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大学事例|卒業生からのキャリアメッセージをはじめ独自のキャリア支援が充実|熊本大学

旧制第五高等学校の時代から数えて130年以上の歴史を持つ熊本大学。現在、7学部・6大学院課程からなる歴史ある総合大学では、約1万人の学生が日々学び、研究に励んでいます。キャリア支援・就職支援においては、地方国立大学という特性を活かした独自のコンテンツが特長。なかでも、卒業生からの投稿で構成される「OBOGキャリアメッセージ」は学生の有効な情報源になっています。今回は、こうしたコンテンツの企画から携わる就職支援課の日和田氏に、コンテンツ開発の裏側や地方国立大学ならではの支援のポイントなどについて詳しく伺いました。

Profile

日和田 伸一
熊本大学 学生支援部 就職支援課
大学卒業後、大手人材サービス企業等にて営業職や企画職として携わる。2005年、九州初となる国立大学での民間企業からの事務管理職登用という形で熊本大学の職員に。以降、キャリア支援課長、就職支援課長の業務を通じ、学生たちのキャリア形成や就職活動を支援し続ける。2021年より専門職員として支援業務を継続。国家資格キャリアコンサルタントを有する。

自ら動き、自ら学ぶ、自分軸を持つ熊大生を育てたい

―まずは、熊本大学のキャリア支援の特徴についてお聞かせください。

熊本大学 就職支援課では、「自ら動き、自ら学ぶ、自分軸を持つ熊大生の育成」をキャリア支援のコンセプトに掲げ、様々な取り組みを行っています。このコンセプトを設定するにあたっては、私自身の民間企業時代の経験も大きく影響しています。私は長年、人材サービス事業に携わる中で多種多様な企業、仕事、社員の方々を見て回り、その中で「良いキャリア(生き方)を歩んでいると思える人の共通点は何なのか」と考え続けてきました。その結果、導き出されたのが、「自ら動き、自ら学ぶ、自分軸を持つ」という姿勢でした。

また、昨今、キャリア形成や就職活動に関する膨大な情報に囲まれ、その情報の真贋もわからないままに焦りや不安を感じている学生もいます。そこで、学生たちに対し、「本学では、学内で適切な時期に適切な支援を行っていくから、安心してほしい。日頃は学生の本分である勉学や研究、部活動、留学、ボランティアなどに打ち込んでほしい」とメッセージを送り、熊大生に特化したキャリア支援サイトの構築や説明会の開催などに力を入れています。

930名を超える卒業生によるOBOGキャリアメッセージ

―キャリア支援や就職支援のコンセプトがしっかりしている点が素晴らしいですね。では、こうしたコンセプトのもと、具体的にはどのようなコンテンツを提供しているのですか?

はい。特に力を入れているのが、「OBOGキャリアメッセージ」です。これは、本学独自のキャリア支援サイトのコンテンツの一つで、930名を超える本学の卒業生からの投稿で構成されています。自分たちと同じ大学の先輩たちが、どのような企業の、どのような部署で、どのような仕事をしているのか。熊大生にとってリアリティのある情報の掲載を目指しています。

また、掲載しているOBOGの年代は30代が約半数を占めるのですが、ここにもこだわりがあります。というのも、この年代の方々は部署の異動なども経験し、様々な壁を乗り越えた先輩たちです。彼ら彼女らはキャリアや生き方における自分軸を確立しており、そのアドバイスは学生たちのキャリア観の醸成にも大きく役立ちます。さらに、このコンテンツは業種や職種、出身学部、フリーワードなど、いくつもの検索軸でメッセージを探すことができるのですが、同じ大学・同じ学部の先輩たちが様々な業種や職種で働いている事実を知るだけでも、学生たちの将来に対する視野は大きく広がるのではないでしょうか。

―たしかに。同じ大学の同じ学部の先輩となると学生たちが感じるリアリティも違いますよね。でも、ここまでのコンテンツを自前で揃えるのはかなり大変だと思うのですが…。

そうですね。私がこの大学に登用された翌年の2006年にこのコンテンツを企画したのですが、そこから就職支援課の職員だけでなく、先生たちなどにも協力してもらい、あらゆるルートを駆使し、時間をかけて地道に集めていきました。

しかし、そこまでしてOBOGのメッセージを集めるのには、地方国立大学ならではの理由もあります。まず、大都市圏の企業へのOBOG訪問が気軽にできないため、その代替機能として活用してほしいという思いがありました。さらに、熊大生の卒業後の進路は約70%が地元九州の企業や官公庁です。地方国立大学として地元への貢献は大きな責務ですが、学生たちには出来る限り広い世界を知った上で自分軸を築き、進路を決めてほしいと考えています。

就職活動は早く動いて、早く内定をもらうことがゴールではありません。地方にいながらも、多種多様な企業や仕事の存在、OBOGの方々のキャリア観に触れることができる機会を提供したいという思いもあり、このコンテンツの構築・発展に力を入れています。また、このコンテンツは低学年向けのキャリア教育の教材や、学内のキャリア支援・就職支援イベントの事前準備資料など、その活用範囲を年々広げています。

業界のリアル、卒業後のリアル、就活のリアルを感じられるよう

―ちなみに、学内でのキャリア支援や就職支援のイベントというのはどのような取り組みなのですか?

たとえば、業界研究講座では「熊大生の世界観を広げる」という裏テーマを掲げ、様々な業界を代表する企業の採用担当者の方に、自社のことだけでなく、業界全体の動向などについて最先端かつリアルな話をしてもらっています。講座初日には激変する自動車業界について話をしてもらいましたが、いい企業ほど変化し続けている。こうした事実を直接聞くことで、学生たちの意識も大きく変わると思います。

また、先ほど紹介した「OBOGキャリアメッセージ」の投稿者である卒業生とのキャリア交流会も「卒業後のリアルがわかる!」「就活のリアルがわかる!」と好評です。ここ数年は新型コロナの感染拡大の影響もあり、オンラインなどでの実施となりましたが、やはり、多様性とリアリティを重視した取り組みは学生たちにとっても有益かつ納得感が大きいように感じます。

本学の学生にとって、適切な時期に適切な準備を心がける

―最後に、今後のキャリア支援・就職支援の目標などがあれば教えてもらえますか。

今後の目標でいうと、まずは本学の独自コンテンツである「OBOGキャリアメッセージ」の更新です。目まぐるしいスピードで変化する時代の中で、多様かつリアリティのある投稿をどれだけ増やし続けていけるか。私たち自身も常に挑戦し続ける必要があると思います。

ただその一方で、就職支援といった側面では、採用活動の早期化などの目の前の変化に惑わされず、本学の学生にとって適切な時期に適切な準備を心がけていきたいと思います。学生たちに社会貢献する組織や人と向き合う様々な機会を提供し、自分自身が「何のために働くのか」といったことをよく考える時間をつくっていきたい。その上で、「自ら動き、自ら学ぶ、自分軸を持つ熊大生」に成長してもらうことができたらと考えています。

Editor’s Comment

学生にとって必要なキャリア支援は何か?答えは学生を取り巻く環境や状況により様々あると思います。一度も社会に出たことがない学生に「卒業後のキャリア(職業人生)を思い描こう!」と伝えても、キャリアモデルに実感が無いと、自分と重ねることは難しいのではないでしょうか。
そこに目を付け、「OBOGキャリアメッセージ」として、多くの先輩のリアルな声を集めたのは、日和田さんご自身が、様々なキャリアを経験されたからこそ生まれた支援だと感じました。
(マイナビ編集長:高橋)

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