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保護者と学生が考える「安定」の定義は違う?|マイナビ編集長コラムvol.1

マイナビ編集長による、各種調査結果を基にしたコラムです。
今回は、保護者向け調査や学生向け調査から見る「安定」の定義について解説します。

Profile

高橋 誠人
株式会社マイナビ 就職情報事業本部 マイナビ編集長
2002年、株式会社マイナビに入社。キャリアサポーターとして10年間マイナビの学生向け広報業務に携わり、関西圏の大学、短大、専門学校での就活支援講座を多数行うなど、学生の就活サポートを精力的にこなす。その後営業の現場で、企業の採用コンサルティングに幅広く関わる。熊本支社長、鹿児島支社長、兵庫支社長を経て、2018年7月より現職。日本キャリア開発協会会員(CDA)。

マイナビ編集長のコラムをスタートします

マイナビ編集長の高橋と申します。平素は学生の皆様にマイナビ各種サービスをご利用いただき、また、各地のキャリアサポーターが日々訪問させていただき大変お世話になっております。
今後、この『マイナビキャリアサポート』にマイナビ編集長コラムを書かせていただきます。どうぞよろしくお願いします。

第1回目ですので、簡単に自己紹介をさせていただきます。
私は2002年にマイナビ、当時の毎日コミュニケーションズに中途入社しました。2023年1月現在の従業員数は約7,000名(マイナビグループ全体 約12,400名)ですが、入社当時の従業員数は約500名でした。
私は大阪支社キャリアサポート課に配属され、今でこそ全国各地にキャリアサポーターを配置していますが、当時は全国で10名弱しかおらず、大阪支社は私含めて3人で関西中四国の学校を担当していました。
当時はまだキャリアセンターという言葉もほとんど聞かれず、また、今でこそスマートフォンのマイナビアプリで会員登録、企業エントリーをしていますが、当時は登録ハガキに記入をし、郵便ポストに投函という手法でした。
私は大阪支社、京都支社で計10年キャリアサポート職を担当し、その後、神戸支社(現在の兵庫支社)で営業職として企業様の採用をサポートし、その後、熊本支社、鹿児島支社、兵庫支社の支社長になり、2018年から現職に就きました。その時々のエピソードは今後機会があれば紹介したいと思います。

このコラムでは弊社が運営している『マイナビキャリアリサーチLab』や『HUMAN CAPITALサポネット』のコラムとは違う角度でお伝えできればと考えております。

2020年4月に新型コロナウイルスの感染拡大により、第1回目の緊急事態宣言が発出され、世の中が大きく変わりました。その以前から先行き不透明感はありましたが、より強まった印象です。
そのなかで、学生の「安定志向」が増してきたと感じますが、保護者の考える安定とは意味が違うのでは?と考えています。

保護者が考える「安定」の意味とは?

マイナビでは、『マイナビキャリアリサーチLab』を運営しています。新卒領域以外の調査も行っているのでぜひご覧ください。
そのなかでも今回ご紹介したいのが、保護者向けアンケート調査「2021年度就職活動に対する保護者の意識調査」の結果です。

子どもが入社する企業に望むものとして、もっとも多かった回答は「経営が安定している」で51.5%。半数以上の保護者が安定した環境への就職を希望しており、2位「本人の希望や意志に沿っている」(25.3%)、3位「社風や雰囲気が良い」(18.3%)などと比べても突出しています。

「子どもの能力・専門性が活かせる」も6位に入っており、2位「本人の希望や意志に沿っている」と合わせてみることで、安定した環境であることを大前提として、そのうえで子ども自身が希望する仕事ができること、そしてスキルアップを目指せる環境であることを望んでいると推察されます。

子どもに働いてほしい業界に関しては、総合1位は「官公庁・公社・団体」で、やはり安定志向が見て取れます。

また、「子どもに対して社会人として望むこと」では、「新卒で入社する会社で正社員として長く勤めてほしい」が37.3%と1位です。
もちろん、入社した企業で長く働くことは大切ですが、人生を「教育、仕事、リタイア」の3ステージとして考える時代から、人生100年時代において、大学卒業後は就職する人もいれば、フリーランスや起業、または探求や学び直しなど様々なキャリア形成が複線化していき「マルチステージ」の時代になります。
保護者の方々にも、このような時代背景によるキャリア形成についての考え方を知っておいていただくことも必要かもしれません。

学生が考える「安定」の意味とは?

学生の志向を見てみましょう。「マイナビ 2023年卒大学生就職意識調査」を見るとこちらも「安定している会社」が上昇し続けています

では、企業に対する「安定性」を感じるポイントとは何でしょうか?
「マイナビ 2023年卒大学生活動実態調査(3月)」によると「福利厚生が充実しているかどうか」が1位ですが、「最も安定性を感じるポイント」に限定すると「安心して働けるかどうか」が13.2%で1位になりました。

このように、保護者は経営的に安定と考えていますが、学生は自分が働く環境として、ワークライフバランスも含めて心理的に安心して働けるかどうかを安定と感じているようです。

また、ある学生とこの件について話したことがあります。
学生に「あなたの”安定の定義”は?」と訊くと、「今の時代、絶対倒産するリスクがない企業なんてない。だからこそ、この先が読めない荒波のような時代では、挑戦し続けることが大事でその波に挑み続けることが”安定”と感じる」と答え、私も考えさせられました。

また、仕事一筋ではなく、男女の双方の育児参加についても年々意欲が上がっています

これを見ても、学生にとって、育児休業について「当たり前の考え」になっている印象を受けます。

学生と保護者の双方の考えを尊重したキャリア形成支援を

今の学生の方々は、2000年始めに生まれ、決して景気がいいとは言えない約20年を過ごして大学に入学しました。そしてやっと希望と期待に胸を膨らませて入学したキャンパスライフも新型コロナウイルスにより全く違ったものとなりました。

そのような時代背景を過ごした学生の「安定」に対する考え方は、先行き不透明感が強いなか人生100年時代と言われ、終身雇用、年功序列が失われつつあり、国や企業が自分の人生を守ってくれるわけではないと感じているなかで作られました。

よって現在の学生の考える安定の定義は、自分の人生を中心に据え、プライベートや育児を大切にでき、心理的に安心・安全な職場で仕事をしたい、という解釈でしょう。
さらに、先の見えない荒波のような状況に立ち向かって行く姿勢の企業を「安定」と解釈する学生もいることは慧眼でした。

保護者の立場からした「安定」、苦労や辛い思いをしてほしくない、安定した組織、団体、企業で仕事をして欲しい、という気持ちはわかります。
キャリア・就職支援担当者の皆さまは、このように学生、保護者双方の考えを理解したうえで、今後のキャリア形成支援をおこなっていくことが求められるでしょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。お気づきの点などございましたら、担当のキャリアサポーターにお伝えいただけましたら幸いです。

いよいよ3月1日から「マイナビ2024」から企業へのエントリーがスタートします。マイナビは引き続き、学生の就職活動、キャリア形成を全力で応援します。
また「マイナビキャリアサポート」では教職員の皆様へ役立つ情報の提供をより一層充実させていきたいと考えております。今後ともどうぞよろしくお願い致します。

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