手法として、収集したデータを分析・活用し、行動や意思決定につなげる「データドリブン」という考え方があります。
この記事では、データ活用をもとにしたキャリア形成支援におけるポイントや活用事例などを詳しく解説します。
大学のキャリア形成支援における変化
近年では低学年からキャリア教育の授業を実施する大学が増えています。また、学生側も自分に合った企業を見つけようと、低学年の段階から企業のインターンシップ&キャリアに参加するなど、キャリア意識の高い学生が増えています。
そのため、キャリア形成活動や就職活動に取り組む時期はさまざまで、従来のように一律のガイダンスを実施するだけではカバーしきれなくなってきました。
そうした状況を受け、大学のキャリア形成支援も、学生一人ひとりの多様な価値観に合わせた「個別最適化された支援」へシフトする傾向が見られています。
キャリア形成支援における「データドリブン」の考え方
では、キャリア形成支援を個別最適化していくには、どのような方法があるでしょうか。
現在、各大学ではDX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されており、キャリア・就職支援の現場でも、オンラインを活用した面談や相談などが導入されています。
そのなかでも、特に注目を集めているのが、「データ」を起点とした支援です。
ビジネスの世界だけでなく、大学のキャリア形成支援においても活用できる「データドリブン」という考え方について、まずはその基本から見ていきましょう。
データドリブンとは?
「データドリブン」とは、勘や経験だけではなく、収集した客観的なデータに基づいて意思決定やアクションをおこなう手法です。
ビジネスの場面では、経営判断における意思決定プロセスでデータを活用しているほか、マーケティング分野では顧客理解を深めるために取り入れられています。
では、データドリブンを大学のキャリア形成支援にあてはめると、どのようになるでしょうか。
これまで、キャリア・就職支援の現場では、担当者の豊富な経験や体感的な学生傾向をもとに支援をおこなうケースが多く見られました。
しかし、データドリブンの考え方を踏まえると、そこに学生の行動データなど客観的で根拠となりうる材料が加わります。結果として、担当者の経験則と掛け合わせることで、より精度の高い、個々に最適化された支援方針を導き出すことが可能になります。
キャリア形成支援で見るべき「データ」
キャリア形成支援で見るべきデータは3種類あります。
- 大学が保有するデータ
- 就職活動の活動データ
- 意識・行動の可視化データ
大学が保有するデータには、学生の属性データやアンケート結果、学修や成績評価のデータのほか、OB・OG情報やキャリアセンターでの面談記録なども含まれます。
就職活動の活動データとは、学内で保有するデータのほかに、マイナビなどの就職情報サイト内における、学生の行動履歴や活動データのほか、適性診断の受検結果なども含まれます。
マイナビでは、自己分析から適職や適性がわかる「適性診断MATCH plus」を提供しています。併せてご覧ください。
意識・行動の可視化データとは、 学生の「キャリア意識の変化」や、実際に「どのように動いているか(あるいはどこで止まっているか)」を見える化したものです。
このようにさまざまな角度からデータを見ることで、学生の状況をより立体的に見ることが可能になります。
学生の「行動履歴・属性データ」に着目すべき理由
キャリア形成支援で見るべきデータは多岐にわたりますが、一人ひとりの学生に合わせた支援につなげるには、学生の考えや動向の理解が不可欠です。
そのため、学生の「行動履歴・属性データ」が必要になってきますが、実際の現場では、「行動の履歴」や「キャリア意識」に関するデータが不足しているのが現状です。
例えば年齢や性別、居住地など基本的な属性や学習データ、さらにはキャリアセンターで面談した際の記録は大学が保有するデータで確認できます。
しかし、学生の行動履歴は大学以外にも及ぶため、大学が保有するデータだけではカバーしきれません。
「いつから動き出し、どこで(活動が)止まっているかが見えない」状態を防ぎ、効果的なキャリア形成支援につなげるためにも、学外での行動履歴データを収集することが重要になってきます。
データを活用したキャリア形成支援のメリット
キャリア形成支援でデータを取り入れると、どのようなメリットがあるでしょうか。ここでは5つの項目に分けて説明します。
キャリア意識の可視化と経年での変化把握
まずは、学生のキャリア意識を可視化できるほか、継続的な支援を通じて学生の変化を把握できることが大きなメリットとして挙げられます。
前述したように、「学生がいつ就職活動に向けて動き出しているか」「どこで活動が止まっているか」など学生の動きは、大学側では見えにくいところがあります。
