2027年卒の就職活動スケジュールは基本的に前年からの変化はありませんが、一部企業が新卒一括採用の廃止を発表するなど、多様化の兆候も出てきています。
一方で、リファラル採用やスカウト機能活用など、さまざまな採用手法を取り入れて新卒採用を強化しようという動きもあります。
このような傾向から、前年通りにキャリア・就職支援を進めてよいのか疑問に思う人もいるのではないでしょうか。
この記事では、2027年3月に卒業を予定している学生の就職活動スケジュールや就職・キャリア形成支援におけるスケジュール作成のポイントについて解説します。
2027年卒の就職活動全体のスケジュール
就職活動のスケジュールは、2018年10月以降は毎年度、政府が「就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議」を開催し、「就職・採用活動日程に関する考え方」を取りまとめて就職活動・採用活動の日程を決定しています。
社会情勢の変化などを考慮しつつ、学生が学修時間などを確保しながら安心して就職活動に取り組めるようにするにはどうしたらよいかを検討し、毎年のスケジュールを定めています。
なお、2027年卒(2026年度卒)の学生の就職活動スケジュールは、2024年12月に開かれた就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議で取りまとめられ、2025年3月に関係省庁から経済団体などに対して遵守するよう要請されています。
出典:内閣官房「2026年度卒業・修了予定者の就職・採用活動日程に関する考え方」
ここからは、就職活動のスケジュールに合わせて取り組むべき内容などを説明します。学生向けにはマイナビ2027で以下コンテンツを用意しております。併せてご覧ください。
2025年4月~:インターンシップ&キャリアの情報提供開始
2025年4月頃から2027年卒向けサイトがオープンし、順次インターンシップ&キャリア※の情報提供が開始されます。
マイナビの「2026年卒企業新卒採用予定調査」によると、「前年よりインターンシップ&キャリア応募受付の開始時期を早めた(早める)」と回答した企業は34.0%となっており、前年と比べて5.8ポイント増えています。
また、インターンシップ&キャリアの応募受付開始時期は6月が最多で、次いで8月、7月となっており、大学の夏季休暇期間である8月〜9月に合わせて実施されるケースが多くなっていることがわかります。
一方で、参加者を募るにあたり、エントリーシート(ES)や面接などの選考をおこなう企業は早めに受付を始める傾向にあります。実際、5月以前に受付を始める企業は19.3%となっており、前年より2.3ポイント増加しています。
そのため、学生は4月~6月までの期間に選考を意識して応募したい企業を選定し、インターンシップ&キャリアに参加するための準備に取り組む必要があるでしょう。
出典:マイナビキャリアリサーチLab「2026年卒企業新卒採用予定調査」
※マイナビでは、インターンシップおよび仕事体験、オープン・カンパニー、キャリア教育等を「インターンシップ&キャリア」と総称しています。
インターンシップ&キャリアの各プログラムの特徴は以下の記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。
マイナビ2027「インターンシップ&キャリアの基礎知識」を読む
2026年3月~:企業エントリー・広報活動開始
採用における企業の「広報活動」とは、業界情報や企業情報、新卒求人情報などを学生に対して広く発信していく活動を指します。
マイナビの「2026年卒企業新卒採用予定調査」によると、企業のエントリー受付開始時期として最も多いのは2025年3月で、53.5%となっています。
一方、2月以前にエントリー受付を始めている企業は前年比で7.5ポイント増加し、43.5%と増加傾向にあります。特に上場企業は前倒し傾向が見られ、前年よりも割合は減っているものの、54.3%と半数以上の企業がエントリー受付を始めています。
また、採用に直結する個別企業説明会・セミナーの開始時期について聞いたところ、最も多かったのは2025年卒と同様に3月でした。一方で、2月以前に開始している企業の割合は38.6%と前年比で8.9ポイント増加しました。
こうした結果から、一部の企業では説明会やセミナーをエントリー受付開始前からおこなっていることがわかります。
そのため学生は、気になる企業の説明会の日程を早期に把握しておくとともに、3月の広報開始に向けて業界研究や仕事研究を進めながら、応募したい企業の方向性を見出しておくとよいでしょう。
2026年6月~:採用選考活動開始
「採用選考活動」とは、一定の基準に照らして学生を選抜することを目的とした活動を指します。内閣官房の文書には、こうした活動のうち「時間と場所を特定して学生を拘束しておこなう面接や試験などの活動」を採用選考活動という、と記載されています。
一般的な選考は以下の流れで実施されます。
