企業の採用選考方法のひとつとして取り入れられているグループディスカッション。
この記事ではグループディスカッションとは何か、どのように対策すればよいかについて解説します。
グループディスカッションとは?
グループディスカッションとは、複数人(4~8人程度)の学生がグループを組み、提示されたテーマに対して議論を重ねたうえで、制限時間内に結論を出す過程を見る選考方法です。
テーマは身近なものから企業の課題、時事問題までさまざまです。また、最後に結論をグループごとに発表させるケースも多い傾向にあります。
さらに、マイナビがおこなった2025年卒大学生を対象とした調査によると、約半数がグループディスカッションを経験したと回答しています。この点から、企業の選考においてグループディスカッションが重要視されていることがうかがえます。
参考:マイナビキャリアリサーチLab「マイナビ 2025年卒 学生就職モニター調査 5月の活動状況」
グループディスカッションの種類
グループディスカッションには大きく分けて4種類のタイプがあります。それぞれに特徴があるため、違いを知っておきましょう。
自由討論型
例えば「社会人と学生の違いとは?」や「当社の新入社員に最も必要なスキルは何か?」といったように結論や答えが明確でないテーマに対して自由に討論しながら、自分たちの答えを導き出します。
自由度が高いぶん、注意してディスカッションしないと収拾がつかず時間内に結論が出なくなってしまうため気を付けましょう。
ディベート型
例えば「円安の賛否について」のように一つのテーマに対し、賛成派と反対派にわかれて討論し時間内に賛否を問います。
相手に納得してもらうことを意識し、感情的にならず合理的な意見を伝えましょう。ディベート型のグループディスカッションでは特に論理的思考力が問われます。
選択型
「この選択肢のうち、無人島に何を持っていくか」のように、1つのテーマに対し複数の選択肢が与えられるなか、メンバー同士で最適な選択肢を選んだり、選択肢に優先順位を付けたりします。
メンバーがそれぞれ納得したうえで結論を導かなければならず、チームワークが問われます。
課題解決型
「この商品の売上をアップさせるためにどのようなプロモーションを実施すべきか」や「自社の志望者を増やすにはどうすればよいか」といったように、提示された課題に対して具体的な解決策を導きます。
最終的には採用担当者の前で発表するケースが多いため、時間内に解決策を出したうえで、どのように発表するかまで準備しなければなりません。
新卒採用選考でグループディスカッションを実施する理由
新卒採用選考のグループディスカッションは、主に書類選考後の選考に取り入れられています。他の学生に対するコミュニケーションの取り方を通じて、学生の素顔や特性を直接観察できるからです。また、グループディスカッションを実施して、学生の基本的な特性や企業への理解度などを把握したうえで個人面接をおこないたいという理由もあります。
グループディスカッションは初めて会う学生同士がグループを組み、テーマに対して時間内に結論までまとめていかなければなりません。そのため選考においては、学生それぞれの本来の性格やコミュニケーションの取り方が表れやすいというメリットがあります。
ディスカッション以外のグループワーク
グループディスカッション以外にも、集団で取り組むグループワークにはさまざまな種類があります。一例として以下のようなものが挙げられます。
- 材料を与えられ、作品を作り上げる(ブロックで指定された形を作るなど)
- 材料を与えられ、課題をこなす(紙でより高い塔を作る方法を考えるなど)
- データを与えられ、実際の業務に準じたプロジェクトやゲームに取り組む
- データを与えられ、実際の業務と関係のないプロジェクトやゲームに取り組む
このように、議論が中心となるグループディスカッション以外にもグループで取り組む選考方法が存在します。一見どのように対策すればよいかわからず不安に感じるかもしれませんが、「グループで課題に取り組む」という点において意識すべき点は変わりません。後述するようなポイントを押さえて対策していきましょう。
グループディスカッションで見られるポイント
グループディスカッションでは主に、以下の能力が見られます。
論理性 | 意見が論理的でわかりやすいか |
積極性 | 積極的に意見しているか、一番最初や議論が難航した際に口火を切れるか |
リーダーシップ | 議論を結論に導いているか、意見を広げる・まとめることができているか |
協議性 | 他の人の意見に耳を傾け、意見を求めているか |
他者への配慮 | 反対意見を述べる場合でも相手への配慮があるか |
グループディスカッションは自分の意見を伝えることが重要であると考えがちですが、「周りの意見に耳を傾けられるかどうか」も大事な要素です。
また、時間内にテーマの結論を出さなければなりません。チームや議論への貢献といった協調性の高さも見られていることを意識しましょう。
グループディスカッションの進め方
グループディスカッションは与えられた時間のなかで議論し、結論まで導き出す必要があります。そのため、効率よく進めるのに有効な手順を知っておきましょう。
