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新卒採用とは?採用の狙いと課題から新卒採用の意義を考える

新卒採用とは企業が高校や大学を卒業する学生を採用することです。この記事では新卒採用の概要や新卒採用のメリットデメリット、新卒採用をおこなう意義などについて解説します。

企業の採用活動には、新卒採用と中途採用があります。新卒採用とは、大学等卒業後の学生を採用することです。
では、そもそもなぜ企業は新卒採用をおこなうのでしょうか。また、新卒採用を通してどのような人材を獲得しようとしているのでしょうか。この記事では、企業側が新卒採用を実施する狙いや新卒採用の課題を踏まえて、学生と企業がよりよい就職・採用活動をおこなうためのポイントについて解説します。

新卒採用とは?

そもそも「新卒」とは、新規学校卒業予定者の略で、学校教育法に基づき高校、高専・短大、大学を卒業または大学院を修了する学生を指します。

厚生労働省の「青少年雇用機会確保指針」では、卒業後3年以内で一度も就職していない既卒者を新卒扱いとする指針が設けられています。

参考:厚生労働省「青少年雇用対策基本方針」

つまり、「新卒採用」は、就業経験がない学校卒業見込みの学生を採用することであるといえるでしょう。

新卒採用によって企業が得られるメリット

ここでは企業側から見た6つのメリットを説明します。

ポテンシャルの高い人材を早期に獲得できる

まず新卒採用のメリットとして、ポテンシャルの高い人材を早期に獲得できることが挙げられます。

例えば、2022年3月に大学卒業および大学院修了し、就職した学生は約50万人です。こうした学生の中から、大学などでの学びを活かしてイノベーションを起こす人材や、幹部候補として若いうちから会社の中心を担う人材を獲得できる可能性があります。

参考:文部科学省「令和4年学校基本調査確報報道発表資料」

組織の活性化やナレッジの蓄積につながる

新卒採用の定期的な実施は、組織の活性化やナレッジの蓄積につながります。
フレッシュな人材の加入は、社員の年齢構成の均等化に加え、社内の雰囲気や人間関係に刺激をもたらし、組織を活性化します。実際、新卒採用の実施理由として「組織の存続と強化(活性化)」を挙げている企業も多いです。

参考:マイナビキャリアリサーチLab「2023年卒 企業新卒採用予定調査」

また、新卒採用では就業経験のない人材を育成することになります。
そのため、これまで培ってきた知識や経験を新入社員にわかりやすく共有する必要が出てきます。加えて新入社員の育成を通じて、先輩社員や上司のマネジメント力向上も求められます。その結果、社内のナレッジが蓄積していくというメリットにつながります。

会社の文化に馴染んでもらいやすい

会社の文化に馴染んでもらいやすいのもメリットの一つです。
中途採用で入社した人材のなかには、前職と比べてしまい、企業のカルチャーに馴染めず退社するケースもあります。しかし新卒採用で入社した人材は、就業経験がないため、企業理念やビジョン、事業内容といった企業の文化を受け入れやすい傾向にあります。

中途採用と比較して採用コストを抑えられる

中途採用と比べて採用コストを抑えられる点も、新卒採用のメリットといえるでしょう。
新卒採用は基本的に決まった時期にまとめて採用できるため、効率的に人材確保ができます。
一方中途採用では、企業によって求めるスキルや経験がさまざまなため、人材を見つける難易度が上がり、コストがかかる場合があります。

入社・育成スケジュールの計画を立てやすい

入社・育成スケジュールの計画を立てやすいのも特徴として挙げられます。
政府は2018年10月以降、学生の就職・採用活動日程を「就職・採用活動に関する要請」でまとめ、経済団体などに遵守するよう要請しています。
例えば、2023年度においては以下のように要請しています。

広報活動開始卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降
採用選考活動開始卒業・修了年度の6月1日以降
正式な内定日卒業・修了年度の10月1日以降

企業は基本的に、このスケジュールから逆算して選考の日程を計画していきます。
そして、4月の入社後にはすぐに新入社員を対象とした研修をおこないます。
期間は数日~数ヵ月と企業によって違いがありますが、内定を出してから入社後の研修までに時間があるため社内で調整しやすく、具体的な研修内容を検討したり、予算の見積もりも取りやすいといえます。

引用:内閣官房「就職・採用活動に関する要請」

企業の知名度向上につながる

新卒採用を実施していくことで、企業の知名度向上にもつながるでしょう。
ユニークな採用方法でメディアなどに取り上げられたり、会社説明会やインターンシップなどのイベントを実施したりすることで、学生に自社のアピールができます。

なお、インターンシップは2023年度以降、あり方が大きく変わります。
今後のインターンシップでは企業での就業体験が必須となり、インターンシップで入手した学生の情報を採用活動で利用できるようになります。
インターンシップの動向については以下の記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。

「インターンシップとは?種類と参加時期、メリットや今後の動向」を読む

新卒採用で注意すべきポイントは?

