創立130年を越えるキリスト教主義大学である東北学院大学。キリスト教に基づく人格教育を基礎とし、リベラルアーツの総合教育に注力。東北以北最大の私立総合大学であり、文系理系合わせて学生数は約1万1千人、卒業生は約20万人にのぼる。社長になる卒業生も多く、全国社長の出身大学で30位(帝国データバンク調査、2020年)、とくに東北地方で多くの社長を輩出しており、地域に根ざした学びの場でもある。2023年4月、3キャンパスの統合および新たに4学部を設置予定。さらなるシナジーが期待されるタイミングで、就職キャリア支援課の福田氏、松田氏にお話を伺いました。
Profile
福田 克俊 氏
東北学院大学 土樋キャンパス 就職キャリア支援課 課長
1993年、学校法人東北学院に入職。図書館や総務課、人事課、教務課の業務を経て、2018年6月から現部署でマネジメントに携わる。
松田 千津子 氏
東北学院大学 土樋キャンパス 就職キャリア支援課 係長
2009年、学校法人東北学院に入職。同大学の卒業生。大学学生部の業務を経て、2015年4月から現部署。キャリアコンサルタント資格を有する。
人格教育に基づいたキャリア教育を
―まずは、東北学院大学のキャリア教育への考え方をお聞かせください。
福田氏:私たちの大学は、プロテスタント系キリスト教主義大学です。そのため、キリスト教に基づいた人格教育を大切にし、具体的には毎日礼拝を執り行っております。キリスト教の教えから日々学び、迷った時には礼拝堂で導きを得ることもでき、キャリア教育についても能力やスキルよりも「人格」を重視しています。少し強い言い方ですが、人として勝負できる人材と言いましょうか。「人格」を高めることで、社会の役に立っていこうというのがキャリア教育の方針です。
実際、卒業生において社長となる人柄の方も多く、社長の出身大学ランキングでは30位(帝国データバンク調査、2020年)、とくに東北地方では多くの企業で社長に就いていらっしゃいます。そのため、卒業生同士のネットワークもできており、入社先に先輩がいるということも多いようです。東北地方だと入社先はもちろん、取引先に同窓生がいることも珍しくなく、そこから新たなビジネスにつながるケースもあると聞きます。卒業生が約20万人という大規模校であり、そして地域に根付いていることも我が校の強みだと思います。
大人数・少人数・個人の3段階の支援設計
―在学している学生数も1万人を超えていますね。
松田氏:そうですね。1学年約2,800名の学生に対して10人の専任職員で支援業務を行っているのですが、どうしても大人数対応可能な大規模イベントに注力しがちになってしまいます。本当は全員の顔と名前がわかるような支援を行いたいのですが、現実的には難しい。そのため、意識的に「大人数」「少人数」「個人」の3段階の支援設計を行い、外部の方の力もお借りし、実現しています。
まず、「大人数」に関しては、今年からシステムを刷新。初回の登録会でシステムを広く周知し、登録フォームも非常に簡易なものにしたところ、ほとんどの学生が登録してくれました。そしてシステムを通して個人宛にフェーズごと、たとえば「次のイベントに未登録ですよ」という内容でプッシュ通知を送るようにしました。さらに、日程が合わせやすいようガイダンス数も増やしたことで、前年比約3倍のイベント参加率となりました。
福田氏:「少人数」の支援については、2021年度から学長からのバックアップのもと「TG就活講座」というものをスタート。大手企業を志望する学生向けの就活トップガン講座やアナウンサー講座、公務員試験対策講座、キャビンアテンダント講座(予定)とそれぞれの志向にあった講座を開設しています。まったく新たな取り組みだったので、じつは予算面でも苦労したのですが、現状できる工夫をし、各部署に交渉を重ねてスモールスタートから始めました。すると、やはり望んでいた学生は多かったようで保護者を含めて非常に好評。今年度も継続しており、少しずつ拡大もできそうです。
松田氏:「個人」に向けての支援は、これまでも外部のキャリアコンサルタントと連携し、50分間の相談枠を年間約5,000枠用意したり、就職キャリア支援課を利用したことのない学生には連絡を取ったりしていました。しかしながら、コロナ禍もあり、まだアプローチできていない学生もいると感じてマイナビさんにご相談。「待つ」ではなく「行く」のはどうかと、リアルの合同企業説明会に相談ブースを設けさせてもらいました(※)。1日あたり2、3人に会えたらいいかなという気持ちだったのですが、結果は連日長蛇の列。企業が出展する合同説明会に足を運んでいるにもかかわらず、「どうしたらいいのかわからない」「どうやって企業を見つけたらいいかわからない」という学生も一定数いたのです。