しかしデータを活用すれば、そうした見えづらかった行動プロセスを把握しやすくなります。
例えば、学生の活動が止まっている場合、以下のような原因が考えられます。
- 合同企業説明会には参加したが、エントリーにつながっていない
- 気になる企業をピックアップしているが、エントリーに踏み切れていない
- 書類選考で不採用になり、気持ちの切り替えができず次のアクションを起こせていない
このように、「学生がどのようなフェーズで止まっているのか」をデータから正確に把握できれば、個別の状況に応じた効果的な支援の一手を打てるでしょう。
また、大学内では把握しにくい学生の行動の一つに、学外での活動が挙げられます。キャリアに関する学修や業界研究など、正課外での活動は学生のキャリア形成に大きな影響を与えます。
マイナビではこうした学外での学びを支援し、学生のキャリア形成を後押しするツールとして、社会で通用する知識やスキルを身につけられるキャリア学習サイト「My CareerStudy」を提供しています。詳しくは以下をご覧ください。
学内外のデータを継続的に蓄積していくと、よりマクロな視点での支援計画の立案が可能になります。例えば、1年次と3年次のデータを学部別に比較して学生の成長を分析したり、卒業年ごとに比較することで学年全体の変化のトレンドをとらえることができます。
継続的な支援については、以下の記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。
「大学1・2年生からのキャリア形成支援の進め方は?継続的な学生支援を実現するためのポイントを解説」を読む
行動分析による学生ごとの動向や傾向の把握
学生の行動を分析することで、学生ごとの動向や傾向を把握できるのも、メリットの一つです。
学生の活動データを用いて学部・学科別の行動量を分析すれば、ある学部は全体的に順調に就職活動を進めている一方、ほかの学部では動きが少し停滞しているなどの傾向やその理由が抽出できるかもしれません。
学生の動きの傾向を把握できるきっかけとなり、効果的な支援につなげられる可能性が高まります。
ガイダンスや講座の最適化
ガイダンスや講座の最適化が図れることも、データ活用のメリットといえます。
具体的には、動きが停滞している学生がどのぐらい存在し、どのような場面で立ち止まっているのかが把握できるだけでなく、学生の潜在的なニーズを掘り起こすことも可能になります。
キャリア・就職支援担当者が、浮き彫りになったニーズをもとにガイダンスや講座を企画すれば、今必要としている情報を的確に届けることができ、参加につながります。
具体例としては、講義形式だったガイダンスに自主的にインターンシップ&キャリアのエントリーまでできるような仕掛けや自己分析のワークを取り入れるなど、学生の行動量が増える後押しとなるような内容に変えることが挙げられるでしょう。
また、データを活用することで、イベントへの学生動員の上積みも期待できます。学生の行動量が増える時期や希望者が多い業界を把握したうえで合同企業説明会を企画・実施すれば、任意での参加率向上が見込めます。
学内イベントへの動員対策や成功事例については、以下の記事で詳しく説明しています。併せてご覧ください。
「【チェックシート付】学内イベントへの学生集客の方法は?集まらない原因や動員対策の成功事例を紹介」を読む
合同企業説明会の企業誘致
合同企業説明会の企業誘致に活用できることもメリットです。
学生がどの業界に関心を持っているかは、大学ごとに異なります。
その傾向をデータで把握できるため、「どのような企業を誘致すれば学生が参加したくなるか」など学生目線を取り入れた企業誘致に役立てられます。運営団体を学生主体に切り替えた大学では、「説明会を企画してくれた学生の熱量に応えたい」と企業が積極的に参加してくれたケースもありました。
教職員や学内部署との連携強化
その他のメリットとして、教職員や学内部署との連携強化が図れる点も考えられます。
客観的なデータが存在することで、キャリアセンターと教職員との会議などで「共通のエビデンス」として活用でき、スムーズな情報共有や連携につながります。
またキャリアセンターと教職員が連携し、学生に必要な支援の提供もできるようになるでしょう。
例えば、キャリアセンターの職員がゼミに出向き、教職員と連携してキャリアに関する授業やワークショップ、ガイダンスを実施することが挙げられます。特にゼミの学生が必要としている支援をオーダーメイドで設計するには、キャリアセンター職員と担当教職員の強固な連携が不可欠です。
データを起点としたキャリア形成支援の実践方法
データを起点としたキャリア形成支援を実践するには、4つのステップがあります。ここではステップごとに実践方法を見ていきます。
