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大学事例|長期間にわたって実践的に社会を学ぶ独自のコーオプ教育とキャリア支援|東京工科大学

実学主義教育を基軸とした実践的な教育によって、社会に貢献する柔軟な人材を輩出してきた東京工科大学。1986年の開学以来、変化を厭わずに革新的なアイデアで学びを進化させ続け、キャリア教育においても教職一体となった独自の取り組みに力を入れています。とくに、工学部では2015年度からコーオプ教育を必修科目化。実践力や社会人基礎力などの習得に効果を発揮しています。学生が将来の夢を実現できるような支援を目指す八王子キャンパスと蒲田キャンパスのキャリア支援部次長である岸田氏に実学的なキャリア支援についてお話を伺いました。

Profile

岸田 克明 氏
東京工科大学 キャリア支援部(八王子キャリアコーオプセンター/ 蒲田キャリアセンター)次長
大学卒業後、学校法人片柳学園日本工学院八王子専門学校キャリアサポートセンターで学生支援、新設学科に係る新規企業開拓に従事、2010年より同法人東京工科大学蒲田キャンパスにおいて、新設学部(デザイン学部・医療保健学部)の学生支援、企業・医療機関開拓などの経験を経て、2020年より八王子キャンパス設置学部・研究科及びコーオプ教育の支援に従事。2024年よりキャリア支援部(八王子キャリアコーオプセンター、 蒲田キャリアセンター)次長として両キャンパスの就職支援を行う。

実学主義のビジョンを体現するプログラムを

―大学のキャリア支援の最大の特徴とも言えるコーオプ教育を取り入れた背景について教えてください。

本学はもともと新しいことを取り入れたり、時代のニーズに合わせて学部や学科を新たに設置したりと、変化していくことができる強みを持っていました。そこで、新たに工学部を設置する際に、実学主義教育の柱のひとつとして、コーオプ教育をスタートしました。

コーオプ教育は、1906年に米国で開発されて以来、欧米で盛んに取り入れられている教育プログラムで、それを参考に本学独自のプログラムを八王子キャンパスにある工学部の必修科目として実施してきました。

独自のプログラムを行われているとのことですが、実施されているコーオプ教育について具体的に教えてください。

コーオプ教育を必修科目としている工学部では機械工学科、電気電子工学科、応用化学科の3学科の学生全員がコーオプ実習へ参加します。2年生の後期から3年生の前期に企業での就業を実施。年間約300名の学生が参加しています。実際に企業から報酬(給与)をいただきながら、7週間かけて就業することで、学生はよりリアルな社会経験を積めているのではないでしょうか。

また、コーオプ実習前には社会人基礎力を養う事前教育を行い、事後教育では就業体験を振り返り作成したポスターを用いた成果発表などを行い、プログラムをしっかりと体系化しています。さらに、学生のやりたいことや興味のある分野を調査した上で、大学が就業先の企業をマッチングするため、自分ひとりではなかなか見つけることができない企業などとも出会い、その後の職業選択の幅が広がる傾向にあります。

学生も企業も大学も成長できる仕組みづくり

―この規模でコーオプ教育を行うとなると、受け入れ先の企業の確保がかなり大変だと思うのですが…。

そうですね。3~7週間にわたって学生を受け入れてくださる企業を確保することはかなり大変です。コーオプ教育を受け入れていただいても必ず採用に結びつくものでもないですし、社員のみなさんの時間確保やセキュリティの問題など、さまざまな制約があるなか、企業が費用を負担してまで長期間学生を受け入れるハードルは決して低くはありません。

そのため、我々としてもコーオプ教育への参加が、若手の社員教育やCSRの一環としてメリットが期待できることや、業界全体で若い人財を大学と一緒に育てていただくことの必要性をお伝えし、採用とは異なる雰囲気で自社の仕事内容や職場、人間関係などを直接伝えることができる点を強調しています。実際、学生の就職先の選択肢にはなかったにも関わらず、コーオプ教育でお世話になった企業に就職したケースもあります。

