TOP  /  コラム  /  三省合意とは?変更点や実際の取り組み事例、現状をわかりやすく紹介

三省合意とは?変更点や実際の取り組み事例、現状をわかりやすく紹介

三省合意とは?変更点や実際の取り組み事例、現状をわかりやすく紹介

2022年に「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方(三省合意)」が改正され、インターンシップの定義が変更されるとともに、学生のキャリア形成支援における産学協働の取り組みが4つの類型に分類されました。
そして、2024年度からの4類型の実践に向けてロードマップが作成され、準備期間にあたる2022年度・2023年度で大学が取り組むべき内容も示されました。

この記事では、改正された三省合意の変更点や大学の取り組み事例などをわかりやすく解説します。

三省合意とは?

三省合意とは、文部科学省、厚生労働省、経済産業省による「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」のことを指します。
インターンシップに関する基本的認識や推進の方策を取りまとめた内容で、1997年9月に公表され、これまでに3度改正されました。

直近の改正は2022年6月で、「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」の2021年度報告書の内容を踏まえ、タイトルも「インターンシップを始めとする学生のキャリア形成支援に係る取り組みの推進に当たっての基本的考え方」になるなど、内容も含め大幅に変わりました。

参考:文部科学省「インターンシップを始めとする学生のキャリア形成支援に係る取組の推進に当たっての基本的考え方新旧対照表

三省合意で改正された内容

2022年6月の改正で大きく内容が変わった三省合意。ここでは大きな2つの変更点について説明します。

インターンシップの定義について

1つ目の大きな変化は、インターンシップの定義です。

従来は「学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと」と定義されていました。しかし改正された三省合意では、「学生がその仕事に就く能力が自らに備わっているかどうか(自らがその仕事で通用するかどうか)を見極めることを目的に、自らの専攻を含む関心分野や将来のキャリアに関連した就業体験(企業の実務を体験すること)を行う活動」と定義されました。

それを踏まえ「学生にとって望ましいインターンシップのあり方」が見直され、学生のキャリア形成支援における産学協働の取組みが以下の4類型に整理されました。

  • タイプ1:オープン・カンパニー(業界・企業による説明会やイベント)
  • タイプ2:キャリア教育(大学などの授業・講義や企業による教育プログラム)
  • タイプ3:汎用的能力・専門活用型インターンシップ(職場における実務体験)
  • タイプ4:高度専門型インターンシップ(特に高度な専門性を要求される実務の職場体験)

インターンシップとして位置づけられるのは、「タイプ3:汎用的能力・専門活用型インターンシップ」と「タイプ4:高度専門型インターンシップ」の2種類で、いずれも企業での実務体験が必須となりました。
なお、大学正課および博士課程はこれに限りません。

インターンシップについては以下の記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。

今後のインターンシップの特徴は?実施内容の変化や学生の動向についても解説」を読む
タイプ1:オープン・カンパニーとは?インターンシップとは違う?特徴とメリット」を読む
タイプ2:キャリア教育とは?インターンシップとは違う?特徴とメリット」を読む
タイプ3:汎用的能力・専門活用型インターンシップとは?特徴とメリット」を読む
タイプ4:高度専門型インターンシップとは?特徴とメリット」を読む

採用活動における学生情報の利用について

もう1つの大きな変化は、企業がインターンシップに参加した学生の情報を採用活動で利用できるようになったことです。

これまでのインターンシップでは、「取得した学生情報を広報活動や採用選考活動に使用してはならない」とされていました。
しかし、改正された三省合意でインターンシップと位置付けられた「タイプ3:汎用的能力・専門活用型インターンシップ」と「タイプ4:高度専門型インターンシップ」に関しては、定められた情報開示要件を満たした場合、企業は取得した学生の情報を採用活動開始以降から活用できるようになります。

また、2026年卒の学生からは、卒業・修了年度に入る直前の春休み以降のタイミングでタイプ3のうち専門活用型インターンシップを活用し、その後の採用選考を経れば、6月の採用選考開始よりも前に内定を得ることが可能となります。

参考:採用と大学教育の未来に関する産学協議会「2025年度卒業・修了予定者の就職・採用活動日程に関する考え方

三省合意改正を踏まえて大学が取り組むべきこと

それでは、三省合意の改正を踏まえて大学は何に取り組むべきでしょうか?

学生や企業が三省合意を混乱なく実践できるように「4類型の実践に向けたロードマップ」が作成されています。
このロードマップでは、4類型の実施および検証・改善フェーズを2024年度(第2期)とし、2022年度(第0期)と2023年度(第1期)に取り組むべきことが段階的に示されています。

ここでは、ロードマップに沿って大学が取り組むべき内容について紹介します。

参考:採用と大学教育の未来に関する産学協議会「2021年度報告書『産学協働による自律的なキャリア形成の推進』
参考:採用と大学教育の未来に関する産学協議会「何が変わるの? これからのインターンシップ

第0期(2022年度)

第0期は「準備・周知・啓発」のフェーズにあたります。
このフェーズはまず学生への周知に重きを置き、2025年卒の学生が参加するインターンシップは4類型のうちタイプ3とタイプ4が該当するといった内容をわかりやすく周知することが求められました。

