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大学事例|スポーツで鍛えられた学生たちの想いと能力を引き出し導く|環太平洋大学

「教育とスポーツの融合」を基本理念に掲げ、2007年の開学以来、数多くのプロスポーツ選手やオリンピック選手を輩出している環太平洋大学。現在も学生の約6割が体育会系部活に所属し、さらなる高みを目指し、活動を続けています。また、学生たちのキャリアに関しては、行動指針である「五訓(礼節、克己、信頼、前進、感謝)」をもとに、人間力を身につけ、将来は教員や公務員、民間企業などでリーダーとしての活躍を志す学生たちの支援に力を入れています。そこで今回はキャリアセンターの佐藤氏、松下氏に「4年後に責任を持つ大学」というコンセプトに込められた想いや環太平洋大学のキャリア支援について詳しくお話を伺いました。

Profile

佐藤 典子
環太平洋大学 キャリアセンター キャリアセンター長兼経済経営学部 特任教授
外資系金融業界にて人材育成などを担当した後、プロコーチとして独立。故郷の岡山への移住を機に環太平洋大学へ入職し、キャリア教育にコーチングを導入。その活動はコーチングの業績を讃える「ウェイクアップ・アワード」も受賞。現在も企業幹部にコーチングを提供する一方、一橋大学大学院で同分野の研究にも従事。コーチングの国際資格を多数取得。

松下 孝志
環太平洋大学 キャリアセンター 副センター長兼企業等就職支援室 室長
大手人材サービス企業の営業職からキャリアをスタートし、マネージャーや支社責任者を歴任。2016年、環太平洋大学へ入職し、企業就職支援において企業対応と組織ビルドを担当。また、キャリアセンターと各学科、就職支援室間の連携にも注力している。国家資格キャリアコンサルタント。

4年後に責任を持つために進路ごとのコースを共に走る

環太平洋大学は、教員や公務員への就職にも定評があります。特に、2022年度は各採用試験の合格率が過去最高になるということですが、キャリア支援の秘訣をお聞かせください。

松下 :私たちは「4年後に責任を持つ大学」というスローガンを掲げ、一人ひとりの進路に対して覚悟を持ってキャリア支援にあたっています。大学3年生からは学生の希望コースごとに伴走。
学生たちは教員、保育士を目指す「大志会」、公務員を目指す「立志会」、企業人を目指す「翔志会」の3つの「志会」に分かれ、彼ら彼女らを私たち教職員や各分野の専門家たちが全力でサポートしていく体制を整えています。

ちなみに、本学は、体育会系の部活に取り組んでいる学生が多く、たとえば、外部の就活塾や公務員塾のような場所に通うことは時間的になかなか難しいため、部活が終わってからの時間、土日の空いている時間に学内でサポートする志会が役立つのです。また、どの志会も希望の職業に就くという目標にとどまらず、その先も活躍できる人材となることを見据えてのプログラム。国家資格キャリアコンサルタント資格を取得している教職員も多く、本気で支援しています。

認知能力と非認知能力を向上させることで学生の希望をかなえる

大学3年生から、それぞれの進みたい道に合わせてコースが分かれるのですね。

松下:そうですね。3年生になる時に希望コースを選択するのですが、学生が自ら適したコースを選択できるよう、1、2年生を対象とする初年次教育ではメンター制度を導入。メンターは教職員だけでなく、元小中高教員、監督やコーチ、オリンピアンの先生もおり、一人ひとりの「本当になりたい自分」を引き出すサポートを実施しています。また、環太平洋大学では基礎学力の強化にも力を入れています。とくに教員や公務員などは、採用試験があり、そのための勉強は避けては通れません。高校時代までスポーツに打ち込んできた学生が多いこともあり、卒業時には「人生でいちばん勉強した4年間でした」なんていう学生もいますね(笑)。でも、おかげさまで、各種採用試験の合格率は年々向上しています。

