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大学事例|誰ひとり取り残さないキャリア支援を|志學館大学

鹿児島女子手藝伝習所から始まり、学園創立116年の歴史を誇る志學館大学。1999年に鹿児島女子大学から現在の名称に改め共学となりました。法学部、人間関係学部の2学部体制で、心理臨床学科があることから臨床心理士の資格を持つ教授や職員も多く在籍。キャリア支援の場で活躍しています。学生の多くが地元鹿児島県出身で、卒業後の進路においてもおよそ7割が県内企業を選択。地域社会に根付いた、小規模大学こそのきめ細かな対応と、一方で他エリアと足並みが揃いにくいという課題に奮闘される、進路支援課の窪氏と田島氏にお話を伺いました。

Profile

窪 健太郎 氏
志學館大学 進路支援課 課長
民間企業で10年以上、営業や人事総務業務に従事した後、2010年に志學館学園へ入職。学園本部の総務職など各部署を経験し、現在は志學館大学の進路支援課で田島氏と学生のキャリア支援にあたっている。

田島 祐治
志學館大学 進路支援課 係長
民間企業で機械や施設の設備保全業務などに従事した後、2014年に志學館学園へ入職。志學館大学の学務課や入試広報課を経験し、現職。九州1部リーグの同大男子バレーボール部監督も兼任。

大都市の動きに出遅れないように

学生のほとんどが大学のある鹿児島県出身だと伺いました。進路としても、県内企業へ進むことが多いそうですね。

窪:入学生においては、7割程度が鹿児島出身。そして、卒業生のおよそ7割が鹿児島の企業や団体に就職しています。地元に残りたい、これからも地元で生きていきたいという学生に選ばれている実感があります。加えて、1学年400人以内の小規模大学で、アットホームな雰囲気のある大学です。私たちも、学生一人ひとりの名前を覚える距離感で接しています。

―就職活動の支援においては、鹿児島の企業に合わせたスケジュールで実施しているのでしょうか。

窪:鹿児島においても、就職活動の早期化は進んでいますが、とはいえ東京や大阪、福岡などと比べるとそこまでではありません。インターンシップに参加するまでのフローで、選考が実施される県内企業はそれほど多くありません。そのため、大学4年生直前から就職活動を始めればよいと思っている学生もまだ多くいます。しかしながら、それではいざ鹿児島以外の進路を選択したいときに間に合いません。その意識を変えていくことが、ひとつの課題ですね。

田島:そのため、大学3年生になった春から「進路支援プログラム」を年間かけて実施しています。最初の授業では、「キャリアサポートガイドブック」という大学の特性や地域性を加味した就職活動のノウハウ本を配布。このような支援を通じて、近年は早くから主体的に就職活動へ取り組む学生も増えてきました。全体の半数以上は、これらサポートを活用しつつ自らの力、たとえばナビサイトやSNSなどを駆使して希望の職に就いています。ちなみに、各種プログラムは1、2年生にも開放しています。早期から業界や企業研究をしてほしい。鹿児島で就職するにしても、県内企業を早くから知ることは選択の幅が広がりますからね。低学年から将来を見つめる大切さを啓蒙しているところです。

臨床心理士の教員と連携したサポートを

―学生たちに、自らキャリアを選び取っていく力が芽生え始めているのですね。

田島:自走できる学生が増えてきていると感じています。公務員の合格者数も毎年安定してきていますね。一方で、この流れに乗ることができない、さらなる配慮が必要な学生がいることも事実です。そのような学生にとっては、通常の就職活動は精神的や体調的に難しいこともある。さらに、「卒業論文が進んでいない、学校へ行きづらい、それらを誰に相談していいかわからない…」と、就職活動以外にも悩みを抱えていることも多いんです。そのような場合は、継続的に、膝を突き合わせて1対1での対応に取り組んでいます。

窪:とくに、私たちの大学には心理臨床学科があるゆえに臨床心理士の資格がある教員も多いです。担当教授がそうだったり、学生支援センターにも資格を持つ教職員が常駐しています。そうしたプロと連携しつつ、具体的な進路の悩みは私たち進路支援課が担当します。ただ、発達障害などの診断がある場合は適切な窓口に連携していきますが、いわゆるグレーゾーンの学生は慎重に対応します。

