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大学事例|学生ファーストの視点からキャリア支援も「カレッジ制」に|東海大学

「文理融合」の教育理念を掲げ、全国にキャンパスを展開する東海大学は、常に教育改革の推進にも力を入れてきた大学です。その東海大学が2020年から前例のない規模の組織改編を計画し、2022年4月から本格的に実行。新たに誕生した「カレッジ制」とともに、キャリア就職センターなどの事務組織のあり方も大きく刷新しました。今回は、このカレッジ制により、学生に対するキャリア・就職支援がどのように変わったのか。経営学部の教授であり、全学を横断的に管轄するユニバーシティビューロー(高等教育運営本部)でキャリア支援担当 ゼネラルマネージャーも務める成川忠之氏にお話を伺いました。

Profile

成川 忠之
東海大学 経営学部 経営学科 教授/ユニバーシティビューロー ゼネラルマネージャー(キャリア支援担当)
1985年東海大学工学部電子工学科を卒業。外資系電機メーカー、コンピューターベンダーにて営業職、経営管理職を経て、2004年保育所を起業。2006年に経営学の博士号の取得とともに東海大学に入職。2013年から同大学の総合教育センター主任、2016年から教育開発研究センター所長、2018年から現代教養センター所長を務め、2022年より現職。日本情報経営学会理事、日本経営システム学会理事、地域デザイン学会理事。

もっと学生の学びにつながり、責任を持って応対できる仕組みを

―この春から導入された「カレッジ制」により、キャリア・就職支援のあり方はどう変わる予定ですか。

まず、「カレッジ制」について詳しくお話しすると、東海大学では2020年より「日本まるごと学び改革実行プロジェクト」と称し、これまでにない大規模な組織改編に着手しました。その中で、学部やキャンパスとは別に、関連する学部を一つの小さな大学と見立てた「カレッジ」という新たな枠組みを設け、縦割組織となっていた事務組織も10ヶ所のカレッジに再編。それぞれのカレッジごとに科目履修の手続きやキャリア・就職支援など、学生にとって必要なすべてのサポートが受けられるようにしたのです。

というのも、従来の縦割組織でのキャリア・就職支援業務は一部のキャリアスタッフが専門的に扱う分野という認識が固定化し、一般の教職員からは縁遠い業務として理解されていました。しかしながら、「学生の就職指導も教育の一環である」という理念を持つ本学としては、もっと学生一人ひとりの日々の学びとつながった支援が必要であり、かつ、教職員もその支援体制にもっと責任を持って応対できる仕組みづくりが欠かせないということになったのです。そこで現在、キャリア・就職支援に関しては、各カレッジが共和的に自律分散型で判断し、行動するための学内調整を継続しています。

学生と4年間の線でつながり、きめ細かな指導や支援が可能に

―つまり、それぞれのカレッジごとにキャリア・就職支援を行うということですか?

そうです。そもそもカレッジ制の導入に伴い、これまで自分の専門分野の業務に特化していた職員の中で、キャリア・就職支援を兼務する職員を増やしました。さらに、学部教員も加わったことにより、東海大学全体としてキャリア・就職支援に携わる教職員の数は約110名にまで飛躍的に拡大。その結果、学部教員が学生へのキャリア指導を低学年時から開始し、学年ごとの指導目標に対し、学部の特徴に合わせたキャリア教育やキャリアデザインを検討する動きが活発になりました。

従来であれば、キャリア就職センターが就職活動の準備を全学部3年生の4月に一斉に周知していたわけですから、大幅に早まったと思います。加えて、その指導内容や支援内容も、「文系学部が多いカレッジはこう」「理系学部が多いカレッジはこう」といった具合に各学部やカレッジの学生のニーズや状況をより反映させたものになりました。

―なるほど。きめ細かな指導や支援ができそうですね。学生の反応はどうですか?