- エントリーシートの受付
- エントリーシートの結果通知
- 適性検査・筆記試験の実施
- グループディスカッションの実施
- 面接の実施
採用選考活動開始は卒業・修了年度の6月1日以降と決められていますが、実際はそれよりも早く始めている企業が多いようです。
マイナビの「2026年卒企業新卒採用予定調査」によると、エントリーシートの受付時期は2025年3月上旬が54.1%と最多で、選考結果の通知は主に3月上旬から4月中旬にかけておこなう予定となっています。なお、2月以前にエントリーシートの受付を始めている企業は前年比で1.1ポイント増加し、35%となっています。
また、適性検査・筆記試験の開始時期は、3月が43.5%、4月が14.9%と、この2ヵ月に集中しています。面接を開始する時期は3月が最も多く40.2%、次いで4月が18.2%となっています。なお、2月以前に面接を開始した企業は前年比で4ポイント増加し、31.1%と増加しています。
このように、エントリーシート受付開始後は、速いペースで選考が進むことがわかります。いざ活動を開始したあとに焦らないよう、学生は早めにエントリーシートの準備や筆記試験対策、面接対策などに取り組んでおくのがよいでしょう。
エントリーシートの書き方や面接のポイントについては以下の記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。
「エントリーシート(ES)の書き方は?企業が注目するポイントから考えるESの書き方」を読む
「就活の面接対策は必要?効果的な面接練習と質問例」を読む
「WEB面接とは?準備や当日の流れ、WEB面接に関するQ&Aを紹介」を読む
2026年10月~:正式内定
「内定」とは、企業が求職者に対して採用の意思を通知することであり、求職者が承諾することで入社への手続きが進められます。新卒採用の場合は、会社側から内定通知書が交付され、学生側からは誓約書を提出する形式が多く取られています。
正式内定の開始日は卒業・修了年度の10月1日以降で、それ以前に出された通知は内々定と呼ばれます。
マイナビの「2026年卒企業新卒採用予定調査」によると、約90%の企業が2025年5月までに内々定を出すとしており、選考後すぐに内々定を出す傾向にあると考えられます。
また、10月の正式内定までに辞退者が出ないようにするため、内々定を出す時期にあわせて懇親会などの取り組みを始める企業が多い傾向にあります。他にも、定期的なメール連絡や人事・先輩社員との面談などをおこなう企業もあります。2026年卒の場合、2025年5月以前は72.4%、6月からは27.5%の企業が、こうした辞退者を減らすための施策をおこなうとしています。
複数内定を保持している学生は、あらためて自分の価値観と照らし合わせて企業を選ぶことが大切です。迷っている場合は、内定者向けのイベントに参加することも有効です。
就職活動・採用市場における近年の動向
採用活動に悩む企業が増えている
業界によって差はあるものの、緩やかに景気が回復しつつある経済状況を受け、新卒採用を積極的に実施する方針を立てる企業は増加しています。
また、全体的な傾向として、将来の幹部候補やコア人材の採用というより、企業を支える次世代の人材確保や人員補充のために新卒を採用するという考え方が多くなっています。
実際、「2026年卒企業新卒採用予定調査」で採用実施の理由を聞いたところ、最多は「組織の存続と強化(活性化)(64.0%)」で、次いで「年齢など人員構成の適正化(58.5%)」「将来の幹部候補・コア人材の確保(40.1%)」となっています。
多くの企業が積極的な採用計画を立てている反面、採用活動が厳しくなると感じている企業も少なくありません。「2026年卒企業新卒採用予定調査」によると、少子化による新卒学生全体の減少を背景に、「母集団(エントリー数)の不足」を採用活動の課題に挙げる声が目立ちます。
そうした企業は、就職情報サイトへの掲載だけでなく、リファラル(人脈による紹介)採用や、学生に個別アプローチができるスカウト機能を活用するなどといった、さまざまな手法で学生との接点を増やそうとしています。
また、円安を背景とした物価高への対応や新卒採用強化のために、初任給の引き上げを検討している企業も増えています。「2026年卒企業新卒採用予定調査」によると、全体の54.1%が初任給の引き上げを予定しており、前年比6.9ポイント増加しています。
出典:マイナビキャリアリサーチLab「2026年卒企業新卒採用活動調査」
出典:マイナビキャリアリサーチLab「2025年卒就職内定率(内々定率)の状況」
出典:マイナビキャリアリサーチLab「2025年卒大学生活動実態調査(10月中旬)」
マイナビには、学生が匿名で自己PR文を登録することで、その内容に興味を持った企業から個別にスカウトを受けられる機能があります。学生自身がまだ知らない企業や業界との出会いにつながり、視野を広げるきっかけにもなります。
