年によって異なりますが、最近の就職活動は、「3月に企業エントリー・広報活動開始、6月に選考開始」というスケジュールを基に進んでいます。このスケジュールをふまえて動く学生が多くを占める一方で、さまざまな理由から学部4年生・修士2年生の夏以降に就職活動を本格化させる学生もいます。
この記事では、就職活動に出遅れてしまう理由や、夏以降に就職活動を始める際のポイントなどについて解説します。
就職活動に出遅れてしまう理由
就職活動のスタートが遅くなるのには、学生それぞれに理由があります。ここでは特に多い理由について説明します。
学業や資格の勉強が忙しかった
まずは「学業や資格の勉強が忙しい」という理由です。両立が難しく、それが理由で就職活動が遅れてしまう人も多く存在します。
特に理系の学生は、卒業生から引き継いだ研究に取り組むことで、就職活動どころではないケースもあります。
また、「前期で卒業の見通しが立ってから就職活動を始めよう」と、単位取得のために学業に励む学生も少なくありません。他にも国家試験の勉強を優先させ、結果が判明してから就職活動を本格化させようと考える学生もいます。
そのため、学業や研究が落ち着く時期がいつか、資格の合格がまだ出ていない場合は合格日がいつか、就職活動をいつから始めるかを把握しておくことが大切です。
部活動やアルバイトに力を入れていた
アルバイトや部活動に精を出し、本格的に就職活動を始めるのが遅くなったという人もいるでしょう。まとまったお金が必要だったり、アルバイトにやりがいや楽しさを見出したりするケースです。アルバイトで十分な収入を得ていると、「この状況のままでも構わない」と思い、就職活動を開始するまでに時間がかかってしまうこともあります。
また、部活動に力を入れている学生の場合も大会やイベントに向けて打ち込んだり、「引退するまでは競技に専念したい」と思う学生もいます。部活動で成果を出しているとプロへの推薦を受けることもあり、就職するかプロになるかで迷うこともあります。
このように、就職活動をするつもりはあるけれどアルバイトや部活動を優先したら結果的に行動し始めるのが遅くなってしまった、というケースが多々あります。
また、就職活動の必要性を感じていない場合は、どこかのタイミングで「卒業してからもアルバイト生活を続けるか」「アスリートとしての人生をどこまで続けるか」を考える必要があるでしょう。
留学を優先していた
留学をすると、帰国のタイミングによって就職活動のスタート時期が異なります。
たとえば、大学3年生の秋から留学した場合、帰国が4年生の5~6月頃となることもあるため、一般的な学生と比較すると、やむを得ず出遅れてしまうケースがあります。
そのため渡航前から就職活動に関する情報収集をする必要があるでしょう。また、留学後は、「留学の目的に対して自分がどのように学び成長できたか」を整理することが大切です。
進学か就職で迷っていた
大学院に進学するか、それとも就職するか、どちらにするか悩んでいるうちに、出遅れてしまうケースもあります。
大学院の入試結果が判明してから就職活動を始めたという学生もいるかもしれません。
可能であれば、進学に向けた勉強とともに学びたい分野に関する事業を展開してる企業についても調べておくのが良いでしょう。
健康上の理由から遅れてしまった
病気やケガなどの健康上の理由で、就職活動が遅れる場合もあります。
体調を回復させるために治療を優先すべきですが、治療が落ち着き余裕がでてきたら自己分析や情報収集をしておくとよいでしょう。周りに相談しづらい場合は、大学のキャリアセンターに問い合わせて、療養場所からでも参加できるWEB面談などを活用するのも有効です。
自分に合う業界・企業がわからない
学生のなかには、「自分が何をしたいのかわからない」「自分に合う業界や企業がわからない」といった理由から出遅れてしまうケースもあります。
多くの学生が直面する問題である一方、考え込んでいるうちに身動きが取れなくなる人もいます。一人で抱え込んでしまうと視野も狭くなってしまうため、まずは他人に相談したり合同説明会に参加したりすることから始めましょう。
就職活動が怖い
就職活動そのものが怖い、という理由で出遅れてしまうケースも多々あります。
社会人になることが怖いと感じる人もいれば、社会人になると自由を奪われるのではないかと怖れを抱く人もいるでしょう。また就職活動をイメージしづらく、不安を感じる場合もあります。
他にも自分がアピールすべき点や企業からの評価ポイントがわからず、「何から手を付けてよいかわからない」と立ち止まることもあります。
「就活が怖い」と感じる理由や理由ごとの解消方法については以下の記事でも詳しく紹介しています。併せてご覧ください。
「「就活が怖い」を解消するには?不安に感じる理由と解消法」を読む
就職活動を途中でやめてしまった
