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タイプ3:汎用的能力・専門活用型インターンシップとは?特徴とメリット

タイプ3:汎用型能力・専門活用型インターンシップとは?特徴とメリット

2023年度からインターンシップのあり方が大きく変わります。
これまでインターンシップとされていたプログラムが「学生のキャリア形成支援活動」として4つに分類されます。また、一定の基準を満たすインターンシップでは、得られた学生情報を採用活動開始後に活用できるようになります。
この記事では、新たに定義されたインターンシップのうち「タイプ3:汎用的能力・専門活用型インターンシップ」について解説します。

「インターンシップ」が変わる?インターンシップの4類型とは

「人生100年時代」「VUCA時代」などといわれる変化の激しい時代を生き抜くためにも、学生自身が早い段階から自らのキャリア形成について主体的に考える能力を高めることが重要になってきました。企業側も、自律的にキャリア形成ができる多様な人材を求めています。

従来のインターンシップでは、得られた学生情報を就職・採用活動開始前に使用することは認められていませんでした。
また内容や期間が多岐にわたり、混乱や焦りを生む一因ではないかといわれることもありました。その結果、インターンシップの本来の目的である「学生のキャリア支援」が十分に発揮されていないのではないかという課題がありました。

そこで「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」は、学生がキャリアを主体的に考えられるように従来のプログラムを見直し、「学生のキャリア形成支援活動」を4類型に分類しました。
また、文部科学省・厚生労働省・経済産業省も2022年6月改正の「インターンシップを始めとする学生のキャリア形成支援に係る取組の推進に当たっての基本的考え方(三省合意)」を発表し、4類型について言及しています。

  • タイプ1:オープン・カンパニー(業界・企業による説明会やイベント)
  • タイプ2:キャリア教育(大学などの授業・講義や企業による教育プログラム)
  • タイプ3:汎用的能力・専門活用型インターンシップ(職場における実務体験)
  • タイプ4:高度専門型インターンシップ(特に高度な専門性を要求される実務を職場で体験)

参考:採用と大学教育の未来に関する産学協議会「産学で変えるこれからのインターンシップ」
参考:文部科学省「インターンシップを始めとする学生のキャリア形成支援に係る取組の推進に当たっての基本的考え方(三省合意)」

特に大学3年生から修士2年生までが対象で、多くの学生が関係してくるのが「タイプ3:汎用的能力・専門活用型インターンシップ」です。

インターンシップに関する基礎知識や今後の動向については以下の記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。

「インターンシップとは?種類と参加時期、メリットや今後の動向」を読む
「タイプ1:オープン・カンパニーとは?インターンシップとは違う?特徴とメリット」を読む
「タイプ2:キャリア教育とは?インターンシップとは違う?特徴とメリット」を読む
「タイプ4:高度専門型インターンシップとは?特徴とメリット」を読む

汎用的能力・専門活用型インターンシップの特徴

汎用的能力・専門活用型インターンシップとは、企業独自、もしくは大学が企業や地方自治体、地域と連携して実施するインターンシップです。
学生の適性や汎用的能力を重視する汎用的能力活用型インターンシップと、専門性を重視した専門活用型インターンシップの2種類が実施されます。いずれも実施期間に要件が定められていることが特徴です。

また、これまでインターンシップでは「学生情報を広報活動や採用選考活動に使用してはならない」とされてきました。しかし今回の改正により、学生情報を使用してよいプログラムと使用してはいけないプログラムが明確に定義されました。
「タイプ3:汎用的能力・専門活用型インターンシップ」や「タイプ4:高度専門型インターンシップ」では、インターンシップを通じて得た学生の情報を採用活動開始以降に利用できるため、こうした点も大きな特徴といえます。

実施内容

汎用的能力・専門活用型インターンシップでは、学生が参加する期間の半分を超える日数において、職場で就業体験をおこないます。
具体的には営業などの業務の同行のほか、事業所・研究所・工場などで実務を体験します。職場以外の場所との組み合わせも可能なため、就業体験の前後に企業の事業・業務説明やグループワーク、発表会・報告会を盛り込むスタイルが多いでしょう。

