「マイナビの裏側」は、マイナビが企画・運営しているサービスについて、開発担当者に話を聞くシリーズです。今回は、2025年7月に初開催したキャリアイベント「マイナビキャリア塾」について紹介します。本イベント最大の特徴は、高校生が対象ということです。社会に出る前の段階で自分を知り、働くことを考えるきっかけを提供する本イベント。自己理解と仕事理解をテーマに、少人数かつ対面型で行われました。そのプロジェクトを統括した久保、現場の企画や運営をリードした安井に、誕生の背景や開催までの道のり、当日見えてきた手応えなどについて話してもらいました。
Profile

久保 潤一郎
株式会社マイナビ マイナビキャリア塾運営事務局
2006年に株式会社マイナビに入社後、兵庫での企業開拓や採用支援を経て、東京で大手企業の新卒採用コンサルティングに従事。企画開発の部署を経て、再び大手企業支援を担当。現在は、大学支援推進部門で学生向け企画開発の指揮を執っている。「学生が選ぶキャリアデザインプログラムアワード」実行委員長も兼任。

安井 敏広
株式会社マイナビ マイナビキャリア塾運営事務局
2011年に株式会社マイナビに入社。大阪や東京での大学・専門学校をクライアントとする募集広報や課題解決の営業を経て、2023年に進路サポート部門の立ち上げに携わる。年間1,800本/35万人を数える高校生を対象とした進路・キャリア講演の実施や全国37会場で開催している進学イベントの企画・運営に従事。
高校生にこそ届けたい自己理解と仕事理解

―まず、マイナビキャリア塾が生まれたきっかけから教えてください。
久保:発端は、社内の横断プロジェクトでした。大学生向けサービスや高校生向けサービスなどに関わる複数の事業部が一体となり、初期キャリア形成を支援していくための取り組みについて考える場を設けました。そのなかで、単なる進学や就職の支援ではなく、より根本にあるキャリアを考える力を育む支援ができないかという話になりました。
やはり高校生のタイミングで進学を考えると、どうしても偏差値といった数値のものさしで大学を選ぶこともあると思います。しかし、学生の学びや将来の方向性を測る指標は、それだけではないはずです。「偏差値に代わる新しいものさしをつくりたい」という想いもあり、キャリア塾の構想が動き出しました。
―なるほど。「自己理解」と「仕事理解」をテーマにした理由も教えていただけますか?
安井:若手社員を対象とした調査で、自己理解や仕事理解が深い人ほど、働くことへの納得感や満足度が高いというデータがあります。そこで、高校生のうちに、この2つに触れられる機会を作りたいと感じました。
また、高校の先生方は教育への熱意を持ちながらも、授業や部活動などで多忙なため、キャリア支援まで手が回らない現実もあります。だからこそ、これから大学に進学し、社会人になる未来を見据え、今のうちから自分ごととして捉えられるよう、高校生に向けてキャリアの視点を届けたいと考えました。
小さな気づきが将来のための大きな一歩になる

―では、イベントの具体的な内容について教えてください。
安井:イベントは4日間にわたり、各日50名の高校生を上限に、13時から18時までじっくりと学んでもらいました。前半の2日間は自己理解編として、自分の興味や価値観を掘り下げるワークを中心に実施しました。
たとえば、心が動いた瞬間や夢中になれた経験を振り返ってもらうといったワークです。グループ内で共有する時間も設け、言語化することで自分の価値観を再発見できる仕組みとなっています。
後半の2日間は仕事理解編として、若手社会人が登壇するパネルディスカッションと、企業担当者との座談会を行いました。単なる業界説明ではなく、社会人からリアルな声を聞き、仕事観を広げてもらう構成です。イベント中は終始活気ある雰囲気で、高校生同士の交流も自然に生まれていました。
―イベントに参加した高校生の反応はいかがでしたか?
安井:グループワークで一生懸命メモを取りながら自分の考えを言葉にしている姿が印象的で、自分のことを考える良いきっかけになったという声が聞けて嬉しかったですね。
また、参加動機があまり積極的ではなかった高校生からも、参加して良かったという声が多く寄せられ、自分の将来に希望や自信が持てたという反応がありました。心から、本イベントを企画して良かったと感じました。
久保:発表の場では、どの生徒も前向きで、表現力も豊かでした。想像以上に真剣な姿が見られて、本当に感動しました。
現場のリアルな声がキャリアの感度を高める

