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大学事例|薬学系の進路が増えるなか学生の視野と可能性を広げることが大切に|横浜薬科大学

2006年に臨床に関わる実践的な能力を培う薬剤師を育成する薬科大学として開学した横浜薬科大学。6年制の健康薬学科、漢方薬学科、臨床薬学科に加え、2015年には研究者や技術者を育成する4年制の薬科学科が新たに開設されました。薬の本質と薬学の使命、医療人としての責任感や心がまえなどの学びを提供し、こころ豊かな医療人を育成することで地域に貢献することを目的としています。一室の教授でありながらキャリアセンター長を担う佐藤氏に、6年制と4年制というカリキュラムの違いがある中で、それぞれの課題に向き合うキャリア支援についてお話を伺いました。

Profile

佐藤 康夫 氏
横浜薬科大学 漢方薬学科 教授
医薬品科学研究室 主任 キャリアセンター長
大学を卒業後、製薬企業に就職し、研究職として勤務する。その後、研究管理職として人事や採用に携わる中で人材を育成する仕事に興味を持ち、横浜薬科大学に転職。教授として学生の指導を行う傍ら、2020年からキャリアセンターのセンター長としてキャリア支援の業務も兼務している。

国家資格と就活の両立は時期の見極めが重要

まずは6年制の学科の学生に対するキャリア支援で難しいと思うことについて教えてください。

6年制の学科の場合、5年生のタイミングで実習があり、6年生になると薬剤師の国家試験があります。そうした様々なイベントの合間を縫って就職活動をしなければいけないことに苦労しています。

さらに、実習を行う時期が学生によって5年生の前期、中期、後期と異なるため、就職活動を行う時期の違いによる有利不利も生まれ、その対応の難しさも感じています

とはいえ、国家試験に受からなければ薬剤師の資格が取れず、内定をもらっても就職ができない状況が生まれるため、学生には就職活動と試験勉強の優先順位付けを間違えないよう指導しています。

また、薬学部には当然、病院や薬局の薬剤師を志望して入学してくる学生が多くいるのですが、学生が思っている以上に薬剤師の資格を持っている人材のニーズは様々な業界に広がっています。学生が固定概念にとらわれて就職活動で苦労し過ぎないよう、病院や薬局以外の就職先も提示し、学生の視野を広げることにも注力しています。

就職活動やインターンに参加できる時期が短いなかでも、自分の希望するところだけだと偏ってしまいがちなので、選択肢を増やしてあげられるように努力しています。

―そういった課題がある中で、どういった具体的な取り組みを実施されているのですか?

まずは、学生が国家試験に合格できるよう、実習や勉強時間の確保に努めています。そのため、学生が進路が決まらずに焦らないよう、「じつは国家試験が終わった6年生の3月にも企業の採用活動が行われるので安心してください」といった情報をアナウンスしたり、実習が忙しくなる5年生になる前にインターンシップなどで情報収集しておくことを勧めたり、学生が国家試験に集中できる環境づくりも心がけています。

また、先ほど触れたように薬剤師の就職先には製薬会社や公務員、一般企業など、病院や薬局以外にも様々な選択肢があります。2020年頃からはオンラインで薬剤師の活躍できる業界や企業の紹介を行ったり、OBやOGからお話をしてもらったりする機会も設けるようになりました。

あらゆる選択肢を提示して一人ひとりに合った支援を

では、4年制の学科のキャリア支援で難しいと思うことについても教えていただけますか?

もともと4年制学科を開設した背景には製薬会社などで研究サポートに携わる人材のニーズがあったのですが、じつは代表的な就職先である製薬会社の業務形態が変わってきていると感じています。

大手の製薬会社が研究サポート業務を子会社や外注先に委託することが増え、それに伴い製薬会社の4年生学科の新卒採用枠自体も減っています。そのため、企業側の採用の変化に合わせ、私たち大学のキャリア支援も変化する必要があると思うのです。

ただ、製薬業界以外のニーズは年々増えており、食品や化粧品、化製品など、様々な業界で薬学の専門知識や技術を持った人材が求められています。そこで、こちらも6年制の学科同様に、学生の卒業後の進路に対する視野を広げることが一番の課題だと感じています。

こちらでは具体的にどのような取り組みを行っているのですか。

4年制学科は一学年30人ほどの在籍人数なので、その少人数の規模を活かした学生一人ひとりに合った支援を心がけています。

製薬業界以外の業界でも活躍できるよう幅広く技術を学べる授業を増やすなど、社会のニーズに合った人材育成に努めています。

さらに、4年制の学科では教職課程を開設しており、中学や高校の理科の教員という選択肢も受け皿の一つとして考えられるようにしています。早い時期からインターンシップにも積極的に参加するように促しており、学生全員が個性を伸ばし、希望通りの就職ができるように支援しています。

学生の視野を広げるため、私たち自身ももっと外へ

今後、挑戦したいことやより注力したいことはありますか?

現在、キャリアセンターの職員は企業が集まるフェアなどにできるだけ参加し、様々な企業のご担当者様と名刺交換をさせていただいています。学生の選択肢を広げられるように、私たち自身が日頃からアンテナを張っているのです。

その結果、実際に本学に求人を出してくださる企業や企業説明会を開催してくださる企業も徐々にですが増え始めています。とはいえ、薬学系の学生のポテンシャルに気づいていない企業がまだまだ多いのも現実。

薬学系の学生のアピールポイントを単に薬剤や化学の知識が詳しいというところで留めるのではなく、昨今の企業が人材に求めている論理的な思考やデータ分析などのスキルも磨いている点をもっと伝えていきたいですね。

また、大企業だけでなく地域の中小企業などでも、以前に比べて医学や化学、データサイエンスの知識を活用した技術研究や製品開発に取り組むところが増えており、そうした将来性のある中小企業への就職もサポートできたらと考えています。

学生に夢と現実を伝えながら一緒に成長していく仕事

最後に、他大学の皆さまへメッセージをお願いします。

薬学系の学生のキャリア支援は、現在、本当に多様化していると感じます。食品や化粧品など学生が入学時には思いもつかなかった就職先もあります。

だからこそ、大学のキャリア支援では、そういった様々な選択肢を学生に提示し、一人ひとりが本当にやりたいことを一緒に見つけていくことが求められますし、そうして自分らしい進路が見つかった時には大きな喜びを分かち合うことができる仕事だと思います。

またその一方で、学生に夢を持たせると同時に現実の厳しさを教える難しさや大変さもあるのが、キャリア支援の仕事。私たちも落ち込みそうになる時もありますが、常に明るさと熱意をもって取り組みたいと考えていますので、一緒に頑張っていきましょう。

Editor’s Comment

取材を通して一番印象的だったのは、多様化している薬学生の活躍フィールドや、今後の可能性を幅広く見ている佐藤先生の思いです。
薬学生の就職実績としては調剤薬局やドラッグストア、医療機関がその大多数を占めてきます。勿論、製薬企業やCRO、業界関連企業への就職もありますが、加えて薬学×食品、薬学×化粧品、薬学×データサイエンス等、時代に合わせた薬学生の活躍可能性も踏まえ、学生一人ひとりの意向や適性を見ながら支援を心がけている佐藤先生の姿がありました。
実務実習や就職活動、国家試験などどうしても過密スケジュールになってくる高学年次ですが、各業界の動きや情報、時期をキャッチしつつ、学生にとって最適な支援をおこなってくれる非常に頼りになる存在だと感じました。
(メディカル事業本部 キャリア開発支援統括本部 統括本部長:末吉)

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