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大学事例|知識や経験を提供し「最良の選択」を可能にする|昭和女子大学

新しい女性を育む学校として、1920年創設の日本女子高等学院を源流に持つ、昭和女子大学。「世の光となろう」という建学の精神はいまなお引き継がれ、活躍する女性を輩出し続けています。2007年には、現・総長の坂東眞理子氏が学長に就任し、その流れは加速。高い就職率を安定して誇ってきました。しかし、実はキャリア教育においてもっとも大切にしているのは、数字では表れにくい部分にあると言います。それは、女子学生たちに知識や経験を提供し、最良の選択を可能にすること。「すべては学生のために」と取り組むキャリア支援センターの石川氏にお話を伺いました。

Profile

石川 雄太 氏
昭和女子大学 キャリア支援センター キャリア支援課 主任
青山学院大学を卒業後、予備校へ就職。より広い視野での次世代支援を志し、2018年に昭和女子大学へ入職。キャリア支援のほかに、大学認証評価の業務も担当している。

低学年から受けられる個別相談

充実したサポートに裏打ちされた、高い就職力には定評があります。キャリア支援の考えをお聞かせください。

「すべては学生のために」という理念のもと「きめ細かな個別相談」「社会接点の創出」「明確な支援施策」に力を入れています。
1つ目の個別相談については、全学年対象の専用システムからいつでも誰でも予約可能です。私たち職員やキャリアカウンセラーの方が対応します。その都度の学生の悩みに対応できる仕組みです。私自身、低学年の学生と話すこともありますが、キャリア感度の高い学生の考えや悩みを知ることは勉強になります。

そして、各学科にキャリア支援センター職員が担当として配置されます。
就職活動を迎える3年生は、年間で全3回の就職ガイダンス等の学科主催イベントに参加し、学科の特性や卒業生・内定者の動向について理解したうえでフォローする職員の存在を身近に感じることは、安心感に繋がるようです。

さらに学科によっては3年生から、多くの学科では4年生から、担当職員による支援が本格化します。キャリア担当教員による授業・日常生活面からのアプローチと職員による面談という2つの側面から、学生を見つめられるようになります。個別性を重視して、学生の状況を共有しながら支援しています。

幅広く対応されているんですね。

そうですね。1学年の学生数は、1,600人ほど。キャリア支援センター全体で1日あたり最大約50の面談枠。そこに低学年対応も加わるので、私の経験ではピーク時に1日8回もの面談をすることも。でも、それは私たちが、学生との対話を最重要に考えているからこその件数です。就職活動の渦中にいる学生の声を聞くことで、支援方法を調整したりもします。

他大学OGも参加するメンター制度

2つ目の取り組み「社会接点の創出」をお聞かせください。

女性としてのロールモデルを見つけてほしいという思いから「社会人メンター制度」を実施しています。
社会で活躍する女性たちをメンターに、業界や職種などのテーマで複数のメンターが対談する「メンターカフェ」少人数グループでメンターと懇談できる「メンターフェア」、そして1対1で個別相談ができる「個別メンタリング」という複数のプログラムを用意しています。

ちなみに、メンターは昭和女子大学OGに限りません。多様な女性の生き方に触れてもらうため、広くこの取組に賛同いただける方を募集し、メンターの8割は他大学出身の方だったりします。

それは珍しいですね。どのように始まったのでしょうか。

2011年にスタートしたのですが、当時、現在の総長である坂東眞理子が中心となって推進したと聞いています。坂東は、女性活躍に強く問題意識がありました。そのため、キャリア教育にいっそう力を入れたのですが、それだけでもまだ足りないと感じていたようです。
そこに女性のロールモデルとして、生の声、仕事だけでなく、結婚や子育てというライフイベントのリアルも補うことで、将来のキャリアプランをより具体的なものにしてほしいと考えたんです。

いまや、約370名ものメンターの方々にご登録いただく規模になりました。ホームページでの募集や教員からの紹介、また企業側からお申し出いただくことも。年齢は20代から70代の方まで。とくに家庭と仕事を両立されている30、40代の方々が多い印象です。

