19世紀初頭にフランスで創立されたカトリックの教育修道会、ナミュール・ノートルダム修道女会を設立母体とするノートルダム清心女子大学。同大学ではキリスト教精神に基づくリベラル・アーツ教育に加え、教職課程と就職活動のきめ細かな支援に力を入れています。今回は、教職課程センターの伊木氏、キャリアサポートセンターの鷲江氏に、教員と一般企業という2つの進路をどうサポートしているのかといった内容を中心にお話を伺いました。
Profile
伊木 洋 氏
ノートルダム清心女子大学 教職課程センター長
公立中学校における教頭経験の後、ノートルダム清心女子大学に入職。准教授を経て、大学院文学研究科・文学部日本語日本文学科教授を務める。2022年4月から教職課程主任を務めるとともに、2023年春から教職課程に関する業務を統括する教職課程センター長を務める。
鷲江 健治 氏
ノートルダム清心女子大学 キャリアサポートセンター長
大学を卒業後、1994年4月にノートルダム清心女子大学に入職。入職後は、財務部に始まり、入試広報部、学務部教務係など、様々な部署を経て、2021年4月よりキャリアサポートセンターに異動し、現職を務める。
入学1年目から学生一人ひとりと向き合う
―まず、教職と就職という2つの進路支援に関して、それぞれ力を入れていることを教えてください。
伊木:教職課程からお話をしますと、現在、本学では1学年におよそ500名の学生が在籍し、そのうち150名以上の学生が教職課程を履修しています。ただ、近年は教員の仕事に関して「将来、教員としてやっていけるだろうか」と考える学生も少なくありません。
そのため、1年次はそうした不安を払拭する機会を多く設けています。また、2年次以降も教職に対する知識の習得や、実践力を身に付ける場づくり、教育行政などとの連携を通して学生たちが自信を深めることができるよう指導し、教職に対する意欲を喚起していきます。
―一方、キャリアサポートセンターの活動はどうですか?
鷲江:キャリアサポートセンターでも「一人ひとりの学生と真摯に向き合う」という方針のもと、個々人に寄り添った支援に力を入れています。たとえば、年間約4000件を数える個人面談ですが、職員と専門カウンセラーが連携を図りながら、入学初年度から相談できる体制を整えています。
また、入学直後のアセスメントテスト実施や希望者には1年次からマイナビの自己分析ツール「適性診断MATCH plus」の利用を勧め、早い段階から自分のキャリアを考えるきっかけづくりを行っています。
不安な気持ちを乗り越え自己肯定感をどう高めるか
―そうした取り組みを推進していく上で難しさや課題はありますか?
伊木:資格取得に関しては意識が高いのですが、年次が上がっていくにつれて、教職を目指すか、就職活動を行うかという選択で迷う学生が多くいます。教職課程の担当教員としては、教職の道を進んでほしいものの、教職ではなく一般企業に就職したいとなったら、早急に指導しなければなりません。そのため、日頃から教職課程の担当教員や教職課程センターの相談員に何でも相談できる状況をつくっておくことが大切だと考えています。
―キャリアサポートセンターではどんな課題を感じていますか?
鷲江:大きく2つあります。1つ目は、学生の自己肯定感とモチベーションの向上です。学生たちと話をしていても自分に対して自信が持てない学生が多いと感じます。実際は、しっかりアピールすればよいと思われることでも、無難な方を選んでしまうため、エントリーシートの内容も表面的なものになりがちです。そういう意味でも、アセスメントテストや適性診断MATCH plusなど、傾向や結果が目に見える形で現れるツールは重宝しています。
学生たちも「こういう結果が出たんですけど、次はどういう行動に移せばいいですか?」とキャリアサポートセンターを訪ねやすくなりますし、一緒に考える時間や、自ら話す機会が増えることで、新たな発見があるようです。徐々にですが、行動する学生が増えていると感じています。
2つ目は、学生との接点をいかに作り出していくかということが課題です。各学科の教員とも連携を深め、学生一人ひとりの日々の行動や就職活動の状況を共有することで、小さな変化や細かな要望にも対応できる体制を構築するように心がけています。
また、新型コロナの時は難しかったですが、イベントなどでリアルな場を提供することや掲示板の活用といったキャリアサポートセンターを訪れる仕組みづくりを行っています。就職活動の基礎から面接対策等の実践まで、ガイダンスやミニセミナー等の開催数は、年間で延べ200件にのぼります。自分の進度に合ったものに参加できる環境を整えることで、学生たちが一人で悩まないようにと考えています。
早い時期から準備を始めロールモデルを見つける
―ちなみに、先ほどお話に挙がった教職と一般企業の就職活動で迷っている学生に対してはどのように支援を行っているのですか?
伊木:教員採用試験の実施時期の早期化などによって、以前に比べれば多少は並行して取り組めるようになったとはいえ、教育実習などで多くの時間が必要な教職課程の学生には、まだまだ時間が足りません。
そこで、インターンシップや自己分析など、一般企業の就職活動で求められる準備には早い段階から取り組むよう指導し、4年生になって一般企業の就職活動へと進路変更した場合にも対応できるようにしています。
鷲江:本学の特徴の1つでもありますが、教職も一般企業への就職活動も、多くの卒業生の活躍に支えられている面が多々あります。開学以来の卒業生たちが残してくれた伝統や実績は、後輩たちに知らず知らずのうちに、良い効果をもたらしてくれているはずです。
さらに、就職や教職の活動の中でも、多くの卒業生と出会う機会があります。それぞれの考え方や進度に合わせたロールモデルを見つけることで、前に進むことができる学生も少なくないと思います。そのため、教職課程センターとキャリアサポートセンターでは、企業・団体様や卒業生にご協力いただき、様々な進路選択の仕方や時期があることを実感できるよう、在学生と卒業生の交流の場を設けています。
人が人を育てることに希望が持てる国に
―では、最後に他大学の教職課程やキャリアセンターの教職員の方へメッセージをお願いします。
伊木:教職は人が人を育てる仕事ですが、近年教職に対するプラスのイメージが湧きにくい学生が増えています。しかし、人を育てることに希望がなくなった国の未来はどうなるでしょうか。
改めて、この仕事の素晴らしさを伝えていくと同時に、教職課程の履修および教員採用試験に向けて集中して力を発揮できるように、ぜひ私たち教職員が支援していければと思っています。ともに頑張っていきましょう。
鷲江:現在は「VUCA」と呼ばれる先の見えない時代です。さらに、就職活動の早期化や多様化など、学生だけでなく私たちキャリアサポートセンターを取り巻く環境も大きく変わっています。
そうした中、一人ひとりの気持ちに寄り添い続け、学生たちが自分の意思を持って、自らの人生を切り拓くことがきるように、私たち自身も進化し続けなければと思います。私自身、就職活動にかかわることで、学生たちの成長を実感できるという、「やりがい」をこの3年間で実感いたしました。学生たちのよりよい未来のため、それぞれの形で、しっかり支援していきましょう。
Editor’s Comment
今回は伊木教職課程センター長と鷲江キャリアサポートセンター長に取材させていただきました。教職課程のキャリア支援にも力を入れており、教職で働くイメージが湧きにくい学生に対して、「人が人を育てる大切さ」や「学びによる人の成長に関われる素晴らしさ」をきめ細やかに伝えておられました。個人面談を中心に、学生本位のキャリア形成支援を教職員一丸となって支援しており、学生からの評価が「学生と教職員の距離が近い」という点でも共感できました。今後AIやロボットが普及していくなかでも「人と人との愛情を持った関わりあいが大切」だと感じました。
(マイナビ編集長:高橋)
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