学生に貢献したキャリアデザインプログラムを表彰する「学生が選ぶキャリアデザインプログラムアワード」。第8回となる今年は、低学年向けキャリアプログラムコースを新設。大学1年生、2年生を主たる対象としたキャリア形成支援に係る取組も数多く表彰することができました。また、表彰式では、実践女子大学の初見准教授による「キャリア形成の発展プロセスと入社後の活躍に向けて」という講演もありました。毎年、キャリア教育、キャリア支援に新たな視点を提供している初見准教授の講演に関して、本記事でもインタビューを通してご紹介します。
▼学生が選ぶキャリアデザインプログラムアワードの詳細はこちら
https://internship-award.jp/
Profile

初見 康行 氏
実践女子大学 人間社会学部 准教授
大学卒業後、人材業界で法人営業や人事業務に従事。2017年、一橋大学大学院商学研究科にて博士号を取得。2024年より現職。専門は人的資源管理。大学生のインターンシップ活動に関する研究に取り組んでいる。主著に「若年層の早期離職」(中央経済社)、「人材投資のジレンマ」(日本経済新聞出版)など。2019年より「学生が選ぶキャリアデザインプログラムアワード」にて講演を担当している。
学習意欲や学習態度に良い影響を与える

―昨年に引き続き、今回も大きな視点からキャリア形成を捉えた調査テーマだとお伺いしました。
昨年は、インターンシップ&キャリアをはじめとする学生時代のキャリア形成プログラムが、入社後の活躍度とどう関連するかといった調査の発表を行いました。
▼昨年の調査に関する記事はこちら
https://mcs.mynavi.jp/column/2024/07/award7_hatsumi/
今年はさらに低学年に注目し、低学年からキャリア形成プログラムに取り組んだ学生にどのような変化が起こるかということを、今回もマイナビの協力のもと、調査することができました。
低学年のキャリア形成活動が学業にどういった影響を与えているのか、また、その後の就職活動などにどのような影響を与えているのかといったことを調べたいと思ったのです。
―この記事の主な読者である大学教職員の皆さまにとっても気になる調査テーマだと思います。どういう結果が出たのでしょうか?
大学教職員の皆さまが一番気になるであろう話からすると、低学年からのキャリア形成活動は学習意欲の向上につながり、学業に良い影響を与えていることがわかりました。さらに、その後の学習態度や職業選択、就職活動の満足度にも良い影響を与えていることがわかったのです。
より自分の興味に合った科目を履修するように

―非常に興味深い結果です。詳しく教えていただけますか?
前提として大学1年生、2年生のキャリア形成活動は年を追うごとに活性化しています。今回の調査では、まず3年生から活動を開始した学生と1年生から活動を開始した学生の「学習意欲」に注目したのですが、後者の方が高い数値を確認することができました。
やはり、学外での取り組みが良い刺激になっているのだと思います。これは昨年の調査でも確認できていたのですが、今回はさらにこの学習意欲の向上が一過性のものなのかを調べた結果、「学習態度の変化」にもつながっているということがわかったのです。
―「学習態度の変化」とはどういうことですか?
中長期的な学習態度の変化を測るため、今回は9ヶ月後に「より自分の興味に合った科目を履修するようになったか?」「大学で学ぶべき学習内容・方向性がより明確になったか?」「以前よりも大学の学習に意義や意欲を見出せるようになったか?」といった質問を行いました。
その結果、1年生からキャリア形成活動に取り組んだ学生は、こうした項目の数値も軒並み高かったのです。
ここは推測ですが、実際の仕事でどのような知識や能力が求められるか、自分の興味のある部分はどこか、逆に足りない部分はどこかといったことを身を持って体験した学生は、科目の履修などにおいても「なんとなく」や「単位を取りやすそう」といった安易な選び方をしなくなるのだと思います。
大学の学習と職業選択やその後が線となってつながっていく

