マイナビ編集長による、各種調査結果を基にしたコラムです。
今回は、2027年卒内定者意識調査、2027年卒企業新卒採用活動調査、2028年卒大学生キャリア意向調査について解説します。
Profile

高橋 誠人
株式会社マイナビ 就職情報事業本部 マイナビ編集長
2002年、株式会社マイナビに入社。キャリアサポーターとして10年間マイナビの学生向け広報業務に携わり、関西圏の大学、短大、専門学校での就活支援講座を多数行うなど、学生の就活サポートを精力的にこなす。その後営業の現場で、企業の採用コンサルティングに幅広く関わる。熊本支社長、鹿児島支社長、兵庫支社長を経て、2018年7月より現職。日本キャリア開発協会会員(CDA)。
皆さま、こんにちは。マイナビ編集長の高橋です。
これから9月の後期授業が始まってくるなかで、夏季休暇中は、インターンシップやオープン・カンパニー、仕事体験など、さまざまなキャリア形成活動に参加した学生も多かったのではないでしょうか。学生たちは企業や社会との接点を持ちながら、自身の将来やキャリアについて考えを深める夏を過ごしたことと思います。
一方で、2027年卒学生は就職活動の終盤を迎え、進路決定に向けた意思決定を行う時期に入っています。また、2028年卒学生にとっては、この夏の経験が今後の企業選択やキャリア形成に大きな影響を与えるタイミングとなっているのではないでしょうか。採用市場全体を見渡すと、就職活動や採用活動のタイミングが変化しながらも、学生も企業も単純なスピードや数を追い求めるのではなく、「納得できる選択」や「質の高い出会い」を重視する方向へ変化している面もあるように感じられます。
今回も最新の調査結果をもとに、2027年卒・2028年卒学生の状況や企業の2027年卒新卒採用活動についてお伝えします。今後のキャリア支援の一助になれば幸いです。
<学生>「たくさんの内定」より「納得の一社」
まずは2026年7月末に発表した『2027年卒 内定者意識調査』から、2027年卒学生の就職活動の状況を見てみましょう。調査によると、内々定を保有している学生の平均内々定社数は1.7社となり、前年同様に2社を下回りました。
一方で、活動継続率は30.6%と前年から上昇しています。かつては「できるだけ多くの内定を獲得すること」が就職活動の成功イメージとして語られることもありましたが、現在は状況が変化しています。内々定を持ちながらも、自分に合った企業かどうかを見極めるために活動を継続している学生が少なくありません。
特に興味深かったのは、就職活動を終了した学生の約6割が、内々定1社の状態で活動を終えている点です。これは、学生たちが数多くの企業へ応募するよりも、自分が本当に働きたいと思える企業を見つけることを重視しているのではないでしょうか。
近年、インターンシップや仕事体験、オープン・カンパニーなどを通じて、学生が早い段階から企業理解を深められるようになりました。その結果、学生は志望企業を絞り込みながら活動を進める傾向が強まり、弊社が提唱してきた「ピンポイント就活」がますます定着していることがうかがえます。
一方で、活動を継続している学生のなかには複数の内々定を保有している層も存在します。入社予定先をほぼ決めながら活動を継続している学生では、3社以上の内々定を保有している割合が20.4%となりました。これは「まだ決められない」というよりも、「より納得できる選択をしたい」という意識の表れと考えられます。
<学生>学生の迷いは内々定後も続いている
同調査では、学生の最終的な意思決定のプロセスについても興味深い結果が見られました。複数の内々定を保有している学生に対して、最終的に入社予定となった企業から内々定をもらったタイミングを尋ねたところ、52.6%が「他社より後だった」と回答しています。
つまり、多くの学生は最初にもらった内々定先にそのまま決めるのではなく、その後も企業比較を続けながら最終判断をしているのです。企業側から見ると、早い段階で内々定を出しただけでは安心できない状況と言えます。学生は内々定後も企業研究を続け、説明会や面談、社員との交流などを通じて企業を評価しています。
また、就職活動を終了した学生の多くは、最終的に第一志望企業への入社を決めていますが、活動を通じて第一志望そのものが変化した学生も少なくありません。活動を進めるなかで自己理解や企業理解が深まり、「自分にとって本当に合う企業」が変わっていくことは自然な流れと言えるでしょう。
就職活動は企業選びであると同時に、自分自身を知るプロセスでもあります。学生の価値観や将来像が変化するからこそ、企業側にも継続的な情報提供や関係構築が求められています。
<学生>学生が求めているのは「安心して働けるかどうか」
では、学生は最終的に何を基準に企業を選んでいるのでしょうか。
入社予定先の選択ポイントとして最も多かった回答は「安定している」でした。物価上昇や社会情勢の変化などを背景に、将来への不安を感じる学生も少なくありません。そのため、長く安心して働ける環境を求める傾向が強まっていると考えられます。
しかし、最終的な決め手として学生が挙げた内容を見ると、「社員の人柄・社風」「事業の独自性」「働き方」に関する声が多く寄せられています。 つまり、企業選びの入口では安定性を重視しながらも、最後に意思決定を後押しするのは実際に働く人や企業文化、自分らしいキャリアが描けるかどうかという点なのです。
大学のキャリア支援の現場でも、「給与が高いから」「福利厚生が充実しているから」といった理由だけで進路を決める学生は決して少なくないのではないでしょうか。実際に働く社員の話を聞き、自分自身がその企業で働くイメージを持てるかどうかが大きな判断材料になっています。