佐藤:松下のお伝えしたいわゆる「認知能力」とともに、「非認知能力」の向上にも力を入れています。その象徴が2019年に完成した「DISCOVERY」という名称の非認知能力育成のための専門学舎です。建築家の安藤忠雄氏に設計していただきました。本学が掲げる「教育とスポーツの融合」をベースに、人と人が垣根を超えて刺激し合うことのできるフィールドです。教室は、スピーチやプレゼンテーション、ディスカッションといった能力が磨けるものとなっており、それぞれの席にマイクがついている「ディベートラボ」や英国議会をモチーフにしたディスカッションラボ、テレビ局のようなIPUスタジオなどもあります。私もアクティブラーニングが好きなので、ディベートラボなどでの授業をもっと増やしていきたいですね。

長い人生でずっと役に立つコーチングスキルを

―認知能力と非認知能力の両輪で、希望の進路に導いていくのですね。また、コーチングにも力を入れていると伺いました。

佐藤:私自身、20年ほどコーチングに携わっており、現在も経営者の方々などにコーチングをしております。学長をはじめとした皆さまも理解を示してくださり、2018年からキャリア教育にコーチングを導入しました。ちなみに、「コーチングを導入した」という話をすると、学生がプロからコーチングを受けるイメージを持たれる方が多いかと思いますが、私たちの大学では受けるだけでなく、学生たち自身がコーチングスキルを活用できるよう、むしろスキルを学ぶ方の授業をメインに行っています。

具体的には、4年生から始まるキャリアサポートという授業中で15週間にわたり実施。コーチングのモデルを学び、その後は学生同士がペアとなって、傾聴や質問を通して相手の伝えたいことを引き出していきます。学生時代にコーチングを受けるというだけならその場限りですが、自ら学び、実践することで、学生にとって一生のスキルとなります。実際、就職活動において話を聞く姿勢が企業に評価されたという話や、家族間のトラブル解消をはじめ、周囲の人間関係が改善されたといった報告もあります。ある学生は、企業への就職を望む一方で、母校での教育実習にも参加したのですが、その際にコーチングを使って子どもたちと接したそうです。すると、子どもたちの反応が非常によく、人から魅力を引き出す、人を育てることにすっかり魅了されたようで、結果的に教職を選択しました。学生の転機となったことは、非常にうれしかったですね。

学生を見つめる支援にキャリアセンターの意義がある

―一人ひとりの能力や想いを引き出し、導いていくキャリア支援のお話をお伺いできました。さらにかなえたいことはありますか。

松下:いま世の中には、ありとあらゆる就活サービスが存在していますが、そうした状況において、私たちキャリアセンターとは何者なのか、その存在意義が問われているのではないでしょうか。また、本学は、スポーツに心血を注いできた学生たちが多いため、その中で経験してきた努力や達成感を就職活動でも感じてほしいと考えます。「これだけ頑張ったからこそ、この進路を得られたんだ」という体験は、その後のキャリア人生にとって得難いものとなるはずです。それは学生一人ひとりを見つめている私たちだからこそできることだと思います。本学のある岡山県は、各大学のキャリアセンターの横のつながりが強いのですが、このような連携を全国にもつなぎ、キャリア支援のあり方を一緒に考えていきたいですね。

佐藤:少し遠大な夢かも知れませんが、教職課程にコーチングを取り入れたいと本気で考えています。心理的安全性を担保した上で学生たちが主体的に話すことで、その内面を引き出していく。そのような指導が、今後広く求められていくと考えます。本学でも、より多くの学生に身につけてもらうため、2024年からコーチングを1年生から履修できる教養科目といたします。キャリアに、人生に、その学びを活かしていってほしいですね。本学の学生は、スポーツに打ち込んできたからか、非常に真っ直ぐで、行動指針の「五訓(礼節、克己、信頼、前進、感謝)」を実践できる人物が多い。ベースに素晴らしいものがあります。彼ら彼女ら一人ひとりの魅力を引き出し、その想いをあたたかく受け止めていくことが私たちのできること。そこから、キャリアセンターの意義を再定義していきたいですね。

Editor’s Comment

取材を終え、同校の「4年後に責任を持つ大学」というキャッチフレーズは、 「社会に出てからも責任を持つ大学」という意味のように感じました。 取材当日も「学生にコーチングスキル」、「進路選択は専願制」というキーワードをはじめ、終始興味深く取材させていただき、 学生一人ひとりを見つめ、褒めて伸ばし、学生の無限の可能性を信じて支援されていると感じました。
(マイナビ編集長:高橋)

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