新卒採用は企業にとってのメリットも多いですが、注意すべきところもあります。ここでは4つのポイントを紹介します。

戦力化には時間がかかる

新卒採用では即戦力人材の採用を目的としていない場合も多いため、戦力として活躍してもらうまでに時間がかかる場合もあります。
具体的には、以下のようなプロセスが必要となるでしょう。

  • 社会人の生活リズムに慣れてもらう
  • 研修を受けて体系的に業務を学んでもらう
  • 具体的な仕事内容・顧客情報について理解してもらう
  • 活躍するために必要な能力・スキルを高めてもらう

採用フローが長くなりやすい

新卒採用は選考フローが長くなりやすいのも注意すべき点です。
新卒採用は大きく「集める」「選ぶ」「動機づける」の3つのステップで進みます。「集める」は広報活動とエントリー、会社説明会などによる企業理解と学生の意識醸成、「選ぶ」は書類や面接などの選考、「動機づける」は内定者フォローと、それぞれ多くの時間と行程を要します。

選考だけで2ヵ月近くかける企業もあり、すべてのフローを終了するまでに数ヵ月単位の期間が必要となる場合もあります。
選考のプロセスが長くなると、複数の企業に応募している学生のなかには途中で選考を辞退する人もいるため、入社までの長期間、志望度をキープしつづけてもらうためのフォローが大切です。

業務上のミスマッチが起こる可能性がある

新卒採用では、業務上のミスマッチが起こる可能性もあります。
新規学卒者の3年以内の離職率は長年、30%~40%前後で推移しています。

「マイナビ ライフキャリア実態調査 2022年版」によると、20代・正社員の前職の退職理由(複数回答)で最も高いのは「給与が低かった」、次いで「仕事内容に不満があった」「会社の雰囲気が合わなかった」が続きます。

一方、20代・正社員のうち「仕事全般に安心感を持つ人」の理由(複数回答)で最も高いのは「人間関係」で37.9%でした。
そのため、就労経験がなく、仕事内容や職場環境の理解が不足している新入社員に対して安心感を持って働いてもらうためには、社内のフォローが不可欠といえるでしょう。

参考:マイナビ「ライフキャリア実態調査 2022年版」
参考:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(平成27年3月卒業者の状況)」

採用内定通知から入社までの期間が長くなりやすい

景気や業績の変動は、企業側の求人数に影響を与える場合があります。
例えば、1980年代のバブル経済の頃は、企業が求人数を増やす「売り手市場」でした。しかし、1990年代のバブル経済後の就職氷河期や2008年のリーマンショックの際は、企業が求人数を減らす「買い手市場」に変わりました。

このように景気や業績を受けて採用を抑制したり回復したりする場合、中途採用であれば状況に応じて募集状況を調整できます。しかし新卒採用の場合、中途採用に比べて採用内定通知から入社までの期間が長くなりやすいため、その期間中に企業の状況が大きく変わる可能性があります。

中途採用だけでなく新卒採用をおこなう意義

新卒採用はフローが長くなりやすく、獲得した学生の育成にも時間がかかるという課題点があります。そのため、中途採用でスキルがある即戦力の人材を獲得すればよいのではないかと思うかもしれません。
しかし企業が新卒採用をおこなうことには、会社の未来を担う人材を自社で育て、社内を活性化させながら安定経営を図るという意義があります。こうしたリスクを加味してなお、企業の未来のために新卒採用をおこなう大きなメリットがあるということです。

近年の新卒採用市場におけるトレンドと課題

新卒採用市場における近年のトレンドと課題を紹介します。

オンライン選考

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、導入企業が瞬く間に増えたのがオンライン選考です。
オンライン選考のうちWEB面接は、企業の面接担当者と応募者をインターネット回線でパソコンやスマートフォンなどのデバイス端末同士をつないで面接をおこないます。
通信環境とデバイスがあれば、遠隔地からでも面接できることがメリットです。選考のための移動がなくなるため、企業側も学生側も交通費の節約や移動時間の短縮につながります。

