大学事例|大学1年次から社会との接点を設け学生の意識を育んでいく|広島大学

インタビュー風景

広島大学は「自由で平和な一つの大学」という建学の精神を継承し、12学部4研究科を擁する歴史ある総合研究大学。そのキャリア支援の根幹にあるのは「できるだけ多くの社会人の話を聞く場を提供し、学生たちにできるだけ早く将来についての考えを深めてほしい」という思いです。
広島大学が力を入れる低年次を対象とした充実のキャリア支援と、また地方の国立大学ならではの地元企業やOBOGとの取り組みについて、キャリア支援グループの渡部淳氏にお話を伺いました。

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渡部 淳 氏
広島大学 教育室 教育部 キャリア支援グループ
1995年広島大学へ職員として入職。人事、会計、教務などの様々な部署を経験し、高専への出向なども経て、2019年4月からグローバルキャリアデザインセンターにて就職支援に携わる。国家資格キャリアコンサルタントを取得し、 キャリア支援グループ副グループリーダーを務める。

国立大学の中でも、いち早くキャリア支援をスタート

―最初に、広島大学のキャリア支援の取り組みについてお聞かせください。

広島大学は学部生の4割以上が大学院へ進学するということもあり、学生が「社会」や「就職」を意識するタイミングが遅くなってしまう傾向がありました。さらに、専門領域のプロフェッショナルである教員らも民間企業などでの就業経験は限られるため、学生は授業の中で仕事をイメージすることが容易ではありません。そうした背景から、広島大学は国立大学の中でもいち早く学生のキャリア支援に乗り出したのです。
また、昨今の企業の採用活動の早期化を考えると、1年次からキャリア支援を行わないと間に合いません。そこで、広島大学では早期の情報提供に特に力を入れ、入学早々から社会で活躍する大人たちの話を聞く機会や実際の職場を見る機会を設け、学生が1年次から「仕事を知る」「自分を知る」ことができる環境づくりを目指しています。

情報があふれる中、仕事や自分を知るきっかけになれば

部署内打ち合わせ風景2

―具体的にはどのような早期支援の取り組みを行っているのですか?

昨年からマイナビの提供するキャリアデザインツール「適性診断 MATCH plus」を導入しました。インターネットで検索すれば、就職活動や企業に関する情報があふれている時代ですが、学生たちの中には正直、業界研究と企業研究の違いがわからない学生もいます。
そこで、まず、学生たちに興味を持ってもらうため、30分程度で終えることのできる適性診断テストを導入したのです。この「適性診断 MATCH plus」は簡単な質問に回答するだけで、自己分析を進められるだけでなく、48の業界から自分に向いている業種・職種を導き出してくれるツール。入学直後の学生たちがゲーム感覚で診断テストを受け、世の中や自分自身のことを知るきっかけになればと考えました。

―なるほど。実際に実施してみて、どのような手応えを得られましたか?

初回の実施に向けては、まず「適性診断」という言葉を「適職診断テスト」と表現することから手をつけました。というのも、検査ではなく、「テスト」と言い換えることで、学習意欲の高い当大学の学生たちのチャレンジ心を焚きつけることができるのではと考えたためです。
ただ、昨年に関しては実施時期の問題もあり、想定していたほどの人数に受講してもらうことはできませんでしたね。実施時期や学生に認知させる方法など、まだまだ課題は山積みです。しかしながら、戻ってきたアンケートの中には「診断結果に基づいて、様々な業界がランキング形式でリストアップされることが面白かった」など、好反応のものも少なくありませんでした。

1年次から参加できるキャリア支援の取り組みを次々と

オンラインでの支援

―適性診断テスト以外では、どのようなことに力を入れていますか?

最初にお話しした大人の話を聞く機会として、広島大学では2018年から同窓会組織の協力を得て、1年次から参加できるキャリアデザイン講座を開設しました。
そこでは、大手企業や地元企業の代表取締役や銀行の頭取、個人事業主など、様々な業界で活躍する経営者を中心に当大学のOB・OGが登壇し、仕事の楽しさや大変さについて語ります。たとえば「若いうちは険しい道を選ぶことも大切だよ」とか「終身雇用は今後なくなる」といった現役で働く大人だから聞けるリアルな本音に触れることができ、学生たちの反応も良いですね。

さらに、職場や現場を見る機会としては、新型コロナウィルスが蔓延する前の2019年に1年次を対象としたインターンシップを開催。企業のオフィス、工場、医療現場、農園、学校などに学生を送り出し、現場で実際に仕事を体験してもらいながら、働くことについて考える機会を提供しました。つい最近まで高校生だった学生たちにとって、働くことはずっと先のように感じられているかもしれませんが、これらの活動を通じて、社会人の価値観に触れ、「将来のためにいまやるべきことが見えてきた」や「日々の勉強へのモチベーションが高まった」といった声が寄せられています。

また、私たちの大学では単にインプットの場として提供するのではなく、学生たちに「自身のキャリアを構築していく上で、どう活かせそうか」といったところまでアウトプット(文字化)させることで、学生たちの意識の醸成を図っています。

学生たちの実態や声に、耳を傾けることが大切

キャリア支援風景

―最後に、改めてキャリア支援グループの役割と今後の目標について教えていただけますでしょうか。

大学生は大人であり、私たちにできることは機会の提供だけなのかもしれません。しかし、私たちには、学生がよりよい意思決定ができるよう、社会の動きをキャッチし、学生自らが適応していくための機会を提供する役割があると思います。就職活動が学業の妨げになるなどといった言葉も耳にしますが、将来の自分の姿を早くからイメージできれば、学校生活もより充実するはずです。

今後は、地元の自治体などと連携した就職支援にも取り組んでいきたいですね。地方都市にとって大都市圏での就職を希望する学生が多いのは大きな課題です。そうした地方特有の課題を解決するのも、国立大学である広島大学の使命だと考えています。
たとえば、地元企業のインターンの受け入れも闇雲に実施するのではなく、大学生が地元に必ず戻ってくる1年生の夏休みを狙ってイベントとして企画するなど、もっと学生たちの実態や声に耳を傾ければ、面白いアイデアはたくさん出てくるはずです。

キャリア支援や就活支援は、どうすればきちんと効果が出るか、仮説を立て、実施、検証していくことが大切だと思います。大学で企画したことの多くは空振りします。学生にとって何が良いのかは、毎回のアンケートや就職活動を終えた学生に直接聞くことにしています。学生の声を受け止めて、今後も取り組みを改善し続けたいと考えています。

Editor’s Comment

「大学院進学が決定した学部4年生向けガイダンスに予想以上の学生が参加しました」-今回は記事に載せられなかった話題が多くありました。インタビューをさせていただいた渡部さんからは、キャリア支援に対する「熱意」と、学生にとって必要な支援は何かを日々考え、トライ&エラーを繰り返す「チャレンジ精神」と「フットワークの軽さ」を感じました。初年次インターンシップ、地元企業や自治体との地域連携、Webアセスメントの実施、これら多様な学生に対する支援は非常に有益な事例だと感じました。
(マイナビ編集長:高橋)

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