特に半日または1日以下の短期で実施する内容は、インターンシップと呼ばれなくなるため、学生が混乱しないように表現に注意して周知する必要がありました。
また、周知をするにあたっては、学内の関係教職員との協力も重要でした。三省合意の改正内容の理解を深めるために、勉強会の実施を検討する大学もありました。

同時に授業・プログラムなどタイプ1~4の検討・準備が必要となるほか、学内の授業などでインターンシップを実施している場合は名称や実施時期、日数の見直しが求められました。

第1期(2023年度)

「実施を開始するとともに、引き続き告知・啓発」のフェーズにあたるのが、第1期です。
実際にインターンシップに参加した2025年卒学生の声など評価収集をおこない、その内容などについて検証する必要がありました。

一方で2023年4月入学生や2026年卒の学生に向けては、引き続き周知が必要とされました。また、「タイプ2:キャリア教育」および「タイプ3:汎用的能力・専門活用型インターンシップ」のさらなる拡充に向け、企業との連携を強化していくことが求められました。

三省合意改正を受けての現在の取り組み状況

三省合意改正を受け、各大学は実際にどのような取り組みをしているでしょうか。
マイナビがおこなった「マイナビ 2023年度キャリア・就職支援への取り組み調査」で、「三省合意を受けての取り組みの実施」について聞いたところ、以下のような結果となりました。

取り組み状況割合
学生への周知67.7%
現時点で実施していることはない24.3%
授業・プログラム等の名称や内容の変更23.9%
タイプ3(汎用的能力・専門活用型インターンシップ)の拡充9.6%
タイプ2(キャリア教育)の拡充9.4%
学生による評価収集・検証3.5%

現時点で実施している施策のうち、最多は「学生の周知」で67.7%でした。また、「授業・プログラム等の名称や内容の変更」は23.9%でした。インターンシップを授業に組み込んでいる大学もあり、見直しの必要性が高まった結果と考えられます。

一方で、「現時点で実施していることはない」という回答は24.3%となりました。他校の取り組みや企業の動きを見ながら検討段階にいる大学も多いようです。

参考・引用:マイナビ「マイナビ 2023年度キャリア・就職支援への取り組み調査

キャリア・就職支援担当者は三省合意改正を受けてどう取り組む?

では、キャリア・就職支援担当者は三省合意改正を受け、どのような取り組みをすればよいでしょうか。
ここでは、ロードマップ上の「取組の概要」ごとに、実施事例を紹介します。

学生への周知

まず取り組むべきは学生への周知です。
周知する際には、学年を考慮して周知をしていくことが大切になります。

インターンシップと呼べる「タイプ3:汎用的能力・専門活用型インターンシップ」は、大学3年生の夏休みから参加可能です。「タイプ4:高度専門型インターンシップ」は修士以上の学生が対象になります。そのため、3年生にはタイプ3への参加を促し、専門的な内容を学習している院生にはタイプ4を紹介していくと良いでしょう。

一方で、低学年の学生に対しては早くからさまざまな企業と接触できるようタイプ1やタイプ2を紹介します。また、次年度からインターンシップに参加する学生に向けてインターンシップへの理解を深められるようなガイダンスなども並行しておこなっていきましょう。
例えば2年生の1~2月で新設講座やプレガイダンスを実施し、学生の意識づけを図っています。

そのほか、学生の適性を考慮して周知をおこなっている大学もあります。例えば、「参加必須」ガイダンスをおこなったり、部活動に取り組む学生にはオープン・カンパニーを紹介したり、部活動に入っていない学生にはタイプ3を紹介したりと、工夫して周知を図っている大学もあります。

授業・プログラム等、タイプ1~4の検討・準備

授業・プログラム等、タイプ1~4の検討・準備の事例として多かったのは、「大学で実施しているインターンシップの見直し」です。

大学によって取り組み事例はさまざまですが、タイプ3に合わせて日数を5日間に増やす、大学の入学者パンフレットの文言を変えるなど、三省合意改正の内容に合わせてできるところから取り組んでいます。

さらには企業との調整やプログラムの打ち出し方などのすり合わせに懸念を感じ、企業や他大学の動向を注視している大学もあります。
名称や内容の変更にあたって懸念点や不明点を文部科学省や産学協議会に問い合わせるケースも見られます。
また、学生一人ひとりの就職活動のタイミングが多様化することを予想し、個別支援を強化した大学もあります。

学生による評価収集・検証

学生による評価収集・検討は第1期からスタートするため、「まだ話題になっていない」「認知度が低い」といった大学が多いようです。
ただし、なかには大学でおこなうインターンシップと、オープン・カンパニーのような学外の短期型プログラムを混同している学生もいるため、何らかの形で検証は必要といえるでしょう。

タイプ2・タイプ3の拡充

タイプ2やタイプ3の拡充に関しては、実施する企業を誘致して学内で募集していくケースが見られます。

例えば、武庫川女子大学は薬学部の低学年次の学生を対象に、「リアルな現場を見てほしい」と有償のインターンシップを導入しました。学生に現場を見てもらうことで、キャリア観の醸成につなげたいという思いから実施に踏み切っています。

