大学入学共通テストの実施や、高校における学習指導要領の改訂によるアクティブ・ラーニングの導入など、高大接続改革が進んでいます。
この記事では、改革の概要や今後のキャリア形成支援のポイントなどについて解説します。
高大接続改革とは?
「高大接続改革」とは、高校教育、大学教育、両者を接続する大学入学者選抜の3つを、一体的に改革する取り組みです。
2014年、中央教育審議会(中教審)が「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」の答申で高大接続改革の重要性を述べました。
その内容をふまえ、文部科学省が2015年に「高大接続改革実行プラン」を発表し、具体的な工程を提示しています。
答申では、高大接続の意義を「少年少女一人ひとりが、高等学校教育を通じて様々な夢や目標を芽吹かせ、その実現に向けて努力した積み重ねを、大学入学者選抜においてしっかりと受け止めて評価し、大学教育や社会生活を通じて花開かせるようにする」としています。
参考:中央教育審議会「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた 高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」
参考:文部科学大臣決定「高大接続改革実行プラン」
高大接続改革と高大連携の違い
高大接続改革と似ている言葉に、「高大連携」が挙げられます。両者の違いを整理しておきましょう。
高大接続は、「高校と大学の教育内容の接続」を意味します。
これに対し高大連携は、「高校と大学間におけるネットワークの構築」を指します。
例えば、大学側が高校に出向いて出前授業をおこなったり、高校側が進路指導をおこなう際に、大学が連携して支援したりすることが挙げられます。
高大接続改革実施の背景
高大接続改革を実施する背景には、近年の目まぐるしい時代の変化が挙げられます。詳しく見ていきましょう。
近年の社会の変化
グローバル化の進展や人工知能技術の向上などの技術革新のほか、社会構造も急速かつ大きく変革しています。さらに、これまで企業内訓練などが担っていた人材育成機能が、雇用環境の変化や働き方の多様化により見直されつつあります。
中教審の答申でも「2011年にアメリカの小学校に入学した子供たちの65%は、大学卒業後、今は存在していない職業に就く」というキャシー・デビッドソン氏(ニューヨーク市立大学大学院センター教授)の予測が紹介されました。これは日本でも同じことがいえるでしょう。
こうした社会の変化に適応した人材を育成するためには、高校や大学教育の段階で、これからの時代に求められる「生きる力」を伸ばしていかなければなりません。
高校教育と大学教育の接続に関する課題
従来の高校教育や大学教育では、「知識伝達型」の授業が多い状況でした。
そして大学入学試験では知識の再生を一点刻みで問い、その合計点による評価を「公平性」であるとしてきました。
しかし本来、高校教育および大学教育は、先を見通すことの難しい時代に生涯を通じて不断に学び、自らの人生を切りひらき、よりよい社会づくりに貢献できる人材を育成することが使命であるはずです。
そのためには、学生に「豊かな人間性」「健康・体力」「確かな学力」といった「生きる力」を高校で身に付けてもらい、大学でさらに発展・向上させ、鍛錬していけるような教育の接続が求められます。
また、高校教育と大学教育とをつなぐ大学入学者選抜は、「両者を円滑に結び付ける」という観点から実施されなければなりません。その際は、一時点の学力検査でその後の人生が決まるものではないと啓蒙し続けていくことも不可欠になるでしょう。
このように、高校教育、大学教育、大学入学者選抜は本来密接に関連し合うものであり、ここまで説明してきたような従来の教育に対する認識を刷新するために、三者一体での改革が求められているのです。
高大接続改革の取り組み
高大接続改革は「高等学校教育改革」「大学教育改革」「大学入学者選抜改革」から成り立ちます。ここでは、それぞれどのような改革をおこなうのか紹介していきます。
高等学校教育改革
高校教育の改革は、「学習指導要領の抜本的な見直し」「学習・指導方法の改善と教員の資質能力の向上」「多面的な評価の推進」の3つからなります。
また、義務教育までの成果を確実につなぐとともに「学力の三要素」を育成するための取り組みです。
学力の三要素とは、「実際の社会や生活で生きて働く知識及び技能」「未知の状況にも対応できる思考力、判断力、表現力など」「学んだことを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力、人間性など」のことを指します。
