就職活動において、企業から提出を求められることの多いエントリーシート(ES)。学生のなかには書く内容について迷ったり、悩んだりする人も多いでしょう。
この記事では、企業がエントリーシートで何を見ているのか、具体的に何をどのように書けばよいのかに加え、添削のポイントまで解説します。
エントリーシート(ES)とは?
エントリーシートとは、就職活動で応募者が企業側に提出する書類です。基本的に選考に用いられ、エントリーシートを見て選考し、通過者のみが面接に進めるケースもあります。
書式は企業ごとに異なりますが、一般的に「志望動機」「自己PR」「学生時代に力を入れたこと」など面接で学生に聞きたい設問が記載されていることが多いです。
企業はエントリーシートを通して「応募者がどのような人物か」を見ています。書かれているエピソードからどのような人柄かを読み取ると同時に、読み手の存在を意識した文章を書けているかといった文章作成能力や情報伝達能力もチェックしています。
また、企業にマッチしているかどうかも確認します。企業側に「実際に会って話を聞きたい」と思われるようなエントリーシートにするためにも、企業側の視点を知ったうえで作成することが大切です。
エントリーシートで企業がチェックするポイント
エントリーシートで企業がチェックするのはどのような点でしょうか。ここではより具体的に、6つのポイントを紹介します。
文体は適切か、誤字脱字はないか
まず、「企業に提出する書類として文体が適切かどうか」を見ています。
会話で用いるようなフランクな単語や言葉は避け、「!」や絵文字なども使わないようにしましょう。
また、口語体「~です、~ます」の敬体か「〜だ、〜である」の常体かについては、企業から指定がある場合は従い、ない場合はどちらかに統一します。
誤字脱字や誤変換、漢字の間違いなども見られるポイントです。
誤字脱字や誤変換が多いと、場合によっては「見直しをしない人」と判断されてしまうかもしれないため、エントリーシートを書き終えたあとは必ず見直しましょう。自分では間違いに気付けないこともあるため、第三者にチェックしてもらうのも有効です。
具体的な内容になっているか
具体的な内容で書かれているかどうかも、エントリーシートを見るうえでチェックするポイントです。
漠然とした内容だと「何を伝えたいのか」「何について書いているのか」を企業側が読み取れず、評価できない可能性があります。
そのため、例えば経験やエピソードを書く際は「何を体験したのか」「どのような行動をしたのか」「なぜその行動をしようと思ったのか」「その結果どのような成果や学びを得たのか」を、具体的に書きましょう。
自分で読み返して、何を言いたいのかぼんやりとした印象を受ける場合は、具体的な情報を加えてみると改善されるかもしれません。
設問に答えられているか
エントリーシートには、基本的に企業からの設問が提示されています。そのため、各設問の意図を理解して答えられているかも見られます。
どのような意図で問われているのか正しく読み解き、設問からずれていない回答を準備しましょう。
提示された設問に沿わない回答は、評価できないだけでなく、理解力や読解力がないと思われてしまう可能性もあります。
わかりやすく伝えようとしているか
読み手に伝わるように文章を書いているか、というところも見られているポイントです。
読み手がスムーズに理解できるように配慮されている文章は好印象につながります。結論ファーストでまとめ、無駄な情報は省くようにしましょう。
また、難しい漢字や難解な言葉、一部の人しか使わないような単語を使うことは避けるようにします。
専門用語を使う場合は簡単な解説を入れるなどして、わかりやすく表現しましょう。
情報や意見を相手に正しく伝える力は、社会人として仕事をする際に必須となります。
自分にしかわからないような書き方になっていないか、誰が読んでもわかるかを意識しましょう。作成後は自分で読み直すだけでなく友達や家族に読んでもらったり、大学のキャリアセンターで添削してもらったりするのも有効です。
書かれている内容に根拠があるか
