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改正個人情報保護法とは?キャリア・就職支援担当者が知っておくべきポイント

改正個人情報保護法とは?キャリア・就職支援担当者が知っておくべきポイント

就職活動では、さまざまな立場の人が学生の個人情報を取り扱うことになります。選考に関わる企業だけでなく、就職活動を支援する大学としても、個人情報の取り扱いについて理解しておく必要があります。
この記事では、そもそも個人情報保護法とはどのような法律か、2022年の法改正のポイントは何か、キャリア・就職支援担当者が注意すべき点は何かなどについて紹介します。

個人情報保護法とは?

「個人情報の保護に関する法律(以下、個人情報保護法)」は、個人情報の有用性に配慮しながら個人の権利や利益を守ることを目的とした法律です。2003年5月に制定され、2005年4月に全面施行されました。
この法律では、個人情報を取り扱う事業者が遵守すべき「取得・利用」「保管・管理」「第三者提供」「開示請求などの対応」の4つのルールが定められています。

昨今、デジタル技術の急速な進展でビッグデータの収集・分析が可能になったほか、事業活動のグローバル化にともない、個人情報の取り扱いに対する意識が高まってきました。
このような背景から、2015年に個人保護法を3年ごとに見直す規定が盛り込まれました。そして2020年にはこの規定による初めての改正がおこなわれ、2022年4月に施行されました。

参考:個人情報保護委員会事務局「令和3年改正個人情報保護法について」
東京都「個人情報保護法の概要」

個人情報の範囲

「個人情報」とはいったい何を指し、どのように定義されるのでしょうか?
個人情報保護法における個人情報は、「生存する個人に関する情報で、氏名や生年月日、住所、顔写真などにより特定の個人を識別できる情報」を指します。

つまり氏名のほか、「氏名と生年月日の組み合わせ」「氏名と電話番号の組み合わせ」も個人を識別できるため、個人情報にあたります。
加えてメールアドレスも、ユーザー名やドメイン名から特定の個人を識別できる場合は、単体で個人情報に該当します。

また、「個人識別符号」が含まれる情報は個人情報です。以下が個人識別符号にあたります。

  • 個人の身体のデータ(DNA、顔認証データ、指紋や声紋の認証データ、虹彩、正門、歩行の形態など)
  • 個人に割り振られる公的な番号(パスポート願望、基礎年金番号、運転免許証番号、住民票コード、マイナンバー、保険者番号など)

要配慮個人情報とは?

個人情報のなかでも取り扱いに気を付けなければならないのが、「要配慮個人情報」です。
要配慮個人情報とは、「他人に公開されることで本人が不当な差別や偏見などの不利益を被らないように、特に取り扱いに配慮すべき情報」を指します。

具体的には、以下の情報が該当します。
要配慮個人情報を取得する場合は、原則としてあらかじめ本人の同意が必要です。

  • 人権、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により被害を受けた事実
  • 身体・知的・精神などの障がい
  • 健康診断の検査結果、その他検査の結果
  • 保健指導、診療調剤情報
  • 被疑者または被告人として刑事事件の手続を受けた事実
  • 非行・保護処分などの少年の保護事件の手続を受けた事実

参考:個人情報保護委員会「要配慮個人情報に関する政令の方向性について」

就職・採用活動における個人情報の取り扱いと関係性

企業の採用活動に関する広報開始以降、学生によるエントリーもスタートします。これによって、企業側は学生の「個人情報」を取得することが可能になります。

企業側は「個人情報取扱事業者」となり、個人情報を利用する目的を学生に伝えなければなりません。また第三者に提供する場合は本人の同意が必要であり、本人からの開示請求への対応などにも応じなければなりません。
同時に、学生の就職活動支援をおこなう大学側も厳正な取り扱いが求められます。

就職活動や採用活動において取り扱う個人情報には、まず学生の住所や氏名、連絡先などが該当します。
そして、応募に際して提出するエントリーシートや履歴書も住所や氏名、生年月日、電話番号などが記載してあるため、個人情報にあたります。

さらに、メールアドレスに名字や名前、学籍番号が含まれているなどして特定の個人を識別できる場合、メールアドレスそのものが個人情報に該当します。
単体で個人が識別できない場合も、他の情報と照合することで特定できる場合は、その情報とあわせて個人情報に該当することがあるため注意が必要です。

参考:個人情報保護委員会「民間事業者向け個人情報保護法ハンドブック」
参考:個人情報保護委員会「メールアドレスだけでも個人情報に該当しますか。」

改正個人情報保護法のポイント

改正個人情報保護法は、2022年4月に施行されました。個人情報に対する意識の高まりや社会情勢、グローバル化の進行などをふまえて、より現状に適するよう改正されています。
ここでは、大学の教職員やキャリア・就職支援担当者の方々が知っておきたい改正点について紹介します。

個人情報に対する本人の権利が拡大

今回の改正では、個人情報に対して本人が有する権利が拡大されました。

まず「保有個人データ」の扱いが変更になりました。
保有個人データとは、個人データのうち事業者が開示や内容の訂正、追加や削除、利用の停止、消去および第三者への提供の停止をおこなう権限を有するものを指します。