学習指導要領の見直し
「学習指導要領の抜本的な見直し」として、2022年度に高校の学習指導要領が改訂されました。
2022年度に改訂となった高校の学習指導要領では、教科・科目構成の見直しのなかでも探究科目が重視され、理数科の「理数探究基礎」「理数探究」をはじめ、「古典探究」、「地理探究」、「日本史探究」、「世界史探究」が新設されました。
その他、情報の内容を一新しプログラミングなどの基礎を学ぶ「情報Ⅰ」を必修化、総合的な学習の時間から「総合的な探究の時間」に変わりました。
また学習指導要領と並行して、学生がより効率的に学べるように、GIGAスクール構想やSTEAM教育などが推進されています。
GIGAスクール構想やSTEAM教育については以下の記事で詳しく紹介しています。併せてご覧ください。
「GIGAスクール構想とは?目的やメリット、現状の課題」を読む
「STEAM教育とは?事例と背景、今後の展望やSTEM教育との違い」を読む
教職員に求められる改革
また、学生に学力の三要素をバランスよく学んでもらうためには、「学習・指導方法の改善と教員の資質能力の向上」も重要となります。
つまり、教職員側も従来の知識を伝える講義型の指導から、主体的・対話的で深い学びの実現に向けたアクティブ・ラーニングの視点からの学習・指導方法への転換が必要になったということです。
具体的には、各学校の実情に合わせ生徒の学びの効果が最大化されるように、学校ごとにカリキュラム・マネジメントの確立が必要になりました。
その他、教職採用試験や研修体制、教員評価システムの見直しなど教職員の育成段階においても改革がおこなわれています。
多面的な評価を可能にする取り組み
さらに、学力以外にも多面的に生徒を評価できるような取り組みも推進されています。
従来の学習評価の改善だけではなく、民間の試験で生徒の基礎学力の定着度合いを測定する「高校生のための学びの基礎診断」や、生徒自らの学習の取り組みを振り返りキャリア形成につなげる「キャリア・パスポート」が導入されるようになりました。
参考:文部科学省「平成29・30・31年改訂学習指導要領の趣旨・内容を分かりやすく紹介」
参考:文部科学省「カリキュラム・マネジメント」
参考:文部科学省「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について」
参考:文部科学省「高校生のための学びの基礎診断」
大学教育改革
大学教育改革は、大学の授業や仕組みを充実させ、学生が高校教育までに培った力をさらに発展・向上させるための取り組みです。
関係省令を改正した2017年からは、すべての大学などにおいて「三つの方針」を一貫性あるものとして策定し、公表しなければならなくなりました。
三つの方針は、以下の内容です。
- ディプロマ・ポリシー(卒業認定・学位授与の方針)
- カリキュラム・ポリシー(教育課程編成・実施の方針)
- アドミッション・ポリシー(入学者受入れの方針)
また大学の認証評価制度も、2018年からは三つの方針や教育研究活動などの改善を継続的におこなう仕組み(内部質保証)を共通評価項目とし、評価に反映していくことになりました。
参考:文部科学省「三つの方針の策定・公表に関する省令改正」
参考:文部科学省「認証評価制度の改善①」
参考:文部科学省 中央教育審議会大学分科会大学教育部会「「卒業認定・学位授与の方針」(ディプロマ・ポリシー)、「教育課程編成・実施の方針」(カリキュラム・ポリシー)及び「入学者受入れの方針」(アドミッション・ポリシー)の策定及び運用に関するガイドライン」
大学入学者選抜改革
高大接続改革としては、高校教育で培った学力の三要素をはじめ、これからの時代に求められる力を育成・評価するために、2021年度から「大学入学共通テスト」が実施されています。
英語は4技能(読む・聞く・話す・書く)を適切に評価するためリスニングやリーディングがおこなわれているほか、2025年度からは情報の科目が新設されます。
また、高大接続改革の目的の一つである「学生の多様な力を多様な方法で『公正』に評価し選抜する」を実現させるために、各大学でもアドミッション・ポリシー(入学者受入の方針)に対応した入学者選抜の改革が進められています。
高大接続の狙いとメリット
ここまで、高大接続の背景や各改革の概要について解説してきました。
