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大学事例|キャリア支援の土台づくりを職員の意識変革から愚直に行っていく|山梨学院大学

経営学部や法学部をはじめとする5つの特色ある学部を有する山梨学院大学。国際教育やスポーツ、就職支援に強い総合大学として、たくましく生きる力を備えた人材を数多く輩出してきました。産学官連携の授業、充実した教育施設、地域社会に根差した研究活動など、未来に直結する幅広い学びを提供し、学生の創造力と行動力を育んでいます。今回は、2023年から現職に就いたという大学事務局長の増田氏に、たった一年で大学のキャリア支援に革新的な変化をもたらした秘策についてお伺いしました。

Profile

増田 新吾 氏
山梨学院大学 事務局長
専門学校の職員としてキャリアをスタート。管理部の責任者を担当した後、専門職大学のキャリアサポートセンター長や学部講師を兼務。13年間の在籍を経て、2023年に山梨学院大学に大学事務局長として転職。現在は事務局長を務めながら、同大学のキャリア支援の改革を進めている。

職員は大学経営のプロ、変化を恐れず常に挑戦

―キャリア支援を一から立て直しているとのことですが、どのように進めているのでしょうか?

本学に転職してきた際、当初感じたのは、大学として必要なキャリア支援が全体的に十分整備されているとはいえず、より良いキャリア支援を行っていくうえでも改善の余地が多々あるということでした。そこで、私はまずキャリアサポートに携わっている職員の一人ひとりと面談し、キャリア支援への想いをヒアリングすることからスタートしました。

すると、現場の職員はキャリアサポートに対してしっかりと熱意を持っていることがわかったのです。でも、必要なキャリア支援のやり方がわかっていなかった。そこで、私が自ら率先してやり方を見せながら、仕組みを整えていくことにしました。まだまだ道半ばですが、職員の能力が高いため、結果につながっていく見通しが見えてきました。

私は常々、大学の教員と職員の役割について、教員は教育指導のプロである一方、職員は大学経営のプロであるべきだと思っているのですが、その意識を一人ひとりに根付かせることから必要だと感じています。また、現状維持は衰退だと思っているため、変化を恐れず挑戦していこう、常に改善し変革していこうという考えも浸透させている最中です。

―なるほど、職員の意識改革からスタートしたのですね。その後、具体的な支援としてはどこから取り組んでいかれたのですか?

最初から全部を一斉に取り組んでいくことは難しいため、学生のニーズが一番高い3年生のインターンシップから見直しました。昨今の就職活動において内定率に最も直結する部分ですからね。加えて、できるだけ早く成果を出さないと、大学の経営陣も私のやり方に不安を感じますし、職員のモチベーションも下がってしまいます。そういう意味でもインターンシップへの取り組みは急務でした。

さらに、本学の場合、3年生のインターンシップに履修制限がかけられており、本当は希望していても、希望者の3分の1程度しか参加できていないという実態もありました。それでも、今年度は前年度の約4倍の参加者数となりましたが、履修制限は来年から解除し、さらに参加者数を増加させる計画です。そのための、受け入れ企業先も増やしていく予定です。

真に必要な施策を考え、一つずつ実践していく

―本当は希望していた学生が多くいたとはいえ、どうしてそこまで一気に増えたのですか?

インターンシップは、受け入れ先の確保が大きな課題です。地域の多様性、業種の多様性、本学のように留学生もいる場合は受け入れ国籍の多様性も求められ、かつ学生の認知度が高い企業での受け入れ枠を確保しなければ、学生も参加したいとは思いません。

しかしながら、採用に困っていない企業に承諾をいただくのは簡単ではありません。そこで、まず私自身が企業宛の案内状のチェックも行い、全職員が企業の担当者の方々に説明する訪問にも同行しました。その後、受け入れ企業先が確定するまで、毎週進捗確認を行うなど、マイクロマネジメントを心がけたのです。

特に、最初の頃は大変だったと思います。でも、結果が伴ってくると、職員のモチベーションも高まりますので、今でも改革の歩みを止めることなく進められているのだと思います。

―学生に対しては、どのようなアプローチを展開したのですか?