はい。学生の反応もいいですね。これまで「履修に関することは教学部のあの窓口」「就職に関することはキャリア就職センター」といった具合に物理的な距離も離れていましたが、今では「困っていることがあれば、とりあえずカレッジオフィスに行けばいい」という風により身近な場所になりました。さらに、履修のアドバイスをしてくれる職員がそのままキャリアや就職に関する相談にも乗ってくれたり、各業務の担当者が同じ場所で仕事をしたりしているため、情報の連携もスムーズに。

たとえば、就職活動の際に課題となる採用試験日の授業欠席の取り扱いなども柔軟かつスピーディーに対応できるようになりました。学生からすれば、同じ話を何度もしなくていいですし、自分のことをよく理解してくれている職員の一言は信用できると思います。職員もこれまで就職活動の時期に点でしか接点のなかった学生たちと4年間のはっきりした線でつながれることは大きな利点だと思いますね。

教職員の意識改革、分散と集中の最適化を目指して

―なるほど。「カレッジ制」の導入は早速大きな効果をもたらしていますね。では、逆にこの取り組みを推進していく上での難しさや課題があれば教えてください。

先ほど、カレッジ制の導入により、「キャリア・就職支援業務を兼務する教職員が増えた」というお話をサラリとしましたが、これまで専門分野に特化して知識や経験を蓄えてきた教職員の意識を変え、新たな知識やスキルを身につけてもらうことは簡単なことではありません。準備段階である2021年度においては、キャリア・就職支援の授業改善のための組織的な取り組みや教職員向けの研修などを年間6回開催。新体制での実施方法を確立するためのPWM(Policy・Working・Meeting)を年間30回開催し、具体的な運営方法を教職員が一丸となって検討してまいりました。

また、「学部やカレッジごとの特徴に応じた指導や支援が可能に」といったメリットも伝えましたが、その一方で就職ガイダンスをはじめ、同じような内容の支援行事が各カレッジで分散して開催されるようになったため、大学全体で捉えた場合の経費的・時間的な効率はまだまだ改善の余地がある状況です。とにかく現在は年間でPDCAを回しながら、「分散と集中」の最適なバランスを模索しております。

それぞれが切磋琢磨しながら、時代や社会の変化に応えていく

―カレッジ制の導入により、貴学のキャリア・就職支援はますます進化しそうですね。最後に今後の目標などをお話しいただけますか。

分散と集中の最適化は今後の大きな課題ですが、たとえば昨年、マイナビさんと全カレッジの低学年向けの「課題解決型グループワーク」をオンラインにて開催するなど、外部の力も借りながら進化を目指しているところです。
また、それぞれのカレッジごとに自ら考え、工夫する体制に変更したことで、本学のキャリア・就職支援の活動内容がより多様化してきました。さらに、こうした取り組みを共有することで、今後、ますます各カレッジが切磋琢磨しながら、学生にとってより良いキャリア・就職支援を構築することができるのではと考えています。

今後の労働市場は、人口減少や産業構造の転換、DX化やAI時代の到来、価値観の多様化などの影響もあり、企業のあり方もキャリアのあり方も大きく変化していくはずです。だからこそ、私たちも時代の変化、社会の変化に柔軟に対応しながら、キャリア・就職支援のあり方も進化させ続けていく必要があります。こうした本学と同じような考えをお持ちの大学であれば、ぜひ、一緒に新しいことに挑戦していきたいと思います。お気軽にお声がけください。

Editor’s Comment

今回は、北海道から熊本まで、23学部を擁する東海大学さんが、どのようなキャリア支援をおこなっているのか、興味深く取材しました。
学生の志向・価値観・抱える課題が多様化していく中、「日本まるごと学び改革実行プロジェクト」にて「カレッジ制」を導入し、学生はワンストップでスピーディーに学びやキャリア形成の支援を受けることができるとのこと。一方、変革によって教職員側は当然負担も増えますが、それをもってしても変革をおこなうという成川先生のお言葉に、東海大学さんの本気を感じました。
(マイナビ編集長:高橋)

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