―コーオプ教育を続けていくなかで、学生の反応や見えてきた効果について教えてください。

学生のアンケート結果を見ると、「行ってよかった」という声が多数です。インターンシップとは異なり、3~7週間というかなり長い期間の就業経験が与えるインパクトは大きいのだと思います。

また、実習を終えた学生と接すると、確実に大人になったという印象を持ちます。大変なことを乗り越えて得られる達成感や、職場の人とのコミュニケーションなどが成長の鍵になっているのではないでしょうか。

一方で、学生が多様化している現在、配慮が必要な学生は企業での実習には参加できない場合もあります。そういった場合は、大学のキャリアコーオプセンターで就業してもらうこともあり、サポート方法などを工夫しています。

コーオプ教育は、学生、企業、大学とそれぞれに成長できるプログラムだと考えています。さらに、本学には我々キャリア支援部やキャリアアドバイザーとは違った教員の立場で就職支援を行う就職特任講師がいることも、多面的な効果が発揮されている理由のひとつです。様々な個性を持った学生への支援にも、それぞれの立場や角度で対応することによって解決への道が広がっています。

教員側とキャリア支援部をつなぐ就職特任講師

―では、先ほど出てきた「就職特任講師」についても具体的に教えていただけますか。

各学部に1名ずつ、就職特任講師が在籍しており、学生との就職相談やキャリア設計、キャリアデザインなどキャリア系授業を実施しています。

また、様々な個性を持った学生の支援や企業とのマッチングなどでも就職特任講師はキャリアアドバイザーと連携をとって進めています。就職特任講師にはキャリアコンサルタント資格を持っている方を採用しています。教員の立場からキャリア支援を行える強みがあります。

教員側とキャリア支援部の橋渡し役としても重要な役割です。この制度が始まって10年ほど経ちますが、キャリア支援部と学長や各学部教員との協力体制の大きな支えとなっています。

就職特任講師は教職連携の要なのですね。では、今後のコーオプ教育での課題などはありますか。

すでに工学部だけではなく、八王子キャンパス設置学部でもコーオプ教育を始めています。工学部のように必修科目ではなく、選択科目にすることで、自主的に学生が望む企業へ行けるようにしています。

ただ、自主的となると自分が興味のある企業や就職の視野に入れている企業に絞られてしまうため、現在実施しているコーオプ教育のように、我々が企業と学生をマッチングさせることによる偶然の出会いも必要かもしれません。

私自身は、就職は「縁」だと思っていますので、我々が学生の視野を広げ、知らない世界を知る入口を作ってあげられればと思っています。そこが自主性とのジレンマで、なかなか難しいところです。

学生一人ひとりに合わせ、良い縁を導いていく

最後に、他大学の皆さまへメッセージをお願いします。

現在、大学には様々な個性を持った学生が入学してくるため、これまでの我々の経験だけでは対応が難しくなっています。こうした多様な学生たちの支援は、一人ひとりを見ていくことができる大学の就職課、キャリアセンターの役割にもなってくるのではないでしょうか。

また、無理して自分のやりたい仕事に就いても長く続かない学生も少なくありません。その中で、学生が納得してできる仕事、嫌ではない仕事を長く続けてほしい。学生は視野が狭くなりがちなので、良い「縁」に導いてあげることが我々の仕事だと思っています。

Editor’s Comment

八王子/蒲田キャンパスの支援を担う岸田次長の取り組みは、長年のキャリア支援経験や学内外の事情を踏まえた包括的なもので、今後も新たなステージに上がっていく印象を受けました。
コーオプ教育の成果は上記の通り顕著で、八王子キャンパス設置学部への展開も進められているものの、低学年は本来の学生生活を優先して欲しいというコメントに、学生一人ひとりの人生をより充実したものにして欲しいという思いを感じました。
様々な個性を持つ学生への支援のため、就職特任講師の設置による学内コミュニケーションの活性化など、幅広い取り組みが行われています。「学生に良い縁ができるように支援したい」という言葉に優しさと温かさを感じました。
(マイナビ編集長:高橋)

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