また、テレワークが常態化している場合は、テレワークも「職場」にあたります。就業体験では直接、社員から指導を受けられ、インターンシップ終了後にはフィードバックを受けられます。

基本は無給ですが、社員と同じ業務や働き方となる場合は、労働関係法令の適用を受け、有給となります。
また、企業は必要な情報を開示して募集をおこないます。具体的には以下のとおりです。

  1. プログラムの趣旨(目的)
  2. 実施時期・期間、場所、募集人数、選抜方法、無給/有給など
  3. 就業体験の内容(受入れ職場に関する情報を含む)
  4. 就業体験をおこなう際に必要な(求められる)能力
  5. インターンシップにおけるフィードバック
  6. 採用活動開始以降に限り、インターンシップを通じて取得した学生情報を活用する旨(活用内容の記載は任意)
  7. 当該年度のインターンシップ実施計画(時期・回数・規模等)
  8. インターンシップ実施に係る実績概要(過去2~3年程度)
  9. 採用選考活動等の実績概要(企業による公表のみ)

参考:採用と大学教育の未来に関する産学協議会「採用と大学教育の未来に関する産学協議会2021年度報告書」

実施の主な目的

汎用的能力・専門活用型インターンシップの大きな特徴は、インターンシップを通じて得た学生の情報を採用活動開始以降に利用できることです。ここでは汎用的能力・専門活用型インターンシップの学生側、企業側それぞれの目的を解説します。

学生側の目的

汎用的能力・専門活用型インターンシップにおける学生側の目的は、就業体験を通じて自らの適性や能力を見極めることです。
企業での就業体験を経ることで、イメージではなくよりリアルな実体験から自分の適性や進路を考えるきっかけを得られます。

企業側の目的

汎用的能力・専門活用型インターンシップにおける企業側の目的は、採用選考を視野に入れた評価材料を取得することです。
参加した学生を評価した材料を集め、採用活動に活用することができます。

参加期間

参加期間は、汎用的能力活用型は5日間以上、専門活用型は2週間以上と定められています。
これまで5日未満で開催されてきたプログラムは、今後インターンシップと呼ぶことはできないため、名称を変えていく必要があります。

汎用的能力・専門活用型インターンシップのメリット

学生側・企業側にはそれぞれどのようなメリットがあるのでしょうか?詳しく解説します。

学生側のメリット

従来のインターンシップは期間もプログラムもさまざまでした。また、インターンシップが採用活動に直結しているケースも存在しました。学生の視野を広げることや業界・業種理解を深めることに寄与していた反面、複数のプログラムに参加することで学業との両立が難しいと感じる学生も存在しました。
しかし今回、学生が学業とインターンシップを両立できるように一定のルールを設けたことで、さまざまなメリットが生まれました。

就業体験ができる

まずは、必ず就業体験ができるということです。
参加日程の半数を超える日数をあてなければならないと定めているため、汎用的能力活用型なら3日以上、専門活用型では1週間以上、実務の体験が可能です。一定期間就業体験をすることで、仕事について具体的にイメージできるようになるほか、最初はできなかったことが指導を受けたり自分なりに考えてできるようになるなど、成功体験を得たり自らの適性を見極めることもできるかもしれません。

社員からフィードバックを受けられる

インターンシップで学生は、職場の社員から直接指導を受けることになります。
またインターンシップ終了後には、優れている点やさらに身につけるとよい点などについてフィードバックがもらえます。
すでに社会で活躍している社員の目から見たコメントは、学生が自己を客観視するきっかけにもなります。

長期休暇期間に参加できる

新たに定義されたインターンシップでは、学業との両立に配慮し、実施時期を「学部3年・4年ないし修士1年・2年の長期休暇期間(夏休み、冬休み、入試休み・春休み)」に定めました。
そのため、学業への支障なく、計画的にインターンシップへの参加が可能になりました。学生にとっては大きなメリットです。