書かれている内容に根拠があるか、説得力があるかもチェックされています。「たくさんの人」ではなく「100人」と書くなど、数字を用いて説明できる箇所は具体的な数字を取り入れるとよいでしょう。自分が行動したことに対して、周りからの評価や反応を記載するのも効果的です。
また、自己PRと自分の強みにずれがないとエントリーシート全体に一貫性が出て説得力が増します。逆に、自主性を自分の強みとして挙げているのに自主性を示すようなエピソードがない場合、一貫性がなく根拠が薄いと判断される可能性があります。
最終的にどのような強みを持つ人物として認識してほしいのかを考え、個々の質問に個別に答えるのではなく、エントリーシート全体で考えるようにしましょう。
企業や職場に合う人材か
エントリーシートを通して、応募者が企業や職場に合う人材かどうかもチェックしています。企業ごとに設問が異なるのはこうした理由もあります。
エントリーシートを書く前に、それぞれの企業が打ち出しているビジョンや理念、仕事内容などを確認しておきましょう。もちろん無理に各企業に合わせて自分の人物像をねじ曲げる必要はありません。しかし企業に対してアピールするにあたり、企業がどんな人物を求めているかを意識するのとしないのとでは印象が大きく異なります。エントリーシートの段階から積極的に情報を収集していきましょう。
エントリーシートの基本的な書き方
具体的にエントリーシートには何を書けばよいのでしょうか。ここでは記載項目ごとに書き方を説明します。
日付や氏名などの基本項目
日付や氏名などの基本項目にも一般的な書き方があります。
項目 | 各項目のポイント |
---|---|
日付 | メールやインターネットで提出する場合は提出日、郵送の場合は投函日を記載。 西暦か元号かは書類全体で統一する。 |
写真 | 好印象を与える表情を意識し、服装はスーツを着用。 スピード写真や、写真館などで撮影。 写真の裏面には学校名、学部、氏名(フルネーム)を記入し、 記入項目の書き漏れに備えて最後に貼り付ける。 |
氏名 | 「ふりがな」の場合はひらがな、「フリガナ」の場合はカタカナで記入する。 |
年齢 | 提出時点の年齢を記入する。 |
住所 | 基本的に住民票に準じて表記。都道府県から書き、町名、番地、マンション名なども 省略せず記入する。休暇中の住所も記入欄があれば省略せず記入する。 |
連絡先 | 日中、連絡が取りやすい電話番号を記入。固定電話がない場合は、携帯電話のみでも可。 メールアドレスは、アルファベットや数字の間違いがないように記載する。 |
印鑑 | 押し間違いやにじみに備え、エントリーシート記入前に朱肉を使って押印する。 |
学歴・職歴
学歴・職歴を書く際は、他の応募書類の項目も含めて西暦か元号かを統一します。企業側の指示がなければ、学歴は基本的に中学卒業から記入します。学校名や学部学科名は省略せず表記し、大学の卒業見込みも記載します。
職歴にアルバイトは含まれないため、過去に正社員の経験がある場合のみ記入しましょう。ただし「学歴・職歴」とある場合は、職歴の記載欄に「なし」と「以上」を記入します。
自己PR
自己PRは、仕事で活かせそうな自分の強みをエピソードとともに伝えます。
「私の強みは~です」「私は~な人間です」など、結論からスタートして重要な箇所が真っ先に相手に伝わるようにします。
エピソードは事象の羅列にとどめず、出来事の背景に起こったことや、自分がどのような考えや価値観から行動に至ったのかなどを具体的に書き、初めて読んだ人でも理解できるようにしましょう。
また、数字や成果を盛り込み、結論の説得力を高めます。
最後に、「この強みを社会(会社)でどのように活かしたいか」まで書くと、企業側も働く姿をイメージしやすくなります。
学生時代に打ち込んだこと
学生時代に打ち込んだことを聞かれた際は、何を頑張ったのかを理解してもらえるよう意識しながら、結論からスタートして具体的に書きます。
ゼミでの活動やアルバイト、ボランティアや部活動での出来事を取り上げる人が多いですが、それ以外のテーマでも構いません。
打ち込もうと思ったきっかけや目標、目的のほか、どのように取り組んだのか、結果としてどのような成果を上げたのかを書いていきます。最後は一連の経験から得た学びや気付き、大事だと感じたことで締めくくります。