また、椙山女学園大学は株式会社麦の穂※と連携し、「キャリアデザインスキル習得プログラム」とキャリア形成のための「リアルな職場体験」をおこなっています。職場体験の事前、事後の学習を大学側と企業側の双方で実施。学生がキャリアデザインを実践的に取り組めるようなプログラムになっています。
この取り組みは第6回「学生が選ぶキャリアデザインプログラムアワード」を受賞しました。

いずれも企業側との連携により成果が出たプログラムであり、今後も大学と企業の連携強化は進んでいくと考えられます。

武庫川女子大学と椙山女学園大学の事例については以下の記事で紹介しています。併せてご覧ください。

大学事例|有償制インターンシップで育む薬学生のリアルなキャリア観|武庫川女子大学 薬学部」を読む
アワード大賞|産学連携で取り組むキャリア教育のこれからのカタチ|株式会社麦の穂・椙山女学園大学」を読む

※株式会社麦の穂は、2023年9月1日より株式会社DAY TO LIFEに社名を変更しました

その他の取り組み

ロードマップで示されている取り組み以外にも、大学ごとにユニークな取り組みがおこなわれています。

例えば、授業と連携できるようなタイプ2、タイプ3のプログラムを実施する企業の検索ができるサイトの作成を検討するほか、連携してくれる企業を募り学生個人とマッチングのサポートをおこなう大学もあります。

また新たな授業を設け、学年不問でインターンシップ参加社数によって単位認定を検討する大学もあります。そのほか、就職指導教職員の早期任命や教職員向け勉強会の実施など、体制を見直す大学もありました。

いずれの事例も三省合意に向け、各大学が「今の支援体制は学生にとって最適か」「他に改善余地はないか」を検討したことで生まれた取り組み事例といえるでしょう。
学生の状況や、支援をおこなう過程で出た課題を参考に、大学の特色にあった支援体制を模索してみてはいかがでしょうか。

第2期以降のキャリア形成支援のポイント

これまでの取り組みを踏まえ、第2期(2024年度)以降のキャリア形成支援はどう考え、取り組んでいくべきでしょうか。

2024年2月現在、「4類型の実践に向けたロードマップ」において第2期は、産学協議会からはまだ情報発信されていない状況です。
第2期までの実践状況の検証、4類型の見直しの必要性を含め改善策の検討など、産学協議会の動きを受けて対応していく必要があるでしょう。

引き続き重要なのは、「適切な時期に適切な方法で学生がキャリア形成支援を受けられるように整えていく」ということです。
学生が変化の激しい時代を生き抜く力や自分の軸を育むために、インターンシップの質を高める取り組みなどは、ロードマップが出ていなくても継続した取り組みが求められます。

大学ができることとして、引き続き4類型について学生に周知していくことが挙げられます。
また、できる限り専門や専攻に近いプログラムを選ぶような促しも必要でしょう。そのためには、タイプ2やタイプ3の拡充に向けて企業と連携を進め、学生が安心して参加できるように準備を進めていくことが重要です。

インターンシップは企業にておこなわれますが、事前や事後の学習・振り返りは大学でも取り組むことが可能です。特に事後学習は適職発見だけでなく、学習意欲や就職活動への意欲向上につながります。
学生の顔つきを変えるには、事前事後学習でのキャリア・就職支援担当者からの丁寧な関わりが重要になるのではないでしょうか。

インターンシップをはじめとしたキャリア形成支援の重要性については以下の記事で紹介しています。併せてご覧ください。

文部科学省|質の高いインターンシップが変わりゆく時代でも生き抜く力を育てる」を読む
学生たちが「キャリア自律」の時代を歩んでいくために|多摩大学 初見准教授」を読む
インターンシップでは事後学習の充実が効果向上に欠かせない|多摩大学 初見准教授」を読む

まとめ

三省合意の改正を受け、インターンシップの定義が変わり、キャリア形成支援の取り組みも4つの類型に分類されました。実施に向けロードマップも作成されましたが、走り始めたばかりの施策であるため、今後も変更があると考えられます。

だからこそキャリア・就職支援担当者は、情報を適切にキャッチアップし、学生が適切な時期に適切な方法でキャリア形成支援を受けられ、変化の激しい時代でも生き抜く力を育めるようにサポートしていく必要があるでしょう。

マイナビキャリアサポートでは、キャリア・就職支援担当者の皆様に、参考になる情報提供をおこなっています。各大学のキャリアセンターで実施しているインターンシップの事例についても紹介しています。ぜひご活用ください。

「マイナビキャリアサポート」は
キャリア支援・就職支援に関する総合情報サイトです

長い学生生活の出口で、学生たちを社会へと送り出す。その大きな役割と責務を担っている皆さまに寄り添い、活用いただける情報をお届けするため、2022年にサイトをリニューアルいたしました。
より良いキャリア支援・就職支援とは何か。答えのないその問いに対して、皆さまの学生支援のヒントとなるような情報をお届けして参ります。