※ただし、大学の正課授業および博士課程でおこなわれるインターンシップの場合は、この限りではありません。実施期間については参加前に確認するようにしましょう。

企業側のメリット

企業側のメリットとして挙げられる点は、まず自社の業務内容や求める能力について、学生により深く理解してもらえるところです。
「オープン・カンパニー」でも自社の説明は可能ですが、就業体験をともなうインターンシップでは、職場の雰囲気はもちろん、仕事の内容に対して学生の理解は一段と深まります。

また、インターンシップを担当する社員の成長も期待できます。学生の指導やインターンシップ終了後のフィードバックが必須要件に含まれるため、普段の業務とは異なる「教育」の機会を与えることができます。学生を指導するなかで、自分自身の仕事に関する気付きも得られるかもしれません。

また「企業の目的」でも解説したように、今回インターンシップとして定義されたプログラムではインターンシップ中に得た学生の情報や評価は、採用活動開始以降に限り活用できるようになります。
学生の連絡先を活用して採用活動へのエントリーに関する案内の送付や、学生の総合評価を活用して採用選考プロセスの一部免除といった活用例が考えられるでしょう。

他にも、「就業体験要件」「指導要件」「実施期間要件」「実施時期要件」「情報開示要件」の要件を満たせば、募集要項に「産学協議会基準準拠マーク」を記載できるようになるのもメリットのひとつです。

汎用的能力・専門活用型インターンシップの注意点

要件がきっちりと整理され、メリットも明確になった汎用的能力・専門活用型インターンシップですが、参加や実施にあたって注意点もあります。
学生側と企業側から、それぞれの注意すべきポイントを説明します。

学生側の注意点

まずは学生が注意すべき点を解説します。ポイントを知り、慌てずに準備していきましょう。

参加倍率が高い可能性がある

従来のインターンシップは、選考なしで先着順、1日で終わるプログラムも含まれており、複数日程での開催も多かったため、気軽に参加できました。
しかし新たに定義づけられたインターンシップは開催期間が長期休暇期間中に限られます。加えて就業体験が必須のため、1回に参加できる人数も少ないことが見込まれます。

なかには開催そのものを断念する企業もあるかもしれません。そのため、応募の倍率が高まる可能性があります。参加するにあたっても、エントリーシートや面接などによる選考をおこなう企業が増えると予想されます。

実施期間が5日以上かかる

新たな定義のインターンシップでは、実施期間が5日間以上と定められています。
そのため、短期留学や部活動の日程など他の予定との兼ね合いで参加を断念したり、複数の企業のインターンシップ参加が難しい可能性もあり、注意が必要です。
その代わり、汎用的能力・専門活用型インターンシップは時間をかけて就業体験をおこなうため、従来のプログラム以上に企業の実務や社風などの理解を深めやすいというメリットがあります。

なお、インターンシップに参加できなかったとしても、ルール上は企業の採用活動において必須ではないため、焦って参加する必要はありません。
インターンシップに参加する場合は、学業や他の活動などに支障がない範囲でスケジュールの調整をするとよいでしょう。

企業側の注意点

汎用的能力・専門活用型インターンシップは、就業体験に加えて社員が学生を指導することが必須となります。
そのため人事担当者を中心に社員の負担が大きく、頻繁に実施するのが難しい可能性もあります。また学生を受け入れるためのプログラムの再設計、運営体制の調整や打ち合わせなど開催までの準備はもちろん、応募に際しては募集要件を明示しなければいけません。
他にも開催期間中のトラブル対応などに備えておく必要があります。

また、一度に受け入れられる学生数に限りがあるため、参加できない学生もいると思われます。「インターンシップへの参加が採用選考に必須ではないこと」を学生に向けてわかりやすく情報開示するようにしましょう。

このように、インターンシップだけで多くの学生に企業理解を求めるのは限界があるため、オープン・カンパニーやキャリア教育なども併用して実施することも検討したほうがよいでしょう。その場合は、自社を理解してもらえるようにプログラム内容の見直しや工夫が不可欠です。

