工学部、情報工学部、社会環境学部の3学部からなり、総勢4300人が学ぶ福岡工業大学。1963年に福岡市東区に設置されてから、実践型人材の育成を目指して「For all the students(すべての学生生徒のために)」という理念のもと、大学改革に取り組んできました。キャリアサポートにおいては、一人ひとりに向き合い、学生ごとの進捗状況を点検・管理しながら教職協働で取り組んでいるといいます。今回はそんなオーダーメイドのキャリアサポートの具体的な取り組みや効果、課題などについて、学生部兼就職部の事務部長である本行氏にお話を伺いました。
Profile
本行 義洋 氏
福岡工業大学 学生部兼就職部 事務部長
1984年4月福岡工業大学に入職。電子計算機センターに配属され、教務システム等の開発を担当。給与システムの開発を機に法人本部総務課に異動、その後財務部管財課、教務部教務課兼国際戦略室等を経て、2021年4月から現職。
多様化の時代に合わせた個別のトータルサポート
―まずは、キャリアサポートの特徴について教えてください。
本学は実践型人材の育成を目指しています。学生が自ら考え、行動し、様々な分野で創造性を発揮できる自立した人材です。そのため就業力育成プログラムとして、「志向する力」「共働する力」「解決する力」「実践する力」という4つの力の修得に努めてきました。
本学は入学時から必修科目としてキャリア教育を行っており、各学科に専属の相談員を就けたサポート体制を整備しています。相談員は、就職カウンセリングや適性、エントリーシートの指導などのサポートをそれぞれの学生に応じて実施します。3年生後期には担当の相談員がすべての学生と面談し、学生の要望や状況をしっかりと理解した上で、卒業するまで徹底して寄り添って支援しています。
こうしたオーダーメイドのキャリアサポートは、コロナ禍を経て、企業の採用形態も学生自身の就職活動も多様化している現在にマッチした仕組みだと感じています。
―ちなみに、個別サポート以外にはどのような支援を行なっていますか。
学生と企業との幅広い、かつ濃い接点を生み出すため、学内合同企業セミナーを年間で6回実施しています。セミナーは対面で行うことを重要視しており、オンラインによるセミナーの開催は行っていません。学生と企業が直接対話し、実際に表情や雰囲気を肌で感じてもらうためです。
企業の担当者と自分の言葉で話す経験は、学生にとっては刺激になり、モチベーションの向上につながっています。また、このセミナーの参加企業は約1,000社におよび、さまざまな企業と学生が出会える場所となっています。
他部署とも連携を取り合い学生の強みを引き出す
―では、オーダーメイドのキャリアサポートについてですが、難しさはどういう部分でしょうか。
本学では「For all the students」という理念のもと、最後の一人まで支援を継続しますが、連絡が取りづらい学生や面談をしても想いをうまく伝えられない学生もいます。多様な学生が増える中、担当者だけでは対応が難しい状況に直面した際は、教員も含めて連携してアプローチを考えていきます。
学生との対話の中で、ただアドバイスを一方的に送るのではなく、学生の意識自体を変化させ、学生本人が気付いていない強みや適性などを引き出す。オーダーメイドのキャリアサポートだからこそできることだと思っています。こうして自分のことを自分自身でしっかりと認識し、自信を持って満足する就職活動に臨んでもらいたいですね。
―なるほど、担当者や教職員間でもしっかりと連携が取れているのですね。
そうですね。就職は教育の一環であるという認識のもと、教職員全員で最後の一人までサポートするようにしています。毎月1回、担当副学長を交えて、教務部や学生部、就職部など、教学に関わる部署の職員でミーティングを行いますが、この中で今後の展望などを話し合っています。
また、8年前に大学校舎の大規模改築を行い、教務部、学生部、就職部が一つのフロアに仕切りなく集まる構造に変わったことで、より連携しやすい環境になりました。他部署とも連携し、大学全体で取り組むことは本当に重要だと思います。また、学生にとってもワンストップでサポートできる仕組みがあれば、入学から卒業まで「困ったら、ここに行けばいい」という意識が生まれやすくなりました。
教育と就職をつなぐ、新たなデータベースの構築にも挑戦
―オーダーメイドのキャリアサポートを実施している中で見えてきた効果についても教えてください。
目にみえる成果としては、2024年3月卒業の学生の就職率が99.6%を達成したことですね。第一希望の企業への就職率は75.3%、就職満足度は97.6%となっています。このように高い数値となっている秘訣はやはり、学生一人ひとりと向き合うオーダーメイドのキャリアサポートにあると思っています。
また、上場企業や大手企業を目指す向上心の高い学生のために、トップアップ講座という特別支援講座も設けています。これは、グループワークやディスカッションを中心に、自己の意見を伝えるためのトレーニングを行う一歩踏み込んだ講座です。実際、この講座の受講生の9割近い学生が上場企業や大手企業に採用されています。学生それぞれのレベルに合ったキャリアサポートが、こうした実績につながっていると感じています。
―しっかりと成果が出ている上で、今後の課題や挑戦したいことはありますか?
これまで1年生から始まるキャリア教育と、3年生から始まるキャリアサポートという形を取っていましたが、就職活動の早期化などもあり、この二つの連携がより欠かせなくなっていると思います。本学でも、来年度以降は学習ポートフォリオ(FITーAIM)を利用して学生データの可視化を行い、このギャップを埋めたいと考えています。学生は常に学生生活で身につけるべきコンピテンシーが意識でき、教職員は教育とキャリアを横断した広い視野で学生の支援ができるような仕組みづくりです。
ちなみに、こうしたデータベースの整理やコンピテンシーの決定には、これまでに学生や卒業生だけでなく、企業の方々にも協力していただいたアンケートを活用しています。本学の学生の就職状況や強み、企業の求める人材像などのデータも収集し、役立てています。今後はこの仕組みを強化し、学生、教職員、企業のそれぞれの視点からさまざまなデータを統合できるシステムを目指しています。
教職協働での支援が学生と真に向き合う近道
―最後に、他大学の皆さまへメッセージをお願いします。
就職支援は学生が社会で必要な能力を身に付け、その能力を引き出して全ての学生が希望する就職活動を行えるよう支援することであると考えています。本学は決して革新的なキャリアサポートは行っていないかもしれません。しかし、一人ひとりの学生と向き合って実直に歩みを進めてまいりました。それが結局、一番の近道だと感じています。
職員一人では学生の支援は務まりません。学生の多様化が進む中、他部署とも連携した教職協働、横断的な就職支援体制が必要となるのではないでしょうか。大学全体で支援する姿勢で取り組んでいけたら、より良いキャリアサポートになるのではないかと思います。
Editor’s Comment
学生自身が大学での学びを社会で役立てることを目標に、「実践型人材」の育成を目指して支援されており、1,000社近い企業と連携しながら社会との接点を提供しつつ、学生個人にはオーダーメイドの個別支援を提供し、卒業年次の3月までフォローしている点に「学生のキャリア形成に伴走する」という姿勢を感じました。
また、これからの時代は多様な人材と協業することが多くなるため、必要になる「対話」にも注力している点にも注目しました。学生の利便性も考え、必要な部署がワンフロアにあり、ワンストップサービスを提供している点も特徴的で、大学全体で、学生に対してのキャリア支援に熱意と誠意を持って取り組まれていると感じました。
(マイナビ編集長:高橋)
「マイナビキャリアサポート」は
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より良いキャリア支援・就職支援とは何か。答えのないその問いに対して、皆さまの学生支援のヒントとなるような情報をお届けして参ります。