当初はスケジュール通りに就職活動を進めていたものの途中でやめてしまった学生が、夏以降に就職活動を再開させるというケースもあります。
こういったケースでは、志望度が高い企業の選考で不採用となり自信をなくしてしまったり、元々目指していた方向性に疑問を抱いてしまったりすることが理由として挙げられます。内定を得た同級生と比較して、プレッシャーからやる気を失う人もいるでしょう。
就職活動を仕切り直すにあたっては、活動を途中でやめた原因は何かを明らかにし、対策を考えて臨むことが重要です。
選考になかなか通らない
選考になかなか通らず、夏以降も就職活動を継続する人もいます。
自分なりに精一杯頑張っているのに、内定がない状態だと悲観的になるかもしれません。だからこそこれまでの活動を丁寧に振り返り、原因を突き止めることが不可欠です。
企業の選び方や受けた企業の数に課題があるのか、エントリーシート(ES)や筆記試験が通過しないのか、あるいはグループディスカッションや面接で不採用が続いているかなど、つまずいている場面によって対策は大きく変わります。
また、悲観的になると「自分には良いところが何もない」と思ってしまいやすくなります。
しかし選考は企業と応募者がコミュニケーションを図る場です。ESや面接で自分の良さをどうしたら伝えられるのか、自分ができることから始めてみましょう。
ESの書き方や筆記試験対策、グループディスカッション対策や面接対策については、以下の記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。
「エントリーシート(ES)の書き方は?企業が注目するポイントから考えるESの書き方」を読む
「グループディスカッションとは?対策と練習方法、評価ポイント」を読む
「就活の面接対策は必要?効果的な面接練習と質問例 」を読む
就職活動に出遅れてしまったときの注意点
就職活動に出遅れてしまったらどうすればよいでしょうか。ここでは、学生側と支援担当者側の両面から対応策を見ていきます。
一人で抱え込まないようにする
まずは、一人で抱え込まないようにしましょう。
もちろん「自分の人生だから自分で決めなければ」と自ら考えて行動することはとても大切です。しかし一方で、一人で就職活動を続けていると視野が狭くなり、自らの課題に気付きにくくなります。自分を客観視しづらくなり、「自分が考える自分」と「人から見える自分」にずれが生まれる可能性もあります。
そのため、他者の意見を受け入れて視野を広げるためにもキャリアセンターなどで相談することをおすすめします。
キャリア・就職支援担当者は、就職活動のスタートが遅くなった学生に対してキャリアセンターなどの利用を呼びかけるほか、来室したら訪問してくれたことに感謝して迎え入れるようにしましょう。
特に一人で頑張ってきたものの就職活動で苦戦してきた学生には、これまでの取り組みをねぎらうようにします。そして今の状況を丁寧に聞き、定期的に面談に来てもらえるように関係構築を図っていきましょう。
遅れていることに対して過度に悲観しない
就職活動が遅れていると周りと比較し、自分を責めたり、落ち込んだりしがちです。
周りの学生が先に複数内定を獲得して就職活動を終えた姿を見ると、焦りや自分へのふがいなさを感じるかもしれません。
しかし、複数の内定があったとしても入社できるのは1社です。
また、人によって志望業界や業種は異なります。周りと比較して過度に悲観しないようにしましょう。「納得いく就職活動をおこなえばよい」という気持ちで、自分と向き合って活動できれば、自分の行動や決断に納得感が生まれ、妥協しない就職活動につながります。
キャリア・就職支援担当者は悲観的になりやすい学生に寄り添い、励ましながらサポートを続けていくことが求められます。焦ったり、自分を責めたり、落ち込んだりと不安定なうちは気持ちを整理できるよう傾聴に徹するとよいでしょう。
同時に、学生が具体的な行動をおこせるようなサポートも必要です。ピーク時と比べると夏以降は求人が減るため、学生が焦る要因になります。
うまく求人を探せない学生もいるため、求人の探し方や企業の選び方をアドバイスするだけでなく、ときにはキャリアセンターとつながりのある企業を紹介するなどして、応募先の提案もおこなっていきましょう。
頑張ってきた取り組みを認める
前述のとおり、遅れて就職活動を始める学生のなかには部活動やアルバイト、留学、学業や資格取得など、何かに打ち込んできた人もいるでしょう。その取り組みは結果として学生自身の力になっています。
まずは、自分が打ち込んできたことやその努力を認めてあげましょう。頑張ってきた取り組みを認めることが、より深い自己分析や積極的な行動につながっていきます。