一方で対面の面接に比べ画面越しのやりとりとなるため、雰囲気や表情などの非言語情報が読み取りづらいところがあります。
WEB面接時の注意点については、以下の記事で紹介しています。併せてご覧ください。

「WEB面接とは?準備や当日の流れ、WEB面接に関するQ&Aを紹介 」を読む

ジョブ型雇用

社会情勢の変化に合わせ、注目を集めている人事制度がジョブ型雇用です。
ジョブ型雇用では、就業者が専門的な技能を発揮し、特定の職種で勤務することを前提にしています。企業は職務内容や勤務地、時間などの条件を「ジョブ・ディスクリプション(職務記述書)」で明示したうえで就業者と雇用契約を結び、就業者は契約の範囲内の業務にあたります。

就業者は高い業務遂行能力が求められますが、高い専門性やスキルを武器に、自身のキャリアを積み上げていくことができるでしょう。また、基本的に別の部署への異動や転勤がないのも特徴です。

日本の新卒採用は、一社で長期間働くことを前提に、採用した人材を育成していくメンバーシップ型雇用が主流です。しかし、最近では「転勤がない」「専門性を高めたい」と、ジョブ型雇用に対し興味を持つ学生も増えています。

ジョブ型雇用に対する学生の考え方については、以下の記事で紹介しています。併せてご覧ください。

「ジョブ型雇用とは?メンバーシップ雇用との違いや企業・求職者のメリット・デメリット」を読む

母集団(エントリー数)の不足

近年の課題として挙げられるのは、母集団(エントリー数)の不足です。
「マイナビ 2023年卒企業新卒採用活動調査」によると、2023年卒の採用活動における問題点として、「母集団(エントリー数)の不足」が55.6%と最も多く、次いで「選考受験者数の不足」44.3%となっています。いずれも2022年卒調査より増加しました。

学生側も、応募した企業が「1~10社」と回答した人が全体の5割を超えるなど、絞って就職活動に取り組んでいることがうかがえます。

このように、学生側がより志望度の高い企業にエントリーしていると考えれば、これまで以上に学生とのコミュニケーションの取り方が重要になると考えられます。

参考:マイナビキャリアリサーチLab「2023年卒企業新卒採用活動調査」

新卒採用を成功させるには?企業と学生の立場から考える

新卒採用を成功させるにはどうしたらよいでしょうか。ここでは企業と学生の立場から、それぞれ解説します。

新卒採用を成功させるために企業ができること

まず企業側が新卒採用を成功させるための、3つのポイントを説明します。

学生が何を求めているのか意識する

まずは、学生が何を求めているかを意識することが大切です。
「マイナビ 2023年卒大学生就職意識調査」によると、大手企業志向が48.5%と半数を割る一方、中堅・中小企業志向は47.8%と両者が迫る結果となりました。

また、企業選択のポイントとして「安定している」が最多の43.9%で、「自分のやりたい仕事(職種)ができる」は32.8%でした。
ここから、会社の規模にこだわらず、やりがいのある仕事ができるかを重視する学生の傾向が読み取れます。

このように学生の傾向や望む働き方は時代に応じて変化しています。
望む成果につなげるには、学生の変化を読み取りながら、自社に興味を持ってもらえるような採用活動を展開する必要があります。

参考:マイナビキャリアリサーチLab「2023年卒大学生就職意識調査」

社内の協力体制を整える

新卒採用の実施には社員の協力が欠かせません。
特に学生が仕事や会社への理解を深めるためには、座談会や説明会などへの社員の登壇が不可欠です。

また、就労経験がない新入社員は、仕事内容や職場環境の理解が不足している可能性があるため、入社後のフォローも重要です。
新入社員の不安や悩みを聞きながら新入社員を育てていけるように、社内の協力体制を整えていきましょう。

働き方をイメージできるような情報を届ける

就労体験のない学生は、働き方をうまくイメージできないケースが多いと考えられます。
そこで企業側は、学生に働き方をイメージできるような情報を届ける取り組みが必要です。
例えば、ホームページでさまざまな部署で働く社員のインタビューを掲載するほか、説明会や座談会に登壇し直接、学生に話を聞いてもらう機会を設けるのも有効です。
こうした地道な取り組みが、採用のミスマッチを減らす結果につながります。