学生への就職支援の一環としてぜひご活用ください。
マイナビ2027 「便利な活用術 -スカウト機能-」
約8割の学生がインターンシップ&キャリアに参加している
2023年度、インターンシップのあり方が変わりました。文部科学省・厚生労働省・経済産業省は、企業と学生のマッチングを高めつつ、学生がキャリアを主体的に考えられるよう、学生のキャリア形成支援活動を以下の4類型に分類しています。
- タイプ1:オープン・カンパニー(業界・企業による説明会やイベント)
- タイプ2:キャリア教育(大学などの授業・講義や企業による教育プログラム)
- タイプ3:汎用的能力・専門活用型インターンシップ(職場における実務体験)
- タイプ4:高度専門型インターンシップ(特に高度な専門性を要求される実務の職場体験)
出典:厚生労働省「インターンシップを始めとする学生のキャリア形成支援に係る取組の推進に当たっての基本的考え方」
このうちインターンシップに該当するのは、タイプ3の汎用的能力・専門活用型インターンシップと、タイプ4の高度専門型インターンシップです。「質の高いインターンシップ」の普及を目指し、職場での業務体験が必須などの条件が記載されています。
なかでも多くの大学生に関わるのが、タイプ3の「汎用的能力・専門活用型インターンシップ」です。学業との両立の観点から、夏休みや春休みなどの長期休暇期間中に5日間以上で実施されます。
また、1日完結型のプログラムはインターンシップに含まれず、企業による説明会やイベントは、タイプ1の「オープン・カンパニー(業界・企業による説明会やイベント)」に該当します。
このように多様化しているインターンシップ&キャリアですが、「2026年卒大学生広報活動開始前の活動調査」によると、2020年度以降は学生の参加率が80%(2025年卒は過去最高の85.7%、2026年卒は85.3%)を超えていることがわかります。
出典:マイナビキャリアリサーチLab「2026年卒大学生広報活動開始前の活動調査」
出典:マイナビキャリアリサーチLab「2024年度(2025年卒版)新卒採用・就職戦線総括」
インターンシップの動向や4類型のより詳細な内容は以下の記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。
「インターンシップとは?種類と参加時期、メリットや今後の動向」を読む
早期からキャリア形成活動に取り組む学生が増えている
大学入学前からキャリア形成支援プログラムを実施したり、LMS(学習管理システム)を導入し継続的なキャリア形成支援をおこなう大学が増えたりしたことなどが影響し、早い段階からキャリア形成活動に取り組む学生が増えています。
「2026年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(4月)」によると、低学年(大学1・2年)でキャリア形成活動に参加した経験のある学生は47.2%となっており、前年より4.5ポイント増加しています。参加したプログラムについては、前年同様「大学の授業で実施されるキャリア教育(講義)(23.9%)」や「大学が主催するオープン・カンパニー型プログラム(業界・企業による説明会・イベント)(18.7%)」など、大学内で実施されているプログラムへの参加割合が高いことがわかります。
また、「2025年卒学生就職モニター調査(7月の活動状況)」で就職活動中の大学4年生に「キャリア形成活動を開始した時期/開始したかった時期」を聞いたところ、実際に大学1・2年生から開始した学生は31.7%であるのに対し、開始したかったと回答した学生は51.3%となっており、約20ポイントの差が生じています。
「キャリア形成活動を早く始めておけばよかった」と感じる学生が多い背景には、就職活動が本格化する前に「自分は何に興味があり、将来は何をしたいか」といったキャリア観を深める機会が少なかったことが考えられます。
特に、大学1・2年生のうちに自己分析や社会を知る経験を積んでいなかった学生ほど、いざ就職活動が始まったときに「自分に合った企業が分からない」「やりたいことが決まらない」という壁に直面しやすくなります。
そのため、大学1・2年生のうちからキャリア形成活動に取り組んでいれば、「もっと早く自分の関心や価値観に気づけたはず」と感じている学生も多く、キャリア形成活動の重要性を実感するきっかけとなっています。
出典:マイナビキャリアリサーチLab「2026年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(4月)」
出典:マイナビキャリアリサーチLab「2025年卒学生就職モニター調査(7月の活動状況)」
学生のキャリア形成支援をおこなうなかで、「何から始めたらいいのかわからない」という声を耳にすることがあるかと思います。マイナビでは、キャリアに興味を持ち始めた大学1・2年生が安心して第一歩を踏み出せるようなコンテンツを提供しています。
詳しくは以下のページをご覧ください。
