TOP  /  コラム  /  就職ガイダンスの参加減、4類型対応、AI活用など2024年卒・2025年卒の動向は?|マイナビ編集長コラムvol.4

就職ガイダンスの参加減、4類型対応、AI活用など2024年卒・2025年卒の動向は?|マイナビ編集長コラムvol.4

マイナビ編集長による、各種調査結果を基にしたコラムです。
今回は、全国のキャリアセンターの支援状況、2025年卒学生と2024年卒学生の採用企業の傾向について解説します。

Profile

高橋 誠人
株式会社マイナビ 就職情報事業本部 マイナビ編集長
2002年、株式会社マイナビに入社。キャリアサポーターとして10年間マイナビの学生向け広報業務に携わり、関西圏の大学、短大、専門学校での就活支援講座を多数行うなど、学生の就活サポートを精力的にこなす。その後営業の現場で、企業の採用コンサルティングに幅広く関わる。熊本支社長、鹿児島支社長、兵庫支社長を経て、2018年7月より現職。日本キャリア開発協会会員(CDA)。

就職ガイダンスの延べ参加人数は減少傾向

皆さま、こんにちは。マイナビ編集長の高橋です。やっと長かった暑い夏も過ぎたと思ったら年末の足音が聞こえて来た、と感じる今日この頃ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

今回のコラムでは、弊社のHRリサーチセンターが発表したいくつかの調査データを基に、全国のキャリアセンターの支援状況、2025年卒学生と2024年卒学生の採用企業の傾向をそれぞれ見ていきたいと思います。

コロナ禍後、対面形式が増えた今年度の就職ガイダンスの参加状況はどうでしょうか。「2023年度<2024年卒>キャリア・就職支援への取り組み調査」から見ていきます。回答にご協力いただいた皆さま、誠にありがとうございました。

就職ガイダンスの延べ参加人数は減少傾向のようです。全期間における延べ参加人数を見ると、最多は「前年度並み」で52.6%(前年比1.1pt増)。「増加」は18.2%(前年比10.0pt減)と大幅減。一方、「減少」は29.1%(前年比8.8pt増)と大幅増で、すべての期間において、「前年度並み」が最多回答でかつ横ばい傾向ですが、全体としてはやや「減少傾向」にあることは注目です。
その理由を大学の自由記述を見ると、①増減ともに対面復活による学生の参加率への影響②就職環境の好転から学生が安心感を持ったことによる就職意識の低下③ガイダンス以外の情報源の多様化、という回答が目立ちました。

キャリア支援・就職支援に関して、特に知りたいと思う情報は、1位「他大学の支援事例」、4位「企業の採用動向」という結果でした。前年同様に変化への対応が求められる中で、企業や大学の具体的な事例や動向をキャッチしておきたいと推察されます。
2位は「低学年支援」の53.0%で前年3位よりランクアップしました。前述のミッションを目指すうえでの最注力施策でも2位になりましたが、情報取得に関しても低学年支援は高い数値となりました。3位は「学内イベントの動員対策」49.6%でした。

また、キャリアセンターの負荷も増えたと回答している大学が増えました。そのなかで、負荷を解消すべき業務はどのようなものだったのでしょうか?「学生面談」が最多で35.0%、次いで「企業等の来校への対応」が31.3%、「学内企業説明会の運営」が29.7%、「インターンシップ等の運営」が28.8%、「学内就職ガイダンスの運営」が27.5%という回答でした。
「学生面談」と「企業等の来校への対応」に関しては新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行に伴う影響であると推察されますが、学生1人につき数十分~1時間など相談枠を設けることを考えると、個に寄り添った支援と、負荷を解消するための仕組み化のバランスは今後も課題のひとつと言えるのではないでしょうか。

「4類型の実践に向けたロードマップ」第1期の状況は?

産学協議会が2022年4月に「産学協働による自律的なキャリア形成の推進」を提出し、三省合意が改正されました。そして2023年度が「4類型の実践に向けたロードマップ」における「第1期」です。

では、主に2025年卒学生の参加状況はどうだったのでしょうか。
2023年10月に発表した「マイナビ2025年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(9月)」によると、9月時点でインターンシップ・仕事体験への累計参加率は85.0%と、前年比を0.3pt上回りました。また興味深いのは、オープン・カンパニー、キャリア教育を含むキャリア形成支援活動について月ごとに内容を聞いたところ、徐々に就業体験を含むプログラムへの参加が増えていました
25年卒向けでは「インターンシップ」という呼称を使うためには「5日以上」という実施要件がありますが、「期間が『5日以上(1週間程度)』の就業体験のあるプログラム」に注目したところ、全体としては割合は多くないものの、8月で11.1%、9月で15.4%と、夏季休暇に当たる時期で参加割合が増加していました。

学生がインターンシップ・仕事体験で他の学生と交流して感じたことを聞くと、「他の学生が優秀に見えて、焦りを感じた」が最多で55.8%、次いで、「他の学生の姿をみて自分もやる気が出た」が53.1%、「普段の生活では会えないタイプのひとと知り合えて新鮮だった」が39.8%でした。
プログラムに参加することで、学生自身のキャリア観や職業観が醸成されることはもちろんですが、学生同士の交流の場として、刺激を受けたようです。また「他の参加学生の雰囲気がよかったので、企業への印象もよくなった」が38.5%と、参加学生同士の交流機会や良い雰囲気づくりが重要であることがわかりました。