一般的な流れと時間配分を確認する
一般的なグループディスカッションの流れは、以下のとおりです。
- 自己紹介のあと、役割分担と時間配分を決める
- 話し合う要点を明確にする
- 意見やアイデアを出し合う
- 意見・アイデアを整理する
- 結論をまとめ、発表の準備をする
- 発表する
時間はおおむね30~60分程度です。
ポイントは、最初に役割や時間配分を決めることです。テーマや発表形式によってかける時間は変わりますが、意見を出し合い、まとめる時間を多めに取るようにします。
また、最初から意見を出し合うのではなく一度自分の意見を考える時間を設けておくとスムーズです。
グループディスカッションにおける役割を決める
グループディスカッションには、いくつかの役割があります。
主な役割は以下のとおりです。
役割名 | 各役割の説明 |
リーダー(議長、司会) | 議論の進行、整理、活性化などを担当します。メンバーに意見を求めたり、結論をまとめることが役割です。 |
タイムキーパー(時間管理) | 議論の進行管理を担当します。時間を知らせてリーダーを補佐する一方で、自分の意見も発言するようにします。 |
書記 | 議論の要点をわかりやすく整理し、まとめ、書き留めます。 |
また、役割につかなかった場合もグループに貢献し、結論を出そうとする姿勢は評価されます。意見を述べている人への相づちや、全員が意見を言いやすい雰囲気作りに協力しましょう。
グループディスカッションで意識すべきこと
グループディスカッションも選考のひとつであり、取り組む姿勢が重要になってきます。意識したい7つのポイントを押さえておきましょう。
また、対面とWEBでは意識すべきポイントが異なります。併せて確認していきましょう。
わからないことは開始前に質問する
グループディスカッションは、限られた時間でおこなわれます。始まってから質問を繰り返すと議論の妨げになるため、不明点は開始前に質問しましょう。
無言を避け、ディスカッションに参加する
グループディスカッションは議論の場であるため、発言しないと適切な評価を受けることができません。自分の意見を発言するようにしましょう。
また、他の人が話をしているときにそちらを向いたり、相づちを打って反応するのもディスカッションに参加している姿勢を示すことにつながります。
特に表情やリアクションが伝わりにくいWEB・オンラインでのグループディスカッションの際は、画面越しでも伝わるように大きなリアクションを意識しましょう。
目立つことに固執せず、グループワークであることを意識する
一方、評価されないことを恐れるあまり自分ばかり話し続けたり、自分の意見を貫こうとしてしまう人もいます。
しかしこれは議論を円滑に進める姿勢とはいえず、逆に「自己中心的なふるまい」と受け取られる可能性があります。グループディスカッションではグループで結論を導き出すことが目的であるため、自分の意見に固執しすぎるのは避けたほうがよいでしょう。
WEB・オンラインの場合は対面に比べて発言のタイミングを読むことが難しいため、周りの状況やメンバーの表情をよく見るとよいでしょう。自分が話したいときにも、わかりやすく身振りや表情で示すと進行しやすくなります。
場を壊すような行為があれば、議論の軌道修正を心がける
自分の意見を押し通そうとする、不満を態度に出す、雰囲気を悪くするなど場を壊すような行為をする人を、学生の間ではクラッシャーと呼ぶこともあります。
こうした行為は他のメンバーに迷惑をかけるだけでなく、「会社のなかでも同じようなふるまいをするのではないか」と受け取られてしまいます。そのようなふるまいをしないことを前提に議論に参加しましょう。
もしもグループにそのような参加者がいた場合は、議論が進まずグループ全体の評価も下がる恐れもあるため、そのままにせず「今、議論する内容をあらためて提示する」「他のメンバーに意見を求める」など軌道修正を図りましょう。
声の大きさやトーンを意識する
グループディスカッションは、複数のグループにわかれておこなわれます。
対面の場合は他のグループと同じ部屋で実施されるため、声が小さいと他のメンバーや評価者に届かないことがあります。はっきりとした声の大きさで明るいトーンで発言するように意識しましょう。緊張しやすい人は事前に練習しておくとよいでしょう。
WEBの場合は自宅や指定の会場でおこなわれる可能性があります。大きな声を出せない環境にある場合は、声を拾いやすいマイクを使いましょう。また、通信機器や環境の確認、照明の調整も事前におこないましょう。
議論中の姿勢や癖に気を付ける
議論中の姿勢や癖が評価者にマイナスな印象を与えることがあります。
例えば肘をつく、頬杖をつく、椅子にもたれかかって座る、手元でペンを回す、髪をいじるなどの行為は悪い印象を与えかねません。普段の態度に癖があるか確認し、日常からあらためるようにしましょう。
時間配分や結論を出すまでの過程を意識する
時間配分を意識せずに議論を進めると十分に時間が取れず、納得のいく結論まで導き出せない場合があります。
そんなときは前提を考え直すほか、意見をまとめ、結論を出すタイミングを考え直します。大事なのはグループの共通認識として決めることです。全員が同じ方向に向かって進むことを意識しましょう。