もっと早く相談してくれればよかったのにとも思ったのですが、よくよく聞くと「就職キャリア支援課の事務室に入るのが何となく怖かった」と。待っているだけでは届かない学生もいると痛感しました。自主的に情報をキャッチして動ける学生とそれがあまり得意ではない学生、コロナ禍でその二極化がより進んでいるのかもしれません。ちなみに、その学生たちとはその後もつながっているので実施して本当に良かったと感じています。
キャンパス統合で化学反応を起こしたい
―学生によって必要な支援の在り方も多様になってきているんですね。そんな時代背景の中、貴学では2023年4月にキャンパス統合を迎えられます。
福田氏:土樋、泉および多賀城の3キャンパスを仙台の都心部に統合予定です。これによって、今まで分かれていた文系、理系学部が同じキャンパスで学ぶことになります。文理が融合できるのか懸念するお声もあったのですが、私たちとしては楽しみで仕方ありません。授業としても、文系が理系の授業、理系が文系の授業を学ぶなど、今までより広く受講できます。
キャリア教育という観点から見ても、文理どちらかの考えだけで通用する時代でもありません。学域を広め、そしてそれぞれの個性が化学反応をしていくことを期待しています。そして就職においても、たとえば理系人材を求めていた企業が文系学生と接点を持つことも容易になるはずです。あらゆる面で広がりが望めますが、その分キャリア支援もより多様になっていくと思います。私たちも工夫を重ねていかなければと計画しているところです。
松田氏:文系学部は今まで1・2年生と3・4年生でキャンパスが分かれていました。統合となると学年をまたいだキャリアイベントも企画しやすくなるので、低学年へのキャリア支援もより一層盛んにしていきたいですね。
個に寄り添い「自分らしい選択」へと導く
―新たな挑戦をされていくお二人ですが、改めて今後の目指すところをお聞かせください。
松田氏:学生からよく「どうしたら受かりますか」というhow toの相談を受けることがあります。もちろん、学生としたら気になる部分ではあるのですが、ずっとその問いを持ちながら就職活動をしていくことはつらいことだと思います。本当に自分へ問いかけるのは「自分の良さはなんだろう」「どうしたらその良さが伝わるんだろう」ということであってほしい。その葛藤に寄り添えるのは、大学という、ある意味特殊な機関である私たちなのかもしれないと思っています。だからこそ、私たち大学職員は「個に寄り添うプロフェッショナル」にならなければと強く感じています。
福田氏:学生と向き合う際、今でも非常にプレッシャーを感じることがあります。最近の学生は、就職活動まで大きな失敗をしたことがない方も多い。もちろん失敗していいし、そう伝えるのですが、そこから立ち直れないということがないようサポートしなければなりませんし、その責任も重く感じていますね。学生が社会に出る前、最後に支えられるのは私たちです。ゆえに「自分らしい選択」に辿り着けるように私たちが最後まで向き合う必要がある。日々そう考えて業務にあたっています。他大学の皆さまとも支え合いながら、一人でも多くの学生に届く支援を実現していきたいですね。
※全エリアのマイナビイベントにて「大学ブース」を設置することは難しいので、予めご了承ください。
Editor’s Comment
今回の取材では、キャリア形成における支援を必要としている学生を「待つ支援」ではなく、多様な学生・多様な課題に対し、大学側から学生に「歩み寄る支援」をおこなっていることが印象的でした。
また、新型コロナウイルスの感染拡大によりオンラインが普及したものの、「働く」ということの意味を理解するリアルな機会は減っています。これに対し、企業経営者を含め多くのOBOGが東北地方にいる強みを活かし、全方位的に学生を支える仕組み・プログラム・熱意は非常に参考になりました。
2023年から新キャンパスに学部やリソースが集まり、これから世界を目指して飛び立つ大学、そのような期待感を持ちました。
(マイナビ編集長:高橋)
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