興味深いのは、インターンシップ参加時の学生の情報を企業が採用選考に利用できるプログラムへの参加意欲を聞いたところ、「すぐにでも参加したい」が最多で42.9%でした。6月調査でも同様の質問をしていますが、そのときは「自信がついてから参加したい」が最多で42.7%でした。6月から9月にかけて、この2つの項目が入れ替わる形となり、インターンシップ・仕事体験など、様々な経験を経て、自信を持てるようになった学生が増えているようです。

2024年卒の企業の採用傾向は?

学内ではまだ進路を決めかねている2024年卒学生もいると思います。2024年卒採用の企業側の状況を見てみましょう。7月に発表した「2024年卒企業新卒採用活動調査」によると、企業の2024年卒学生の採用について、6月時点の採用充足率が「5割以上」は前年比4.8ポイント減の39.5%で、新型コロナウイルスの影響が大きかった2021年卒の40.9%を下回りました。インターンシップの実施有無別に見ると、インターンシップを実施した企業で採用充足率が「5割以上」は50.1%でしたが、実施しなかった企業は「0割」が53.5%でした。就職活動の準備期間に学生と十分な接点を持てたかどうかが採用充足率に影響する一つの要素となっているようです。

採用活動における現時点での問題点を聞いたところ、「母集団(エントリー数)の不足(70.0%)」が2年連続で増加しました。2022年卒(34.4%)と比較すると、2倍以上の増加が見られ、直近2年で「母集団の不足」が企業にとって深刻な課題になっていることがわかります。学生のインターンシップの平均参加企業数は増加傾向にあり、学生は就職活動の準備期間から既に応募する企業を絞り込んでいるため、エントリー平均企業数は年々減少し、企業にとっては母集団の不足に繋がっていると推察されます。

初任給の引き上げについて

学部卒生の総合職採用で初任給の引き上げを行った企業は70.0%であり、引き上げ額が最も多かったのは5000円~1万円未満で36.0%でした。引き上げの理由は、「給与制度の見直しで全社員の給与を引き上げたため(53.0%)」が最も多く、次いで「求職者へのアピールのため(48.8%)」でした。また、上場企業では全体と同じく「給与制度の見直しで全社員の給与を引き上げたため(63.0%)」が最も多いですが、2位は「定着率を高める・離職を防ぐため(44.1%)」でした。採用競争が激しくなっている就活生へのアピールはもちろん、従業員全体の定着率向上・離職防止も意識しながら給与制度の見直しを行った企業が多かったようです。

就職活動におけるAI活用について

前回のコラムでは、学生側に「エントリーシート作成のために対話型AIを利用した割合は?」という調査をしました。今回は企業側に聞きましたが、新卒採用におけるAI活用について聞いたところ、学生が就職活動に生成系AIを利用している実感がある企業は4.6%にとどまりました。

学生調査「2024年卒大学生活動実態調査 (5月)」では、就職活動で生成系AIの利用経験がある学生は18.4%だったため、学生の利用経験と企業の利用実感には差があることがわかります。「2024年卒 学生就職モニター調査 5月の活動状況」では、学生の活用方法について「文章の添削・校正に使っている」「ひな形になる文章を作成してもらう」などが挙がり、学生はあくまで補助的なツールとして活用しており、利用実態と企業の実感に差があることがうかがえます。

企業に就職活動で学生が生成系AIを利用することについて聞いたところ、最も多かった回答は「使い方を慎重に検討した上で活用してほしいと思う」の41.2%でした。自由回答を見ると、「面白い使い方をした学生がいれば評価したい」「効率化のために上手に使用することを推奨する」など、AIを使いこなすスキルとして好意的に捉えるコメントもありました。

一方で、「面接等で実際に話した際に齟齬のある発言をしてしまう可能性がある」「入社がゴールではないので自分を誇張しないように配慮して使用してほしい」など、“選考に通過できそうな選考書類の作成”を目的としたAI活用をすることで、就活生本人の意見と乖離した内容にならないように注意してほしいという旨のコメントも見られました。

あとがき

今回も最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。今までのキャリア支援に加え、今回お伝えさせていただいた4類型の周知や実践、AIの活用など日々新たな支援が加わっていることと存じます。マイナビでは全国にキャリアサポーターを配置しておりますので、ぜひお困りのことなどお気軽にご相談いただけましたら幸いです。

「マイナビキャリアサポート」は
キャリア支援・就職支援に関する総合情報サイトです

長い学生生活の出口で、学生たちを社会へと送り出す。その大きな役割と責務を担っている皆さまに寄り添い、活用いただける情報をお届けするため、2022年にサイトをリニューアルいたしました。
より良いキャリア支援・就職支援とは何か。答えのないその問いに対して、皆さまの学生支援のヒントとなるような情報をお届けして参ります。