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大学事例|外部とも連携した入学時からのキャリア教育やサポートが未来を考える力に|東北工業大学

1964年の創立以来、4万人の卒業生を輩出し、東北および日本の産業や経済の発展に大きく貢献してきた東北工業大学。「未来のエスキースを描く。」を大学のブランドスローガンに掲げ、それを体現する取組の一つとしてキャリア教育・支援にも力を入れています。時代に合わせてアップデートを欠かさない同大学は、マイナビと連携して理想のキャリア教育やキャリアサポートを形にしている最中とのこと。そこで今回は大学企画室の小山内氏とキャリアサポート課の川村氏にお話を伺いました。

Profile

小山内 幸広 氏
東北工業大学 大学企画室 室長
東北学院大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。民間企業での勤務経験後、2007年度に東北工業大学に入職。学務課、企画調査課、総務企画課、学長室などを経て、2019年度より現職。主に大学評価と大学IR(Institutional Reserch)を担当する大学企画室で室長として勤務し、キャリア教育も担当している。

川村 孝広 氏
東北工業大学 キャリアサポート課 課長
日本大学法学部法律学科卒業。民間企業での勤務経験後、東北工業大学に入職し、2020年度より現職。キャリアサポート課課長として、主に就職支援全般、必修授業であるキャリアデザインの授業構成を担っている。

入学時からのキャリア教育で広い視野と選択肢を提示

小山内:キャリア教育を1年生から3年生までの各学年で全員必修の授業にしました。マイナビの力も借りながら、一貫性と継続性のあるキャリア教育にすることで、大学生活をより有効に過ごしてもらいたいと思っています。進路というと、就職にとらわれがちですが、進学や起業などいろいろな選択肢があります。仕事が人生の中心ではなく、自分のライフキャリアに仕事を位置付けてほしい。大学卒業後は就職しなければならないという固定観念から一旦抜け出して、自分で考えて決めるという主体性を養ってほしいと思っています。

川村:選択肢は自分の視野の中でしか見つけられないので、視野を広げた中で、将来の選択肢を見つけてもらいたいと思っています。そして、キャリア教育をきっかけに、自己分析の仕方や自分で将来について考える習慣を身につけてほしいと思っています。

キャリア教育やキャリアサポートを再構築するきっかけやその背景を教えてください。

小山内:本学では、大学運営を継続的に改善していくために、自己点検評価と外部評価というものを毎年度行っています。その外部評価の中で、学生に社会人基礎力を身につけさせる教育や指導を一層強化して、その成果を可視化し、採用等で企業側が活用できるようにしてほしいという要望がありました。そのことが大きなきっかけとなり、学長が主導する内部質保証推進委員会において、本格的にキャリア教育やキャリアサポートの再構築の検討をし始めたのです。単に就職支援ではなくキャリア支援、それに教育も加わることから、キャリアサポート課や教務学生課、教養教育を司る総合教育センターなど、部署横断的な取り組みとなるため、私たち大学企画室が間に入って橋渡しをしながら推進する形となりました。

川村:さらに、私がいた部署はもともと就職課という名称だったのですが、キャリア全般をサポートしていこうということで、「キャリアサポート課」に名称を変更しました。以前の就職支援という形では基本的に就職活動が始まる3年生の後期から関わることが多く、それでは時間的にサポートできることにも限界がありました。それを就職支援ではなく、入学時からのキャリア支援としたことで、しっかり育てる時間が生まれたと思います。

名称変更だけでも効果があったんですね。では、入学時からのキャリア教育やキャリアサポートを実施したことで他に見えてきた効果はありますか?

川村:まず、3年生の夏のインターシップの参加率が年々増加しています。3年前は50%だったのですが、前年度は70%になりました。もう一つ、目に見える変化としては、3年生の秋に行っている模擬面接で、まったく話せずに黙り込んでしまうような学生がいなくなりました。必修の授業で行なっている面接対策やエントリーシート対策の成果とも言えます。自己分析もかなり明確化されてきました。学生が自分で考える時間が増えたことで、進むべき方向性を自ら考える力がついてきたと思っています。

マイナビとともにキャリア教育やサポートの理想を形にしていく

では、新たなキャリア教育やキャリアサポートを再構築するにあたってマイナビと連携したことの良さはどんなことが挙げられますか?