就職活動を成功させるために学生ができること

次に、学生が納得いく就職活動をするための3つのポイントを解説します。

戦力化を求められていると認識する

まず、将来的な戦力として活躍を期待されていると認識しましょう。
企業が新卒採用をおこなうのは、会社の未来を担い、活躍できる可能性を秘める人材を求めているからです。そのため、企業側は面接やエントリーシートを通じて、「自社と合っているか」「意欲的に知識を吸収できるか」「自ら主体的に行動できるか」「将来活躍してくれるか」といったポテンシャルを見ています。

企業側の意図を意識したうえで自分の強みを明確にした自己PRができれば、有効なアピールになるでしょう。

企業とのマッチングを重視する

企業と自分がマッチしているかを重視することも大事なポイントです。
数多くの企業から内定を獲得し、周りから賞賛を得ることが就職活動の成功ではありません。
大切なのは、入社を決めた会社が自分とマッチしているかどうかです。

また近年は、終身雇用やメンバーシップ型雇用といった従来の雇用形態の維持が難しくなっており、自律的なキャリア形成が重要となっています。
そのため、就職活動を通して自分の仕事人生のイメージを描いておくことが大切です。自分らしく働けるのはどのような企業か、どのような職種を経験したいかなど、自分の価値観を見つめ直しながら可能性を探っていきます。

このように自ら選択と決断を繰り返すうちに、自分に合った企業が絞り込まれてきます。

積極的に情報収集をおこなう

積極的に情報収集をおこなうことも大切です。
具体的には「そもそも自分は何がしたいのか」「どのような仕事なら意欲的に続けられるか」をよく分析します。そのうえで、自分とマッチした業界や企業の情報を積極的に集めていくことが、納得のいく就職活動のカギとなります。

よりよい就職活動のために、大学(キャリアセンター)は何ができる?

前述のとおり、新卒採用は学生のポテンシャルに期待し長期的に育成していくことが特徴です。しかし、学生と企業の間でミスマッチが生じ早期離職につながっているという実態もあります。
そこで大学側は、こうしたミスマッチを防ぐとともに社会人へスムーズに移行できるよう支援していくことが求められます。

まずは、面談などで学生自身の意欲や希望を整理し明確化していく機会を設けましょう。
例えば、自身に対する理解が進んでいなければ自己分析できるようにサポートします。志望企業が決まっている学生には、志望企業の特色や求める人材像に合わせてエントリーシートや面接でアピールする自己PRや志望動機を一緒に練り上げていきます。
こうした支援が、企業と学生の双方が納得できるマッチングの実現につながります。

また卒業間近になっても就職先が決まっていない学生に対しては、1月~3月の期間に集中的に相談の場を設け、学生の不安を取り除きつつ就職活動に対して前向きに取り組めるよう継続的にサポートしていきましょう。

個々人の悩みや希望に応じた学内セミナーを広く紹介したり、マッチした求人紹介をしたりすることも有効です。
企業や働き方に対する具体的なイメージの醸成は、「いざ入社してみたら考えていたのと違った」というミスマッチを防ぐことにつながります。
そのため大学3年生になってから就職ガイダンスをおこなうのではなく、1年生のうちから体系的にキャリアについて考えられるよう情報提供をおこなっていくことが求められます。
また、就職活動や就職後のトラブルを減らすために、労働法の知識を身につけられる機会を設けるといったことも大切です。

同時に、企業や外部のセミナー講師との連携も進めていくとよいでしょう。セミナー開催の際は外部講師を招待したり、会社説明会の際はさまざまな企業と日程を調整したりと綿密にコミュニケーションを取っておく必要があります。
そして、学生が適切な就職観・職業観を持てるように詳細な職場情報を提供してもらったり、職場体験の場を設けたりといった連携も欠かせません。
加えて、企業との関係を深めれば大学側が学生に紹介できる求人も増えます。

まとめ

企業の新卒採用には、会社の未来を担う人材を自社で育て、社内を活性化させながら安定経営を図るという意義があります。
そのため学生側も「何を求めて採用活動をおこなうのか」という企業の意図をくみつつ、自分にマッチした企業を探せれば、納得いく就職活動につながります。

そしてキャリア・就職支援担当者は、企業と学生のよりよいマッチングをサポートする役割があります。企業側の意図を伝えながら、学生側が納得する就職活動ができるような支援が求められます。
マイナビキャリアサポートでは、キャリア・就職支援担当者の皆様の視点に立ち、支援方法など有益な情報発信をおこなっています。
またマイナビでは、就職活動のスケジュールや進め方を掲載しています。併せてご覧ください。

「就活(就職活動)のスケジュールと進め方 – 就活準備」を読む

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