―参加企業の選定にもこだわりがあったそうですね。
久保:今回はBtoC企業を中心に、等身大の社会人が語れる場を意識しました。人事院や全日本空輸(ANA)、ヒルトングループ、ファミリーマート、ロッテ、セコムといった企業にご協力いただき、学生にとって身近な存在を選びました。
企業側からも、高校生の率直な反応が新鮮だったといった意見や、自社の若手研修にも活かせるという声を多くいただきました。
安井:高校生にとっても、直接社会人と話せる機会は貴重です。仕事の内容だけでなく、普段の生活や休日についてなどの質問も多く出て、社会をよりリアルに、そして身近に感じてもらえたと思います。
―高校生を対象にして見えてきたことはありますか?
久保:早期からキャリアを考えることで、学びや進路選択に関する価値観に少なからず影響を与えられたのではないかと感じており、非常に意義のあるイベントだったと思っています。
今回参加した高校生の中には、将来を楽しみに感じてくれたり、大学で挑戦したいことを見つけたりした人も多く、小さな火を灯すことの力強さを実感しました。
安井:学校や塾など、学力を高める機会は世の中にたくさんあります。しかし、キャリアの感度を高める機会はまだまだ少ないです。だからこそ、私たちのような企業が社会と学生をつなぐ役割を担う必要があると考えています。
高校生が社会に興味を持つ瞬間をつくることが、結果的に未来のキャリア選択の幅を広げることにつながると感じています。
高校生と社会をつなぐ新しい架け橋に

―今後、挑戦してみたいことなどはありますか?
安井:高校生のうちは、社会との接点がまだ少ない分、こうした体験や経験をできるだけ多く蓄積しておいて欲しいと思っています。ただ、すべての経験をマイナビが提供するというのは現実的ではありません。
私たちはあくまで、学校や私生活を支える存在として、企業との接点を作ったり、学びのきっかけとなるワークを届けたりしていきたいと考えています。そのうえで、今後はもっと幅広い層に届けられるよう、高校生同士が学び合える仕組みも作っていきたいですね。
久保:とくに、高校1・2年生は社会に出るまで時間がある分、継続的な関わり方や、その効果をどう測っていくかは今後の課題だと感じています。だからこそ、イベントが一度きりの体験で終わるのではなく、継続的なつながりを生む場にしていきたいです。
たとえば、オンラインとのハイブリッド開催や、マイナビ進学ライブなどのイベント内で展開するなど、柔軟な形でキャリアを考える機会を広げていけたらと思っています。
―最後に、大学の教職員や担当の皆さまへメッセージをお願いします。
久保:高校時代の経験や価値観を理解したうえで学生と向き合うことが、大学でのキャリア支援にもつながると感じています。
高校やそれ以前の学生生活で何を大切にしてきた人なのか、大学入学前は何に悩み、どのようなプロセスで大学・学部・学科を選択したのかといった点を深く知ることで、大学生活における支援の精度はぐっと高まるはずです。
そうした背景に目を向けながらサポートしていくことが、より有意義なキャリア支援につながるのではないかと思っています。
安井:高校生はついこの間まで中学生だったということを念頭におくと、やはりキャリアについて考える時間的な余裕が無い生徒が多いと感じています。
部活や勉強、アルバイトで忙しい毎日の中でも、こうした機会に触れることで考え方が変わることがあります。私たちは今後もこういった高校生、大学生のキャリア選択の幅を広げる機会を提供できるように取り組んでいきたいと考えています。
Editor’s Comment

2025年7月に開催した、高校生が自分の将来について考えるための対面イベント『マイナビキャリア塾』。イベントの企画運営を担当した久保、安井へのインタビューでした。
当社の『高校から大学低学年に向けたキャリア形成支援プロジェクト』発のイベント。私自身もプロジェクトメンバーの一員として運営に携わっておりました。メンバーが一同に、どうすれば高校生が未来を前向きに捉えてもらえるか?を考え続け、工夫を重ねてきました。イベント当日、自分のキャリアを真剣に考える高校生の姿が見られ、今後もこのようなきっかけ作りに寄与できればと改めて感じました。
(マイナビ副編集長:谷口)
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