川村:我々は就職支援だけを行なっているわけではないので、就職や進学の道だけではない選択肢を学生に提示することが課題だと思っています。そのため、マイナビには社会に出てからかかるお金に関するテーマの授業も実施いただいております。マイナビはキャリア教育やキャリアサポートに関する幅広いネットワークがあるので、そういったコンテンツも用意してくださる点は本当にありがたいです。キャリア教育の専任教員を採用することも考えたのですが、個人の知見に偏るリスクも若干感じたため、マイナビによる複数の講師の授業にすることで多角的に組み立てられるメリットを選びました。

小山内:あと、マイナビの授業は大学の用意するものに比べ、学生の興味を喚起することやわかりやすさを重視しており、学生に話が伝わりやすいというメリットもあります。その進め方を本学の先生たちとも共有するとともに、各学科の専門分野ごとのキャリア支援にも活かしてもらうようにしています。また、今年度からマイナビの「適性診断MATCH plus」という学生の興味や強みを可視化するツールの利用も考えており、そうしたツールを活用したキャリア教育やキャリアサポートの組み立ても一緒に強化できればと考えています。

マイナビはパートナーのような存在なんですね。連携する際のポイントはありますか?

小山内:大学側のやりたいこと、やろうとしていることを整理して具体化しておくことが重要だと考えています。決して、丸投げしない。キャリア教育やキャリアサポートにおいてはまず本学として挑戦していきたいことがたくさんあり、それをマイナビが持つ膨大なデータや豊富な知見を取り入れながら、連携して形にしていくイメージです。何度もやりとりをしながら、トライアンドエラーを繰り返して毎年ブラッシュアップしています。

ステージの異なる学生の足並みをどう揃えるか

理想のキャリア教育やサポートを行なう上での難しさを教えてください

小山内:全学共通のキャリア教育やサポートとなると、多様な背景やステージの異なる学生に平等に提供することの難しさを感じます。つまり、内容を平等にすることで物足りない学生もいれば、逆に中にはついていけない学生もいるわけです。授業の中では、社会人基礎力を養うためのアクティブラーニングとして、課題解決型学習(PBL:Project Based Learning)のグループワークを多く取り入れるなど、試行錯誤しているところであり、その中で学生同士が価値観の違いや多様性への理解を深めて欲しいと思う一方で、様々な配慮が必要な学生に対しては、きめ細かく対応していく必要があると感じています。

川村:どうしても個人のレベルは違うので、そこに対応していくのは難しいですね。勉強の成績とキャリア教育は比例しない部分がありますし、キャリア教育の授業では成績はつけずに、出席に重点を置き、まずはキャリア教育の授業に参加してもらうようにしています。現状ついていけない学生の早期発見はできているので、今後は1人ではついていけない学生をフォローできる学生とともにグループワークを行なっていきたいと考えています。フォローする学生も非常にいい体験になると思います。

なるほど。そのほかにもキャリア教育やサポートの今後の課題やこれからチャレンジしたいことはありますか?

小山内:学科ごとに実施しているキャリア教育と全学共通のキャリア教育のコネクションは今後の課題だと認識しています。キャリア教育の質を向上させるために、昨年度は、研修会を行なって各教員にキャリア教育の内容をフィードバックしました。また、今年度から、学内のシステムの中にある学習ポートフォリオ機能を利用して学生の将来像や目標を可視化し、自分で振り返るだけでなく、教員とも共有してキャリア指導に活かせるようにしました

川村:このシステムを利用すれば、教員たちも今以上に学生一人ひとりの将来につながるキャリア指導ができるようになると思うので、より有効活用していきたいと思っています。

事務職員と教員の垣根を超えたキャリア教育&サポートを

最後に、他大学のみなさんへメッセージをお願いします。

川村:キャリア教育やキャリアサポートは事務職員だけでは限界があるので、教職協働で行っていくことが重要だと考えています。学生のためになることであれば、教員も職員も関係なく、対等な立場で意見を出し合わなければいけません。遠慮しすぎることなく積極的に関わって、キャリア教育やキャリア支援を推進していければと思っています。

小山内:キャリア教育やキャリアサポートは、どの大学にとっても今後の大きなテーマだと思います。ぜひ、意見交換などしながら、より良い形を目指していくことができればと思います。よろしくお願いします。

Editor’s Comment

小山内大学企画室長と川村キャリアサポート課長を取材させていただきました。教職協働で学生のために何ができるか、という考えのもと「学生に入学直後から卒業後の就職を考えさせるのではなく、仕事を含めた人生”ライフキャリア”を考えさせたい」、そのため「”就職”に対する考え方を一度分解させ再構築させたい」という言葉が印象的でした。
現在取り組まれている学部1年生からキャリア科目の必修化、外部リソースの有効活用など、熱意を持って柔軟に取り組まれていると感じました。その結果、インターンシップの参加率向上、就職活動の準備を主体的に早くする学生が増えてきたという成果も納得できました。
(マイナビ編集長:高橋)

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