では、高大接続は大学側と高校側にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは高大接続のメリットについて、見ていきます。
大学側のメリット
大学側のメリットとして挙げられるのは、「求める学生像に合った人材が入学してくる可能性が高まる」ということです。
前述のとおり、大学教育改革で、各大学とも「ディプロマ・ポリシー(学位授与方針)」「カリキュラム・ポリシー(教育課程編成・実施方針)」「アドミッション・ポリシー(入学者受入方針)」という三つの方針の公開が義務付けられました。
学生が進学先を選ぶ際に三つの方針を参考にすれば、入学してから「自分にはこの大学・学部が合ってない」と感じてしまうようなミスマッチの防止にもつながるでしょう。
また、高校と密に連携することができれば、大学独自の研究内容や学部の情報を高校に提供できる機会も増えるでしょう。
そのため「将来はこうなりたい、だからこの大学で学びたい」と明確な方向性を持った学生が集まる可能性が高まるかもしれません。
高校側のメリット
2022年度に高校の学習指導要領が改訂され、必修授業と選択授業の内容が見直されました。これにより生徒自身が興味関心のある科目を選択しやすくなり、学習意欲のアップにつながるでしょう。
またキャリア・パスポートなどキャリアに関する取り組みが充実することで、早い段階から自分の興味関心を探るようになり、進路を考えることができます。
高大の連携が強まることで、大学での体験授業や研究施設に触れる体験を通して、生徒の学習意欲や進学意識の向上につながるのもメリットです。
高大接続改革の事例
高大接続改革の事例にはどのようなものがあるでしょうか。
ここでは高等学校教育改革、大学教育改革、大学入学者選抜に分けて事例を紹介します。
高等教育改革の事例
高校の授業や仕組みを充実させるための取り組みや大学が高校の課題を支援するのが、高等教育改革です。ここでは「教育課程の見直し」「学習・指導方法の改善と教員の指導力の向上」「多面的な評価の推進」について、それぞれ事例を紹介します。
教育課程の見直し
前述したとおり、2022年度に改訂となった高校の学習指導要領で「総合的な学習の時間」が「総合的な探究の時間」に変わりました。
この変更は、これまでに学んだ「見方・考え方」を総合的・統合的に働かせるだけでなく、自己のあり方や生き方に照らし、キャリア形成の方向性と関連付けながら自ら課題を見つけ、調査を進めていく力を育成するのがねらいです。
例えば、総合的な探究の時間を利用してキャリア教育を重視した授業を実践している高校の事例があります。1年生では社会人へのインタビューを実施し、2年生でインターンシップに取り組むことで、自分自身の適性や課題と深く向き合えるような時間にしています。
また、高校の探究的な学習活動に対して大学が協力および補助をおこなっているケースもあります。サポートの形は大学教職員を高校へ派遣するほか、来校してもらうスタイルを取っているようです。
このほか、高校生の授業参加を受け入れている大学もあります。
学習・指導方法の改善と教員の指導力の向上
高等学校教育改革では、これまでの知識を伝えるタイプの授業から、生徒の資質・能力を育成する「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニング)の視点からの授業に改善が図られています。
そのため、新たな学習指導要領に沿って各学校の実情に合わせた学習・指導方法の改善や教員の指導力向上が求められるようになり、学校ごとにカリキュラム・マネジメントの確立が必要になりました。
例えば、教科を横断して学生の「対話力」を育成しようと校内組織の連携を深め、協働体制を築き、カリキュラム・マネジメントの実現を実践している高校もあります。
そこでは「対話力」を教職員の共通認識とするために、教務部が中心となって理解を深められる取り組みがおこなわれています。また、人事異動で転入した教職員には、今までの取り組みや今年度の重点項目を詳しく説明してフォローアップをしています。
このように、望ましい生徒の姿を明確にし、授業改善と組織マネジメントを並行しておこないながら、あらゆる角度から生徒の対話力向上に努めています。
多面的な評価の推進
高校教育では、義務教育を経た高校生に求められる基礎学力の確実な習得と高校生の学習意欲の喚起を図るために「高校生のための学びの基礎診断」を推進しています。
これを受けて、学校を挙げて教科指導のPDCAサイクルを回すなかで、生徒が授業を理解し、基礎学力が定着しているかを確認するために利用している高校もあります。