マイナビ2027 START はじめてのキャリア!スターターパック
約3割の学生が就職活動で生成AIを活用している
近年、生成AIが身近になり、学生のなかには日々の生活だけでなく就職活動で生成AIを補助ツールとして活用している人もいます。
マイナビが実施した「大学生活動実態調査」の2024年卒と2025年卒の結果を比較すると、2025年卒における生成AIの利用経験者は23.7ポイント増加し、62.9%となりました。利用経験者のうち就職活動で利用したことのある学生は37.2%ですが、利用者の伸びを考えると今後も増えていくことが予想されます。
さらに、2025年卒の学生に就職活動時の具体的な利用シーンを聞いたところ、最多は「ESの推敲(誤字脱字チェックや添削など)」で56.6%、次いで「ESの作成」が41.7%でした。
テキスト作成は生成AIの得意分野のため利用率が高くなっていると考えられますが、ほかにも対話機能を使って自己分析する(28.8%)、想定問答を生成させて面接の対策をする(17.8%)などさまざまなシーンで活用されています。生成AIの活用の幅は今後も広がることが想定されます。
出典:マイナビキャリアリサーチLab「2024年卒大学生活動実態調査(5月)」
出典:マイナビキャリアリサーチLab「2025年卒大学生活動実態調査(5月)」
就職活動での生成AIの利用については以下の記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。
「就職活動での生成AI利用、キャリア・就職支援担当者は学生とどう向き合う?」を読む
キャリア・就職支援におけるスケジュール作成のポイント
ここまで、2027年卒の就職活動スケジュールについて解説してきました。では、キャリア・就職支援はどのように進行すればよいのでしょうか?
まずは、大学の行事やインターンシップ&キャリアの実施時期、就職・採用スケジュールなどから、就職活動の全体像を把握することが大切です。
そして、前年の学生や企業の動きを踏まえながら、講座やセミナー、学生の個別面談の日程を組み、学生がフェーズごとに余裕をもって取り組めるようにする必要があります。
昨今の新卒採用では、エントリー数の不足などを理由に、予定通りの採用ができないと感じている企業が増えています。そのため、政府が要請するスケジュールよりも早い段階で学生とコンタクトを取ろうとする動きがあり、学生側の動きも早まっています。
学生の動きに合わせて適切に支援できるよう、前年の動きをなぞるだけでなく、現在の企業や学生の動向についても情報収集しておきたいところです。
例えば、大学3年生の3月上旬にESの提出が集中しているため、2月には学生からの相談に対応できるような体制を整えておく必要があるでしょう。
また、インターンシップ&キャリアに参加した学生には3年生前期以降、参加できなかった学生に対しては後期の早い段階(12月末まで)で、自己分析やES作成の講座を受講してもらい、余裕を持って就職活動に取り組めるような支援計画も立てておきます。
さらに、就職活動での生成AIの利用や、キャリア形成に取り組む低学年学生の増加などを踏まえた講座を用意する必要もあるでしょう。
同時に、学生のセミナー参加状況を見ながら今後の支援策を検討していくなど、柔軟な対応が求められます。
スケジュール作成のポイントについては以下の記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。
まとめ
2027年卒の就職活動スケジュールは、現時点では例年通りの進行が予想されます。
しかし、近年の傾向を踏まえると、一部の企業では新しい採用方法を取り入れたり、選考や採用活動スケジュールを前倒しで実施する可能性があります。また、採用選考手法の多様化が進むなかで、学生が戸惑うケースや十分に準備ができないまま選考に臨むケースも増えることが予想されます。
そのため、キャリア・就職支援担当者としては企業や学生の動向を把握しておくことが重要です。
特に、新しい採用手法への準備が整っていないために、企業と学生の接触機会が失われる可能性があります。
こうした機会損失を防ぐためにも、新しい採用手法への対策を検討すると同時に、年度ごとのスケジュールを見直して次年度以降のスケジュール作成に活かすなど、状況に応じた柔軟な対応が求められます。
マイナビキャリアサポートでは、キャリア・就職支援担当者の皆様が就職活動支援計画を立案する手助けができるように、今後も変化する可能性の高い就職活動のスケジュールなど参考になる情報を発信しています。今後もご活用ください。
「マイナビキャリアサポート」は
キャリア支援・就職支援に関する総合情報サイトです
長い学生生活の出口で、学生たちを社会へと送り出す。その大きな役割と責務を担っている皆さまに寄り添い、活用いただける情報をお届けするため、2022年にサイトをリニューアルいたしました。
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