コミュニケーションに違和感を持ちつつも、学生本人の認識と乖離があるかもしれないので、もどかしいことも。少しずつ前に進めるよう、ケースバイケースで対応しています。そして、いま、新卒応援ハローワークの方に週1回の面接練習にきていただいています。そこで、障害の有無にかかわらず、通常の就職活動が困難と感じた学生については、ハローワークと連携して支援を行なっています。

家族と大学が連携し支える

―学生にアプローチしていくこと自体が難しいときもありそうですね。

窪:そうですね。そのような場合は、ご家族にもサポートをお願いしています。本学は、ご家族とのつながりも強く、年2回の進路支援説明会のほかに、「後援会」というPTAのような組織との連携も強めています。熊本や宮崎、沖縄と各地に支部があり、コロナ禍では中断していましたが、私たちが出向いて相談会も実施しています。奄美大島にも行きましたね。

田島:親御さまも、私たちと話すことで安心してくださるようです。ご家族からのヒアリングも通して、学生にどのようなサポートをしていけばよいのか一緒に考えます。そして、ご家族に声掛けをお願いすることも。その働きかけがきっかけで、動きだすこともありますね。

遠方にまで出向かれていたんですね。

窪:実際に会うことは、やはり大切ですよね。それは、企業に対しても同じ姿勢です。マンパワーの問題もありますが、学生に紹介する企業はできるだけ訪問するようにしています。しっかりと職場を見て、雰囲気を感じたうえで、学生に提案していきたい。そうしないと、その学生に適した企業であることを自信を持って話せませんからね。

一人ひとりの特性に寄り添う

誰も取り残さないよう、すみずみまで支援されていることが伝わりました。これからの目標も教えてください。

田島:学生の内面に向き合ったサポートをより強化していきたいですね。小規模大学なので、1回目の面談で学生の名前を覚えちゃうんですよ。そして、2回目で名前を呼ぶと心を開いてくれることが多い。やはり名前を覚えてもらえるって、学生に限らずうれしいですよね。そこから就職活動以外の、プライベートな話に広がることもあります。その結果、学生本来のよさや特徴を引き出せますし、そこは小規模大学の本学ならではかもしれません。また、インターンシップに参加する学生も引き続き増やしていきたいですね。求人票や採用HP、説明会だけではわからない、会社の本質を感じてほしいと考えています。そのうえで、納得した進路を選んでほしいですね。

窪:夏のインターンシップへの参加を、ひとつの目標として掲げていきます。そのため、私たちとしては、学生がインターンシップで気後れしないようなビジネスマナーなど基礎力を養うプログラムを早期に提供予定です。そのような全体向け支援にも力をいれつつ、引き続き一人ひとりの特性に応じた、誰ひとり取り残さない支援を続けていきます。

他大学のみなさまにおかれましても、学生に寄り添うことと内定率という指標の間で、ジレンマを感じられることもあるかと存じます。でも、まずは私たち自身がしっかりとした指針を持っていることを見せたい。そして、さらに自己研鑽していく。その姿を学生に見せていきたいですね。社会に出る前に出会う、初めて接する社会人ですから。

田島:こんな社会人になりたい、学生たちからそう思ってもらえるように私たち自身も成長していきたいですね。

Editor’s Comment

今回取材させていただき、お話をうかがったお二人から、穏やかながらも学生に対する熱い想いを感じました。学生の状況、抱える課題に対して、非常に丁寧かつきめ細やかな支援をされており、さらに規模のメリットとして、学生ひとり一人の強みや課題を把握していることが、学生や保護者への安心感につながっていると思います。就職活動の進捗だけでなく、学生の状況、抱えている課題はさまざまですが、それを個別面談だけでなく、学内の臨床心理士と連携し、また保護者への情報提供を九州各地に出向いて積極的におこなうことによって、全方位的に支援されていると感じました。
(マイナビ編集長:高橋)

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