1916年に創立。100年以上の歴史を持つ西南学院大学は福岡市の西新地区に位置し、7学部12学科からなる文系総合大学です。変わりゆく時代の中で、建学の精神である「キリストに忠実なれ」を教育の基盤とし、キリスト教の教えに基づく奉仕の精神を持った創造的な人材をこれまでに数多く輩出しています。キャリア支援においても、地元だけではなく、全国にOBやOGがいるという強みを活かしたサポートや、ここ数年は学生団体と協力した合同企業説明会の実施など、独自の取り組みに力を入れています。今回は、その学生団体主催の合同説明会を中心に就職課の松永氏にお話を伺いました。
Profile
松永 健汰 氏
西南学院大学 学生支援部 就職課
西南学院大学卒業後、保険会社で6年間勤務し、人事や営業の仕事を経験。2021年から、母校である西南学院大学に入職。現部署にてキャリアコンサルタントの国家資格を活かしつつ、学生と共に支援プログラムの開発や講座講師などの業務に携わる。
学生のための支援だからこそ、学生ならではの目線で構築
―まず、キャリア支援に関わる学生団体を立ち上げることになった経緯について教えていただけますか。
学生主体の進路実現、学生が主役のキャリア支援を理想とする本学において、私自身、真に学生の目線に立って必要な施策とは何なのかと模索した結果、学生団体と協力してイベントを実施することが良いのではという結論に至りました。
というのも、本学のオープンキャンパスでは、高校生に向けた入試広報を学生団体が中心になって行います。学生が中心になることで、高校生や協力してくれる学生のニーズをリアルに拾うことができますし、何よりイベント自体が非常に盛り上がる印象を持っていました。
そこで、キャリア形成や就職関連のイベントやプログラムも学生と一緒にできないだろうかと考えたのです。2022年1月に学生団体を立ち上げ、大学1~2年生を中心に設立メンバーを募集しました。コロナ禍で人が集まるのかといった不安はあったものの、約30名が手を挙げてくれて1年目がスタートしました。
―あえて就職活動をしていない低学年に絞ったのはなぜですか?また、キャリア支援の中でどうして合同説明会を選んだのでしょうか。
就職活動を経験していない1年生や2年生の方が、就職活動を経験している3年生や4年生よりも柔軟で型にはまらないアイデアを出してくれるだろうと考えたためです。加えて、早めにキャリア意識を持ってもらうことにも役立つのではないかと。
また、キャリア支援の中で合同説明会を選んだ理由は、どういう企業に出展いただくか、どういう形式にすればより学生が参加したくなるかといった部分に学生目線を取り入れたいと思ったからです。逆に、エントリーシート講座など、企業側、つまり大人側が評価するものは、就職課主体で講座を設計した方が良いと感じました。
本学では、もともと学内開催の合同説明会を実施していなかったこともあり、ゼロからの立ち上げには大変さもありました。しかし、その分、学生たちもより自由にアイデアを出し合い、どの企業にお声がけするか、学生へどうやって告知するか、当日の運営はどうするかなど、一つひとつクリアしながら形にしていってくれました。
参加する学生の数は開催ごとに増加、低学年の割合も約5割に
―学生団体と協力して開催している合同説明会を実施していく中で、見えてきた効果について教えてください。
学生団体との共催による一番の効果は、やはり参加者の人数ではないでしょうか。初年度のイベントでは、3日間で延べ約750名が参加しました。就職課主体のイベントと比較して参加者が多いと感じていましたが、さらに翌年は1.5倍、3回目である2024年度は約1,700名を更新しました。この盛り上がりは学生団体の働きがあってこそだと感じます。
具体的にはいくつか理由が挙げられると思いますが、企業の選定に学生の視点が入ったことで、私たちでは見つけられなかった企業に出展いただくことができました。また、学生団体主催イベントとして企業に依頼することで、企業側もその熱量に応じたいと積極的になってくださることも大きいですね。
さらには告知に関しても、学生たち自身でチラシを作って配ったり、直接友人などに声をかけたりすることで、大学主体の呼びかけとは異なる反響が生まれています。
本番当日の工夫も学生と企業の双方の高い満足度につながっているのではないでしょうか。会場の中央には出展企業を紹介する記事が置いてあるのですが、この記事も学生が取材し、執筆しています。
その記事を読んで興味を持つ参加学生や、1~2年生のスタッフから背中を押されてブースに向かう3年生の姿などを見ると、ここでも学生主体の良さが出ているように感じますね。あと、一回の説明時間を20分と短く設定し、説明時間が終わると次のブースに学生が移動するという仕組みになっているのですが、これも参加してくれた学生が集中して話を聴けるようにという学生たち自身からのアイデアです。
―実施する側が、参加する側の気持ちがわかっていると、そこまで工夫できるのですね。その他に違いは見えましたか?