これまで、短期間で削除されるものは「保有個人データ」から除外されていました。しかし改正後はCookieなどの6ヵ月以内に消去する短期保存データも保有個人データに含めることとなり、開示や利用停止の対象になります。

また、保有個人データの利用停止や消去について、個人が権利を行使できる範囲が広がりました。
これまでは一部の法違反の場合に限定されていましたが、保有個人データを利用する必要がなくなった場合や漏えいが発生した場合、保有個人データの取り扱いにより本人が権利や正当な利益を害されるおそれがある場合にも、権利を行使できるようになりました。
また、保有個人データの開示方法を本人が指示できるようになるなどの変更も加えられました。

参考:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律(概要)」
参考:個人情報保護委員会「令和2年改正個人情報保護法について」

情報漏えい時の本人への報告を義務化

改正により、情報漏えいにより個人の権利利益を害するおそれが大きい場合は、個人情報保護委員会への報告および本人への通知が義務化されました。

具体的には、要配慮個人情報の漏えいや、不正アクセス、財産的被害のおそれがある漏えいのほか、1000件を超える個人データの漏えいなどが発生、または発生のおそれがある場合が該当します。

報告は、事業者が報告対象の事態を知った時点から3~5日以内に「速報」、30日以内(不正の目的によるおそれがある漏えいなどの場合は60日以内)を「確報」として、それぞれ個人情報保護委員会へ報告しなければなりません。
本人には事態の状況に応じて、速やかに通知をおこなう必要があります。

参考:個人情報保護委員会「令和2年改正個人情報保護法について」

罰則の厳罰化

今回の改正により、罰則がより厳しくなりました。命令違反の場合、改正前は行為者に対し6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられましたが、改正後は1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられるようになります。
また、個人との資力の差などが考慮され、法人に対してはより重い1億円の罰金が科されます。

参考:個人情報保護委員会「令和2年改正個人情報保護法について」

「仮名加工情報」の創設

「仮名加工情報」とは、他の情報と照合しない限り特定の個人情報を識別できないように、加工された個人情報です。

これまでも「匿名加工情報」というかたちで、個人を特定できないよう情報を加工する手法がありました。これにより個人情報よりも取り扱いの制限が緩和され、ビジネスや活動に利用することが可能でした。
しかし個人情報を匿名加工情報に加工する際の加工基準が非常に厳格であり、基準を満たすのが困難であるという課題点がありました。

そこで新たに設けられたのが「仮名加工情報」です。
仮名加工情報は匿名加工情報に比べると加工基準が緩和されています。一方、第三者提供が可能だった匿名加工情報に対し、仮名加工情報は第三者提供を原則禁止しています。そのため、内部分析への利用がメインとなります。

参考:個人情報保護委員会「令和2年改正個人情報保護法について」

就活支援や採用活動をするうえで、どう個人情報を扱えばよい?

大学のキャリアセンターなどキャリア・就職支援をおこなう立場の方々も、個人情報を取り扱う事業者であり、責任と法令の順守が求められます。
それでは具体的に、どのような点に注意して個人情報を扱っていく必要があるのでしょうか?

まず注意すべきは、大学で運営するインターンシップなどの参加学生に関する情報を、大学から企業に渡すケースです。
この場合は、先んじて企業と「どのような目的で個人情報を集めるのか」を明確にしておく必要があります。情報を集める際も学生に対して同意を取りましょう。
収集した個人情報を企業に渡す際も、ファイルにパスワードをかけてメールで送るなど、漏えいに十分気を付けなければなりません。
さらに第三者提供をする場合は、データを提供した日時や提供先の住所、氏名などを記録し、記録した文書等は3年間保管する必要があります。

また、特定の学生や卒業生の情報を企業から聞かれるケースがあります。
その場合、問い合わせに答えること自体が個人のデータ提供にあたります。

他にも、キャリア・就職支援担当者が面談などを通して学生の情報を記録する際にも注意が必要です。
個人が特定できるような情報を含む書類やメモは、鍵のかかるキャビネットを利用するなどして厳重に保管します。
不要になった書類やメモは手元に残さず、シュレッダーをかけるなどして確実に処分するようにしましょう。電子データも同様です。

学生や企業とメールでやり取りをする際も、特定の学生に関する情報を含んだメールを誤って送信してしまったり、一斉送信で関係のない人に送ってしまうなどのミスがないよう注意しましょう。

参考:個人情報保護委員会「個人情報の研修資料・ヒヤリハットコーナー」

まとめ

2022年4月に改正個人情報保護法が施行され、個人情報の取り扱いがより厳しくなりました。
採用・就職活動での個人情報もこの法律に準ずることになります。
学生の履歴書やエントリーシートの添削にあたるキャリア・就職支援担当者は、この機会に情報の取扱いを見直して漏えいのリスクを防ぎましょう。

マイナビキャリアサポートでは、就職活動に取り組む学生だけでなく、キャリア・就職支援担当者の皆様にも有益な情報を発信しています。今後もぜひご活用ください。

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