学生の社会的・職業的自立に貢献したインターンシップやキャリア形成支援の取り組みを表彰する「学生が選ぶキャリアデザインプログラムアワード」。第9回となる今年は、全応募コースを合わせた1,343プログラムの中から、キャリア形成支援に係る取り組みとして高く評価されたプログラムが各コースごとに選出されました。また、当日のカンファレンスでは、実践女子大学の初見准教授による「低学年からの『働く意味』の形成」をテーマとした講演もありました。調査研究から見えてきた「働くことの意味づけ」の重要性と、大学だからこそできるキャリア支援について、本記事でも初見先生へのインタビューを通してご紹介します。
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Profile

初見 康行 氏
実践女子大学 人間社会学部 准教授
大学卒業後、人材業界で法人営業や人事業務に従事。2017年、一橋大学大学院商学研究科にて博士号を取得。2024年より現職。専門は人的資源管理。大学生のインターンシップ活動に関する研究に取り組んでいる。主著に「若年層の早期離職」(中央経済社)、「人材投資のジレンマ」(日本経済新聞出版)など。2019年より「学生が選ぶキャリアデザインプログラムアワード」にて講演を担当している。
低学年からの経験が、「働く意味」を育てる

―今年のカンファレンスでは、どのようなお話をされたのでしょうか。
今回の講演では、「低学年からの『働く意味』の形成」をテーマにお話ししました。近年、インターンシップやキャリア形成プログラムへの参加率は非常に高い水準で推移しており、低学年から参加する学生も増えています。
そうしたなかで私がお伝えしたかったのは、「プログラムに参加すること」そのものではなく、その経験を通じて学生一人ひとりが「なぜ働くのか」を考え、働く意味や目的を育んでいくことの重要性です。
昨年は、「お金を得ること」だけを働く目的にしている人よりも、「能力を発揮する」「生きがいを見つける」「社会や人の役に立つ」といった複数の目的を持つ人のほうが、ワーク・エンゲージメントが高い傾向にあることをお話ししました。
今年もその調査研究をさらに進めた結果、「働くことを意味づける力」が高い人ほど卒業後の活躍、具体的には職務満足度やウェルビーイングの向上、さらには離職意思の低下にもつながっていることが明らかになりました。
また、働く意味づけが弱い人ほど、「経済的な安定のみ」を働く目的として選ぶ傾向が見えてきて、目的の数自体も少なくなることがわかりました。
―「働く意味づけ」とは、どのようなものでしょうか。
私が重視しているのは、「自分はなぜ働くのか」「社会とどのように関わりたいのか」を、自分自身の言葉で語れるようになることです。
例えば、最初は「お金を得るため」という理由だったとしても、さまざまな経験を重ねるなかで、「自分の能力を発揮したい」「誰かの役に立ちたい」「社会に貢献したい」といった価値観が加わっていくことがあります。
こうしたプロセスを通じて、働くことに対する意味づけがより豊かになっていくのだと思います。大学生活のなかで働く意味を考えることは、「何を学びたいのか」「大学でどのような経験を積みたいのか」を考えることにもつながります。
実際に社会との接点を持ち、自分なりに働くことを意味づけられるようになると、学びと将来とのつながりが見えやすくなります。
昨年の講演でも、低学年からキャリア形成活動に参加することが、学習意欲や大学生活への前向きな姿勢につながる可能性についてお話ししました。
―そういった意味でも、低学年からの取り組みが重要になるのですね。
働く意味は一度のプログラムや短期間の経験だけで形成されるものではありません。企業との接点や社会体験、授業での学びなどを通じて少しずつ育まれていくものです。
だからこそ、低学年のうちから働くことについて考える機会を持つことが重要だと考えています。その積み重ねによって、学生は自分なりの働く意味や目的を形成し、将来のキャリアを主体的に考えられるようになるのではないでしょうか。
大学だからこそできる、「働く意味」を育む支援

―この研究結果を踏まえると、大学はどのようなキャリア支援を行うと良いでしょうか?
大切なのは、できるだけ早い段階から学生が「働くこと」について考える機会を設けることです。調査では、大学3年生以降よりも、大学1年生〜大学2年生の低学年からキャリア形成活動に参加した学生のほうが、「社会や人の役に立つ」「能力を発揮する」「生きがいを見つける」といった働く目的を持ちやすい傾向が見られました。
働く意味や目的は、一度のプログラムで身につくものではないからこそ、低学年から少しずつ考え、継続的に育んでいくことが重要だと考えています。
また、学生が低学年から「働くこと」を考える機会は、就職活動のためだけではありません。働く意味や目的を考えることは、自分が大学で何を学びたいのか、どのような力を身につけたいのかを考えることにもつながります。
大学生活そのものをより充実させる意味でも、低学年からキャリアについて考える機会を設ける意義は大きいと思います。
―キャリア形成活動の効果を高めるために、大学ができることは何でしょうか。
企業や社会人の話を聞く機会を設けたり、授業のなかで働くことについて対話する時間をつくったりするだけでも、学生にとっては大きなきっかけになるでしょう。
重要なのは、経験そのものだけで終わらせないことです。学生が「何を感じたのか」「なぜ印象に残ったのか」を振り返り、自分なりに意味づける機会を設けることで、経験が学びへと変わっていきます。働く意味の形成を支援するうえでも、こうした振り返りのプロセスは欠かせないものだと考えています。
AI時代に求められる、キャリア支援のあり方とは