グループディスカッションの練習方法
グループディスカッションについて、「練習しづらい」「対策が立てづらい」と考える学生が多いようです。
ここでは、グループディスカッションの練習方法をわかりやすく解説します。
評価担当者を含め、メンバーを集める
まずメンバーを集めます。就職活動仲間や友人、ゼミナールのメンバー、アルバイトの仲間など、一緒に議論してくれる人を探しましょう。
グループディスカッションでは必ず評価する面接官がいます。そのため練習でも、グループディスカッションを観察し評価する担当者を設けましょう。終わってから一人ひとりに対してフィードバックできれば練習の効果が高まります。またディスカッションを客観的に観察する経験は、本番の試験官が何を見ているのか理解できるため有益です。
各役割について確認する
メンバーが集まったら司会やタイムキーパー、書記、評価者など役割を確認します。本番同様、なかなか決まらない場合には自主的に役割を担うという意識が大切です。自分から率先して手を上げる経験にもなるでしょう。
テーマを決め、ディスカッションする
テーマを決めて、議論を開始します。
グループディスカッションの時間は、多くの企業が30分~60分程度を設定しているため、同じぐらいの時間で練習しましょう。
仮に設定時間が30分の場合、自己紹介、役割分担と時間配分の決定で5分、議論に15分、意見をまとめて結論を出すまでに9分、発表で1分の配分を目安とします。。
議論するテーマは、慣れないうちは話しやすいテーマから始めるとよいでしょう。徐々に時事問題や志望企業の出題傾向や課題を調べてテーマを設定していくと本番対策につながります。
ディスカッションの様子を録画して見直す
練習後は、評価担当者が一人ひとりのふるまいをフィードバックします。
同時に、練習の様子を録画しておいて見直すのも、自分のふるまいの癖や発言などが明らかになるため効果的です。自分のふるまいを客観視することで、改善につなげます。
別のテーマで繰り返し練習してみる
フィードバックまで完了したら、役割や議論スタイルを変えたりして繰り返し体験するのもよいでしょう。また対面だけでなくWEBでも練習しておくと安心です。
グループディスカッションの練習で評価、フィードバックする場合どこを見る?
グループディスカッションで評価役を務める場合、必ずフィードバックをおこないましょう。ここからは、5つの視点から見るべきポイントを説明します。
個人にフォーカスしたフィードバックを
グループディスカッションは、あくまでも選考であり、最終的に個人を評価するためのものです。グループ全体の意見の活発さや雰囲気の良し悪しが、個人の評価に影響することもあるため、参加者としてはグループ全体のことを意識する必要があります。
評価役の場合はグループ全体への評価に加えて、個人に注目して評価してあげると喜ばれるでしょう。その際、グループディスカッションを通じて「その人らしさ」がどのように伝わったかを詳しくフィードバックしましょう。
発言の量、積極性
それぞれの発言量や、積極的に議論に参加できていたかに注目しましょう。
発言自体が少ない場合も、タイムキーパーや書記を率先して担ったり他の人に質問するなど、議論を進めるためのコミュニケーションが積極的に取れていれば評価します。
発言の内容、思考力や言語化のスキル
発言の内容もチェックすべきポイントです。
議論を進めるうえでアイデアを出せたか、議論をまとめたかなど、思考力や言語化のスキルを見ていきます。テーマが応募企業や業界、仕事に関する場合は、どの程度理解が深まっているかについても注目します。
周囲への気配り、円滑な進行への協力態度
周りへの気配りや、進行を円滑にするような態度があったかをチェックします。
発言が少ない人に話を振る、他の人が話しているときに聞く姿勢をとっている、否定する場合でも一度意見を受け入れてから話すといった姿勢は評価すべきポイントです。
仕事をするにあたっての適性
もし参加者の志望業界・企業・職種が定まっていれば、練習を始める前に聞いておくと、その仕事における適性があるかどうかイメージを膨らませながら様子を観察することができます。実際に仕事をするにあたって、チームに貢献するイメージがわくか、個人の強みが会社のなかでどのように活かせるか、といった点は大事なチェックポイントです。
まとめ
提示されたテーマに対して複数人で議論を重ねるグループディスカッション。
対策が難しいと考えている人も多いですが、実際に練習をすれば自分のふるまいなどを客観的にみられるため、事前に修正しやすいというメリットがあります。本番までに一度は練習することをおすすめします。
キャリア・就職支援担当者の皆様は、評価者役などで学生をサポートする機会もあるでしょう。この記事でご紹介したようなポイントを押さえ、有効なフィードバックの参考にしてみてください。
また、下記でもグループディスカッションについて解説しています。併せてご覧ください。
「マイナビキャリアサポート」は
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