世の中には、社会人と会える外部の就活サービスもあり、そちらを活用する学生もいるでしょう。
一方、本学のメンターは個別に面談をして任命させていただいているので、より安心して学生を委ねられます。本学の方針もご理解いただいており、学生に就活だけでなく、視野を広くキャリアを捉えるアドバイスをしてほしいというお話も事前にしっかり伝えています。

とはいえ、やはり人気職種、たとえば客室乗務員や海外勤務経験者に、学生からの面談希望が集中してしまう。快く対応してくださっているのですが、私たちとしても、多様なメンターと接してもらう工夫が必要だと考えているところです。

女性が活躍できる場所に行ってほしい

―最後のポイント「明確な支援施策」は、どのようなものがあるのでしょうか

近年、就職活動は大きく変化しています。早期化に長期化、そして選考方法の多様化。それらに応えるため、学生の志望や志向に合わせた多様な講座や情報を提供しています。

次年度に向け、動画選考対策講座に、コンサル志望者に向けた面接対策講座も企画中。また、インターンシップにおいても、たとえばホテル業界や設計事務所といった、学科での学びの特性を活かした経験のできる多様な企業とも連携。また、低学年から参加できるよう教育を主軸としたプログラムも用意しています。
しかしながら、インターンシップが選考に直結するようになり、教育観点での実施数が減少している問題も出始めています。企業のご理解を得て、枠の再拡大に努めているところです。

ほかにも、学校推薦・学校紹介型求人の多さも、本学の特徴かもしれません。卒業生が活躍する本学の取組に賛同いただいた企業が多いのですが、連携企業数は120以上。キャリア支援センターがおすすめできる優良企業ばかりなので、学生や保護者の方にも安心していただいています。また、企業の方々との密な連携が高い実就職率を支えるひとつの要因でもありますね。

一方で、率だけでなく、質の高さについてもさらに検討していきたいです。ひとつの指標として、入職後の離職率の低さや就業環境への満足度を見据えています。総長の坂東も「女性が活躍できる場所に行ってほしい」とよく言っていますが、企業との連携やキャリア教育、社会人メンター制度でそれが実現できる土壌は整いつつある。
いま、具体的に数値化を試みていますが、今後はこのような「卒業後の活躍」をより重要視していきたいですね。そして、不本意な進路となる学生が、ひとりもいないよう努めていきたいです。

学生を最良の選択へ導く

豊かなキャリア支援のお話をお伺いできました。これら取り組みが結果にもつながっていったんですね。

就職率を高く保つことは、学生の選択肢を広げることにもつながるので、もちろん重要です。学生や保護者からも、評価いただくと同時に期待されていることも感じています。
しかしながら、それよりも、私たちとしては多様な選択肢から「最良の選択」を選べる知識と経験を積んでほしいと考えています。それが「すべては学生のために」の支援なんですね。

たとえば、本学には国際学科があります。しかしながら、ここ数年はコロナで留学できなかった。そのため、就職を目前にやっぱり留学へ挑戦したいという学生がいるんです。そうなると、もちろん就職率は下がりますよね。でも、それがその学生の希望ならば、もうその道をなんとしてもサポートしたい。

すこし個人的な話になりますが、前職の予備校では、偏差値という価値基準で大学に進むことが最高の選択肢だった。でも、いまは学生と、大学で得た価値観や経験、知識をもとに最良の道を一緒に探せるんです。自分が活躍できるフィールドを、自分で模索できる力。それを身につけてもらうため、私たちはさまざまな施策でサポートしていきたいです。

この思いは、他大学のみなさまも同じかと思います。まだ20歳ほどの若者が、生きる道を選択する。サポートする私たちにとっても難問です。でも、学生と同じく「ひとりで」「自大学だけで」抱え込むだけでなく、情報交換させていただきながら、一緒に取り組んでいけるとうれしいですね。

Editor’s Comment

「すべては学生のために」という理念のもと、キャリア支援センターのスタッフや教職員だけでなく、約8割が他大学出身者で構成されるという「社会人メンター制度」も含め、あらゆる角度から支援をされていると感じました。
「将来のキャリアを描く支援をする」。この言葉が印象的で、一方通行的な情報提供だけではなく、学生ひとり一人に心を通わせながら、対話を通じて自らの気づきを得ることを重視し、主体的な行動に結びつけているため、学生が自らキャリアを描けるようになると感じました。
(マイナビ編集長:高橋)

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