STEP1:学生の動向・行動履歴データを収集・可視化する
まずは、学生の動向・行動履歴データを収集・可視化していきます。
大学内には成績データやキャリアセンターでの面談記録など、学生に関するさまざまなデータが存在しています。しかし、これらのデータは部署ごとに管理されているケースも多く、全体像として把握しづらい状況にあります。
一方で、就職活動に関する行動の多くは学外でおこなわれるため、大学だけでは「いつ動き出しているのか」「どのように活動しているのか」といったプロセスが見えにくいという課題もあります。
このように、学内外に存在しているデータを個別に扱っているだけでは、学生一人ひとりの状況を総合的に把握することは困難です。そのため、まずはこれらのデータを横断的に収集し、一元的に把握できる仕組みを整えることが重要になります。
また、単にデータを集めるだけでは十分とはいえません。
職員がExcelなどで手作業で集計・加工する状態では、本来の学生支援に充てる時間が限られてしまいます。職員一人ひとりが学生のキャリア形成支援に向き合う時間を生み出せるよう、共有フォーマットの整備やデータ共有サービスを活用するなどして、効率化を進めるとともに一目見て学生の状況がわかるように整理・可視化することが大切です。
STEP2:データから課題を分析・特定する
次にデータを活用し、大学側の支援体制や仕組みの課題を分析・特定します。
特にキャリア形成支援では、ツールで可視化されたデータと、職員が持つ学生対応のノウハウをかけ合わせることで、十分な分析が可能です。
例えば、例年実施しているイベントの学生動員が減少した際に、データを活用して分析します。
分析を通じて「特定の時期に多くの学生の動きが止まっている」「特定の案内方法だとアクションにつながりにくい」などの課題を見出すことができれば、支援のあり方や告知手段を見直すきっかけになります。結果として、実施時期や方法を含めた企画のブラッシュアップにつながるでしょう。
STEP3:ターゲットに合わせた最適なアプローチをおこなう
分析結果をもとに、ターゲットに合わせた最適なアプローチをおこなっていきます。
IT業界希望者が一定数いる場合は「IT業界志望者に絞った少人数の座談会企画」を案内したり、就職活動が止まっている学生に対しては個別面談を呼びかけたりと、ピンポイントで効果的なアクションを実行します。
STEP4:施策の結果を振り返り、改善につなげる
最後に、実施した企画の結果を振り返り、さらなる改善につなげていきます。
声かけやイベントを案内したあとに、実際にイベントに参加したり、エントリーしたりするなど「対象学生の行動量が上がったか」を再度データで確認します。
その結果を検証し、効果が薄ければアプローチ方法を変えて取り組み、さらに検証するようPDCAサイクルを回し続けます。
結果としてデータドリブンの文化が組織に根付くとともに、大学独自のキャリア形成支援体制の構築にもつながるでしょう。
マイナビが提供するデータ活用サービスのご紹介
マイナビでは、大学が学生の就職支援やキャリア形成支援をおこなう際に役立つ「マイナビ利用状況連携企画」を提供しています。
これは、マイナビ上での学生の行動ログや適性診断のデータを大学に提供し、キャリア・就職活動支援に活用してもらうためのサービスです。
「学生がどのタイミングで動き出しているのか」「どこで活動が止まっているのか」など学外での就職活動の実態を把握する手がかりとして活用でき、学生個人の状況に応じた個別最適なキャリア形成支援を実現するうえで役立ちます。
マイナビ利用状況連携企画については、以下の記事で詳しく説明しています。併せてご覧ください。
「マイナビの裏側|データを活用して継続的な学生支援の質向上を実現する|マイナビ利用状況連携企画」を読む
提供可能なデータ
マイナビ利用状況連携企画では、「学生の就職活動状況」と「模擬テスト・適性診断結果」の2種類を提供できます。提供データの概要は以下のとおりです。
| 提供データ | データ例 |
|---|---|
| 学生の就職活動状況 | インターンシップ&キャリアを含む業種別・従業員規模別のエントリー社数、最終ログイン日、最終エントリー日、検討リスト登録社数 など |
| 模擬テスト・適性診断結果 | 「適性診断MATCH plus」および「全国一斉WEB模擬テスト(適性検査対策WEBテスト)」の結果 ※学生本人の同意に基づき提供 |
学生の就職活動状況に関するデータに加え、自己分析に役立つ診断や、適性検査対策に活用できるWEB模擬テストも提供しています。適性診断MATCH plusや適性検査対策WEBテストについては、以下でそれぞれ紹介しています。併せてご覧ください。