インターンシップに参加するうえで意識したい心がけ

新たな定義でおこなわれるインターンシップはあくまでキャリア形成支援活動のひとつであり、企業の採用活動に直結するものではありません。参加にあたっては、自らの能力や適性を見極める機会として活用しましょう。

また、実施期間が長期休暇期間中だけとなり、開催日数も5日以上と定められています。エントリーシートの提出や面接など複数回の選考が設けられている場合も考えられるため、計画的に準備しましょう。

インターンシップは普段その企業で実際に仕事をしている社員の指導とフィードバックが受けられる貴重な機会ですから、しっかり振り返りをおこない今後に活かしましょう。

また、希望するインターンシップに参加できなくても、広報活動開始以降のエントリーは原則可能です。インターンシップ以外にもキャリアや就職について考え、スキルを身につける機会は多数存在するため、情報を収集して行動していきましょう。

大学(キャリア・就職支援担当者)が意識すべきポイント

今回の変更にともない、大学などで実施しているプログラムについて見直しが必要な点が考えられるかもしれません。
例えば正課の授業でおこなわれているインターンシップに関しては、以下が挙げられます。

  • 企業と調整して、就業体験を含めた実施期間を5日間以上に再設計する
  • 企業が募集に際して提示する「情報開示要件」を学生に明示する
  • 学生に対しては、インターンシップに参加できる3年生より前から情報提供をこまめにおこない認知してもらう

また、3年生のインターンシップ選考と4年生の就職活動の実施月が重なるため、相談業務が増える可能性もあります。各学生の相談に対応できるように体制を整えるなどもポイントとなりそうです。
さらに、インターンシップの選考に合格しなかった学生や「そもそも自分が何をやりたいかわからない」とインターンシップへの参加を見送る学生に対するケアも必要です。
「インターンシップに参加できなくても採用選考に応募できる」「インターンシップ以外の経験を積む」「インターンシップについて考える前にオープン・カンパニーなどに参加して視野を広げる」など学生の状況に合わせた丁寧なアプローチを繰り返しおこなう必要もありそうです。

加えて、大学ではキャリア形成支援に関する知識を有する教職員の育成や、大学と企業のマッチングをおこなえるコーディネーターなどの専門人材の育成や確保が今後ますます必要になるでしょう。
そうした人材と環境のもと、学生の受け入れに前向きな企業を開拓し大学主導でインターンシップを開催できれば、学生に対してよりよいキャリア形成支援の場を提供できるようになります。

大学主導のインターンシップについての事例や解説については、以下の記事を併せてご覧ください。

「文部科学大臣賞|学生を大きく成長させる大学主導のインターンシップ|大東文化大学」を読む
「大学事例|実際の業務を経験し学生たちが学び成長するコーオプ教育|金沢工業大学」を読む
「インターンシップでは事後学習の充実が効果向上に欠かせない|多摩大学 初見准教授」を読む

まとめ

新たなインターンシップとして定義づけられた「汎用的能力・専門活用型インターンシップ」は、学生が自らキャリアを考えるきっかけとなる、就業体験をともなうプログラムです。

学生の皆さんは、オープン・カンパニーなどを活用して企業や業界の理解を深め、インターンシップに参加したい企業を検討していきましょう。仮に希望するインターンシップに参加できなくても採用選考にはエントリーできるため、企業が連携するプロジェクトなど、ほかの活動にも目を向けてみましょう。

キャリア・就職支援担当者の皆様は、既存のプログラムの見直しや学生へのきめ細かい情報提供、相談への対応と負担が増える可能性があります。

マイナビキャリアサポートでは、今後も変化する可能性の高いインターンシップ情報などをいち早くキャッチし、キャリア・就職支援担当者の皆様に有益な情報を提供していきます。
また、マイナビでは登録すればインターンシップにエントリーできる「マイナビ」や1、2年生向けの新しいキャリア形成支援サイト「START」を展開しています。併せてご覧ください。

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