その際、失敗や困難、苦労に対してどのような創意工夫や努力をしたかを紹介できると、自分の長所がアピールできます。「粘り強く努力を続けられる人」「問題に対して前向きに取り組む人」といったように、エピソードを通してどのような人物であると感じてほしいかを考えましょう。
志望動機
志望動機は、「数ある企業から当社を選んだ理由は何か」という企業の疑問に答える設問です。
共通の動機を使い回すのではなく、応募する企業ごとに考えるのが望ましいです。そのためには、企業研究や業界研究を重ね、応募先の何に魅力を感じたのかや好意を持った理由を具体的に把握しておくことが大切です。
併せて自分の就職活動の軸と企業のどの部分がマッチしたか、どのように自分の強みを活かしていけそうかを記入します。その際は「貴社で成長したい」という姿勢以上に「貴社に貢献したい」といったかたちで、主体性や積極性をアピールするとよいでしょう。
エントリーシート作成のマナーと提出前のチェックポイント
エントリーシートでは、文章作成能力も見られています。ここでは作成のマナーと提出前のチェックポイントを説明します。
指定や指示がある場合はよく確認する
企業側からの指定や指示を確認したうえで、準備を始めます。エントリーシートの形式や書式、封筒のサイズなど細かい部分までチェックしましょう。
指定に対して不備がある場合、企業によってはその時点で不採用にするケースもあります。最初に内容を確認し、余裕を持った準備を心がけましょう。
また、提出は郵送かWEBか、当日必着か消印有効かなども確認し、提出期限に遅れないようにしましょう。
文字は丁寧に書く
文字も人柄を印象付ける要素の一つです。エントリーシートを作成する際は、字の丁寧さに加え、読み手の読みやすさに配慮することが大切です。
手書きの場合の文字は見やすい大きさで丁寧に書き、文字列はまっすぐ、行間が平行になるようにします。
黒のボールペンか万年筆を使う
手書きで作成する場合は黒のボールペンか万年筆を使います。書きやすく、筆跡がきれいに見えるペンを選びましょう。途中でインクが切れても対応できるように数本準備しておくと安心です。
基本的に鉛筆やシャープペンシル、マーカーは使わず、下書きで使用した場合も完成後にきれいに消しましょう。また、間違えた場合は最初から書き直します。修正液や修正テープは原則使わないようにしましょう。
消せるボールペンに関しても熱に弱く、コピー機の熱や直射日光で消えることがあるため使わないようにしましょう。
口語や略語は使わない
エントリーシートはビジネス文書です。作成は書き言葉の文語を使い、話し言葉でもある口語や、略語は避けます。
例えば「会社」は口語だと「御社」ですが、文語では「貴社」と書きます。他にも「食べれる」「見れる」のような「ら抜き言葉」や「超暑い」といったカジュアルな表現、「なので」「だから」などの話し言葉の接続詞は使わないように気を付けましょう。
また丁寧さに欠けると判断される場合があるため、略語も控え正式名称で書きます。
具体的な略語の例は以下のとおりです。
略語 | 正式名称 |
---|---|
(株) | 株式会社 |
●●高校 卒業 | 県立●●高等学校●●科 卒業 |
バイト | アルバイト |
スマホ | スマートフォン |
ゼミ | ゼミナール |
誤字脱字や間違い、記入漏れがないかよく確認する
エントリーシートに誤字・脱字や記入漏れがないか、応募前に必ず全体を見直しましょう。
特に間違えやすいポイントを以下にまとめています。
- 誤字・脱字や記入漏れはないか
- ふりがな(フリガナ)を書き忘れていないか
- 押印欄がある場合、押印されているか
- 住所、学校名などは省略せずに書かれているか
- 電話番号、メールアドレスは間違っていないか
- 入学・卒業の年月に誤りはないか
- 応募書類全体で、西暦か元号かの表記が統一できているか
写真は剥がれないよう貼れているか注意する
写真は剥がれないように貼ってあるか確認します。しっかり貼ったつもりでも、何かのタイミングで剥がれることがあります。
