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文部科学大臣賞|地域の人たちとともに感覚と憧れも育てる実践的キャリアプログラム|三条市立大学

学生の社会的・職業的自立に貢献したインターンシップやキャリア形成支援に係る取組を表彰する「第8回 学生が選ぶキャリアデザインプログラムアワード」で「文部科学大臣賞」という栄えある賞を受賞した三条市立大学の産学連携実習。2021年に開学した三条市立大学は、世界有数のものづくり産業集積地域である新潟県燕三条地域を舞台に、若者が憧れを持てるキャリアプログラムを実施。経験を通して、現場の感覚を育み、学生だけではなく、企業や地域も変えていくユニークで実践的なプログラムとなっています。今回は、本プログラムの立案・設計・実装を手掛けた学長のアハメド シャハリアル氏、そして学生と企業の橋渡し役を担う事務局 Academic Affairs Unitの内山氏にお話を伺いました。

Profile

アハメド シャハリアル
三条市立大学 学長
他大学で教鞭をとったのち、研究スペシャリストとしても従事。2019年より三条市の大学設置プロジェクトを牽引し、2021年に三条市立大学の初代学長に就任。大学設立の構想段階から実務に携わり、地域産業と連携した実学的な教育モデルの設計・導入を主導してきた。ものづくりのまちである燕三条の資源を活かし、若者のキャリア形成と地域の未来をつなぐ教育のあり方を探求、実践している。

内山 恵美
三条市立大学 事務局 Academic Affairs Unit
産学連携実習の企画・運営を担う。企業との調整や学生の希望に寄り添ったマッチングなど、現場に根ざした丁寧なサポートを行っている。大学・企業・学生の三者をつなぐ橋渡し役として、実践的な学びの土台づくりに尽力。地域との信頼関係を大切にしながら、教育現場にリアルな体験を届け続けている。

地域と実学でつくる唯一無二のキャリア支援

「第8回 学生が選ぶキャリアデザインプログラムアワード」の「文部科学大臣賞」の受賞、おめでとうございます。受賞された感想をお聞かせください。

シャハリアル:今回、三条市立大学の産学連携実習が、全国1,205プログラムの応募の中から、このような高いご評価をいただけましたことは、私たちにとって大変な栄誉であると同時に、身の引き締まる思いでもあります。

本プログラムは、燕三条地域の産業基盤を教育資源と捉え、地域企業との連携による実学を通じたキャリア形成を柱としています。1年次から段階的に進む実習を通して、学生は経験を重ねながら感覚を育み、働くことへの憧れや自己理解を深めていきます。これは単なるインターンシップではなく、学生・大学・企業がともに学び合う、双方向の成長を目指すプログラムです。

こうした取り組みが実現できたのは、大学だけの力ではなく、163社の産学連携協定を結んでいる企業の皆さまのご理解とご協力があったからこそだと考えています。あらためて心より感謝申し上げます。この受賞を励みに、今後さらに実習内容を磨き上げ、学生・企業双方にとってより満足度の高いプログラムへと進化させてまいります。

―このプログラムを実施するに至った背景についても教えていただけますか?

シャハリアル: もともと三条市立大学の成り立ち自体が、産学連携実習のような実学的な教育を、地域とともに本気で実現したいという思いから生まれました。つまり、どんな教育を提供したいかという構想が先にあり、その実現のために大学をゼロからつくったのです。

というのも、燕三条にはものづくりの技術や精神といった豊かな地域資源がありますが、若者がそれを自分の未来と重ねて想像し、憧れを抱ける機会は限られています。だからこそ、現場での体験を通して働くことの面白さや人とのつながりを感覚として実感できることを大切にしています。

内山:さらに、この小さな刺激や憧れが積み重なり、それが学生の行動の原動力になると考えています。その感覚を育むために、私たちは地域企業と連携し、学生が五感で現場を体験する実習を設計しています。

4年間の実践的な学びが育む経験と感覚

では、実際の産学連携実習の内容について詳しく教えていただけますか。

内山:三条市立大学の産学連携実習は、1年次から3年次にかけて段階的かつ立体的に構成されています。まず1年次は、地域のものづくりと出会うことからスタートします。燕三条という土地を知識としてではなく、そこに生きる人の言葉や価値観を通じて感じてもらうために、職人や技術者、営業など、多様な職種の人たちからお話を伺います。そうすることで、学生は次第に「面白そう」「かっこいい」などと思える分野や人に出会い、自発的な興味が芽生えていきます。

2年次前半では、加工体験や安全、倫理に関する授業を経て現場に出る準備を行い、秋にはいよいよ企業での実習となります。163社の中から興味のある企業を選び、2週間ずつ3社、計6週間の短期実習に挑みます。学生と企業のマッチングは、職員が学生の性格や希望を細やかに見ながら丁寧に調整しています。

そして、3年次はまさに集大成。1社に16週間所属し、火曜から金曜は企業へ、月曜は大学で振り返るという、いわゆるレシプロカル型の実習を通じて、体験を自分なりに意味づけしていく力を養うのです。

シャハリアル:さらに、学内でも並行して4年次までPBL学習を行い、現場で得た感覚をもとに学びをアウトプットへとつなげていく実践的なプロセスまでを含めて、私たちは実学と位置づけています。

―企業とのマッチングではどのようなことを心がけていますか?