企業にとっても、学生にとっても、事前にミスコミュニケーションがないようにしなければなりません。そのため、インターンシップ前に顔合わせを行うだけではなく、受け入れ先の企業による座談会を開催し、企業の理解を深めてもらったり、事前に相性を確認できる場を設け、希望先を選定するための参考材料をできるだけ多く提供したりしました。

また、インターンシップに限ったサポートではありませんが、個別面談の充実にも力を入れています。学生が相談したい時に、相談できる体制を整えるために「なんでも相談会」を開催。担当職員が相談窓口に常駐し、気軽に学生が相談できるように環境面から変えたのです。

低学年のキャリア支援はステップアップが大切

―成果を出すための本質的な対策が行き届いていますね。ちなみに、低学年のキャリア支援に関してはいかがですか?

就職活動の早期化もあり、動き出しも早まっています。私自身は、入学してからの半年は学生生活に慣れるための時間。1年生の後期くらいから、まずは就職そのものに関心を持ってもらい、2年生でいわゆるガクチカの土台づくりというステップをつくりたいと考えています。

ちなみに、2年生でもインターンシップに参加してもらおうと考えているのですが、3年生とは目的が大きく異なります。こちらは、失敗を経験してもらうため。3年生のインターンシップでしっかりと力を発揮できるよう、2年生のインターンシップでは自分に何が足りないのかを身をもって実感してほしいと考えています。

そうして翌年の就職活動を見据え、学生生活の中でいま何をすべきなのか考えて努力し、本番に立ち向かう力をつけていってくれればと思います。

学生の希望を叶えるのは職員の胆力である

今後は、どのようにキャリア支援の改革を進めていくのですか?

本学では自ら進路を切り開いていく学生ももちろんいますが、誰かに相談したいという学生が大多数です。そういったサポートを求めている学生により手を差し伸べてあげたいと思っています。

また、近隣の他大学とも連携して学生、企業、大学の三方にメリットがある合同企業説明会を増やしたいですね。山梨県にキャンパスのある本学のキャリアサポートは東京のそれとはまるで違います。山梨県は人口が少なく、地元での就職先も限られているため、近隣の大学と連携し協力することで、地元企業とのパイプをより効率的に太くしていけたらと考えているのです。

企業にとっても、一度の合同説明会でより多くの学生と会える方が参加のモチベーションも高まりますし、学生もたくさんの企業と出会える方がうれしいのではないでしょうか。

最後に、他大学の皆さまへメッセージをお願いします。

私は、大学を支えるために職員が寄与する部分は少なくない、と思っています。また、キャリアサポートは学生の人生を左右する可能性のある業務です。学生に寄り添って、相談に乗り、学生の希望を叶える。そのためには、学生の支援を絶対にやり遂げるという強い意志、胆力が必要です。

キャリアサポートの業務は苦労も多いですが、そのぶん達成感ややりがいも大きな魅力。一人でも多くの若者を社会に送り出す同志として、これからも切磋琢磨し合えればと思います。

Editor’s Comment

山梨学院大学の増田事務局長を取材させていただきました。
地元企業を中心に採用動向を把握しつつ、学生にとってプラスとなるようなインターンシップ受け入れ企業の開拓をし、1年次から支援プログラム、2年次では前向きな失敗を経験させ、3年次でインターンシップに参加させるという流れをスピーティーかつドラスティックに変革しているという印象を受けました。
大学経営の視点から学生支援体制を作りつつ、一方で「学生なんでも相談会」では教職員と共に学生の相談に乗るというエピソードに、学生に対する優しくも熱い眼差しを感じました。
(マイナビ編集長:高橋)

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