そうですね。低学年の学生の参加する割合は、学生団体の加入条件を1~2年生にしたことによって他のプログラムと比べても圧倒的に高いと思います。初回から3割ほどが低学年でしたし、直近のイベントでは参加した学生のうち約半数の学生が低学年でした。
合同説明会は1日10社ほど、3日間で合計30社ほど出展していただいていますが、企業の担当者にお話を伺うと、低学年に対して自社の話ができる点をメリットに挙げてくださる企業も少なくありません。
学生だけでは困難な部分は職員が補完していく
―逆に、学生団体とともにキャリア支援を行っていく上での難しさについて教えてください。
低学年が中心のため、学生団体自体を維持していく大変さはありますね。ようやく慣れてきた3年生のタイミングで引退し、新入生が入ってきます。学生が毎年入れ替わっていく環境の中で、どう引き継ぎの負担を減らすか。学生団体の主体性を尊重しつつも、丸投げにはしないように私たち職員が適度な距離感を持った伴走者としての関係性を構築するようにしています。
毎年適切なフォローをし続けなければなりませんが、学生たちが成長していく姿を見られるのは嬉しいですね。この活動自体が学生自身のキャリア形成につながり、そのモチベーションを維持していけるように努力していきたいと思っています。
―その他のキャリア支援はどのようなことを行っていますか。
学生がそれぞれ希望する進路に主体的に近づけるよう、入学時から一貫したキャリア支援を行っています。低学年次にはキャリア形成支援として、正課科目にキャリア教育科目を開講したほか、合同説明会をはじめとした気軽に将来を考えるきっかけとなるようなプログラムを実施しています。
高学年次には、志望先や時期に応じた多面的な就活支援プログラムを提供しています。これらのプログラムは、私たちで企画・資料作成から講師までを担い、本学学生の志向に沿う内容であることが特徴です。
このような低学年次のプログラムと、高学年次のプログラムが、うまく連携できるようにブラッシュアップしていきたいですね。
将来が不安な今こそ大切なのは夢や希望の醸成である
―今後さらに力を入れていきたいことや挑戦したいことはありますか。
学生がキャリア形成や就職活動を前向きに、やる気をもって取り組めるようなプログラムを作っていきたいです。
学生団体には、合同説明会以外にも様々なことに挑戦してほしいですし、その実現をサポートすることで、本学の支援はさらによくなると思っています。また、私たちも、学生団体のやる気に負けぬよう新たな支援プログラムの開発に取り組み、現在は、仕事理解を深めるための企業と合同で行うPBL型の講座や、AIを取り入れた自己分析の導入などを考えています。
―最後に、他大学の皆さまへメッセージをお願いします。
学生を取り巻く環境は日々変化しており、将来に不安を抱えたまま社会に出る学生も多くいます。これまでは与えられ、学ぶ側だった学生から、社会に貢献していく、奉仕していく社会人へと成長していく過渡期に大学は関わっています。
だからこそ、私たち教職員の存在意義も大きく、かつその貢献の仕方も多様化しているのではないでしょうか。このような時代だからこそ、学生たちが未来に希望を持ち続けられる環境づくりに従事することで、学生、ひいては社会全体を明るくしていきたい。同じ教育機関の従事者として、そして学生を見守る大人として、お互い全力を尽くしましょう。
Editor’s Comment
多様な時代だからこそ、教職員からの視点だけではなく、学生視点をキャリア支援に取り入れることが重要というお言葉に「なるほど」と感じました。
特に、学生自らが合同説明会に招く企業を選び、イベントを広報するためのチラシ、参加する企業の紹介記事を作成し、当日の運営まで学生に任せるなど、学生視点の取り入れ方について大変勉強になりました。
そして学生同士はコミュニケーションも活発なためイキイキと活動している姿が目に浮かびました。また、学生自身が他の学生のキャリア形成に触れる経験の重要さもポイントだと気付きました。
学生は年々卒業していくため、学生団体の継続が課題と仰っていましたが、この取り組みはぜひ長く続けていただき、私も見続けたいと思いました。
(マイナビ編集長:高橋)
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