内山:学生の性格や志向性、そして企業の風土や現場の雰囲気までを丁寧に汲み取り、最適なマッチングを実現するために、日々企業にも足を運びながら情報を集めています。「この学生なら、ここの現場が合いそう」「この企業にはこんな感性を持った学生を紹介したい」と思えるまで真摯に向き合うことを心がけています。学生と企業、双方にとって意味のある出会いとなるよう、橋渡しを行っています。

シャハリアル:その仕事ぶりは、まるでワインのソムリエのようなものだと感じています。学生のことも企業のことも本当によく知っていないと、より良いマッチングはできませんからね。

双方向性のネットワークが学びの質を変える

このキャリア支援に対する学生の反応や実習を終えた学生の変化についても教えてください。

シャハリアル:実習を終えた学生たちは、目に見えて変化します。特に顕著なのは、主体性とコミュニケーション力の向上です。それまで遠慮がちだった学生が、自ら声をかけ、相手に配慮した言葉選びができるようになる。この成長は、座学だけでは得られない、現場だからこそ培われる実践的な力だと考えています。

また、企業で働くというリアルな環境に身を置くことで、自分の適性や関心を見つめ直す機会にもなります。キャリアビジョンが明確になる学生が増え、それが大学生活全体にも良い影響を与えています。一言でいえば、学びの質が変わるんですね。「この学びは、将来につながる」という意識が生まれ、授業への姿勢も主体的になる。この成長のプロセスこそ、産学連携実習の最大の価値だと感じています。

―なるほど。一方で、企業の反応はいかがですか?

シャハリアル:実習の成果は、学生の成長だけにとどまりません。企業の皆さまからも、学生との接点が、若手社員にとって良い刺激になった、指導を通じて自分自身の振り返りにもつながった、といった声を多くいただいています。

学生の素直で柔軟な発想が、新たな気づきをもたらし、職場の活性化につながったという報告もありました。このような企業との関わりを通じて、互いに学び合い、成長し合う対話型の学習の場として機能していることを強く実感しています。

内山:さらには、実習に参加した企業からの紹介や口コミによって、新たに実習の参加を決めてくださる企業が増えてきました。このネットワークの広がりこそが、プログラムの質と価値が地域に浸透している何よりの証だと感じています。

教員一人ひとりの特色は大学のユニークネスを支える貴重なリソース

ちなみに、教員や職員の方々にはどのような働きかけを心がけていますか。

シャハリアル:私はいつも、教員には個々の特色があって良い、それが大学のバリューになる、と伝えています。経験や価値観、語り口やスタイルは揃える必要はなく、多様だからこそ教育に厚みが出て、学生の学びも豊かになります。

同じことは大学そのものにも言えます。地域性や教育理念、人の気質など、大学の特色は大切なリソースです。それを削るのではなく、しっかりと打ち出すことで、ここにしかない学びが生まれます。教員や大学の個性が自然と現れてこそ、学生も自分らしさを育めるのです。そうした連鎖を大切に、私たちは学生に向き合っています。

最後に、他大学の皆さまへメッセージをお願いします。

シャハリアル:学生の未来を本気で支えようとされている全国のキャリア支援・就職支援ご担当の皆さまに、心より敬意を表します。私たちも試行錯誤の中で実感しているのは、学生の成長は想像以上に大きく、環境や出会い次第で一気に開花するということです。

だからこそ、大学単独ではなく、地域や企業との連携、そして全国の大学同士が知見を持ち寄ることが、これからますます重要になると感じています。それぞれの大学の強みや特色を活かしながら、学生のユニークネスを育てる支援を、共に磨いていけたら嬉しいです。

内山:全国のキャリア支援・就職支援ご担当の皆さまは、日々学生一人ひとりに寄り添いながら、きめ細やかなご指導に尽力されていることと思います。学生の将来を考え、温かく見守りながら、それぞれの可能性を引き出すために献身的に取り組んでおられることに、心より敬意を表します。

一人の学生が実習先で出会った社員の方の一言で目の色が変わったり、これまで知らなかった業界に触れることで新たな目標を見つけたり、そうした瞬間に立ち会うたびに、私たちの役割の重要性とやりがいを改めて感じています。これからも学生たちの輝かしい未来を後押しするために、皆さまとの情報共有を進めていきたいと考えています。

Editor’s Comment

学長のアハメド シャハリアル様、事務局の内山様に取材させていただきました。163社もの企業と連携し、継続的にプログラムを運営していくことは、大学にとっても、企業にとっても容易なことではありません。その中で特に印象的だったのは、産学連携プログラムの目的を明確にした上で、企業自体が自社にとってのメリットや意義を見出せるよう促している点です。
大学や学生側の利点だけでなく、企業がこの連携から何を得られるのかという視点を重視したプログラムの設計や提案を行っている姿勢に、キャリアデザインを絡めた産学連携の本質を感じました。
(キャリアデザインプログラムアワード 実行委員長:久保)

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