だからこそ学生には、可能な限り多様な業界や企業、社会人と接する機会を持ってほしいと思います。その経験が自己理解を深め、自分らしいキャリア選択へとつながっていくはずです。
<企業>企業の採用活動も「質」を重視する時代へ
一方で企業側はどのような状況にあるのでしょうか。
『2027年卒 企業新卒採用活動調査』によると、2027年卒採用について「前年並みの採用数」とした企業は78.8%、「増やした」は11.9%でした。採用環境は依然として厳しく、多くの企業が若手人材の確保を重要な経営課題として位置付けています。
採用数を維持・増加した理由としては、「若手人材を確保したいため」が68.8%で最も多く、「慢性的な人員不足のため」「前年採用できなかったため」などが続きました。多くの企業が将来の成長を支える若手人材の確保に強い危機感を持っていることが分かります。
また、初任給を引き上げた企業は89.1%となり、3年連続で増加しました。平均支給額は23万7,903円まで上昇しています。こうした動きは大手企業だけではなく中堅・中小企業にも広がっており、人材獲得競争が継続していることがうかがえます。
しかしながら、企業自身も給与だけで人材を惹きつけることが難しいことを理解し始めています。実施して良かった採用施策としては、「若手社員による仕事内容の説明」「インターンシップ・仕事体験」「面接以外の個別面談」「内定後の会社訪問受け入れ」などが上位に挙がりました。
いずれも学生とのコミュニケーションを重視する施策です。学生が企業選びで重視している「人柄」「社風」「働き方」を伝えるためには、実際の社員との接点が欠かせません。採用活動は、「何人採用できたか」だけではなく、「どれだけ企業理解を深めてもらえたか」という質の部分がますます重要になっているように感じます。
<企業>AI時代の採用と評価の変化
採用活動における大きな変化の一つが、生成AIの活用です。『2027年卒 企業新卒採用活動調査』によると、学生が就職活動で生成AIを活用することについて、84.8%の企業が肯定的な見方を示しました。学生のAI活用を前提に採用活動を進める企業が増えていることが分かります。
一方で、企業側は評価方法の見直しも進めています。AI活用への対応として最も多かったのは、「面接での質問内容を工夫する」という回答でした。エントリーシートだけではなく、面接を通じて学生自身の考え方や経験、価値観をより深く確認しようとする姿勢が見られます。
AIは情報収集や文章作成を効率化する強力なツールですが、その人自身の経験や人間性を代替できるものではありません。今後は学生にとっても、「AIを使ったかどうか」ではなく、「自身の考えをどれだけ自分の言葉で伝えられるか」がより重要になるのではないでしょうか。
<学生>2028年卒学生が迎えるキャリア形成のスタート
最後に、『2028年卒 大学生キャリア意向調査(6月)<夏季休暇の帰省・地元インターン参加>』から、2028年卒学生の動向を見てみましょう。調査によると、夏季休暇中に地元や帰省先で開催されるインターンシップ等のキャリア形成プログラムに参加したい学生は79.2%に達しました。
約8割の学生が前向きな姿勢を示しており、地域企業への関心の高さがうかがえます。参加理由としては、「実家から通えて参加しやすい」が46.3%、「移動や宿泊の負担が少ない」が40.8%、「将来的に地元で就職したいから」が34.4%でした。
経済的・時間的なメリットだけではなく、将来の進路選択の一環として地元企業を知りたいという意識も見られます。地方企業にとっては、こうした機会を通じて学生との接点を持つことができる貴重な時期です。
一方で、学生からは交通費や宿泊費の補助、短期間で参加できるプログラムを求める声も多く寄せられています。企業側には、学生目線で参加しやすい環境を整える工夫が求められていると言えるでしょう。
あとがき
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。今回は2027年卒・2028年卒学生の状況や企業の2027年卒新卒採用活動をお伝えしました。
今回の調査結果から浮かび上がったキーワードは、「納得感」です。
『2027年卒 内定者意識調査』からは、学生が内々定の数そのものではなく、自分らしく働ける「納得の一社」を求めている姿が見えてきました。また、『2027年卒 企業新卒採用活動調査』からは、企業側も給与や採用規模だけで差別化を図るのではなく、人や組織の魅力を伝えることの重要性を強く認識していることが分かります。
さらに、『2028年卒 大学生キャリア意向調査(6月)<夏季休暇の帰省・地元インターン参加>』からは、学生が将来のキャリアを考えるうえで、地域や地元企業との接点を重要視している様子もうかがえました。
夏季休暇が終わり、9月から新学期が始まります。2027年卒学生にとっては社会人生活への準備を進める時期であり、2028年卒学生にとっては、この夏に得た経験をもとに自己理解や企業研究をさらに深める時期となります。
AI活用の浸透など、採用を取り巻く環境は今後も変化を続けるでしょう。しかし、学生と企業が互いを理解し、納得できる選択と出会いを実現することの重要性は変わりません。
私たちマイナビも、引き続き調査・研究活動を通じて学生、大学、企業の皆さまに有益な情報をお届けし、一人ひとりがより良いキャリア形成を実現できる社会づくりに貢献してまいります。
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