キャリア・就職支援担当者は、学生の頑張りをねぎらい、取り組んできた内容を掘り下げて、学生のよさや強みを見出すきっかけにしていきましょう。
自身の強みが見つかれば、就職活動の軸や大切にしたいこと、方向性を見出すことにつながります。
一方で、無意識に否定的な発言をしていないか注意が必要です。「○○を頑張ってきたのはわかるけど……」など、学生の努力を否定しないように気を付けましょう。
今後の取り組みの準備に時間をかける
夏以降の就職活動はピーク時に比べ、応募できる求人数が減ります。
とはいえ、焦って業界研究や企業研究、自己分析をしないで本番に臨んでしまうと、望む結果を得られない可能性が高くなります。
「急いては事を仕損ずる」ということわざがあるように、焦りがちな状況だからこそ、これからの活動にむけて準備に時間をかけるようにしましょう。
具体的にはESや履歴書をあらためて見直すほか、面接でも自分のよさが伝わるように戦略を練っていきます。必要に応じて、自己理解する段階まで戻る可能性もあります。
キャリア・就職支援担当者は学生自身の言葉で自分の強みを伝えられるようにサポートしていきましょう。ESや履歴書を作成する段階から、面接につながっていることを意識できるように学生に促すことが大切です。
また、学生は早く応募をしなければと焦ってしまいがちですが、そのようなときほど冷静に時間をかける重要性を伝えていく必要があります。
就職は選択肢の一つととらえる
近年、ますます卒業後の進路が多様化しています。自分には会社で働くことが向いていないと考え、就職以外の道を模索している学生もいるでしょう。
もちろん、自分に合う生き方を選ぶことが最も重要です。「就職しかない」と思い詰めず、視野を広く持って自分は何をしたいのか考え直すのもよいでしょう。
キャリア・就職支援担当者は、卒業後の進路は就職以外にもさまざまな働き方があると示す一方で、新卒の時期だからこそ就職先が多く待ち受けていると伝えていきましょう。
もし学生が就職活動を続けるにあたり疲れているようなら、無理をせず休んでもよいと助言しつつ、学生が将来像を描けるようにサポートしていきます。
夏以降の就職支援、キャリア・就職支援担当者ができることは?
夏以降に就職活動を始める学生に対し、キャリア・就職支援担当者ができることには何があるでしょうか。ここでは7つの取り組みをご紹介します。
学生の就職活動の進捗を把握する
まずは学生の就職活動がどこまで進んでいるのか、進捗状況を把握する必要があります。
そこで学生に直接、電話やメールなどで連絡を取り、どのような状況かを確認しましょう。
すでに内定獲得および進路決定した学生には進路を確認するほか、就職活動継続中もしくはこれから始める学生には個別面談の利用を促します。
学生に内定先を報告するように依頼するほか、教職員と連携しゼミナールごとにアプローチし、学生の状況をこまめに確認している大学もあります。
夏以降になると後輩の世代が就職活動をスタートし始めるため、「今更相談に行くのは恥ずかしい、情けない」「キャリアセンターに足を踏み入れにくく、なんとなく怖い」と感じる学生もいるかもしれません。
そのため個別面談に来てもらえるように、ハードルを下げる取り組みが不可欠です。学生から話を聞くためにゼミナールに出向いて機会を作るのも有効です。
いずれの場合でも、学生にスムーズにアプローチするには学内や教職員間の連携が重要になってきます。
マイナビキャリアサポートでは教職員が一体となってキャリア形成支援にあたる中部大学の事例を紹介しています。併せてご覧ください。
「大学事例|文理を問わず教員と職員が一体となり的確なキャリア支援を|中部大学」を読む
個別面談で学生の状況を聞く
学生の状況を確認したら、就職活動中の学生と個別に面談していきましょう。
就職活動が遅くなった理由や進捗状況は学生一人ひとり違います。「何をしたらよいかわからない」「社会人になるのが怖い」などの気持ちが課題になっている場合もあれば、「選考のポイントがわからない」といった課題までさまざまです。
どのような課題を抱えていたとしても否定せず、丁寧に傾聴し、学生ごとの課題をすくい上げていきましょう。
OBOG訪問やイベントへの参加を提案する
ヒアリングの結果、業界研究や企業研究が不足していると感じたら、OBOG訪問や合同企業説明会などのイベントへの参加を提案してみましょう。
イベントに参加してもらうことで、「自分に合う企業がわからない」と悩んでしまい夏を迎えてしまった学生の行動量を増やし、少しでも興味がある業界や企業を探してもらうきっかけになります。
また、OBOG訪問や企業説明会は、社会人の先輩から仕事の面白さや大変さ、就職してから感じたギャップなど、幅広く話を聞けるチャンスです。
たとえ学生がその企業に興味を持てなかったとしても、行動したという部分をねぎらい、学生が「この業界・企業は自分には合ってないとわかった、無駄ではなかった」と受け止められるようにサポートしましょう。
