仕事・業界・社会への理解を深めることに貢献したインターンシッププログラムを表彰する「学生が選ぶインターンシップアワード」。マイナビも後援するこのアワードでは、表彰式を含めた「インターンシップカンファレンス」にて毎年、企業や大学の表彰の他に有識者による講演を実施しています。本記事では、その中からインターンシップの効果や今後の発展の可能性について語られた多摩大学 経営情報学部 准教授の初見康行氏の講演内容の一部をご紹介。初見先生へのインタビューを通して、大学側の取り組みに関するアドバイスなどについてもお聞きしました。
Profile
初見 康行 氏
多摩大学 経営情報学部 准教授
大学卒業後、人材業界で法人営業や人事業務に従事。2017年、一橋大学大学院商学研究科にて博士号を取得。2018年より現職。専門は人的資源管理。大学生のインターンシップ活動に関する研究に取り組んでいる。主著に「若年層の早期離職」(中央経済社)。2019年より「学生が選ぶインターンシップアワード」にて講演を担当している。
インターンシップは「提供手段」よりも「内容」にこだわるべき
―最初に、2022年5月に開催されたインターンシップカンファレンスでは、どのようなお話をされたのですか?
大きく分けると「インターンシップの現状・成果」「インターンシップのステップ別の効果」「インターンシップの可能性」という3つのテーマで発表させていただきました。
まず、最初のテーマでは、「インターシップが学生・企業・大学にとって本当に有益なのか?」ということを調査した結果をお話ししたのですが、結論からお伝えすると、「就職活動の満足・納得感」「入社企業の満足・納得感」「大学生活の満足・納得感」のいずれの調査でもインターンシップ経験のある学生の方が高い数字が出ました。
また、新型コロナの感染拡大の影響により、対面型からオンライン型のインターンシップに切り替える企業が増加したのですが、この二つの間には決定的な差は見られませんでした。つまり、企業にとっても大学にとってもインターンシップは手段を気にするより、その中身にこだわるべきだということが言えると思います。
インターンシップの効果向上に大学教職員の果たす役割は大きい
―なるほど。では、インターンシップの中身とは、どういったことを指すのですか?
これが2つ目のテーマである「インターンシップのステップ別の効果」というお話になるのですが、この部分はとくに大学で学生のキャリア支援に携わる皆さんに聞いてほしい内容です。
というのも、インターンシップのステップを分解すると、①事前学習(企業の情報収集や期間中の目標設定など)②インターンシップ・プログラム(企業が実際に提供する就業体験)③事後学習(評価・フィードバックや学生自身の言葉での振り返りなど)から構成されているのですが、この中でも①事前学習と③事後学習の充実度の違いが、効果にも大きな差として表れるのです。
―具体的には、どのような違いによって、どのような差が表れるのですか?
これまでの研究から、まず、学生は自らの専門・専攻に近いインターンシップに行くほど、インターンシップ後の学習意欲が高まることが確認されています。そのため、大学推薦型のインターンシップをコーディネートする際はできるだけ学生の専門・専攻に近いプログラムを選び、かつ適切な目標設定を行うことがポイントです。言い換えれば、インターンシップの効果の一部はインターンシップに行く前に決まっているとも言え、大学教職員の果たす役割は非常に大きいと思います。
また、インターンシップの効果をより高めるために重要となるのが、事後学習。インターンシップ終了後、評価・フィードバックを大学内で丁寧に行うことで、学生のその後の志望度の向上、適職の発見感、学習意欲や就職活動への意欲の向上につながるという結果が出ています。インターンシップ終了後のタイミングこそ、学生の顔つきを変える大きなチャンスと言えるでしょう。
インターンシップを味方につけ、教育の場として活用する
―では、3つ目のテーマであるインターンシップの可能性では、どのようなお話をされたのですか?
講演では、企業の人事担当者の方も多くいらっしゃったので、企業が提供するプログラムの注意点などについてもお話しさせていただきました。具体的には、「競合企業でも実施できるようなプログラムにしては意味がない」「自分たちの企業ならではの社風や文化を伝える内容にすべきだ」といった話です。
また、大学でキャリア支援に携わる皆さまに対しては、「インターンシップを味方につけてほしい」といった趣旨のお話をしました。昨今ではインターンシップの参加率が8割を超える一方、「なんとなく」や「仕方なく」といった意識で参加する学生も増えていると思われます。でも、それではもったいない。
インターンシップには教育の場としても様々な可能性があり、たとえば、他大学の学生と切磋琢磨し合える環境は、学内だけでは用意できないものです。そうした環境下で学生たちはおそらく、他大学の学生と自分を比較し、自信を持ったり、焦りを感じたり。こうして客観的に自分の強みや弱みを知っていくことができるのも、インターンシップの魅力です。
さらに、今後の傾向として、大学1〜2年生を対象としたインターンシップを実施する企業も増えることでしょう。だからこそ、大学も学生も、インターンシップを「就職活動の一部」ではなく、「大学での学習深化や、新しい自分、新しい世界を経験する貴重な機会」として捉え、学生の目が短期的な就職活動に向かい過ぎないよう留意する必要があるといったアドバイスをさせていただきました。
就業後の影響に関しても、マイナビと追跡調査を行っていく予定
―ありがとうございます。では、最後にご自身の今後の研究についての展望などあれば教えてください。
私自身の今後の研究に関しては、「大学時代のインターンシップ経験が、卒業後の社会人としての活躍にどのような影響を及ぼすのか」といったことも分析していきたいと考えています。マイナビと連携しながら「インターンシップを経験した学生の方が、未経験の学生より、入社後のワーク・エンゲージメントや組織への愛着が高いか」といった追跡調査を行っていく予定です。
今後も、インターンシップの質の向上やさらなる発展に向けて、様々なことにマイナビと一緒に取り組んでいけたらと思います。
Editor’s Comment
弊社後援の「第5回 学生が選ぶ インターンシップアワード」のインターンシップカンファレンスにてご講演された内容をふまえ、改めて初見先生からインタビューでお聞きしました。特に各大学でインターンシップのご担当をされている方には非常に示唆の多い内容だったのではないでしょうか。特に大学が担う「コーディネーターの役割」は大きいものであるというお話が印象的でした。
「インターンシップ前後、どんな意味付けを学生に伝えるか?」ということを改めて考えさせられたインタビューでした。
(マイナビ副編集長:谷口)
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