万が一剥がれてしまったときのために写真の裏面に氏名と大学・学部・学科を明記しておきましょう。
エントリーシート・履歴書は提出前にコピーを取っておく
エントリーシート・履歴書は、提出前に必ずコピーを取っておきましょう。
面接はエントリーシートをもとにおこなわれますが、面接官の多くが事前に応募書類を読み込んで臨む可能性が高いため、何を質問されるか対策を立てるうえでも、手元に残しておきます。
エントリーシートの添削はどこを見る?フィードバックのポイント
ここまでエントリーシートの書き方について解説してきました。では、エントリーシートや履歴書の添削に当たることが多いキャリア・就職支援担当者は、何を見てフィードバックすればよいでしょうか。
ここでは、フィードバックのポイントについて説明します。
文字数や文字の大きさは適切か、空白が目立たないか
まず文字数や文字の大きさをチェックしましょう。
一般的には8割以上の記入を求められますが、文字数が大幅に足りない場合は学生の話を聞いてみて、書けることがないか一緒に考え、文章量を増やす手助けをしていきます。
手書きの場合は文字の大きさがそろっているかもチェックポイントです。文字が小さかったり文字の大きさがそろっていなかったりすると、読み手が読みづらさを感じるため、読み手の視点でフィードバックします。
文章表現は適切か、誤字脱字や読みにくい箇所はないか
文章の表現は適切か、誤字脱字や読みにくいところはないかを確認します。
一文が長いと読みづらさを感じるため、読み手に配慮するという視点からフィードバックします。
特に学生自身が伝えたい内容が読み手に伝わらない表現になっている場合は、伝わる内容にするために一緒に改善策を検討しましょう。
文章は論理的か、根拠と結論に一貫性があるか
論理的でわかりやすい文章になっているかもチェックしましょう。
結論と根拠につながりがあるかは非常に重要なポイントです。ずれている場合は具体的にずれている箇所を示し、修正を促してみます。
自己PRで強みと行動にずれを感じた場合は、「ずれている」とだけを指摘するのではなく、「あなたの魅力が伝わるように修正していこう」と学生の話を引き出し、情報を整理していきましょう。
内容は具体的か、第三者が見てイメージできるか
内容は具体的か、第三者が読んでイメージできるかもチェックします。
行動を含めたプロセスが書かれているか、数字や情景が浮かぶ表現になっているかなどを見ていきます。例えばチームで取り組んだエピソードでも、その学生が個人でどのような行動をしたのか書かれていない場合は、学生に焦点が当たるように文章を書き加えたり修正すると、どのような人間か伝わりやすくなる旨をフィードバックします。
また、「すごく」「とても」「非常に」という表現は抽象的な内容にとどまりやすいため、こういった曖昧な表現が出てきたら丁寧に話を聞いて、内容を具体化できるようにサポートするとよいでしょう。
内容から価値観や個性が伝わるか
エントリーシートの内容から学生の価値観や個性が伝わるかもチェックすべきポイントです。学生自身が何を考えて、どのような行動をしたかを具体的に書けるようにフォローしましょう。
また、企業側に学生が働くイメージをもってもらうためにも、自己PRであれば「強みを社会でどのように活かしていくか」、学生時代に力を入れたことに関しては「経験からの学び」をそれぞれ盛り込むようにアドバイスするとよいでしょう。
まとめ
企業が学生に提出を求めるエントリーシートは、選考の判断材料として利用されます。作成時には人事担当者の視点を頭に入れながら、読み手に伝わる内容を意識することが大切です。
キャリア・就職支援担当者の皆様は、学生が作成したエントリーシートを添削する機会も多いでしょう。この記事でご紹介したようなポイントを押さえ、有効なフィードバックの参考にしてみてください。
マイナビキャリアサポートでは、大学のキャリア・就職支援担当者の皆様に有益な情報を発信しています。今後もぜひご活用ください。
また、以下でもエントリーシートについて解説しています。併せてご覧ください。
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