―ちなみに、近年のAI時代において、大学のキャリア支援のあり方はどのように変わっていくとお考えですか。
AIの進化によって、大学のキャリア支援も少しずつ役割が変わっていくと思います。これまでは、仕事や企業についての知識を提供したり、自己分析を支援したりすることが、キャリア支援の大きな役割の一つでした。
しかし、情報収集や分析、考えを整理するといったことは、これからますますAIが得意とする領域になっていくでしょう。
そのため、大学は単に情報を提供するだけでなく、学生が自分なりの価値観や考え方を形成するための支援が、より求められるようになるのではないかと思います。
―これからは情報提供よりも“経験の機会づくり”がより重要になるということでしょうか。
はい、先ほどお話しした「働くことを意味づける力」は、AIだけで育てられるものではありません。意味づけるためには、その前提となる実際の体験が必要だからです。
インターンシップや授業、課外活動、社会人との対話などを通じて、自分が何を感じ、どんなことに心が動き、何にやりがいを覚えたのか。そうした一次的な体験があって初めて、自分にとって働くとは何かを考えることができます。
だからこそ、大学は学生が多様な人や仕事、社会の課題に触れる機会を、これまで以上につくっていくことが大切になると思います。
知識を得ることだけでなく、実際にやってみる、現場の人の話を聞く、自分とは異なる価値観に触れる。そうした経験の蓄積が、学生自身の働く意味や目的を育てる土台になります。
―AIはキャリア形成にどのように活用できるでしょうか。
AIは内省を支援するパートナーとして、非常に有効だと考えています。例えば、何かを体験した後にAIと対話しながら、「自分はなぜこの場面が印象に残ったのか」「この経験から何を学んだのか」「今後、何を大切にしたいのか」を言語化していくことができます。
AIは問いを返したり、考えを整理したりすることを得意としています。そのため、学生が自身の経験を振り返り、それを自分なりの学びや働くことの意味へとつなげていく際の“壁打ち相手”として、活用できるのではないでしょうか。
小さな取り組みから、一歩ずつ進めてほしい

―最後に、キャリア教育やキャリア支援に携わる教職員の皆さまにメッセージをお願いします。
キャリア支援というと、「就職活動を支援すること」というイメージが強いかもしれません。しかし私は、それ以上に、学生一人ひとりが「なぜ働くのか」「自分は何を大切にして生きていきたいのか」を考える機会をつくること、さらに働くことの意味づけをサポートすることが、大学の大切な役割だと考えています。
そのために、必ずしも大規模なプログラムを用意する必要はありません。企業の社会人をゲスト講師として招いて話を聞く、授業のなかで働く意味について対話する、体験後に振り返りの時間を設けるなど、小さな取り組みでも学生にとっては大きな学びになります。
大切なのは、学生が自分自身と向き合い、働く意味や目的を考える機会を継続的につくることです。
また、キャリア形成は、就職活動が始まってから急に考えられるものではありません。だからこそ、低学年のうちから大学での学びやさまざまな体験を通して、「働くこと」を自分自身の言葉で意味づけていくことが重要になります。その積み重ねが、卒業後の活躍やウェルビーイングにもつながっていくはずです。
大学だからできるキャリア支援があるので、ぜひ学生一人ひとりが、自分らしい働く意味や目的を見つけられるような機会を、これからもつくっていただければと思います。
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Editor’s Comment

弊社後援の「第9回 学生が選ぶ キャリアデザインプログラムアワード」において、2026年5月のカンファレンスでご講演いただいた初見先生にインタビューしました。
昨年の「働く目的が複数あるとワーク・エンゲージメントが高まる」という分析に続き、今回は「働く目的や意味づけができている人ほど、卒業後も活躍する傾向がある」ことについてご説明いただき、「働く意味づけ」はワーク・エンゲージメントへの好影響にとどまらず、職務満足度やウェルビーイングの向上、さらには離職意思の低下にもつながることが明らかになったとのことです。
働くことの意味を考える重要性を改めて実感する、大変示唆に富んだ学びの多いお話でした。
(マイナビキャリアサポーター:曽根)
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