―大学の学習における目標が見つかっていくのですね。調査では、その後の就職活動にも変化があるとお伺いしました。
そうなんです。学習意欲が向上し、学習態度が変化した学生たちは、「大学の学習と職業選択の一貫性が高まる」ということもわかったのです。
この調査では「入社予定の企業で行う仕事内容と大学の専門・専攻は関係あるか?」「大学で学習した内容は、入社後の仕事内容に直接活かせそうか?」「大学で得た知識や能力は、入社後の仕事に役立ちそうか?」といった質問項目から導き出したのですが、ポイントは専門的な学びに絞らなかったことです。
大学で得た知識・能力には、社会人基礎力や課題解決能力といった多様な学びが含まれているということではないでしょうか。昔からよく理系の学生は、大学の学びと職業選択の関連性が高いということが言われていました。
今回の調査では学びの範囲を広げた結果、文系・理系に関わらず、低学年からキャリア形成活動に取り組んだ学生は、大学で学んだこと、興味を持ったことを、職業選択と紐づけていくという結果が表れました。
加えて、大学や学び、就職活動につながりが生まれることで、就職活動自体の満足度、納得度も高まるというデータも確認することができたのです。
―なるほど。キャリア形成が線となって続いていくのですね。
大学の学習と職業選択が強く結びつくことで、社会人として活躍する準備がより整っていき、その後の働く意欲の向上にまでつながっていくのです。
そう考えると、実は低学年時におけるキャリア形成プログラムの実施は、思っていた以上に学生・大学・企業の三者にとって有意義な結果をもたらすと言えるのではないでしょうか。
キャリア形成プログラムの評価では「働く目的」も意識しておく

―今回の講演で企業向けにお話しされた内容も、大学教職員の皆さまにも気づきがあるように思えたのですが、いかがでしょうか。
はい。企業向けにお話ししたのは、これから社会に出る学生に「働く目的」を持ってもらうことの重要性についてです。
この調査では、社会人1年目に「あなたの働く目的について、当てはあまるものをすべて選んでください」という質問をしたのですが、この時、「お金を得る」という項目だけを選択した人より、「生きがいを見つける」「社会人や人の役に立つ」「自分の才能や能力を発揮する」「家族の生活」といった別項目も含めて複数を選択した人の方が、仕事に対する熱意・活力・没頭の度合いの指標である「ワーク・エンゲージメント」が高いという結果が出たのです。
選んだ項目が多ければ多いほど高まるといった相関関係も見てとれたため、改めて「働く目的」の重要性に気づかされました。
この点から、大学側で参考にできることがあるとすれば、学生たちが参加するキャリア形成プログラムの良し悪しを測る指標の中に、「このプログラムの中で、学生は働く目的を見出すことができるか」といったものを含めると、より意義のあるキャリア形成活動の支援になるのではと思います。
―最後に、キャリア教育やキャリア支援に携わる教職員の皆さまにメッセージをお願いします。
これまでに学生のキャリア形成に関する様々な調査を行ってきてわかったのは、それぞれの取り組み自体も大切ですが、それ以上に学生の活動自体を点で終わらせず、線にすることの大切さです。
低学年時からのキャリア形成活動への参加が学習意欲の向上や学習態度、職業選択の変化につながることをお話ししましたが、そうした学生の行動に対し、支援する側もどのくらい線の支援を行っていくことができるか。
そうして最終的に学内と学外のキャリア形成に関する活動がサイクルとなり、回っていくようになれば、より良い効果をもたらすのではないかと考えています。
▼初見准教授が監修した「インターンシップ&キャリア プログラム選びのポイント」はこちら
https://job.mynavi.jp/conts/2027/is_award/
Editor’s Comment

弊社後援の「第8回 学生が選ぶ キャリアデザインプログラムアワード」。2025年5月のカンファレンスでご講演いただいた初見先生へのインタビューでした。低学年向けキャリアプログラムコースを新設し、さらにプログラム内容の多様化が見られた第8回のアワード。初見先生からは「低学年からキャリア形成活動を始めることで大学の学習意欲向上の傾向がある」という昨年の調査結果から踏み込み、「その後の学習態度の向上」→「大学の学習と職業選択の一貫性を高める」→「社会人として活躍する準備が整う」というつながりが見られたことなど、意義深いご説明をいただきました。
(マイナビ副編集長:谷口)
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長い学生生活の出口で、学生たちを社会へと送り出す。その大きな役割と責務を担っている皆さまに寄り添い、活用いただける情報をお届けするため、2022年にサイトをリニューアルいたしました。
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