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大学事例|実体験の機会を増やしデータも取得することでキャリア支援を年々強化|大同大学

80年以上にわたるモノづくり教育と研究の伝統を持ち、モノづくりを通じて学生と教員、地域社会とのコミュニケーションを育んできた大同大学。工学部、情報学部に加え、2024年4月からは東海地区では初となる建築学部も開設し、新たなステージで走り始めている大学です。キャリア教育・就活支援においては、教育理念に通ずる「実体験」の機会提供と「データ」をもとにした支援に力を入れているとのこと。今回は、こうした特徴ある大学の取り組みを先頭に立って率いているキャリア支援室長の錦織氏にお話を伺いました。

Profile

錦織 整 氏
大同大学 キャリアセンター キャリア支援室長
大学卒業後、私立理系大学の事務職員として13年間勤務し、2010年に大同大学に入職。新卒から学生対応を中心とする学生・教務の部署を経て、2017年から現職へ。

500社を超える企業の説明会はリアルにもこだわっている

まずは、貴学のキャリア教育・就職活動支援の特徴について教えてください。

教育同様に実践や実体験に重きを置き、とくに企業の皆さまに直接お話を聞く機会の提供に力を入れています。企業説明会もオンラインでは伝わらないリアルな温度感などを伝えるため、コロナ禍でもなんとか対面で実施しました。

もう1つの特徴は、1年生から一貫してキャリアセンターが就活支援やキャリア教育を行っているところです。企業が求めるものも時代とともに変化していきますし、最近でいえば「ガクチカ」といったキーワードがよく登場しますが、「就職活動では学業以外の経験を聞かれますよ」といった話を1年生からできることで、就職活動が本格化する3年生になって焦らなくても良いといった利点があると思います。

大学が実体験の機会をつくるために、どういった取り組みをしていますか。

3年次より順次開催される学内合同企業説明会などには毎年500社を超える企業が参加し、約5割の学生がここでの出会いをきっかけに就職につなげています。また、この企業説明会では企業の採用担当と当大学の卒業生の両方に来てもらうようにしている点も大きな特徴です。採用担当者だけだと企業の説明で終わることもあるのですが、卒業生がいれば、もう一歩踏み込んだリアルな話も聞くことができる点が魅力です。

加えて、卒業生によって「大学の勉強が大切だ」という人もいれば、「勉強以上にコミュニケーション力を磨いた方がいい」という人もいたり、学生も企業の話だけでなく、学生時代の過ごし方のリアルも知ることができると好評です。どうしても大規模な大学に比べると、卒業生の数や進路の幅では見劣りしてしまう部分もあるため、一つひとつの企業説明会の質にはこだわるようにしています。

ちなみに、学外の企業説明会と学内の企業説明会の違いはどこにあるんでしょうか。

やはり、当大学の学生を評価してくれている企業が集まっている点が最も大きいと思います。大学としても一定の基準を設けて会社を選ばせてもらっており、安心して勧められる企業と長くお付き合いができるのは、学内で行うメリットではないでしょうか。また、昨今は就職活動に関する情報が多く出回り過ぎているということもあり、学生が情報の海に溺れないためにも、ある程度選定した企業を紹介することも重要かと思います。

データを収集することで学生のニーズも見えてくる

貴学はデータに基づくキャリア支援にも力を入れていると聞きました。

そうですね。たとえば、就職活動を終えた内定者に協力してもらって、就職を考え始めた時期、きっかけなどの学生の動きから、インターシップの参加率、就職先の決定要因などの満足度など、20項目程度のアンケートを取っています。こうしてデータを取ることで、学生の隠れたニーズが見えてくることもありますし、新しい取り組みを行う際などに大学全体を説得する材料としても大いに役立ちます。

ちなみにデータ収集の結果、改めて確認できたのは当大学の学生は、企業の規模や認知度よりも、その就職先でやりたい仕事があるかどうかを気にしているということ。理系大学としてそういう傾向が高いかとは予測していたのですが、数字ではっきり表れたことで、学内の企業説明会でお声がけする企業を選ぶ際も学生の期待に応えられる会社を中心に集めようとあらためて思うようになりました。

その一方でデータの収集や分析において、難しいことはありますか?

まず、データはある程度の量が蓄積されないと使えないため、実際に活用し始めたのは私が担当して3年目くらいからです。さらに、それぞれの年ごとに社会情勢も異なれば、企業の考え方、学生の気質も異なります。こうした変化も認識しながら、現在在籍している学生に対してどう活用していくかという点は悩ましいところでもあります。

また、これはデータ収集や分析の難しさとは異なるのですが、データを分析していると、「自分が学んだ内容を活かしたい」という学生の声が圧倒的に多い一方で、その学んだ内容がどこの業界や企業で活かせるかといった点に関しては視野が狭くなっているというデータもありました。この辺りは、キャリア教育や就職活動支援でもっと私たちが学生たちの視野を広げていくべき部分だと思います。

同志だからこそ、一緒に新しいチャレンジを

今後は、どういったキャリア教育や就職支援に取り組んでみたいですか。

インターンシップの取り組みはもっと力を入れていきたいですね。今年は初めての試みとして、いくつかの企業を一つのパッケージのようにまとめてインターンシップに行くのはどうか、といったことを学生に提案しています。自動車業界に興味のある学生に対し、完成車メーカーだけではなく、部品メーカーや素材メーカーなども同時に仕事体験してもらうことで、新たな気づきがあればと思っています。

さらに、県外の企業のインターンシップに泊まりがけで参加してもらったり、他大学の学生と交流する機会も増やすことで、学生たちに刺激を与えられる機会を設けたいと思っています。やはり、インターンシップに参加した学生と話をしていると就職に対するモチベーションも高まっていますし、経験を積んだ分だけ成長しているのは、誰の目から見ても明らかですからね。

最後に、他大学の皆さまへメッセージをお願いします。

私たちは競争相手でもあると思いますが、この国の次世代を育てるという観点では同志です。今後、より少子化で学生の数は減っていくこともありますし、情報共有はもちろん、ひとつの大学では難しい取り組みも、複数の大学で手を取り合えば実現できると思うのです。
各大学でデータを収集し共有すれば、よりビッグデータとなり新たに見えてくることもあるはず。失敗を恐れず、新しいことに一緒に挑戦していけたらと思っています。

Editor’s Comment

工学部、情報学部、2024年に東海地区では初となる建築学部を設置した大同大学の錦織キャリア支援室長を取材させていただきました。学生部、教務部の仕事もされていたご経験から、「本当に学生のためになるキャリア支援は何か?」と感じ、各種データの整備、学生に仕事のイメージを持たせるために企業連携に次々と取り組んで来られました。
「データは重要だが、キャリア形成には感情など数値化できない要素も影響するのでは」というお言葉に、たとえ今後AIが進歩し続けても、人間によるキャリア支援の重要性を再認識しました。錦織室長がおっしゃる「データ」という言葉の持つイメージ以上に、学生のことを考え、熱く語る錦織室長の姿が印象的でした。
(マイナビ編集長:高橋)

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