自己分析や企業分析をサポートする
就職活動にまったく着手していない状況だったり、再スタートを切ったりする学生に対しては、自己分析や企業分析などの準備をサポートするのが有効です。
まずはこれまで打ち込んできた取り組みを振り返り、価値観や適性を見極めていきます。強みが明確にならないと、企業に対して効果的なアピールができないまま選考を終える可能性があるからです。
自己分析と並行して、企業・業界研究もおこなっていきましょう。学生の価値観に合う企業や興味がありそうな企業を一緒に分析してみます。
場合によっては合同企業説明会への参加も促します。少しずつ学生の方向性を絞り込めるように支援し、求人への応募につなげるとよいでしょう。
企業選考状況やイベント情報については、「マイナビ2025」の利用がおすすめです。
求人への応募で夏以降に重要となるのは「まだ採用枠が残っているかどうか」です。マイナビ2025には「残り採用予定人数登録あり」の検索機能があり、現時点で残りの採用予定人数を把握することができます。
そのため、興味を持った企業がまだ採用予定であることを把握すれば、前向きに応募できるようになるでしょう。
また、マイナビでは多くの企業と接点が持てる合同企業説明会を実施しています。就職活動の相談会や選考対策講座もおこなっている場合があるため、参加企業やプログラム内容を確認しておくとよいでしょう。詳しくは以下のページをご覧ください。
就職活動の目標を見直す
就職活動の目標を見直すのもおすすめです。学生は内定を獲得することを目標にしがちですが、それより大切なことは入社した会社に定着し、活躍することです。
そのためには、内定後のキャリアプランやライフプランを学生自身に思い描いてもらう必要があります。どのような会社で自分が活躍し、何を成し遂げたいのかまで学生が考えられるようにサポートしていきましょう。
同時に「いつまでに就職活動を終わらせるか」の目標設定をおこなうと、今やるべきことが明確化され学生も就職活動に対して踏み出しやすくなります。
気軽に参加できる相談会を実施する
「最初から個別面談を利用するのはハードルが高い」と感じる学生もいます。
そのため、気軽に参加できる集団の相談会を実施して個人面談への参加ハードルを下げるのも一つの方法です。
例えば予約不要で当日も顔出しや発言を求められない、チャット機能を使って質問できるオンラインでの相談会を実施した大学もあります。
こうした機会があると参加のハードルが下がると同時に「自分以外の学生も同様の悩みを抱えていると知り安心できた」といったように学生の不安を軽減できるため、効果的な手法といえるでしょう。
具体的な事例については以下の記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。
「学生一人ひとりが自らの答えを導けるよう、きめ細かな支援を最後まで続けていく|明治大学」を読む
選考対策講座の実施を増やす
状況に応じて、選考対策講座の実施を増やすことも必要になるでしょう。
グループワークをメインとし、学生に実践経験を積んでもらいながらモチベーションを上げられるような講座をおこなうのも有効です。
また、選考が進めば面接が必要になってきます。 学生に自信を持って選考に臨んでもらうためにも、集団や個別の模擬面接などを実施していきましょう。
マイナビではライブや録画で講座を配信する「マイナビTV就活準備講座」を展開しています。ESの書き方から面接対策の講座まで年間100回以上配信しており、ラインナップも豊富です。
大学で講座を増やすことが難しい場合、「マイナビTV就活準備講座」への参加を促し、一定の理解をしてもらったうえで、疑問点などを個人面談で解消していく方法もあります。
まとめ
毎年、遅れて就職活動をスタートさせたことで難航する学生は一定数います。理由は部活動やアルバイト、学業などに打ち込んでいたケースのほか、就職活動が怖くて動けなくなったり、就職活動で苦戦を強いられたりしているなど千差万別であることを解説してきました。
こうした学生一人ひとりの状況を確認し、次の一歩を踏み出せるようにサポートしていくことがキャリア・就職支援担当者の役割です。
なかにはキャリアセンターの利用にハードルを感じる学生もいます。気軽に訪れやすいよう参加しやすいイベントを設けてハードルを下げるほか、話を丁寧に聞いてサポートしたり、教職員と連携して学生にアプローチしたりすることも大切です。
マイナビキャリアサポートでは、就職活動に取り組む学生だけでなく、大学のキャリア・就職支援担当者のみなさまにも有益な情報を発信しています。
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