これにより、生徒の学習時間の確保につながっています。
また、キャリア・パスポートを利用し、生徒が自らの学習状況や意識の変容などを振り返り、自己評価をおこなう取り組みを進めている高校もあります。
キャリア・パスポートを段階的に活用し、望む未来に向かって今取り組むべき事柄を書き出すことで、主体的に学びに向かう力になるだけでなく、自己実現につなげようとキャリア形成を促す力にもなっています。
大学教育改革の事例
大学教育改革は、大学の授業や仕組みを充実させるための取り組みです。ここでは「『三つの方針』に基づく大学教育の質的転換」の事例を紹介します。
「三つの方針」に基づく大学教育の質的転換
現在、各大学とも「ディプロマ・ポリシー(学位授与方針)」「カリキュラム・ポリシー(教育課程編成・実施方針)」「アドミッション・ポリシー(入学者受入方針)」の三つの方針の公開が義務付けられています。
また、国が「三つの方針」策定・運用に関するガイドラインを作成、配布しています。
三つの方針は大学によってさまざまであり、例えば社会の課題を自らの課題としてとらえる人材を、建学の精神にのっとった方針で教育することを重視している大学もあれば、建学の精神や学則をベースに、モラルや専門性を重視している大学もあります。
大学入学者選抜改革の事例
高校と大学を接続するために必要なのが、大学入学者選抜です。大学入学共通テスト以外にも、各大学でも入学者選抜改革がおこなわれています。
個別大学の入学者選抜の改革
大学入学共通テストが導入されてから、「大学入学者選抜における好事例集」が発表されています。学力の三要素を適切に評価・判定するとともに、高校での学びを大学での学びにつなげていくような入試がおこなわれているかという視点で選考されています。
2022年度はのべ704の国公私立大学・短大から17件が選ばれました。そのうちの3つの大学の事例を紹介します。
参考:文部科学省「令和4年度大学入学者選抜における好事例集」
探究成果活用型選抜
最初に、高校の「総合的な学習(探究)の時間」での経験や成果を、大学入学試験で評価する「探究成果活用型選抜」についてご紹介します。
協定する高校と共催で開催する探究シンポジウム(合同発表会や交流会)で、高校生が日ごろ取り組んでいる探究活動の発表・交流の場をつくるほか、高校生の探究成果をアーカイブする探究データベースを構築しているのが特徴です。
探究活動書類審査、基礎学力調査からなる1次選考に通過すると、2次選考では探究活動に関するプレゼンテーションと口頭試問を含めた面接がおこなわれます。
キャリア教育接続方式選抜
また、大学が主催する3日間の「キャリア開発プログラム」の受講を出願要件として、学生個人のキャリア構想がアドミッションポリシーと合致しているかを評価する選抜方式を採用している大学もあります。
「働くことの意味」や「社会のなかでの自分たちの役割」「社会が求める力」などをテーマに、グループワークで考えるプログラムが用意されています。
実際に受験して入学した学生からは、「自分の将来を考えるきっかけとなった」「最後まで成し遂げた時には、想像以上の達成感と自分の成長が待っていた」と好評を得ています。
プログラム受講に加えて、「自己のキャリア構想」に基づく課題解決プランの10分プレゼンテーションと、プレゼンテーション内容と自己記述書に基づく30分程度の面接を実施します。
プレゼンテーションは自己のキャリア構想に基づく課題解決プランであればテーマは自由で、受験生自身が課題を設定し取り組むため、問いを立てる力を評価できる仕組みになっています。また、プレゼンテーションでは、話の上手下手ではなく内容が重視される点も特徴でしょう。
「学力の三要素」を多面的に評価する特別選抜
大学によっては、大学入学共通テストを課さない一方で、書類審査から最終選抜を通して「学力の三要素」を多面的・総合的に評価しているケースもあります。
ある大学では、第1次選抜として、模擬講義・レポートや総合問題を実施。最終選抜では学部・学科・専攻ごとに、小論文・面接・口頭試問・プレゼンテーション・グループディスカッション・模擬実習・実技試験などを組み合わせて選抜を実施します。
この選抜方式の場合、12月に合格が決まるため、入学前教育が充実しているのも特徴です。
2回のスクーリングを含めた約3ヵ月間と長期にわたり、入学前ガイダンスなどを含めきめ細かく展開しています。
国立大学法人評価委員会からは、「高校までの学びと大学での学びの溝を埋める『学びの転換』を促す橋渡しをおこなっている」と評価されています。
高大接続改革によって入学生の傾向も変わる?