▼適性診断MATCH plusはこちら
https://job.mynavi.jp/conts/2028/tab/v_shindan.html
▼適性検査対策WEBテストはこちら
https://job.mynavi.jp/conts/2028/moshi/use_02.html
大学での活用事例
では、大学ではマイナビ利用状況連携企画をどのように活用しているのでしょうか。すでに活用している大学の事例を紹介します。
データで学生行動を可視化して伴走する支援
1つ目は、データを活用して学生の行動を可視化し、伴走型の支援につなげた事例です。
この大学では、学内外での学生の動きや状況、卒年ごとの特徴や行動量をデータで可視化し、その結果を各種行事やガイダンスの内容、さらには次年度の支援設計に反映させるようにしました。学内でのアンケートと併用しながら検証と改善のサイクルを回すことで、学生が主体的に将来を考えられる環境づくりを進めています。
具体的な成果としては、インターンシップ&キャリアガイダンスの改善が挙げられます。
マイナビから提供されたデータを分析したところ、従来の説明型ガイダンスでは学生が実際にエントリーする行動を起こせていないことがわかりました。
そこでガイダンス中に、エントリーやインターンシップの申し込みまで完了できる企画に改変しました。同時にキャリアセンター職員も学生の視野を広げるサポートができるよう、なるべく多くの企業情報をインプットし、その場で学生からの質問に答えられる体制も整えました。結果として、エントリー件数が増え、学生の動きも改善されました。
このように学生の行動やニーズをデータで把握し、それに合った的確な情報提供や選択肢を示すことで、学生が自律的に進路を選択するきっかけ作りに役立てています。また、キャリアセンター内での目標設定などにもデータを取り入れるなど、活用する場面はさらなる広がりを見せています。
学生の自走力を育む支援
データを活用して学生が自走できる力を育めるような支援をおこなった事例もあります。
この大学では、マイナビのデータから、エントリー学生数や平均エントリー件数など学生の個別利用状況を把握し、月間単位で具体的な行動目標値を設定しています。
これらのデータをもとに、目標と差がある学生に対しては、企業との接点を持たせるために学内合同説明会やガイダンスの告知を重点的におこなうなど、状況に応じた細やかなフォローを実施しています。
さらに、ガイダンスやイベントを実施したあとも、学生の参加状況やデータを分析して効果測定を実施しています。その結果を踏まえて、必要に応じて追加のセミナーを実施するなど、データを次の施策の判断材料として活用しています。
このように、データに基づいた「目標設定→個別アプローチ→効果測定」というサイクルを回すことで、学生が自走しやすいような環境づくりにつなげています。
データを活かし学生に寄り添う支援
データを活用して学生に寄り添った支援を実現している大学もあります。
この大学では、教員とキャリアセンターが密に連携し、教職協働で学生を支援する体制を整えているのが特徴です。学生個別のデータをもとに、定期的に学部・学科ごとの就職活動動向を把握し、学内会議や教員との情報共有に活用しています。
そして、十分な行動が取れていない学生が在籍する学科の教員に対しては数値を用いて現状を共有し、ガイダンスなどイベントへの参加を促してもらうなど、教員経由で学生へのアプローチにつなげています。
このほか、夏のインターンシップ&キャリアへの学生参加が低調だった学科に対しては、秋のイベント参加を促すなど柔軟な施策を実施しているほか、個別面談時の参考資料としてもデータを活用しています。
まとめ
キャリア形成支援の現場では、学生一人ひとりに合わせた支援が求められています。長年の経験や培った知識に加えて、データを起点に意思決定やアクションをおこなう「データドリブン」の手法を取り入れることで、学生のニーズを把握できるだけでなく、学生の主体的な行動を促進する効果的な支援施策の立案につながります。
キャリア・就職支援担当者は、適切にデータを活用し、価値観が多様化する学生の変化や動向を正確に把握していくことが重要となります
マイナビキャリアサポートでは、キャリア・就職支援担当者の皆さまに有益な情報を発信しています。引き続きご活用ください。
「マイナビキャリアサポート」は
キャリア支援・就職支援に関する総合情報サイトです
長い学生生活の出口で、学生たちを社会へと送り出す。その大きな役割と責務を担っている皆さまに寄り添い、活用いただける情報をお届けするため、2022年にサイトをリニューアルいたしました。
より良いキャリア支援・就職支援とは何か。答えのないその問いに対して、皆さまの学生支援のヒントとなるような情報をお届けして参ります。