今後、高大接続改革によって大学に入学する学生の傾向も変わっていくのでしょうか?
まず大学入試では、論理的思考能力がより求められるようになるでしょう。大学共通テストの導入で、「思考力・判断力・表現力」を中心に評価する問題が多く出題されるためです。
同時に、総合的な探究の時間のように、アクティブ・ラーニングの要素が強い授業を経験している学生も増えてくるでしょう。
そのため、論理的思考能力を身に付けた学生が増加するのではないかと考えられます。
また、高大接続改革を受け、2022年度から高校でも学校指導要領が改訂になりました。これに先駆け、2020年度は小学校、2021年度は中学校でもそれぞれ改定されています。
いずれもグローバル化が進む社会に適応できるように、科目横断的な「STEAM教育」や、児童生徒1人につき情報端末1台を持って学ぶ「GIGAスクール構想」など、新しい教育を受けた学生が入学してきます。特にGIGAスクール構想は、児童生徒一人ひとりの力を最大限に引き出す教育環境の実現を目指しています。
そのため、学生の気質やニーズなど個性は今以上に多様化すると考えられるでしょう。
高大接続改革と今後のキャリア形成支援のポイント
高大接続改革が進むなかで、今後入学してくる学生に対するキャリア形成支援では何が必要になるでしょうか。ここでは2つの点から説明します。
PBLを活かしたキャリア形成支援を展開する
前述のとおり、これからはアクティブ・ラーニングの授業を経験した学生が入学してきます。
つまり正解を求めるのではなく、正解がなくても問題解決に向けたアプローチ方法を自ら考えられる力を身に付けている学生が増えてくるということです。
大学でも、アクティブ・ラーニングの手法の一つ、問題解決型学習(Project Based Learning、略称PBL)をキャリア教育で実施することを検討してもよいでしょう。
PBLには1つの課題に対して仮説をたて検証していく「チュートリアル型」と課題を実社会のなかに設定し、民間の企業などに入り込んで検証する「実践体験型」の2つがあります。
また課題解決型のインターンシップを実施する企業もあります。
企業の持つ課題の解決に取り組むことで、自ら問題を発見し解決する能力が養えるだけでなく、自らの強みや弱み、持ち合わせている社会人基礎力など学生の自己理解が深まります。
マイナビでも、PBLの実践の場としてオンライン完結型の課題解決プロジェクトを展開しています。あわせてご覧ください。
学生が将来について幅広く考えられる場を提供する
高大接続改革が進むと、一人ひとりの個性が際立つ学生が多く入学してくると予想されます。
そのため、自分の専門分野にとらわれず幅広くキャリアを考えられるような支援も大切になるでしょう。
例えば、高校時代に資格取得した学生に対して奨励金などを支給するほか、これからの資格取得をサポートしてやる気を引き出すプログラムを展開するなどの取り組みが挙げられます。
また、進みたい方向性が定まらずに悩んだり、途中で方向転換を検討したりする学生も出てくるかもしれません。
気軽に話せる場としてキャリアセンターがあり、話を聞く存在としてキャリア・就職支援担当者がいるということを、学生に認知してもらうことも大切です。
大学は、学生を社会に送り出す「出口」の役割も担っています。
そのため出口から逆算し、大学生活のなかで大学として学生にどのような支援ができるのか、さらにはその支援を活用して欲しい学生はどのような高校生なのかを意識した取り組みが必要になるでしょう。
高校生に提供する探究授業やプログラムを実施する際、大学生が高校生をサポートする役割で入る機会があれば、本人の気付きが得られるだけでなく、次年度以降の入学者につながる可能性もあります。ぜひ検討してみましょう。
まとめ
高大接続改革は、高校教育と大学教育、両者を接続する大学入学者選抜を一体的に改革する取り組みです。
2021年度から大学入学共通テストが導入され、高校では2022年に学習指導要領が改訂されました。各大学でも個性的な選抜方法が実施されています。
キャリア・就職支援担当者は、高校までの学びをふまえたキャリア教育を実施するほか、多様化する学生の気質を見極めながら支援にあたる必要があるでしょう。
マイナビキャリアサポートでは大学のキャリア・就職支援担当者向けの情報を発信しています。ぜひご活用ください。
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